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星を追う子ども:新海誠の黒歴史と言われますが…

立春

 昨日は節分で本日は立春。暦の上では今日から春ということですが、昨日と何がが違うのかといえば何も変わった気がしませんね。“冬が極まり春の気配が立ち始める日”ということなので真冬の続きと言っても過言ではないでしょう。夏も立秋過ぎてからが本番だったりしますし。でも日脚は延びてきて日暮れもだいぶ遅くなってきました。ぼんやりしている間にも季節は移ろっていくんですね。

星を追う子ども

 本日は正月休みに視聴した新海誠作品第三弾「星を追う子ども」の感想です。当ブログでは“あの!”と言いたくなる「秒速5センチメートル」に続く、4作目の新海誠の劇場用アニメです。公開は2010年5月。

星を追う子どもその2

 メジャー化する前の新海作品とはいえ、興業収入2000万円。これはヤバいですね。前作「秒速」の興業収入は1億円、後作「言の葉の庭」の興業収入は1億5000万円なので、本作の不人気ぶりが際立ちます。正直作品的には「秒速」→「言の葉」の流れであれば非常に判りやすく、新海誠作品を語るのもやりやすいのですが、間に本作が入っているのが何とも異物感を感じさせます。その理由は、①視聴者に子供を想定している(大人の鑑賞に堪えないという意味ではありません)、②良くも悪くもいたるところでジブリ作品を感じさせ(本人も認めています)、特にキャラデザインが違いすぎる(「秒速」と同じ西村貴世ですが、とてもそうは思えない)、③「秒速」と「言の葉」がほとんどファンタジー要素のない現実世界を描いているのに対し、本作はバリバリのファンタジー作品--といったところでしょうか。

明日菜

 小学校高学年の少女渡瀬明日菜の、地底世界アガルタの旅を描いた本作のキャッチコピーは「それは、“さよなら”を言うための旅」。アガルタというのは19~20世紀のオカルト的伝説においてアジアのどこかにあるとされた地下都市で、かつてあった地球空洞説と共に一時期は強く支持され、多くの探検家がアガルタ捜索を行ったとか。しかし科学の発展に伴い、地球空洞説とともに急速に支持を失いました。

惑星アガルタ

 アガルタと聞くと思い出すのは劇場用アニメ第1作「ほしのこえ」。主人公美加子が乗る宇宙戦艦リシテアがワープで辿り着いた「シリウス星系第4惑星」がアガルタの名前で呼ばれていました。生命に溢れた惑星だったので、本来であれば本格的に調査するべき対象ですが、タルシアンの攻撃で全滅の危機に陥り、それどころではありませんでした。

誰かに似てる?
明日菜のラジオ

 辺鄙な場所で母と二人暮らしの明日菜。制服のある小学校に通っていますが、別に私立という訳ではなさそう。学校では優等生で、看護師で多忙なママンに代わって家事を行っている良い子ですが、どうもここは自分がいるべき世界ではないといった疎外感を抱いており、友達といるより一人でいることを好み、近くの山に秘密基地を作り、父の形見の石を使った鉱石ラジオを聞いたり、猫のミミと遊んだりしています。

謎の化け物の出現
シュンと明日菜

 ある日明日菜は見たことのない怪物に襲われますが、これを救ったのはシュンと名乗る少年。彼は「アガルタ」から来たと言いますが、再開の約束もむなしくあっけなく亡くなってしまいます。そんな時担任の先生が産休となり、産休補助教員としてやってきたのが森崎。彼が語る「古事記」での黄泉の国に強い関心を持ちます。

シンと明日菜
アガルタの入り口

 明日菜はシュンと瓜二つの少年シンと出会います。シンはシュンが持っていたアガルタに入ることを可能とする石(クラヴィス)の回収に来たのですが、二人を突然襲撃する謎の兵士と森崎。森崎はアガルタの秘密を狙う組織「アルカンジェリ」の一員だったのです。逃げる過程でアガルタへの道を開いたシン。しかしそれこそが森崎の目的で、彼は組織を裏切ってアガルタに行きます。この世界に疎外感を持っていた明日菜も同行することに。なぜか同行する猫のミミ。

アガルタ生活
森崎

 そこから地下世界アガルタの旅が始まる訳ですが、確かにジブリ要素に溢れています。森崎は「転句の城ラピュタ」のムスカに似ています。自分の目的のために組織を利用し、裏切るあたりが特に。ただムスカほど邪悪ではなく、彼の目的は夭逝した愛妻リサを甦らせることです。仮初めにも教師だったこともあり、明日菜に虐待などはしませんが、起こす際に(軽くとはいえ)足で蹴っていたのはひどい。女の子なんだからせめて手で揺すって起こせ。

猫みたいだけど猫じゃない

 それまでの新海作品には必ず猫が登場しており、雄がチョビ、雌がミミでした。今回はミミ単独出演かと思いきや、実は猫のようで猫ではありませんでした。本来はアガルタの生物だったようですが、これが「風の谷のナウシカ」のテトを思わせます。

アガルタへの鍵

 明日菜が疎外感を持っていた理由、それは彼の死んだパパンがアガルタ人だったからのようで、明日菜の持っていた石こそ、実はアガルタへの道を開くクラヴィスの欠片でした。アガルタの人は地上では長く生きられないそうで、パパンはそれで死んだ模様。シュンも死にましたが、本来はあそこまで急死する訳ではなく、シュンの場合は病に冒され死期を悟ったので、最期に一目地上を見ようとやって来たのでした。

アガルタ
イスカンダル星

 アガルタは太古の神々と一部の人々が移り住んだ地下世界ですが、かつて地上人との交流で侵略を受けたため、入り口を封鎖して地上人との交流を拒絶したのでした。人を蘇らせるなどの太古の技術がありますが、アガルタの人々は滅びゆく定めに抗わないようで、ほぼ滅亡に向けてまっしぐらという雰囲気です。なんとなく「宇宙戦艦ヤマト」のイスカンダルっぽい感じも受けました。

戦うシン

 実はシュンとシンというアガルタ兄弟にもジブリモチーフが満載だそうです。私はあんまりジブリ作品を見ていないのですが(「もののけ姫」以降は全然見ていません)、それでも判るジブリの気配。ジブリファンなら余計感じることでしょう。

ミミとの別れ
神の船

 色々と冒険していく明日菜と森崎ですが、森崎にはどうしても亡き妻に再会したいという熱い想いがあるのに対し、明日菜にはそこまでの想いはなく、険しい崖を降りるという段になって明日菜はギブアップしてしまいます。森崎から離れて一人ぼっちになった明日菜ですが、シンと再会し、死んだミミの導きもあったのか、崖を降りずに森崎目的の地に辿り着くことに。そこはアガルタの空に浮かぶ、神々が乗るとされる船シャクナ・ヴィマーナの降りる場所でもありました。

森崎リサ
シャクナ・ヴィマーナ

 死者を甦らせる技術とは、シャクナ・ヴィマーナによるものですが、死者の魂の依代が必要ということで、苦悩しつつも明日菜を依代にしてしまう森崎。さらにそれだけでは足りないということで自らも目も失ってしまいます(このあたり一層「目が!目がぁ!!」のムスカを思い出させます)。

つかの間現れたリサ

 しかし生者を生贄にすることを許さなかったシンの妨害でリサの復活はならず、明日菜は事なきを得ました。森崎の目は戻らず、アガルタに残ることを選択。夢の中でシュンと別れを告げて目覚めた明日菜は二人に別れを告げ、地上へと帰ったのでした。

マナ

 アガルタ人と地上人の交流は禁忌ということですが、死期を悟ったシュンが脱走してきたのはともかくとして、明日菜のパパンが地上に来て結婚していたりと、結構禁忌を破っている例があるようです。さらにアガルタにはマナという女の子がいて、明日菜とは逆に父親が地上人だった模様。

夷族の群れ

 アガルタには夷族という怪物のような種族がいて、今ある世界を保とうとする仕組みの一つなのだそうで、交わりを嫌っているので地上人とアガルタ人のハーフである明日菜やマナを襲っていました。しかし純地上人の森崎は全く襲われなかったので、地上人がアガルタにいることは構わない様子。

殺しに来る夷族

 この夷族、終盤は今にも殺さんばかりの勢いで明日菜を襲っていましたが、最初に遭遇した時は、明日菜が眠っていたということもあってか、塔の上に連れ去るだけに留めていました。そこで明日菜はやはり攫われてきたマナと出会ったわけですが、何のために塔に連れてきたのかは謎です。何らかの儀式を行うつもりだったのか。

中学生になった明日菜

 生還した明日菜は以後疎外感を感じることもなくなって日常生活に戻ったようです。おそらくアガルタの旅が父のいない寂しさやシュンを失った喪失感を埋める作用をしたのでしょう。まさにキャッチコピーの「それは、“さよなら”を言うための旅」だった訳ですね。

妻の幻影

 森崎については、本来亡妻と再会するための旅だったのですが、残念な形での終了となってしまいました。明日菜を生贄にしてでもリサが復活すれば本望だったのか。しかし代償として目を失ったのでどのみち愛妻を見ることは叶わなかった訳ですが。ほんの一時でも声を聞けたのは幸いでしたが、それにしても代償が重すぎます。ムスカの場合は「ざまぁ!」と思いましたが、森崎にはもうちょっと優しくしてもという気になりました。 
 
二人の語らい

 個人的見解ですが、「秒速」の高評価でメジャー化を目指したものの、このままの作風では難しいと判断し、広く老若男女に愛されているジブリ作品を参考にしたところ、あまりにジブリ作品に寄りすぎてしまって独自の世界を見失ってしまった。そこで「言の葉」で自分の世界に戻って仕切り直した上で、本作の失敗を教訓に独自の世界を見失わない形で「君の名は。」を作り上げたという感じではないかと。

アガルタ暮らしその2

 そういう意味では、本作は失敗作ではあったかも知れませんが、「君の名は。」以降の成功のための布石になっていたのではないでしょうか。つまり、本作なくして今の新海誠はなかったのではないかと。失敗は成功の母とはよく言ったもので、もし本作がそこそこヒットしていたら、今頃細田守クラス(失礼)の存在に留まっていたかも知れません。

登壇時のメインキャストと監督

 明日菜のCVは金元寿子。このキャスティングだけで私の本作への評価は上がってしまうのですが、当時の金元寿子はバリバリの新人声優で、「侵略!イカ娘」のイカ娘役がヒットした直後でした。他にも入野自由、井上和彦、日高里菜、島本須美(ナウシカ!)などビッグネームの声優陣をキャスティングしており、良いか悪いかは別として、このあたりも「秒速」以前とは異風なんですよね。

アルカンジェリ

 例によって余談ですが、本作の謎(笑)。その①森崎が所属していた秘密組織アルカンジェリ。アガルタの技術で人間世界をより良い方向へ導くことを目標としてアガルタを捜索しており、森崎は自分の目的のためにこの組織を利用し、中佐の肩書きを持っていました。森崎に言わせれば「空虚なグノーシス主義者たち」だそうですが、戦闘ヘリまで繰り出していた組織力はあなどれないものが。森崎は裏切る際、部下の兵士達を置き去りにしたので、当然組織に戻って森崎の裏切りやアガルタがあったことを報告したと思われます。

明日菜危うし

 となると、森崎と一緒にアガルタに行った明日菜が生還したことも当然把握すると思われます。こういう状況で明日菜の生活は平穏に過ぎるでしょうか?拉致監禁されて尋問を受けるのは必至と思われますが…。明日菜は知る限りのことを話すでしょうが、アルカンジェリは納得するかなあ。自白剤とか薬物を使われて廃人になったりしなければいいですが。

怯える明日菜

 少なくとも明日菜がアガルタ人のハーフであることは判明してしまうでしょうし、夷族がハーフを察知していることからも何らかの判別手段がある模様。その辺りを究明しようとされると、明日菜は組織に囚われて人体実験を受け続けるといった悲惨な未来もありえるような。そんなことにはなって欲しくはないのですが…

マナその2

 その②マナの出自。マナは明日菜とは逆で母がアガルタ人で父が地上人とのことですが、それは地上人がどうにかしてアガルタにやって来たと言うことか。母を亡くしてからは祖父が面倒を見ていましたが、父はどうなったのでしょうか。マナや祖父が住んでいるアモロート村には、やたら地上人を敵視する兵士達がいましたが、マナのパパンがどうなったのかと絡んでいるのか?ちなみにアガルタは日本語が普通に通用しているのですが、アガルタ人は元日本人なんでしょうかね。

人間に近いケツァルトル

 その③ケツァルトル。アガルタの門番で、かつて人類を導いた神々で、自分たちが役目を終えたことを知って、小数の人間たちとともに地下世界へもぐったという伝承ですが、退化して怪物じみた姿になっています。地上で明日菜を襲った怪物もケツァルトルですが、どうやって地上にやって来たのでしょうか。シュンが地上に来た際に一緒にやって来たのか。森崎たちアルカンジェリもケツァルトルの存在は知っていたようなので、時々迷い出てきたりしているのか?

物理的接触を図るタルシアン

 なんとなくですが、「ほしのこえ」に登場したタルシアンと関係あったりしないでしょうか?タルシアンの一部が地上に降りて人類を文明化し、後のケツァルトルになったとか。タルシアンの本隊は火星に留まって人類が独力でやって来るのを待っていたが、先に人類側が攻撃を仕掛けたことで、人類のコミュニケーション手段が戦闘であると誤認したタルシアンは次々と攻撃を仕掛けてくることになったとか。ま、ただの妄想ですが。民俗学者の柳田國男は、妖怪は神の零落したものと考えましたが、ケツァルトルもタルシアンの零落した姿だったりして。

タルシアンと美加子

 「ほしのこえ」で美加子が遭遇したタルシアンは、“ねえ、やっとここまで来たね!大人になるには痛みも必要だけど、でもあなたたちならずっとずっと、もっと先まできっと行ける。他の銀河へも、ほかの宇宙だって”“ね? だからついてきてね。託したいのよ、あなたたちに”と語りかけてきました。あれが美加子が見た幻影でなかったとしたら、タルシアンは人類の進化を促す存在だとも考えられます。タルシアンの一部にそれを是としないグループがいて、人々の一群を率いて地下世界に去ったという妄想も出来ますね。
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天気の子:新海誠の名声を確立した作品

寒波襲来

 底は打ったようなことも言われていますが、寒さが続いています。平日は会社に行くから別段なんですが、休みの日の日中はエアコンを入れようか迷います。電力不足という話は聞かれなくなりましたが、みだりに使うと光熱費で家計が傾いてしまいます。電気料金値上げという話もあるし、オール電化にした人なんか戦々恐々かも知れませんね。厚手の部屋着と着る毛布で凌いでいますが、手先が冷たい(涙)。

天気の子

 本日は正月休みに視聴した新海誠作品「天気の子」の感想です。2016年に「君の名は。」が大ヒットして国民的アニメ監督の地位に昇った新海誠が、「一発屋」で終わるかポスト宮崎駿となるかの正念場ともいえるメジャー第二弾(通算7作目)作品が本作といえるでしょう。「君の名は。」公開の3年後の2019年7月19日公開。国内興業収入250億円超え、全世界で410億円を超えた怪物である「君の名は。」には及びませんでしたが、国内興業収入は140億円超え、全世界で250億円を超えており、第43回日本アカデミー賞では最優秀アニメーション作品賞を受賞するなど、新海誠の名声を完全に確立させました。

天気の子その2

 2021年6月という、公開時期より2年後が舞台となっています。「君の名は。」におけるティアマト彗星の破片が糸守町に落下したのが2013年で、ラストシーンで瀧と三葉が再会したのが2022年春。なので、瀧と三葉が再会する前の話ということになります。なぜ前作の時期を気にするのかというと、「君の名は。」の登場人物が登場するからです。「君の名は。」にもその前作「言の葉の庭」のヒロイン雪野百香里が登場しましたが、今回は更に大量出演。

帆高

 伊豆諸島の神津島から、フェリーに乗って東京にやってきた森嶋帆高。高校生が衝動的に家出してきたようで、すぐに生活に困窮し出しますが、フェリーで出会った怪しいライター須賀を頼ったところ、零細編集プロダクションで住み込みで働けることに。食事付きではあるものの、月給5千円という超ブラック職場ですが、他にあてもないので仕方ありません。

ブラック帆高
二人をあしらう須賀

 須賀は主にオカルト系雑誌向けに胡散臭い記事を書いてますが、集めた都市伝説の中に「100%の晴れ女」というものが。その年、東京を含めた関東地方が異常な長雨が続いており、エンドレス梅雨状態でしたが、帆高は偶然「100%の晴れ女」天野陽菜と出会うことに。

晴れを見つめる陽菜

 陽菜も小学生の弟・凪と二人暮らしでバイトを首になって生活に困っているということで、晴れ女の能力で商売をすることを提案。何しろ陽菜が祈ると一時的とはいえ本当に晴れるので、順調に仕事を増やして行きますが、花火大会を晴れにする姿がテレビで報じられたことから依頼が殺到し、休業することに。

逃避行

 実は陽菜、帆高には18歳の年上と偽っていましたが、実のところはまだ中学生でした。また帆高も家出により捜索願が出ていました。つまり二人とも、警察なり児童相談所なりが介入する余地のある子供であり、しかも帆高は陽菜を助けるためとはいえ、拾った拳銃を発砲するところが防犯カメラに映っていたのでお尋ね者度はさらに上。警察が来たことで須賀から編集プロダクションを追われた帆高は、陽菜達姉弟と逃避行することに。

廃ビルに光が
廃ビルの神社
巫女になる

 陽菜が「100%の晴れ女」になったのは、母の死の間際、そこだけ陽が射していた代々木の廃ビル(モデルは代々木会館)屋上の神社を訪ねたことが原因のようです。

占いオババ
気象神社の神主

 ただし祈りの代償として身体が徐々に透明化するという現象に見舞われていました。須賀達はオカルト関係の取材で気象神社を訪れた際、人柱として犠牲になるという「天気の巫女」伝承を聞かされていました。また別途取材した「占いおババ」からも、「天の気のバランスが崩れると晴れ女が生まれやすい」「天候系の力を使いすぎると神隠しに会う」などの話を聞いていましたが、なにしろ怪しさ大爆発なキャラだったのでほぼ聞き流していました。

透ける陽菜
雷撃

 しかしそれらの伝承は真実だったらしく、陽菜はの身体は薄く透明になっていき、遂に消失してしまいました。警察に捕まりそうになった帆高を助けるために、付近の車両に落雷させるという荒技を使ったことも遠因でしょう。雷撃(バルヴォルト)はわずかな高位魔法使いにしか唱えられない呪文なんだぞ(バスタード違う)。

空の上の陽菜

 東京は夏なのに雪が降るという状況でしたが、陽菜の消失により「72日ぶりの快晴」となりました。帆高は警察に逮捕され、凪は児童相談所に送られ、世間一般からすると一件落着というところですが、二人はそれぞれ脱走。陽菜を救うために例の代々木の廃ビルに向かいます。行けばどうなるか全然わかりもしないのに、なぜかあらゆる犠牲を払って代々木に向かう帆高。そしてそれを支援してしまう関係者達。

拳銃が落ちてる東京
拳銃発射

 なんとか神社に辿り着いた帆高は、突如上空にワープ。積乱雲の上に囚われていた陽菜と再開し、救出に成功すると二人は神社に倒れていました。陽菜救出の代償か、再び降り出した雨はその後止むことはなく、東京の下町エリアは水没することに。2024年の春、帆高は大学進学のため再び東京を訪れ、陽菜と再会することになります。

必要な時に拳銃

 本作の主人公帆高は瀧に比べると短絡的というか衝動的というか。いきなり家出して伝手もなく上京したり、落ちていたピストルを撃ったり、警察署から脱走したり。正直3年足らずの保護観察処分で済んでいるのが信じられません。

ねじりん棒
パラシュート部隊

 やはりここは少年鑑別所に送られて「ねじりん棒」と「パラシュート部隊」という新入りリンチを受けた後、さらに野菊島の特等少年院に送られて欲しい…ってそれじゃ「あしたのジョー」になっちゃうけど。

包帯真島

 なお帆高に必要な時に必ずピストルが落ちているというのもご都合主義過ぎる気がしましたが、「リコリス・リコイル」に出てきたテロリスト真島(ブロッコリー頭)がばら撒いていたのかも知れません。帆高も「慌てることはねぇ。しっかりな」と言われたとか(言われてません)。

空から降りる陽菜

 図らずも「天気の巫女」になってしまった陽菜。代々の家系とか何かの代償として背負ったとかではなく、たまたま廃ビル屋上の神社を訪れたらなってしまったということで、魅入られた系とも言えるでしょうか。なので帆高が救い出すのも、その代わり東京が水浸しになるのもまあ仕方がないのかなとは思います。陽菜が救い出されなければ東京と関東地方は元の気象に戻ったままだったかも知れませんが、「私が人柱になります」とか立候補した訳ではないので。でも水害で酷い目に遭った人達の中には、この真相を知ったら「お前さえ余計なことをしなければ」と思う人も出てくるかも知れません。

晴れ間が

 「天気の子」はセカイ系だという説があります。セカイ系というのははっきりした定義があるわけではない漠然とした言葉なんですが、「美術手帳」によれば“主人公の少年と恋愛相手の小さく日常的な二者関係(「ぼく」と「きみ」)が、社会関係や国家関係のような中間領域を媒介することなく、「世界の危機」「世界の破滅」といった存在論的な大問題と直結するような物語構造を持つ。”とされ、代表作として高橋しんの「最終兵器彼女」や新海誠の商業作品第一作「ほしのこえ」などが挙げられています。

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 個人的には西谷史の「デジタル・デビル・ストーリー」なんかもセカイ系の代表例だと思います。ゲームとして有名な「女神転生」シリーズや「ペルソナ」シリーズなどの原典にあたる伝記SF小説ですが、主人公中島がヒロイン弓子に対し「五十億の人間より、ぼくは君一人を選ぶ!」と叫んでますから。

陽菜を助ける帆高 

 個人的には「天気の子」はセカイ系と言うにはちょっと微妙な気がします。確かに帆高は陽菜を助けるのにバーサーカーモードになっていますが(普段は温厚で律儀な性格ですが、陽菜が絡むと凶暴性を発揮する傾向があるような)、東京がどうなってもいいから陽菜を取り戻そうとか思って行動している訳ではありません。というか他の事態や状況は「そんなの関係ねえ!」で、只ひたすら陽菜を助け出したいと思っているだけで、そもそも廃ビル神社にいけば助けられるというのも単なる直感に過ぎなかった模様。とにかく東京とか関東と引き換えにしてでも陽菜を選ぶといった認識はなかったような。要するに家出と同じで短絡的なんですよね、帆高の行動は。ただ陽菜の救出に際してはそれが図星だったという。

瀧と帆高

 私は瀧は結構好きなんですが、帆高はそういう短絡性がどうにも好きになれないんですよね。この人はこの先も陽菜絡みでは凶暴性を発揮しそうな。言い寄ってきた男をぶん殴るとか。こいつと添い遂げるのはよくよく考えてからの方がいいぞと陽菜には忠告したいところですが、なにしろ命の恩人だから聞きやしないでしょうねえ(苦笑)。

観覧車

 ところで「君の名は。」キャラの出演についてですが、まず三葉の高校時代の同級生にしてティアマト彗星事件の際の共犯者(言い方悪いけど)である勅使河原克彦と名取早耶香が登場。お台場で観覧車デート中に、陽菜が天気を晴れにする様子を目撃し、「すーげぇ」と「わー、きれい」と感嘆の声を上げていました。「君の名は。」の方ではその後の2021年12月に東京で近々結婚するという話をしていたので、郷里を離れていた模様。いいのか勅使河原建設のことは。

瀧

 そして瀧。祖母の冨美がお盆に際して「晴れ女」サービスを利用した際に帆高・陽菜と出会いました。なんかすっかり落ち着いた感じになってましたが、まだ大学生のはず。就活で血眼になっていてもおかしくない時期ですが…あの事件で肝が据わったのでしょうか。帆高に陽菜への誕生日プレゼントを提案していました。

三葉

 その提案に乗った帆高が訪れたジュエリーショップの女性販売員が三葉。瀧よりも先に出会っていました。一生懸命安い指輪を選んでいた帆高に、それだけ一生懸命選んでくれたのならきっと喜ぶと励ましていました。「君の名は。」ではわからなかった三葉の職業がここで判明。

JK四葉
巫女の口噛み酒

 妹の四葉も登場。陽菜消失後、東京に晴天が戻ったシーンで、学校のベランダから級友2人と空を見上げていました。当時は小学生だった四葉も8年経って高校3年生に。昔三葉に提案していた“現役女子高生仕込み 巫女の口噛み酒”を自ら作れるチャンスだぞ(笑)。

アダルト商品 

 なお余談ながら某アマゾンではこんな商品が販売されていました。18禁のアダルト商品のようですが、いいのかこれ?“巫女の唾液の匂いと粘土を再現! 唾液と糖が混ざりあったような甘い香り。天然潤い成分配合、安心の日本製。容量120ml”だそうですが、“粘土”は多分“粘度”の誤字でしょう。

ジゴロの凪

 あとおかしかったのは、小学生にしてモテモテのホスト体質・凪の女性関係(笑)。元カノがアヤネ(CV佐倉綾音)で、今カノがカナ(CV花澤香菜)。豪華やのう。ユキちゃん先生、今回は出てこないと思ったら今度は小学生に転生してたのか。新海誠、花澤さんをかなり気に入ってますね。

アヤネ
カナ

 記帳時にアヤネは「花澤綾音」と記名していたので、ということはカナは佐倉香菜なのかと思いきや、小説版によると先にカナの方が「佐倉カナ」という偽名を使ったため、仕返しの意味でカナの名字である「花澤」を使用したのであって、本名は佐倉綾音だそうです。二人ともほぼ本名で登場かい。

佐々木巡査

 なお「水星の魔女」の主人公スレッタ役の市ノ瀬加那も凪を監視する佐々木巡査役で登場。しかしアヤネとカナの連係プレーに騙され、みすみす凪の逃亡を許すことに。

ダメでしょ
ミオリネさん

 良かったなガンダムエアリアルがなくて。もしあったら「ダメでしょ!」で凪がトマトになるところだった。そしてミオリネさんになっちゃうアヤネとカナ。

再会シーン

 ということで本筋よりもどうでもいいことの方が気になってしまう質なので余計なことをつらつら書き綴ってしまいました。ところでラストシーン、帆高と陽菜が再会する場面で、つかの間空が晴れ、帆高の視線の先には祈る陽菜がいましたが、お前あんなことがあってまだ祈ってんのかい。いや、この晴れ間が祈りのせいかは知りませんが。

再会した二人

 二人して「また『晴れ女』サービスで一儲けしようよ」「そうだね、もし消失しても代々木の廃ビルから助けにいけばいいし」とか言い合ってるんじゃないだろうな。それにしても謎なのはあの廃ビル神社ですよ。うち捨てられて誰にも顧みられていない神社でもおかしくないのですが、ちゃんとお供えとかされてるんですよね。何者かがちゃんと祀っていたようですが、帆高が非常階段とか壊してしまってからはどうなったのか。

二人の帰還

 あと、もし帆高が助けに行かなかった場合、陽菜は雲の上にずっといたのでしょうか?それとも何か龍神とかそういった類いの存在が出てきて陽菜を食べちゃうとか嫁にするとかしたのでしょうか。後者の場合、せっかくの生贄をかっさらった帆高に恨み骨髄でもおかしくないので、上京してきたのを契機に次々と帆高の周囲に怪異が巻き起こる心霊ホラー展開になったりして。「ああ!窓に!窓に!」なクトゥルフ的展開もいいぞ!

窓に窓に

君の名は。:新海誠をメジャーに押し上げた傑作

大寒

 昨日は大寒で、まさに寒中真っ盛りな訳ですが、来週は“過去数年で類を見ない最大級の寒気”が日本を襲うようです。温暖な高松でも最低気温は氷点下以下最高気温も一桁前半台になるようです。寒いだけならともかく、大雪に見舞われる予報の地方は要警戒です。雪は降ってる時は綺麗だけどその後が問題なんですよね。アイスバーンの恐怖は2年の札幌生活で身に沁みました。

君の名は。

 さて本日は正月休みに見た新海誠監督の「君の名は。」の感想です。2016年公開で、新海誠6作目の劇場用アニメーション映画です。当ブログも当初は「秒速5センチメートル」一辺倒だった時期があるように、私は長らく「秒速」を始めとするマイナー時代の新海作品のファンだったのですが、メジャー化した新海作品は今回初めて見ました。もっと詳しく言うと1作目「ほしのこえ」、2作目「雲のむこう、約束の場所」、3作目「秒速5センチメートル」、5作目「言の葉の庭」を見ていて、あまり評判が良くなかった4作目「星を追う子ども」は見ていませんでした。この休みには7作目「天気の子」と共に「星を追う子ども」も見ましたので、後日感想を綴りたいと思います。

瀧版

 さて以前から知る人ぞ知るというマイナー界の巨匠だった新海誠ですが、「君の名は。」以降は一気にメジャーなアニメ監督になりました。今やレジェンド級の宮崎駿に続く存在となったと言えるでしょう。二人の間には庵野秀明という人もいるのですが、この人は実写映画もヒットさせてるのでアニメ監督の枠でくくりきれないところがあります。メジャー界ではもっと早くから期待されていた細田守がもう一つ伸び悩む中、後進の新海誠が軽やかに差し切ったという感じでしょうか(あくまで個人の感想です)。

三葉版

 どうしてこの作品を今まで見なかったのかと言うと、私の「秒速」好きを知る友人達から「見ない方がいいよ」と言われていたということもありますが、メインはあれです。マイナーなアイドルを応援していて、メジャーになれるといいねと本気で願っていたのに、いざブレイクしたら遠くに行ってしまったような寂しさを感じるというやつ。マイナーなままだったらお前の側にいるのかとツッコまれれば、別にそんなことはないんですが、あくまで心情的な問題ですね。

三葉と瀧

 しかし新海誠作品は本作以降も「天気の子」「すずめの戸締まり」と興行収入100億円以上のビッグヒットを続けており、もはやメジャーとしての地位は確立したと言って良いでしょう。全て見た上で「俺はマイナーな頃の新海作品が好きでね」とか言うのはマニアックでいいっちゃいいのですが、もはやメジャー作品を見もしないでマイナーの頃はなんて言うわけには行きません。ということで「君の名は。」を見たんですが、率直な感想を一言で言うと…「ええやん」(なぜに関西弁)でした。

転校生

 男女の高校生の心が入れ替わるという話は以前から知っていて、大林宣彦監督の有名な尾道三部作の第一弾「転校生」みたいだとは思っていたのですが、本作は①原因が不明、②継続的ではなく断続的な入れ替わり、③場所的にも時間的にも離れている二人だった、という点で「転校生」とは大きく異なっていました。

混乱する二人

 東京の男子高校生・立花瀧と飛騨地方の糸守町の女子高校生・宮水三葉。見ず知らずの二人の心がある朝いきなり入れ替わることから巻き起こるドタバタ劇。一度ならず繰り返し起きることから次第に互いの生活や境遇を知ることになり、興味を引き合います。

入れ替わって遊ぶ

 しかし唐突に入れ替わりは起きなくなり、瀧は飛騨を訪問することに。すると判明した衝撃の事実。糸守町は、3年前に彗星から分裂した核の破片の直撃を受けて消滅しており、三葉は家族、友人ら住民500人以上と共に死亡していたのでした。

三葉を知らない瀧
髪を切る三葉

 実は三葉も東京を訪問しており、瀧にも遭遇したのですが、それは中学生の瀧であり、当然三葉の事を知るよしもありませんでした。三葉はショックのまま帰郷し、髪を切っていましたが、それが祭りの前日でした。そして祭りの当日がまさに彗星の核が分裂し、“天墜ちる日”。

三葉の組紐
瀧の組紐
組紐が結ぶ縁

 縁もゆかりもないはずの二人でしたが、中学生の瀧は三葉が落とした組紐をミサンガのように手に巻いており、それは高校生になっても変わらなかったので、二人を繋ぐ縁としてはそれがあるのかなと思います。それと三葉が神社の娘で、巫女をしているということも要因でしょうか。

糸守町ラフスケッチ

 実は糸守町には1200年前にも隕石が落ちて大きな湖が出来ており、作中では明言されていませんが、おそらく今回と同じ彗星の核だったのではないかと思います。三葉が巫女を務める宮水神社は1200年前の事件に由来するらしいので、ある意味彗星を祀っていると言ってもいいのですが、伝承は風化していて人々からはほぼ忘れ去られています。

御神体
御神体アップ

 三葉は口噛み酒を宮水神社の御神体へ奉納しており、それは自分の半身と同じという話を記憶していた瀧は、3年前に奉納された三葉の口噛み酒を飲み、三年前の彗星落下当日の朝の三葉の身体に転移。そこから三葉と人々を救うための瀧の奮闘が始まります。

三葉死亡後の世界の糸守

 二人の間には東京と飛騨という距離の差があるだけでなく、3年というタイムラグまであります。さらに三葉には死すべき定めまで。深海作品の中でも最も厳しい壁を乗り越えて二人は再会することができるのか。

大人っぽい三葉

 詳しい話は見ていない人に悪いのでここから先は詳しく語りませんが、三葉は生き残ります。さすがそうでないとオカルト世界にずっぽりになってしまうし(それならそれでもいいのですが、メジャー化は厳しいかな)。しかし、その代償のように二人は共に相手のことを名前まで忘れてしまいます。ただ漠然と誰かを探しているという、切実な思いだけを残して。

遂に遭遇

 さあラスト付近になって急に「秒速」の気配が漂ってきます。あれから5年後(彗星衝突から8年後)、大学生となった瀧は就職活動真っ最中。三葉も上京していますが、互いに出くわすことはなく。

新宿と千駄ヶ谷

 そして春のある日(さあ来たぞ!)、並走する電車の車窓からお互いを見つけた2人。それぞれ次の駅で下車しますが、瀧が降りたのは新宿駅で、三葉が降りたのは千駄ヶ谷駅。直線距離なら1キロ程度ですが、そこは大東京なので近くて遠い。

すれ違う二人

 ようやく住宅地の神社の階段で再会した二人。しかし二人とも相手の記憶がありません。言葉もなくすれ違う二人。私はここで深海誠は本当はこのままバッドエンドにしたかったんじゃないかと邪推してしまいました。そのまま離れて振り向く瀧。しかし三葉の姿はもうなかった、なんて。

貴樹と明里

 この場面、どうしても「秒速」のこのシーンを彷彿とさせます。新海誠は絶対狙っていると思います。昔からのファンに向けて「ほらほら、ああなっちゃいそうだよ」と煽ってたりして。

プリキュアがんばれー

 実は劇場版プリキュアみたいに上映館でミラクルライトを配ってて、この場面でオールドファン達が「瀧がんばれー」とか叫んで盛大に振ってたとか。

三葉と瀧その2

 しかし、プロデューサーから「メジャーになりたかったら絶対ハッピーエンドな」と釘を刺されていたのか(私の邪推)、深海誠がメジャーと寝たのか(私の妄想)、瀧と三葉は同時に振り向き、涙を流しながら互いに尋ねるのです。「君の名は?」と。「秒速」の呪縛が解けた瞬間。個人的には「雪の一夜」ぐらいでは世界線は超えられなかったが、本作では身体入れ替わりや変電所爆破事件まであって、ようやく世界線を超えられたのではないかと。

君の名は?

 三葉と瀧は互いに同学年と思っていましたが、実際には三年のタイムラグがありました。つまり三葉は瀧より3歳年上。今時3歳年上の姉さん女房なんて珍しくもないかもですが、三葉はよく一人でいたなあ。ラストシーンで三葉の左手薬指に指輪が光っていたなんてことになるとエラいことになるんですが、やはり二人の体験は未曾有なもので、余人の立ち入る余地はなかったのか。

STEINS;GATE
世界線ゲージ

 なにしろ三葉の死すべき運命を変えていますからね。「STEINS;GATE」で言えば世界線を変えるほどのビッグイベントを起こさなければ同じ結果に収束されてしまうのですが、今回二人はそれを成し遂げたということに。三葉のパパンが町長をしていたという事実が大きいですが。

宮水_二葉

 このパパン、当初はまるで悪人のように描かれていますが、宮水神社の巫女だった二葉(三葉と妹の四葉のママンでCV大原さやかというのが素敵)と出会って婿入りして神職になったほどの人なので、別に悪人でもなんでもありません。二葉が若くして亡くなったことで信仰を失ったという感じでしょうか。三葉は祖母で神社の跡取りである一葉の影響でパパンに良い感情を持っていませんでしたが、最愛の人をどうか救って下さいと心から願っても無駄だったのであれば信仰から離れたとしても仕方ないかなあと思います。

パパン町長

 その後やさぐれて悪の道に堕ちるというならともかく、町長となっているのだから、信仰の道から俗世に戻っても自分なりに世のため人のために尽くしていると言えるでしょう。もちろん政治の世界だから反対派もいるし、綺麗事だけではやっていけない部分もあるでしょうが。

邪龍ティアマト

 それにしても遙かに時間を超えて同じ場所に落下してくる彗星が恐怖であることよ。名前はティアマト。実在する彗星の名前をみるに、こんな物騒な名前を付けた例を私は知りません。女神転生シリーズなら高レベルの最上位邪龍(以前は妖獣だったり怪獣だったりしたこともありますが、やはり最上位でした)、FGOなら人類悪のビーストⅡですよ。

人類悪ティアマト

 ティアマトはメソポタミア神話における創世の女神で、ギリシャ神話のガイア、中国神話の盤古のような存在でしょうか。子供である神々を愛していましたが、神々は生みの母にまで刃を向けたので対決することに。激しい戦いの後、神々はティアマトの死体を二つに裂いて天と地を造り、これを人界創世の儀式としたそうです。

彗星落下

 実は1200年前に堕ちたティアマト彗星の分裂した核(の一部)が宮水神社のご神体になっていて、今回の二度目の核の分裂・落下もそれに惹かれたものではないかと妄想したりして。1200年周期で核の一部が落下してきて、遙かな未来に全ての核が糸守の地に揃い、何かが目覚める…!なんて。

怪彗星ツイフォン

 「ウルトラマン」第25話「怪彗星ツイフォン」に登場する彗星ツイフォンは強力な宇宙線を放っており、地球に接近した際には水爆を爆発させる可能性があるという物騒なものでした。幸い地球に衝突することはありませんでしたが…

彗星怪獣ドラコ

 代わりというわけではないでしょうが、ツイフォンからは彗星怪獣ドラコが来襲。地球の怪獣である冷凍怪獣ギガスとどくろ怪獣レッドキングと戦いました。ギガス戦は優勢だったものの、「ウルトラマン」に登場する地球怪獣の代表格であるレッドキングには敵わず、倒されてしまいました。

彗星戦神ツイフォン

 なおツイフォン彗星については、劇中岩本博士が3026年に再び地球に接近し、その際は地球と衝突する可能性が極めて高い述べていました。これに基づいて「ウルトラマン超闘士激伝(OVA版)」にてその正体(彗星戦神ツイフォン)を表すことに。ドラコはその眷属に過ぎなかったのです。このノリで行けば、ティアマト彗星の正体も実は何らかの生物だったりして。そして落下しているのは彗星の核ではなく卵のようなものだとか。

三葉の口噛み酒

 三葉と四葉が神事として行っていて口噛み酒、そういうものがあるという話は知っていましたが、実際劇中で見たのは今回が初。ですが、似たものはずいぶん昔に見たことがあります。「はじめ人間ギャートルズ」で。主人公ゴンの父ちゃんの好物、猿酒です。

ギャートルズ
猿酒

 猿酒はサルに果実を食わせて吐き戻させる作り方のため、口噛み酒に近い酒だと思われます。個人的にはどちらも敬遠したいけど、どうしても飲めと言われたら美人の口噛み酒の方がいいでしょうかね。猿のはさすがに…。かつてラオス南部からカンボジア東部に位置した真臘という国では、女性が醸すことから「美人酒」と呼ばれていたとか。

葡萄踏み

 口噛み酒とは違いますが、ワインを醸造する一過程で葡萄の実を潰すというのがありますね。現代では機械で圧搾していますが、昔は大きな桶に入れた葡萄の実を素足で踏んで潰していました。きちんと潰れさえすれば男が踏もうが女が踏もうが関係ないようなものですが、絵面的には若い女性が踏んでいる方がいいですね。民族印象とか着ているとさらに良し。

ワインのラベル
葡萄踏みイレィナ

 「魔女の旅々」では“絶世の美少女”(自称)イレィナが葡萄踏みするエピソードがありました。ワインのラベルに葡萄踏みする女性を使ったら売れ行きが変わったとか。まったく男ってヤツは…(笑)。しかし、「美少女の踏んだのとおっさんが踏んだのがありますが、どっちにしますか?」と言われたらそりゃあ、ね。So it goes.

売れるか?

 作中、妹の四葉が生写真付きでJK仕込み口噛み酒を売るという提案をしていましたが、酒税法云々と言う話は抜きにしても売れるかなあ。あれか、写真目当てに買って酒は捨てるというヤツ(笑)。

四葉の口噛み酒

 その筋の方々向けに四葉が作ったロリ仕込み口噛み酒も一緒に売るといいぞ。私はどっちもいらないけど。その点、猿が醸した酒でも美味けりゃいいと達観してがぶ飲みしているゴンの父ちゃんは大物なのかも知れないですね。

ユキちゃん先生

 なお、三葉が通う高校での古文の授業のシーンで、ユキちゃん先生が「かたわれ時」について説明しています。これは終盤の重要なキーワードなのですが、この先生、明らかに前作「言の葉の庭」のヒロイン、雪野百香里ですよね。CVも花澤さんだし。あなたは確かあの後四国の高校に転任したはずでは。なにゆえ飛騨に?
仮説①世界線が違うのでこちらの世界では四国ではなく飛騨に転任した
仮説②四国から飛騨に再転任した
仮説③最初が飛騨で、ティアマト彗星のせいで東京に転任して「言の葉の庭」の後、四国に転任した

ユキちゃん先生その2

 「言の葉の庭」は具体的年代が明示されていないので、仮説③もありかと思います。なんかちょっと若く見えるし。仮説②の場合、四国でも妙な事件に巻き込まれてた、なんてことがなければいいですが。事件後、ユキちゃん先生も当然助かってますよね。というか、瀧と三葉の活躍がなかった場合、三年前の死亡者リストに載ってたりして。ともあれ、伊藤宗一郎みたいな変な同僚にはもう引っかからないでね(私は事件の黒幕だと今でも確信しています)。

小説君の名は。

 新海誠は例によって小説版を書いていますが、私は読んでいないので、小説を読むといろいろ判明するのかも知れませんね。とりあえず「秒速」感を色濃く出しながら最後はハッピーエンドにした本作、「秒速病」患者には良い薬だったのではないでしょうか。

シン・ウルトラマン(その2):個性的な宇宙人と最終兵器ゼットン

冬の雨

 クリスマス前の寒さが嘘のように最近は暖かく、コートなしでも平気なほど。今日なんかは春が来そうな気配すらします。さすがにまだ春にならなくてもいいのですが、この後寒さがぶり返したら辛くなりますね。布団が干せないから休みの日の雨はヤメれと言いたいのですが、空気が乾燥していたからありがたいと言えばありがたいのでちょっと複雑。

シン・ウルトラマン映画

 さて年末に見た「シン・ウルトラマン」の感想二回目です。かつての怪獣好きとしてはどうしてもオリジナルとの比較などで話が長くなってしまいますが、これで終わりにしましょう。かのマリーアントワネットが「怪獣がいなければ宇宙人と戦えばいいじゃない」言ったように(言ってません)、後半は宇宙人の話です。毎回のように地球侵略を目論む宇宙人が登場した「ウルトラセブン」と違い、「ウルトラマン」は基本地球産の怪獣との戦いがメインでしたが、もちろん宇宙人も登場しました。「シン・ウルトラマン」ではザラブ星人とメフィラス星人が登場。

バルタン星人

 ただ、「ウルトラマン」シリーズの宇宙人と言えば真っ先に名前が出てくるであろうバルタン星人は登場しませんでした。庵野秀明は「諸般の事情から本作に登場させるのが非常に難しく、残念ながら最初から選択枠に入れることが出来ませんでした。」と語っているとのことで、尺の都合の他、バルタン星人の生みの親に当たる人への配慮とか諸説あるようです。

バルタン星人の円盤

 個人的にはウルトラマンが攻撃してきたバルタン星人を倒しただけでなく、ミクロ化したバルタン星人20億3,000万人が乗った宇宙船をスペシウム光線で爆破するという“大量虐殺”を行ってしまった“黒歴史”にも理由があるような。僅かに生き延びたバルタン星人はその後も繰り返し地球に襲来しますが、デザイン的に人気があるからというメタな理由はさておき、同胞を殺したウルトラマンやその一族への復讐に燃えてのことだったようも思われます。

エンダーのゲーム
バガーの女王

 そもそもバルタン星人は侵略目的で地球に来たのではなく、宇宙船の修理と補給のために偶然立ち寄っただけだったんですよね。その後地球が居住可能だとして移住を強行しようとしたのは罪といえば罪ですが、交渉役のバルタン星人の独断だったのか宇宙船内の指導者層の指示だったのかは不明です。地球人が持つ生命の概念を理解できなかったとか、昆虫(特に蝉)に似た顔からして、バルタン星人はオースン・スコット・カードの「エンダーのゲーム」に登場した昆虫型異星人バガーのように女王を中心とする群体が集団知性(Hive Mind)を持っている異星人だったのかも知れません。

宇宙忍者バルタン星人

 だから一見、ウルトラマンは20億3,000万人ものバルタン星人を殺戮したように思われますが、実は一個の群体生物を殺しただけなのかも知れません。群体であれば、戦ったバルタン星人の意思=群体の意思なので、群体を全滅させないと駆逐したことにならないし。そして案の定生き残りが出て復讐のために繰り返し襲来するようになったと。多分女王(の後継者)も取り逃がしたんでしょう。

三面怪人ダダ
ゼットン星人

 まあ上記は単なる私の個人的妄想なのですが、とにかく超有名なバルタン星人は登場しませんでした。「ウルトラマン」には他に三面怪人ダダ(なぜか“星人”が付かない)がいましたが、こいつは弱かったので登場させる必要もありませんでした。後はゼットンを操るケムール人に似たゼットン星人がいましたが、ウルトラマンと戦っていないのと、後述の理由で登場するとはありませんでした。

ミラレコならぬザラブです
ミラレコ

 で、登場したザラブ星人ですが、「シン・ウルトラマン」では「外星人第2号ザラブ」として登場します。ちなみに外星人第1号はウルトラマンです。やたらにイケボで、「こう見えてドライブレコーダーです」とか言い出しそうですが、それもそのはずでCVはミラレコと同じ津田健次郎。

ザラブ星人

 高度な科学力を見せつけて日本との友好条約締結を迫ってきますが、その真意は国家同士を争わせて人類を殲滅させるというもの。さらに変身前のウルトラマン=神永を拉致監禁し、ウルトラマンに化けて破壊行為を行ってウルトラマンの抹殺を提案します。

オリジナルザラブ星人

 「ウルトラマン」では18話「遊星から来た兄弟」に登場。二つ名は「凶悪宇宙人」。ザラブという名前は“ブラザー(brother)”を逆に読んだというものです。やはり一見友好的な素振りで登場しますが、その実地球を滅ぼす事を目的としており、にせウルトラマンに化けて暴れるのも一緒。

にせウルトラマン

 にせウルトラマンは目が赤みを帯びて吊り上がっており、単に外見を真似ただけなので光線技が出せず、力も本物には及ばなかったため、本物登場で逃亡を図りますが、スペシウム光線を撃ち込まれて変身が解け、ザラブ星人としても格闘の末にスペシウム光線で倒されてしまいます。

令和のにせウルトラマン

 外星人第2号ザラブが化けたにせウルトラマンは光学偽装でしたが、なぜか眼の形状だけは六角形に変わっていました。ご自慢の科学力でそっくりに化けろよ(笑)。ただ、ザラブとしての戦闘力はオリジナルより高く、自身の光線でスペシウム光線を凌いだりと激しい空中戦を展開しました。

伝説のQBK

 最後はウルトラマンが不意に放った八つ裂き光輪(ウルトラスラッシュ)によって真っ二つにされてしまいました。後に「急に光輪が来たので」(QKK)と言い訳して宇宙人界隈で非難囂々だったとか(嘘)。でもオリジナルよりは強かった印象です。

ブリタイ
キュウべえ

 なお、ザラブ星人は他の星の文明や人々の命を滅ぼすことを目的として活動しており、地球以外にも工作員が送り込まれていると思われます。光の国とかメフィラス星といった明らかに自分より強そうな星にも行っている(そして返り討ちに遭う)のかは不明ですが、単なる侵略ではなく滅亡させるのが目的というのは非常にユニークです。思うに他星の文明を脅威に感じていたある異星人が作った攻撃用の人工生命なんではないかと。「マクロス」シリーズに登場する、「プロトカルチャー」が戦闘を行わせるべく遺伝子操作で造り出した戦闘用バイオノイド・ゼントラーディ人のような。或いは目的は異なりますが、「魔法少女まどか☆マギカ」のキュゥべえみたいな。

山本メフィラス

 そしてメフィラス星人。「シン・ウルトラマン」では外星人第1号であるウルトラマンよりも先に地球に降り立っていたと言う、自称外星人第0号。正体は山本耕史(笑)。いや好演でしたよ山本さん。さすが堀北真希の旦那さんだ。

メフィラス星人

 彼によれば、それまでに登場した禍威獣は地球に放置されていた生体兵器を目覚めさせたもので、ザラブも現地調達したとか言っているので、近傍を通りかかったザラブをさりげなく地球に誘導したのかも。

巨大浅見弘子
巨大フジ隊員

 禍特対の浅見弘子を巨大化して操ったのは「ウルトラマン」でフジ隊員を巨大化させて暴れさせたエピソードのオマージュですね。

メフィラスバルタン
メフィラスザラブ
メフィラスケムール

 「ウルトラマン」ではさらに巨大バルタン星人、ザラブ星人、ケムール人を出現させ、自分の配下であり、「その気になれば地球征服など簡単」と力を誇示していました。ただ、彼らは出現しただけで暴れたりせずにすぐ消えているので、光学偽装などによる虚像だったのではないかという気もします。そもそもケムール人の登場は「ウルトラQ」であり、「ウルトラマン」には登場していないという。

メフィラス星人との対話
居酒屋で一杯

 人間体のままで神永とブランコを漕いで話したり、居酒屋で飲食したりとかなり平和的。ただし割り勘で奢ってくれない(笑)。交際費で落とせよそれくらい。実はメフィラス星の財政事情は厳しいのかも知れません。

メフィラスの名刺

 人類は巨大化させると強力な兵器とすることが可能で、さらに高い増殖率があるので有望な資源であるとして独占管理を狙っています。しかし人類は過去にウルトラマンの母星である光の星が作った生物兵器(その後政策が変わったのか放置状態)らしいので、光の星が黙っていない。なのでウルトラマンを抱きこもうとしましたが失敗。

オリジナルメフィラス星人

 戦闘モードになったウルトラマンにやむを得ず巨大化して対峙するメフィラス星人。オリジナルのメフィラス星人は一見紳士的ながら子供を相手に顔真っ赤状態で乱暴になるという粗暴な面もありました。CV加藤精三(「巨人の星」の星一徹役で有名)だったので、卓袱台ひっくり返しを連想してしまいしたが、山本メフィラスは最後の最後まで紳士面のままでした。

メフィラス全身図

 オリジナルと比べると無駄のないすっきりしたデザインで、格闘家の体型を意識したもののようです。やたら語彙が豊富で、諺や四字熟語などを引用し、「私の好きな言葉です」とか「私の苦手な言葉です」と付け加える、いわゆる“メフィラス構文”は一時期流行しました。

メフィラス対ウルトラマン

 神永との融合により戦闘力が低下し、活動時間に制限があるとはいえ、ウルトラマンと互角以上に渡り合い、八つ裂き光輪を易々と弾き、スペシウム光線もグリップビームで押し返し、むしろ勝利目前と言った感じでしたが…

ゾーフィ

 ウルトラマンの背後にもう一人のウルトラマン・ゾーフィを見たメフィラス星人は急に戦闘を止めます。光の星の本格介入を知り、地球の命運は尽きたと悟ったメフィラスはあっさり撤退。

ゼットンの卵
最終兵器ゼットン

 そしてゾーフィはウルトラマン(リピアー)が神永と一体化するという禁忌を破ったことで人類が生物兵器に転用できることが宇宙中に知れ渡ったとし、人類の殲滅を決定。光の星の天体制圧用最終兵器ゼットンを出現させます。

ゾフィー兄さん

 「ウルトラマン」ではゼットンに敗れたウルトラマンの下に救援に駆けつけた光の国の宇宙警備隊長でしたが、本作ではゼットンの使用者に。しかしこれも元ネタがあります。ゼットンを操るゼットン星人は、元々名称不詳で、円谷プロが放送直後に配布した文字資料ではゾフィーを「ゼットンを操る宇宙人」と記載していたため、60年代の書籍・雑誌ではゼットン星人と混同され、「謎の宇宙人ゾーフィ」と表記されり、「ゼットンを操っている悪の宇宙人」と記述されていたのでした。いや本編見ろよ編集者(笑)。

ヤバい記述

 ゾフィーは「ウルトラマンA」以降しばしば登場するようになったので、今ではウルトラ兄弟の長兄として認知されていますが、かつてはゼットン星人と混同されていたという黒歴史が。しかしそこを上手く使ったのが本作と言えるでしょう。

ゼットン

 ということでゼットンは光の星の最終兵器として登場。もはや禍威獣のスケールを超えた生物兵器で、有名な1兆度の熱球を発射します。その熱球らしきものは「ウルトラマン」でも発射していますが、科特隊本部ビルに穴を開ける程度の威力でした。空想科学うんたらの人がツッコんだとおり、そんなもの発射したら地球消滅では済まない威力ですが、本作では太陽系ごと滅却するとしています。

ゼットンファイナルビーム

 ま、オリジナルのゼットンの場合、一兆度の熱球というのは白髪三千丈的表現だったのかも知れません。ゼットン星人は中華系異星人だったとか。そもそもウルトラマンを倒すのには使われていません。一兆度かどうは知りませんが、白い光弾はかわされました。ゼットンはバリヤー(ゼットンシャッター)で八つ裂き光輪を弾き、スペシウム光線も受け止め、波状光線を撃ち返してウルトラマンを倒しました。空想科学うんたらの人によれば一兆度の熱球を放てばゼットンも消滅するそうなので、ゼットンに本当にその武器があったとしても滅多には使えないかも。勝ち目のない相手にだけ使う相打ち覚悟の最後の武器なのかも知れませんね。

ゼットンシャッター

 個人的にはゼットンの二つ名「宇宙恐竜」にシビれました。他の怪獣の二つ名は大体「○○怪獣」なんですが、ただ一人「恐竜」。まさしく“恐るべき竜”という意味のネーミングなんでしょう。モチーフはカミキリムシ(ゴマダラカミキリ)と「顔のない甲冑」だそうです。

ゼットン対ウルトラマン

 本作のゼットンは強力なだけに展開に時間がかかり、展開途中にウルトラマンが攻撃を試みますが、電磁光波防壁(ゼットンシャッターだ)で攻撃を阻み、防衛システムがウルトラマンを撃墜していました。

ゼットンの防衛システム

 圧倒的なゼットンを前にウルトラマンと人類はどうなるのか?それはぜひ本編をご覧頂きたいと思います。全39話の「ウルトラマン」を2時間弱に圧縮した感のある本作ですが、まあよくここまで作り上げたなと感心しました。海外では「シン・ゴジラ」の方が評価が高いようですが、それは「ウルトラマン」を知らないからでしょう。「ウルトラマン」を見て知っている側からすると、よくぞここまでリブートしてくれたと思います。今度は是非「シン・ウルトラセブン」を。

シン・ウルトラマン(その1):怪獣ならぬ“禍威獣”総進撃

成人式といえば振袖

 三連休中日の日曜日というのは心に余裕があって実にいいですね。なんで三連休になっているのか全然考慮の埒外でした(笑)が、9日は成人の日だそうで。昨年、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられたところ、じゃあ18歳で晴れ着なのかと思いきや、高松では「二十歳のつどい」と称して従来通り20歳の人を対象にしている模様。まあ成人したといっても18歳では酒を飲めませんし、妥当な判断でしょうか。成人の日は9日だけど式典実施は8日。翌日のことを考えるとこれも無難なんですが、だったら成人の日は必ず日曜にぶつけて翌日は振休ということにしたらいいのでは?なんて無粋なツッコミをしたりして。

メフィラスさん何言っているんすか

 何はともあれ三連休、私の好きな言葉です。土日出勤、私の苦手な言葉です。などと山本耕史、いやメフィラス星人独特な言い回しを使ったことでおわかりのように、本日は年末に見た「シン・ウルトラマン」の感想を綴りたいと思います。

ウルトラシリーズいろいろ

 1966年から始まり、中断を挟みつつも以後50年以上にわたって継続している円谷プロダクション制作の「ウルトラシリーズ」。その嚆矢が第一作「ウルトラマン」(1966~67年)ですが、「シン・ウルトラマン」は「ウルトラマン」を現在の時代に置き換えた「リブート」映画だそうです。庵野秀明作品としては(今回は監督ではありませんが)、「シン・ゴジラ」「シン・エヴァンゲリオン」に続く「シン」シリーズということになるでしょうか。なかなか終わらせることができずにある意味宿痾のようになっていたエヴァンゲリオンを見事に終わらせた「シン」シリーズ、いいですね。

シン・ウルトラマン広告

 なぜか日本にだけ出現しだした巨大不明生物。「禍威獣(カイジュウ)」と名付けられたそれらに対処するために禍威獣特設対策室(略称:禍特対)が設立されます。しかしネロンガと命名された禍威獣第7号は手強く、従来の兵器では撃退困難と思われたところ、突如飛来した謎の巨人が退治しました。

シン・ウルトラマン

 そう、彼こそはウルトラン。ウルトラマンが飛来した際に子供を庇って死亡した禍特対の神永新二の自己犠牲に興味を覚えた彼は、神永と一体化し、禍特対の一員なり、禍威獣や外星人と戦うことになります。

スペシウム光線発射態勢
初登場時のウルトラマン

 ウルトラマン(本名はリピアー)は当初銀色の身体に銀色のラインで、おなじみスペシウム交戦も無茶苦茶な威力を発揮していましたが、神永と一体化した後はラインが赤くなって我々が知るウルトラマンの姿に近くなりました。この変化は、「地球人との融合に伴うスペシウムエネルギーの損耗によるもの」なんだそうです。スペシウムエネルギーはウルトラマンの活動エネルギーそのもので、スペシウム光線や飛行等にも応用されているそうで、要するに人間と一体化したことで相当弱体化してしまったようです。実際、スペシウム光線も最初のような高出力ではなくなりました。

カラータイマーなし

 ウルトラマンといえばつきもののカラータイマーはありません。これはウルトラマンを手掛けたデザイナーの成田亨のオリジナルデザインのとおりです。カラータイマーはウルトラマンが弱っていることを子供にもわかりやすくするために追加されたものですが、成田亨は大変嫌っていたそうで、本作ではCG技術も向上したので、エネルギーの損耗は体表のラインが赤から緑に変色し、活動限界に達すると消滅してしまうという形で表現されることになりました。

M87.png
M87.jpg

 ウルトラマンの故郷といえばM78星雲にある光の国ですが、本作ではM87にある光の星となっています。これは当初M87星雲としていたものが誤記されてしまったのが定着してしまったものだそうで、確かにM78星雲はオリオン座にある散光星雲として実在しますが、明るい以外にこれといった特徴のない星雲です。一方M87は巨大な楕円銀河で、中心に超大質量ブラックホールを持ち、そこから宇宙ジェットが延びていることが知られています。

M87のブラックホール

 2019年には国際協力プロジェクトでM87中心部にある超大質量ブラックホールの撮像が公開されるのなど、M87は天文学的にも極めて重要な天体なので、ウルトラマンの故郷とするにはこちらの方が適当でしょう。そのため米津玄師が歌う主題歌も「M八七」となっています。

M78星雲

 M78は地球から1600光年ほど離れた銀河系内の星雲なのに対し、M87は5500万光年も離れた大銀河で、おとめ座銀河団の中核です。さらに言えばおとめ座銀河団は、銀河系やアンドロメダ銀河なども含まれるおとめ座超銀河団の中核なので、要するにこの辺りの宇宙の中心的存在といっても良いかと。

メフィラス星人との対話

 後半のメフィラス星人の発言から示唆されるのは、ウルトラマンは人類の保護者であり監視者という立場で、人類というのは光の星が撒いた種による発展途上の未熟な生物兵器らしいです。人類の進化の先にウルトラマンがいて、基本的に人類とウルトラマンは同種なので、融合が可能らしいです。弱い禍威獣の出現は放置していましたが、人類では対処しきれない禍威獣の登場により、人類保護のために降臨してきた模様。

なんだってー

 禍威獣は太古の昔に地球に封印、あるいは遺棄された星間戦争用の生物兵器のようです。このあたり、クトゥルー神話的色彩も感じますね。「禍威獣とは旧支配者だったんだよ!」「な、なんだってー!!」みたいな。

暴れるネロンガ

 そして禍威獣1号ゴメスから同6号パゴスまでは、威力偵察や戦術分析(要するに囮)のために生み出された生物だったため、人類の科学力と兵器で討伐が可能だったのですが、禍威獣7号ネロンガや禍威獣8号ガボラは局地制圧用の次世代型で強力な攻撃・防御手段を持っており、人類では対処困難となっていました。

着ぐるみ使い回し

 ネロンガやガボラは頭部以外は禍威獣6号であるパゴスそっくりでしたが、これも禍威獣が一種の「工業製品」で、設計を使い回して規格化されていたからだという。実際「ウルトラマン」に登場する透明怪獣ネロンガの着ぐるみはウルトラQに登場したパゴスの着ぐるみを改造したもので、ウラン怪獣ガボラはさらにネロンガの着ぐるみを改造したものだったそうです。着ぐるみの製作は高価らしく、当時はこうしてやりくりしていたんですね。そもそもは「フランケンシュタイン対地底怪獣」に登場したバラゴンに始まり、パゴス→ネロンガ→ガボラ→マグマと使い回したという。コスパの高い着ぐるみかも知れませんが。

変身する神永

 冷徹に人類を監視し、援助するにしても必要最低限に留めていたウルトラマンは、子供を庇って死んだ神永の自己犠牲の精神に興味を抱き、光の星の掟を破って神永と融合してしまいます。その結果、当初朴念仁そのものだったウルトラマンは次第に人類を理解していくことに。しかし、光の星の掟を破った代償はあまりに大きなものでした…

ゴメス

 この先は次回に回すとして、登場した禍威獣についてひとくさり。人類が(というか自衛隊や米軍が)倒した禍威獣達は「ウルトラマン」の前番組である「ウルトラQ」に登場した怪獣達でした。禍威獣1号ゴメス(巨大不明生物ゴメス)は「ウルトラQ」第1話「ゴメスを倒せ!」に登場した古代怪獣。

ゴメスとリトラ

 トンネル工事で目覚めて暴れますが、同時期に目覚めた原始怪鳥リトラと戦って相打ちになります。ゴジラの着ぐるみを改造したそうで、その後再びゴジラに戻った後、今度はえりまき怪獣ジラースに改造されてウルトラマンと戦うという。

マンモスフラワー

 禍威獣2号(巨大不明生物第2号)マンモスフラワーは第4話「マンモスフラワー」に登場した吸血植物ジュラン。

ジュラン

 中生代ジュラ紀に生息していた植物ということからジュランという名前になったそうですが、本編ではマンモスフラワーとだけ呼称されました。「ウルトラQ」劇中でもマンモスフラワーとだけ呼ばれていたそうです。

ペギラ

 禍威獣3号(巨大不明生物3号)ペギラは第5話「ペギラが来た!」と第14話「東京氷河期」に登場した冷凍怪獣ペギラ。核実験の放射能の影響でペンギンが突然変異したとか、アザラシに近い海棲哺乳類の変異体ではないかといわれています。口からマイナス130度に達する冷凍光線を放射し、周囲に反重力現象まで引き起こし、更には空も飛べるという強敵ですが、南極大陸に生育する苔の成分から抽出した物質・ペギミンHが弱点と判明したことで撃退に成功しますが、「ウルトラQ」では死亡していません。「シン・ウルトラマン」では女性生物学者(おそらく禍特対の船縁由美)が弱点を発見して駆除に成功しています。

ペギラとチャンドラー

 ペギラの着ぐるみは「ウルトラマン」第8話「怪獣無法地帯」に登場する有翼海獣チャンドラーへ改造されましたが、ほぼ本人(笑)。冷凍光線が出せなくなった分、弱体化してたりして。ウルトラマンと戦うまでもなくレッドキングに負けて逃走しました。その後の消息は不明ですが、再度出現しても科特隊で対処可能だったと思われます。

ラルゲユウス

 禍威獣4号(飛翔禍威獣)ラルゲユウスは第12話「鳥を見た」に登場した古代怪鳥ラルゲユウス。第三氷河期(いつやねん)以前に棲息した鳥の祖先で、通常は文鳥に似た姿をしていますが、空腹になると巨大化して暴れます。

ウルトラQのラルゲユウス

 劇中では倒されることなく飛び去りましたが、「シン・ウルトラマン」でも取り逃がしたまま消息不明となっています。

カイゲル

 禍威獣5号(溶解禍威獣)カイゲルは第24話「ゴーガの像」に登場した貝獣ゴーガ。サザエのような貝殻とカタツムリのような体を持ち、目から溶解光線を出します。

ゴーガ

 自衛隊の一斉攻撃で倒されますが、「シン・ウルトラマン」でも初出動した禍特対と自衛隊の連携攻撃によって駆除されました。なぜゴーガの名前を使わなかったのかは不明です。

パゴス

 禍威獣6号(放射性物質捕食禍威獣)パゴスは第18話「虹の卵」に登場した地底怪獣パゴス。中生代の生物が、ウランをエネルギー源としたことで怪獣化したということで、ウランを常食にしています。高速で地中を掘り進み、金色の虹のように見える分子構造破壊光線を放射します。原子力発電所に迫りますが、ネオニュートロン液を搭載したミサイルを撃ち込まれ、全身の体細胞が風化して粉砕されました。

悪そうなパゴス

 「シン・ウルトラマン」では放射性物質を含んだ光線(「激ヤバ光線」)を放射し、放射性物質が撒き散らされた結果、広範囲に被害が及んだらしく、政府関係者の間では「パゴス事案」と呼ばれ、トラウマになるレベルの事件となったようです。カイゲル同様、禍特対と自衛隊の連携作戦で駆除しました。オリジナルとはかなりデザインが変わっていて、ネロンガやガボラのプロトタイプという位置づけになっています。

地底怪獣パゴス

 なおパゴスは「ウルトラマン」第9話「電光石火作戦」に登場予定でしたがガボラに変更されました。またウルトラセブンの3番目のカプセル怪獣として登場する予定もあったそうですが、実現しませんでした。パゴスはアギラより強そうですが、「ウルトラQ」時代とはいえ、地球で暴れた怪獣をウルトラセブンが使役するというはちょっとね(笑)。

ネロンガ-1

 禍威獣7号(透明禍威獣)ネロンガはウルトラマン第3話「科特隊出撃せよ」に登場した透明怪獣ネロンガ。普段は透明ですがエネルギー源である電気を充分に吸収すると姿を見せます。電撃が武器ですが人間にショックを与える程度の威力しかなく、ウルトラマンには全く効きませんでした。

ウルトラマン対ネロンガ

 「シン・ウルトラマン」では電気を求めて首都圏郊外に出現。電撃は大幅に強化されて誘導弾を全て撃ち落としたり周辺を壊滅させるなどしましたが、やはりウルトラマンには全く効かず、スペシウム光線で瞬殺されました。この時のウルトラマンのスペシウム光線は凄まじい威力で、射線上の山の斜面を抉り取り、大気をプラズマ化させるほどで、明らかにオーバーキル状態でした。その後はかなり威力が弱まりましたが、人間と一体化したせいなのか、加減を覚えたためなのか。

シン・ガボラ

 禍威獣8号(地底禍威獣)ガボラは第9話「電光石火作戦」に登場したウラン怪獣がボラ。首の周囲にある6枚の赤いヒレを閉じて頭部を防護すると共に、尖った頭部で地底を掘り進みます。口から青い放射能光線を吐き、ウランを1日に1万トン食べ、食べる際には周囲に放射能を放つという激ヤバ怪獣です。

オリジナルガボラ

  ウルトラマンは飛び蹴り→ヒレむしり→連続パンチ→首投げと肉弾戦のみで倒しましたが、爆発させて放射能が飛び散ることを懸念してか。

ドリルガボラ

 「シン・ウルトラマン」ではパゴスの同種とされ、首回りのヒレを閉じてドリルのように回転させることが出来るようになりました。また尻尾もドリル化。パゴスの発展強化型であることを印象づけています。米軍のB-2が放った大型地中貫通爆弾も全く効かなかったので、防御力はシン・ゴジラ以上ということになります。

パンチ一発

   しかし頭部への攻撃には弱く、ウルトラマンのパンチ一発で絶命しました。光線技で倒されなかったところは原典どおりということに。死体はウルトラマンが持ち去ったので、おそらく大気圏外で安全に処理したのでしょう。怪獣墓場へ…というのはさすがに「リブート」の趣旨から外れるのでしょうね。

シン・エヴァンゲリオン劇場版:||:「25年ぶりだね」「ああ、間違いない。エヴァだ」

副反応
 
 二回目のワクチン接種を終えました。これで全てが終わったわけではありませんが、対コロナには一区切り付いたような気がします。変異種とかブレイクスルー感染とか、まだまだ油断はなりませんが。二回目の方が副反応はきついと聞いていたので、翌日は休暇を取って万全の構えでしたが、一回目と大して変わりませんでした。副反応については個人差が大きいらしいので、「だから大丈夫」なんて他人には言えませんが、個人的には楽勝で助かりました。

正式タイトル

 本日は、その休暇中に見た「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」について紹介しましょう。なお、タイトルの末尾に演奏記号のリピート記号が付いていますが、面倒なのと正確に表記できないようなので以後略します。

シン・エヴァンゲリオン劇場版

 「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は、2021年3月8日公開で、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」4部作の最終作です。テレビアニメ版は1995年放映だったので、未完だった作品を25年かけて完結させたというところでしょうか。新劇場版シリーズだけでも、2007年公開の「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」から14年かかっているという。

序破急

 エヴァシリーズは全て見ているのですが、前作「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」が2012年公開だったので、8年以上も間が空いており、テレビ版だの旧劇場版だのの記憶がごっちゃになってしまって何がなんだかという感じです。新劇場版4部作は改めて見直した方がいいのかも知れません。

シン・エヴァンゲリオン劇場版その2

 「Q」開始の時点でシンジは14年眠って目覚めた訳ですが、その後の何がどうなったのかについて誰も教えてくれなかったのですが、ゲンドウや冬月のNERVとミサト達旧NERV主要メンバーによる反NERV武装組織WILLEが対立しており、結局レイやカヲルを利用したゲンドウに操られる形でNERVに戻り、「フォースインパクト」が引き起こされそうになりましたが、カヲルの死やマリとアスカの活躍によりシンジは救出されてました。しかし目前でのカヲル爆死のショックでシンジは放心状態…という感じで「Q」は終了していました。

Qからの続き

 本作はその直後から始まり、シンジは懐かしの鈴原トウジ、相田ケンスケ、洞木ヒカリら旧クラスメートと再会。もっとも彼らは14年歳を取っているのですっかり大人。シンジ、レイ、アスカが歳を取っていないのは、「エヴァの呪縛」のせいらしいです。アスカは精神的にはすっかり大人になっていますが、シンジは眠っていたので昔のまま。レイは「Q」から登場した、「序」「破」に登場したレイとは別個体なので、姿形はレイそのものでも記憶を継承していません。

農作業するそっくりさん 
そっくりさん

 アスカに言わせると「アヤナミタイプの初期ロット」だそうで、生き残りの暮らす村で過ごす間に人間らしさを得ていきますが、本来NERVでしか生きられないため、シンジに別れを告げて消滅してしまいます。廃人状態から徐々に回復していたシンジは、これを契機に再び戦う意志を固めていくことに。これまでのレイよりこっちの無垢で素直なレイの方が好きですね。

パリ市街戦
第3村

 作品の詳細を語るのはネタバレになるのでこれ以上は止めておきますが、序盤の派手なパリ市街戦後、急に牧歌的な村の生活の場面が続き、「新世界より」かよとか思ってしまいましたが、周囲の不穏さは一緒でもあれよりはかなりのどかでしたね。もうこの世界だけでもいいんじゃないかと思いましたが、やはりそれじゃあいかんですよね。

空中戦艦ヴンダー

 ミサト率いるWILLEは巨大空中戦艦ヴンダーの他、数十隻の艦隊と複数のエヴァを保有していますが、ほぼ全てNERVから強奪したり旧世界の遺産だったりするようです。旧NERVスタッフが揃うなど人的資源は十分としても、よくこんなの運営できるなあ。

ヴンダー級2隻

 もっと謎なのは現NERVで、人間がゲンドウと冬月しか見当たらない。なのに「ヴンダー」級巨大戦艦3隻を持ち、様々な形のエヴァを多数繰り出してきます。一体どうやって生産・建造・運営をしているんだろう。

あっさり退場するゼーレさんたち

 例の黒幕・ゼーレはゲンドウの指示で冬月がモノリスの電源を落としたことで死亡しているし。新作ではやたら弱いなゼーレ(笑)。

こうなりたかった

 ゲンドウのこれほどの行動の目的って、結局嫁(ユイ)ともう一度会いたいということに尽きるんでしょうか。それなら時間遡行じゃダメなのかとか思ってしまいますが、それだとエヴァの活躍する余地がないか。なおユイの姓はは旧作では碇(ゲンドウの旧姓が六分儀で、結婚時に碇姓に改姓)でしたが、本作では綾波だったということになっています。

いわゆる学園エヴァ

 テレビ版最終回でちらりと描かれた、いわゆる「学園エヴァ」展開ではユイが生きており、シンジと家族3人で暮らしていますが、あれこそゲンドウの理想の世界だったのではないかと。

冬月副司令

 最後の最後までゲンドウに付き合った冬月も旧作ではユイに好意(恋愛感情かどうかはわかりませんが)を抱いていたようですが、本作では教え子だったユイとゲンドウの願いを叶えることに付き合ったという感じになっています。それであそこまで行けるとは。

どれほどの速度で生きればまた君に会えるのか

 「秒速5センチメートル」のキャッチコピーの一つに「どれほどの速度で生きれば君にまた会えるのか」というのがありますが、これに例えれば「どれほどのインパクトを重ねれば君にまた会えるのか」といったところでしょうか。ゲンドウは明里を諦めなかった貴樹のなれの果てなのか。なんとユイは明里だったんだよ!!(な、なんだってー!!)

医者もどきトウジ
ヒカリとツバメ

 旧作との違いを言うと、トウジとヒカリが夫婦になっていること(旧作ではヒカリは最初からトウジに好意を持っていたが素直になれず喧嘩ばかりしており、トウジはその気持ちに気付いていなかった。良い感じになってきたところで、トウジがエヴァ3号機に乗って重傷を負う)

鈴原サクラ

 トウジの妹(サクラ)が元気に生きていること(使徒とエヴァの戦闘で怪我をし、容態はかなり悪かったようで、トウジは妹の治療を条件としてエヴァに乗った)

アスカとケンスケ

 ケンスケとアスカが良い感じなこと(旧作では全くそんな気配はなかった。そもそもアスカは加持一筋だったし)、

ミサトと加持の息子

 ミサトと加持の間に子供がいる(パパン似のナイスガイ)…などが挙げられるでしょうか。

洞木三姉妹 

 ヒカリにはコダマとノゾミという姉妹がいて、新幹線三姉妹でしたが、トウジとの間に生まれた娘の名はツバメ。九州新幹線ということで、相変わらず新幹線ネタを継続していた。それなら次女にはミズホとかカモメなんてどうでしょうか。JR東日本系の新幹線は女の子の名前にはふさわしくないのが多いですが、コマチなら。

NTRだ

 ゲーム版「エヴァンゲリオン」ではシンジがヒカリにキスをするというトンデモ展開がありましたっけ。トウジ的にNTRだNTR(笑)。

清川キャラ一覧

 “中の人達”も25年歳を取っているので、キャスティングを変えないでやるのならもうこの辺が限界だったと思います。特に冬月役の清川元夢は86才なので。きっと冬月は死亡後異世界転生してティッピーという名のうさぎになったんでしょう。先日、次元大介を最初から務めていた小林清志が勇退しましたが彼はなんと88才。私なんかはその年まで元気に生きられる自信がありませんよ。

走り出す二人
旧劇場版エンド

 あとラストシーンなんですが、あれはシンジ的に「マリエンド」ってことなんですかね。まあレイはなあ…いくら魂は違うとはいえ、体はユイママンのクローンなので気まずいような。旧劇場版だとアスカエンドだったけど、あれは違和感しかなかったので、マリエンドは悪くないのですが、古参ファンにはぽっと出の新キャラがかっさらっていったという感じがする人もいるかも。

マリ

 なおこのマリ(真希波・マリ・イラストリアス)、登場時から妙に古い歌を口ずさんでいたりしていますたが、そもそもはゲンドウやマリと共に冬月の教え子だったようです。若いままの姿なのは、「エヴァの呪縛」のせいなのか。

幼児時代のシンジ

 生まれた頃のシンジを知っているマリ、ショタコンの極みのような感じがしないでもないですが…。ま、本人がそれで良ければいいですがね。なお、大人シンジのCVは神木隆之介のようです。この人、やたらアニメ映画に起用されますね。別にいいんですが、いわゆる「100ワニ」は黒歴史か。

VOYAGER.jpg

 終盤、ユーミンの名曲「VOYAGER~日付のない墓標」が使われていたのはなんか嬉しかったですね。歌っていたのは林原めぐみでしたが、1984年の作品ですよ。懐かしいことこの上ない。小松左京原作の映画「さよならジュピター」の主題歌でした。他作品の主題歌を使うあたり、なんか「One more time,One more chance」みたいですね(なんとしても「秒速」にこじつけようとする悪足掻き)。歌は好きでしたが、実は「さよならジュピター」は映画どころか原作も読んでいないという。

アルバムのVOYAGER

 余談ですが、ユーミンには1983年にリリースした「VOYAGER」というアルバムもありますが、なぜか「VOYAGER〜日付のない墓標」は収録されておらず、代わりに「ダンデライオン〜遅咲きのたんぽぽ」が入っていました。その前作「REINCARNATION」には「REINCARNATION」という曲が入っており、後作「NO SIDE」には「ノーサイド」という曲が入っているというのに。それはともかく、この頃のユーミンは売れまくっていましたねえ。

マリとアスカ

 最後にネーミングについて。エヴァの登場人物は艦船とか海洋関係用語から多く名前が採られていますが、アスカが惣流・アスカ・ラングレーから式波・アスカ・ラングレーに変わったのは、エヴァパイロットは駆逐艦で統一しようとしてのことか。惣流=蒼竜で空母ですからね。でもラングレーも空母なんですが。まあマリのイラストリアスも空母だからいいのか。真希波は巻波で夕雲型駆逐艦、綾波と式波は吹雪型駆逐艦です。いずれも「艦これ」で別の姿を見ることが出来ます。

ヴンダーのクルー達

 この他、ミサトの葛城、リツコの赤木(=赤城)は空母、冬月は駆逐艦、マヤの伊吹は巡洋戦艦(二代目は空母だけど未完成)、青葉シゲルは重巡、日向マコトは戦艦です。「Q」から登場のヴンダー機関長高雄コウジは重巡、長良スミレは軽巡、北上ミドリは軽巡(というより雷巡と呼びたい)、多摩ヒデキは軽巡。多くはやはり「艦これ」で別の姿を見ることができますが、冬月と伊吹はまだ実装されておらず、葛城は実装されてますが個人的に未入手です(涙)。

艦これの巻波

メイドインアビス 深き魂の黎明:絵柄は子供向けなのに内容はR15+

残暑猫

 夏将軍は去った…と考えていいんでしょうか。まだまだ暑いですが、猛暑というほどではないですね。彼岸の頃には爽やかな秋風を感じたいものです。

深き魂の黎明

 本日は先日視聴した劇場版アニメ「メイドインアビス 深き魂の黎明」を紹介したいと思います。2020年1月17日公開ということで、1年半以上前の映画ですが、私は見たいときに見る男なもので。

総集編前編

 テレビアニメ第1期の「メイドインアビス」は2017年夏アニメ、第2期は来年放映予定ということです。劇場版アニメとしては「劇場版総集編【前編】メイドインアビス 旅立ちの夜明け」と』と「劇場版総集編【後編】メイドインアビス 放浪する黄昏」が2019年1月に公開されています。それぞれ第1期の前半と後半を再編集して新規シーンなどを追加したものなので、テレビアニメを見ていれば見る必然性はさほどないと思われます。

総集編後編
 
 ジブリ系というか、視聴対象者を子供達中心としているかのようなキャラ設定の本作ですが、を「深き魂の黎明」はなんとR15+指定。いわゆる15禁で、15歳未満の入場・鑑賞が禁止となる区分です。性・暴力・残酷・麻薬などの刺激が強いものが対象となりますが、見てみたら「ああなるほど…」と思いました。

毒に苦しむリコ

 そもそも前作の総集編も、前編は年齢制限なしのG指定だったものの、後編はPG12指定でした。これは12歳未満(小学生以下)の鑑賞には、成人保護者の助言や指導が適当とされる区分ですが、「助言」とか「指導」って結局何なんでしょうか。見るなってこと?ただ、アニメ後半にはリコがアビスの原生生物であるタマウガチの毒に苦しみまくる描写とか、黎明卿ボンドルトのおぞましい人体実験の描写があるので、年齢制限なしという訳にはいかないのは理解できます。

黎明卿

 「深き魂の黎明」も当初PG12指定の予定でしたが、映倫の最終審査でR15+指定に引き上げられてしまったそうです。総集編後半がPG12指定になったのも、「深き魂の黎明」がR15+指定となったのも、大体黎明卿ボンドルドのせいです。

アビス探索を堪能

 約2000年前に発見された人類最後の秘境・アビス。直径約1000メートル、深さ不明の巨大な縦穴であるアビスは、特異な生態系を持ち、現在の人類の技術を遙かに超えるオーパーツである「遺物」を数多く眠らせています。命がけの危険と引き換えに、日々の糧や超常の「遺物」、そして未知へのロマンを求める「探窟家」たちは、今日もアビスに挑み続けている…という設定で、偉大な探窟家を母に持つ探窟家見習の少女リコが、アビスから出現したと思われるロボット少年レグと共にアビスの底を目指す物語です。

毒に苦しむリコ

 テレビアニメ版後半で深界四層に至った二人は危機的状況で獣人のような外見のナナチに出会って救われます。ナナチは元人間ですが、黎明卿ボンドルドの甘言に乗せられて恐怖の人体実験のモルモットとされた結果、「成れ果て」となってしまいました。アビスは降って行くのは特に問題ないのですが、地上に戻ろうとして登ろうとすると「アビスの呪い」を受けることになります。これは「上昇負荷」とも呼ばれ、浅いところから戻る場合は軽い目まいや吐き気程度ですが、深く降れば降るほど登りの負荷が重くなっていくという奇妙な現象です。「成れ果て」とはこの上昇負荷により人間性を失って怪物化した存在ですが、ナナチは人格を保った貴重なサンプルとしてボンドルトに重宝されていました。

普通の子供だった頃の二人
あれがこうなった

 しかしそれは友人のミーティーがナナチの分まで上昇負荷を受けたためで、ミーティーは人格や知性も失わた異形と化し、不死性を得てしまったために死ぬこともできない存在になっていました。ナナチはリコを救ったことと引き換えに、レグが装備する「火葬砲(インシネレーター)」でミーティーを葬ることを依頼し、その後は三人旅となりました。

冒険三人組

 「深き魂の黎明」は、深界五層「なきがらの海」に「前線基地(イドフロント)」を設置している黎明卿ボンドルドと遭遇と対決が描かれています。“卿”なんて大層な尊称が付いていますが、貴族という訳ではありません。アビスを探検する探窟家の一人ですが、探窟家は首から下げる笛の色でランクと通称が付加されるようになっており、ボンドルドは最高峰の"伝説級英雄"と言われる白笛の探窟家なのです。白笛は「○○卿」という二つ名が付くしきたりで、リコの母ライザは殲滅卿、リコとレグが深界二層にある監視基地(シーカーキャンプ)で出会ったオーゼンは不動卿と呼ばれています。

白笛

 白笛は深界六層以降への立ち入りや特定の遺物を起動状態にするために必要ですが、一人一人に個別のものとなっており、所有者以外が所持しても機能しません。リコはライザの白笛を持っていますが、自分のものではないので当然機能させることができません。白笛を作るためには二級遺物ユアワース(命を響く石)が必要で、ユアワースは各人に合わせて、特殊な原料・製法で生成されるのですが、最終盤でリコは極めて不本意な形でこれを入手することに。

ミーティー

 ナナチのミーティーの仇と聞いていたので、ボンドルドに敵意と不信感を剥き出しにするリコとレグでしたが、ボンドルドの態度は極めて紳士的で、自分の白笛がないと深界六層には行けないことを諭すように教え、イドフロントに滞在するよう勧めます。

ボンドルトと愉快な仲間達

 イドフロントには祈手(アンブラハンズ)と呼ばれるボンドルドの助手を務める探窟家達がいました。ボンドルドは仮面とパワードスーツで全身を覆っていますが、アンブラハンズもデザインの異なる仮面と役割に合わせたパワードスーツを着用しています。実はボンドルドの所有する特級遺物「精神隷属機(ゾアホリック)」によって、ボンドルドの分割した意識を植えつけることで作りだされた隷属体であり、リーダーであるボンドルドとアンブラハンズの全体が群れとしてボンドルドとして存在しているので、例えボンドルドを倒しても、アンブラハンズの誰かがボンドルドの仮面を着用すれば彼がボンドルドとなります。なので真の意味でボンドルドを倒すためにはゾアホリックを破壊した上でアンブラハンズ全員を殺さなければなりません。

プルシュカ

 またイドフロントにはボンドルドの娘のプルシュカが暮らしています。実際にはボンドルドに隷属する前のアンブラハンズの一人の娘ということで、ボンドルドも“血のつながりは薄い”と称していますが、ボンドルドをパパと呼び慕っています。実際ボンドルドも優しく接していましたし。

子供を誘うボンドルド

 このボンドルド、誰に対しても穏健で、常に紳士的な態度を崩すことはありませんが、アニメ史上でも屈指の外道ではないかと思われます。アビスの外の世界では孤児や浮浪児を言葉巧みに誘ってイドフロントに招き入れては、様々な非人道的な実験の犠牲に供するのです。

おれは人間をやめるぞ

 群体となった時、ボンドルドは既に人間をやめたのかも知れません。ディオみたいですが、「おれは人間をやめるぞ!」と叫んだかどうかは知りません(笑)。しかし、ボンドルドを単純に極悪と断じることができないのは、趣味嗜好で非人道的実験を行っている訳ではなく、アビスの謎を解明することを第一義に考えて行動する結果であるということです。探窟家は誰もがアビスの未知を探求したいというロマンを胸にしており、それはリコも同様なのですが、人道とか倫理をかなぐり捨てた究極の位置にいるのがボンドルドということでしょう。アビスの謎解明を何よりも優先する場合、まあそうなるのかなという感じもします。

キュゥべえ

 そういう意味では「魔法少女まどか☆マギカ」のキュゥべえにもちょっと似ているような(そういえばキュゥべえも群体だ)。キュゥべえも少女達を言葉巧みに誘っては破滅させていますが、それは単なる結果であり、最優先すべき目的(宇宙を熱的死から延命させる)のために手段を選んでいないだけでした。異星体(しかもおそらく端末)であるキュゥべえにとって、異星の幼生の破滅とか死は大事の前の瑣事でしかないのでしょう。同様に、ボンドルドにとってはアビスの解明のために孤児や浮浪児が何百何千死のうと大したことではないのかも知れません。

ボンドルド化したキュゥべえ

 ボンドルドにより、「進行不能だったルートの開拓」、「アビス深層での活動拠点の確保」、「新薬の開発」、「上昇負荷の克服手段を発見」などといった前代未聞の偉業が成し遂げられており、人類全体から見ると、アビス攻略を一気に推し進めた正真正銘の偉人とも言えます。ただし、その手法は法や倫理や生命を完全に無視するもので、黎明卿という二つ名も、「良き伝統も、探窟家の誇りも、丸ごと踏みにじって夜明けをもたらす」とうことに由来しているようです。

改造手術みたい

 ボンドルドのアビスの謎解明の一つとして、レグの調査がありました。ロボットなのにほぼ人間のような感情や五感を持つレグは、アビスの遺物の中でも国家のバランスに影響を与えるとされる特級遺物をも超える「奈落の至宝(オーバード)」と見なされています。そのためアンブラハンズにレグを拉致させ、遺物「枢機へ還す光(スパラグモス)」によって右腕を切断してしまいます。計り知れない価値を持つオーバードだというのなら、もっと大事にしてまずは非破壊検査に徹するべきではないかと思うのですが、多分好奇心が抑えられなかったのでしょう。

ショッカー改造手術

 このシーンで「仮面ライダー」のショッカーによる改造手術を思い出しました。手術する側が異形というのはなんかそそるものがありますね。UFOに拉致されてエイリアンに検査されるとかにも似ています。

バトル

 仲良くなったプルシュカの助けでイドフロントを脱出した3人は、追跡してきたボンドルド達を凶暴な原生生物カッショウガシラの巣に誘導し、随行していたアンブラハンズを全滅させます。スパラグモスでカッショウガシラを殲滅したボンドルドに対しては、レグのワイヤーアームで無理やり吊り上げて上昇負荷を与えて殺害しますが、なんと後から来たアンブラハンズがボンドルドの仮面を被ったら完全復活。群体生物の面目躍如です。

戦闘モードのボンドルド

 その後、改めてイドフロントを襲撃した3人を迎え撃って大奮戦しますが、なんと切断されたレグの腕がまだ“生きて”いて、リコがボンドルドに向けて火葬砲を発射したことで決着を見ます。アンブラハンズはまだ存在するのでボンドルド自体は滅んでいませんが、戦闘用の個体が枯渇してしまったのでもう戦えませんでした。

カートリッジ装備のボンドルト

 しかし、3人の襲撃を予期していたボンドルドはカートリッジをフル装備していました。カートリッジとは、上昇負荷を肩代わりさせることで影響を受けなくなるという超便利アイテムであり、ボンドルドの探求の成果の一つなのですが、その正体は、子供から脳と脊髄と最低限の臓器以外の全てを削ぎ落として生きたまま箱詰めしたものでした。まさに外道。

プルシュカとメイニャ

 さらにカートリッジの数が足りなかったのか、対決直前には愛娘のはずのプルシュカまでもカートリッジに“加工”していたのでした。

カートリッジ
カートリッジから離れないメイニャ

 プルシュカはメイニャという不思議なペットを飼っていましたが、そのメイニャがボンドルドが廃棄したカートリッジの一つにすり寄って離れなかったことから、リコ達もそのカートリッジの正体を知ったのでした。まさに外道。

こうなると思っていたのに

 最後までリコ達と一緒に冒険に行きたいと願っていたプルシュカ。その冒険にはパパも一緒というのがプルシュカの理想だったようです。ある意味パパと一緒にレグ達と戦うという大冒険をした訳ですが…ボンドルドの認識では実際そうらしいのが怖い。

プルシュカのカートリッジの中から

 リコと冒険に行きたいと願い続ける瀕死状態のプルシュカのカートリッジは、リコのためのユアワースを排出します。これにより、図らずもリコは深界6六層へ向かうことが出来るようになったのでした。

黎明を

 邪悪とか外道とかいう言葉すら生ぬるいボンドルドですが、探窟家としてやはり強い好奇心を持つリコは「ロマンは分かるのよ」と言っており、人体実験されたナナチも「ゲス外道」と罵倒しつつも、結果的に憧れていたアビスでの冒険やかけがえのない仲間を手に入れるという夢を叶えてくれた恩人であり、実験後は貴重なサンプルとして大切に扱われてもいたため、単なる憎悪ではない複雑な思いを抱いていました。さらにプルシュカ(名実ともに箱入り娘)も最後まで愛慕の情を持ち続けていました。

ナナチとボンドルド

 もうボンドルドを描きまくるのが主眼であるかのような本作ですが、良くも悪くも「メイドインアビス」という作品を象徴するキャラクターなので、読者・視聴者からの人気は非常に高く、2021年にねとらぼが実施したキャラクター人気投票では2位のナナチをぶっちぎって見事1位を獲得しています。

研究を欲するアミバ様

 人体実験する外道というと、「北斗の拳」に登場した自称“天才”のアミバ様を思い出すのですが、もしかするとアミバが異世界転生したのがボンドルドだったりして。

メイドインアビス第二期

 晴れて深界六層に向かうことになったリコ達3人ですが、その先に待つものは何か?何よりもアビスとは一体何なのかがちゃんと解明されるのかどうかが気になりますが。テレビアニメ第2期を楽しみに待ちましょう。

メイニャと原奈津子

 ところで、謎の生物メイニャですが、アビスの原生生物なのかも知れませんが、元人間の成れ果てなのではないかという疑惑が。

イリム

 根拠としては、メイニャをプルシュカに贈ったボンドルドによると正式名はメイナストイリム(変化の子)ということや、ナナチとミーティーの実験の前にイリムという子が単独でボンドルドに呼ばれていること、さらにはメイニャとイリムのCVが共に原奈津子であることなど、怪しさ大爆発ですね。リコ達に付いていったので、今後も活躍しそうです。

森川智之 

 ボンドルドのCV森川智之は正統派の二枚目役から三枚目役、親父キャラクター役まで幅広く演じるベテラン声優ですが、BL作品に多く出演しており、自他ともに認める「BL界の帝王」として「知られています。クレヨンしんちゃん」の野原ひろし(二代目)、「ジョジョの奇妙な冒険」の吉良吉影、「ベルセルク」のグリフィス、「ファイナルファンタジーⅦリメイク」のセフィロスなどを演じてます。最近だとFGOのキャスターリンボこと蘆屋道満、「無職転生」のいろんな意味でダメ親父のパウロなどを演じています。

BL界の帝王

 声優事務所「アクセルワン」の代表取締役でもあります。なお「智之」は「ともゆき」ではなく「としゆき」と読むそうです。だから日本語は難しいって言われるんだ。

シン・ゴジラ:ゴジラは使徒だったんだよ!

除夜の鐘

 今年は新型コロナ禍でいつもと違う年末年始を過ごすことになった人も多いと思います。私自身、新型コロナとはあんまり関係なく今までと違う環境での年末年始となっていますが、何が起きようとも年は暮れ、そして新しい年が明けていくんですね。年々歳々花相似たり、歳々年々人同じからず…年を取ると漢詩が心に沁みるようになりますね。

ニッポン対ゴジラ

 秋季アニメの感想も途中なんですが、昨夜見た「シン・ゴジラ」がインパクトありありだったので久々に映画の話題を取り上げたいと思います。私はAmazonプライムで見ましたが、2時間の映画を見ようと思うと、年末年始のようなまとまった休みがないとなかなか。

シン・ゴジラ第一形態

 「シン・ゴジラ」は2016年7月公開の特撮映画で、総監督・脚本は庵野秀明。そのせいでエヴァンゲリオン的なモチーフがあちこちに感じられました。東宝製作のゴジラシリーズの第29作ですが、1954年制作のシリーズ第一作「ゴジラ」の原点回帰したというか、第一作の現代版リメイクといった雰囲気も感じました。

シン・ゴジラ第弐形態

 「ゴジラ」登場のゴジラは、ジュラ紀から白亜紀にかけて生息していた海棲爬虫類から陸上獣類に進化しようとする中間生態を持つ生物が、ビキニ環礁の水爆実験で散布した放射能を浴びて変貌し、人間に恨みを持っているかのように東京湾から品川へと上陸し、東京の各所を次々と破壊し、最期は東京湾に潜伏中に、特殊な物質を電磁的に反応させることにより水中の酸素を一瞬で破壊し、その場にいるすべての生物を一瞬のうちに死に至らして完全に液化するという恐怖の薬剤・オキシジェン・デストロイヤーで溶解され、消滅されました。

シン・ゴジラ第三形態

 本作登場のゴジラは、太古の時代より生き残っていた深海棲の海洋生物が、60年前に投棄された放射性廃棄物を大量摂取したことにより放射能に耐性が付いただけでなく、それの影響により突然変異と異常成長を繰り返し誕生したと推測される生物となっています。形態は5つに変化し、水中生物形態、上陸形態、二足歩行形態、これが上手くいかず一旦海中に戻ってさらに巨大化して陸上に適応した直立二足歩行形態(いわゆるゴジラらしいゴジラ)、そして小型群体化形態。これは本格的に活動しませんでしたが、無限増殖されたら人類は終わりだったかも知れません。

シン・ゴジラ第四形態

 第一作以降の昭和・平成のゴジラシリーズでは、ゴジラという怪獣の存在は周知の事実となっていましたが、本作では限定回帰して初めて未知の怪獣が出現した時の政府の混乱や有事に即応できない体制のもろさが描かれました。それはそれで面白いのですが、ずっとこれで行かれると怪獣映画としての盛り上がりに欠けるなあと思いましたが、その心配は杞憂でした。後半はちゃんとバトルをします。

シン・ゴジラ第五形態

 ゴジラといえば口から吐く放射能火炎。後に放射熱線と呼ばれるようになりましたが、私が見ていた頃は放射能火炎でしたねえ。まあ火炎というよりはビーム風だし、放射能と放射線を取り違えている(これは今でも取り違えられることが多いですが)ので後者の方が適当なんでしょうね。

放射線流

 シン・ゴジラでは放射線流と呼称されています。火炎を収束して打ち出す紫色の熱線で、口以外にも背びれや尻尾の先端からも発射可能で、意図的に放射するほか、対空自動迎撃も行っていました。

官邸の対策会議

 総理以下政府要人が官邸から立川に移動する際、搭乗したヘリがゴジラの放射線流によって撃墜され、多数の閣僚とともに死亡してしまい、その後生き残った閣僚や与党幹事長らが臨時政府を形成することに。その後は若手政治家が要職に登用されたこともあり、かなり事務手続きはすっきりした感があります。

自動迎撃システム

 大怪獣出現という予期できない異常事態に、通常の官僚機構、というか民主主義政体が対応できないのがよく描かれていましたが、首相が覚悟を決めて自衛隊の出動を決断すると、さすが有事即応を常に考慮している自衛隊の対応は見事でしたね。ただ、第三形態を攻撃できるチャンスに、人命最優先ということで攻撃中止となったあたりが旧軍と違うというか民主主義下の軍隊というか。もしここで攻撃していたら、第四形態による大被害もなく勝利していたかも知れませんが、それじゃ映画にならないか。或いは外部攻撃に適応したより強力な形態に進化していたのか。

全力放射

 第四形態のゴジラには対戦車ヘリの機関砲、ロケット弾、戦車砲、MRLSが攻撃しましたがほぼ効果がなく、米軍の地中貫通爆弾がようやくダメージを与えましたが、これによりゴジラは背びれからの放射線流自動迎撃モードに入ってしまいました。

放射線流バラージ

 国連による核攻撃が決定され、タイムリミットが近づく中、ゴジラの血液を凝固させてゴジラを凍結させる「ヤシオリ作戦」(日本神話で、ヤマタノオロチを倒す際に用いられた八塩折之酒から命名)が発令されることになります。

ヤシオリ作戦最終フェーズ
血液凝固剤を飲ませる

 見ていて強く思ったのは、「ゴジラは使徒だ」ということ。自衛隊と米軍によるゴジラ攻撃は、エヴァの第一話、第3使徒サキエルが戦闘ヘリなどの猛攻に曝されても全くダメージを受けず、切り札のN2地雷(核兵器並みの威力があるが核汚染の心配はないらしい)でも時間稼ぎしかできなかったあたりを彷彿とさせました。地中貫通爆弾がN2地雷に相当か。

サキエル

 そして移動を止めて修復モードに入ったゴジラは第5使徒ラミエルに似ていました。近づく航空兵器を自動迎撃していたあたりがそっくり。ゴジラが使徒と違うのは、A.T.フィールドがないことと、S2機関がないのでガス欠を起こしやすいことでしょうか。なので使徒としては弱い部類になるかも知れませんが、その分人類側にもエヴァがなく、ネルフもありませんが。

ラミエル

 ヤシオリ作戦はエヴァの「ヤシマ作戦」を想起させる名称です。そしてゴジラ攻撃のため、無人爆弾化されたN700系新幹線2編成がゴジラに突撃するあたりは、エヴァ弐号機がこじ開けた第6使徒ガギエルの口内に自沈するアイオワ級戦艦2隻が突っ込み、主砲を零距離射撃するシーンを彷彿とさせました。

新幹線爆弾
零距離射撃

 さらにその後、無人爆弾化され、人を運ぶという使命を奪われた恨みを込めたかのようなJR在来線によるゴジラへの総突撃はまさに「電車でGO!!」。そして倒れたゴジラにタンクローリー、コンクリートポンプ車、ホイールローダーら重機群が押し寄せて血液凝固剤をゴジラの口内に流し込むと。このあたり、形態は異なりますが、ヤシマ作戦で日本中の電力を集めるシーンを思い出させました。

電車でGO!!
電車特攻

 こうしてかろうじてゴジラを凍結し、東京復興の希望も見えてきますが、熱核攻撃のカウントダウンは「一時停止」のままで、もしゴジラが活動を再開した場合は58分46秒からカウントダウンが再開されて熱核攻撃が行われることになっています。

カヨコ特使

 女性登場人物で綺麗なのは米大統領特使のカヨコ・アン・パタースン(石原さとみ)のみで、後の女性キャラはほとんど化粧っ気がなくて。

尾頭ヒロミ

 環境省自然環境局野生生物課長補佐の尾頭ヒロミなんかすごく良い味だしていたのですが、綺麗キャラというのではありませんでしたね。いや、これはこれで素敵ですが。
 
マフィア梶田

 カヨコのSPをマフィア梶田が演じていました。聞いてはいましたが、いかにもSPっぽくて違和感なかったですね。流石SP田中(笑)。

怪獣大戦争伊福部先生

 あと音楽が、エヴァのものが使われていたほか、ゴジラシリーズのものも多数使われており、特にヤシオリ作戦発動の際の「怪獣大戦争マーチ」がたまりませんした。やはり伊福部昭先生は偉大だ。

未だに影響がある秒速

 今年も一年、当ブログをご愛顧いただきありがとうございました。ほぼ毎日更新していた時期もありましたが、今ではほぼ週末ブロガー。そうなって既に久しいですが、「秒速5センチメートル」がテレビで放映されるとアクセスが増えるという現象は健在です。「秒速」についてはほぼ書き尽くしたのでコメントでも来ない限りは今後も触れないと思いますが、未だに視聴者に影響を与えているとは恐ろしい作品です。

良いお年を

 皆さん良いお年を。来年もよろしくお願いします。

劇場版 蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ- DC/Cadenza:劇場版を一気見しました

吉田沙保里敗れる
 
 リオデジャネイロ・オリンピックの女子レスリング勢、予想以上の好成績ですが、まさか吉田沙保里が敗れるとは。ALSOKを退社して、目からビームが出せなくなったのが敗因か。これまで勝利を恣にし、「絶対王者」なんて言われていましたが、絶対なんてこの世にはないんだなって改めて思いました。諸行無常…

タカマツペア 

 一方、バドミントン女子ダブルスの「タカマツ」ペアはバドミントンで日本に初の金メダルをもたらしてくれました。かつて「オグシオ」とかの人気コンビもありましたが、実力がイマイチ伴っていませんでした。「タカマツ」が日本では史上最強でしょう。「タカ」こと右側の高橋礼華さん、昔の早見沙織にちょっと似ている気がするんですが、そう思うのは私だけ?

蒼き鋼のアルペジオ ヒロイン集合 

 本日はテレビアニメを見てはまった「蒼き鋼のアルペジオ」の2つの劇場版「DC」と「Cadenza」を紹介します。両作品は2015年に少年画報社創立70周年記念作品として製作され、2本でひとつのTVシリーズの続編という位置づけとなっています。原作は連載中ですが、アニメ版はこれで一応の決着が付いています。

アルペジオDC 

 2015年1月31日に公開された「DC」は要するにディレクターズ・カット版で、テレビシリーズの再構成総集編に、新規映像として「霧の生徒会」こと大戦艦ヒエイとミョウコウ型重巡四姉妹との戦いが追加されています。キャッチコピーは「出航せよ。この閉塞した世界に風穴を開けるために」。

蒔絵とハルナ 

 テレビシリーズの12話分を濃縮し上に新規映像を加えてたったの105分のため、総集編部分はかなりはしょっています。テレビ版を見た人ならいいのですが、初めて見る人には理解が追いつかないかも知れません。特にデザインチャイルドの刑部蒔絵とハルナ、キリシマの絡みについてはナレーションでぶっとばしまくって説明しているので、なぜ大戦艦二隻(特にハルナ)が蒔絵を守ろうとするのかという理由が映像を見る限りでは脆弱に感じてしまいます。

霧の生徒会 

 完全新作である「霧の生徒会」との絡みは、本編ラストの振動魚雷を米国側に引き渡してからのエピソードに登場します。振動魚雷は米国で量産され、その威力はたった一発で霧の駆逐艦を撃沈してしまうほどのもので、一気に反攻だと米国海軍を狂喜させますが、霧の艦隊との対話を望む千早群像の計略により、残りの振動魚雷にはロックがかかってしまいます。群像としては、人類側が対抗手段を手に持ったことを霧の艦隊に知らしめればよく、戦闘ではなく対話により事態を変えようというハラです。

総旗艦直衛艦隊 

 そんな「蒼き鋼」(といっても艦はイオナのイ401のみですが)に迫る「霧の生徒会」。生徒会長の大戦艦ヒエイは「“霧”は本来、美しいユニオンを誇る存在である」と考えてり、「秩序の再構成」を図る自身の組織を「生徒会」になぞらえています。“霧”があまりにも人類の文化を曲解しすぎていて「蒼き鋼」のクルーをずっこけさせていましたが、そもそも秩序云々ということならば生徒会より風紀委員の方が適切なんじゃ…

超戦艦ムサシ 

 ヒエイに対して超重力砲をぶっ放すイオナですが、直撃すれば大戦艦といえど撃沈必至なのですが、ヒエイは超戦艦しか持たないはずのミラーリングシステムを使って無効化します。これは別名次元空間曲率変位システムと呼ばれ、超重力砲を別次元に相転移させ無効化するというトンデモ兵装ですが、使用後の反動が大きく周囲の海域の重力バランスを崩壊させてしまうとか。本来は超戦艦級にしか装備できませんが、ヒエイは随伴の軽巡2隻を補助動力源とした上で使用しました。

ムサシのメンタルモデル 

 そして超戦艦ムサシが登場。ムサシのメンタルモデルの傍らには、人類を裏切って霧の艦隊に参加したとされる群像のパパン、千早翔像が!

アルペジオcadenza 

 続いて「Cadenza」。2015年10月3日公開の完全新作で、キャッチコピーは「霧の風紀は 地球の風紀。」「これは、人類への降伏勧告である。」。ちなみに「Cadenza(カデンツァ)」とは、独奏楽器や独唱者がオーケストラの伴奏を伴わずに自由に即興的な演奏・歌唱をする部分のことを指します。これは原作と離れた展開になることから付けたのでしょうか。

千早翔像 

 人類の裏切り者・千早翔像は全世界に対する電波ジャックを行い、全人類への降伏勧告を告げます。人類は霧の艦隊が統治するべきだと。ムサシとその直衛艦隊が北極海にいることが判明したことで、「蒼き鋼」はムサシと翔像に会うために北極海に向かうことになります。

イオナとムサシ 

 途中立ち寄ったウラジオストックでは、ムサシのメンタルモデルがいきなりイオナの前に姿を現し、霧の艦隊総旗艦である超戦艦ヤマトとヤマトとイオナとの関係を語り、イオナの機関エンジン以外のすべての“霧”に由来する機能を停止させてしまいます。そして明らかになる“霧の過去。

 ヤマトのメンタルモデル

 千早翔像は霧の艦隊との決戦に際し、潜水艦の艦長として戦術を生かし霧の駆逐艦2隻を同士討ちさせ撃沈するという戦果を出しました。攻撃力・防御力共に人類艦隊を圧倒していたはずの霧の艦隊ですが、この未知だった「戦術」に興味を覚えたヤマトとムサシは人類とのインターフェースとしてメンタルモデルを作り、翔像と接触することになります。

霧の風紀は地球の風紀 

 翔像はヤマト、ムサシと語り合い「家族」という観念を教え、メンタルモデル誕生のきっかけとなった彼は2人からは「お父様」と慕われていましたが、“霧”との和解を快く思わない部下に殺されてしまいます。そしてその後ムサシのそばに立つ翔像は、ムサシによって作られたダミーだったのでした。

ムサシのメンタルモデル 

 霧の艦隊への指令系統の最上位に位置する「アドミラリティ・コード」は、ヤマトとムサシの超戦艦2隻だけが直接受け取ることができ、2隻が命令を協議・解釈・判断した後、他の霧の艦隊に命令を下すという指揮系統となっていました。変化を好むヤマトとは対照的にムサシは変化に否定的というスタンスの違いがありましたが、慕っていた翔像が殺害されたことでムサシは激昂し感情を制御できないまま人間を憎悪することになります。そして人間を好んでいたヤマトを沈め、霧の艦隊を1隻で掌握していたのでした。

機能を封じられたイオナ 

 そして、イオナは、優しすぎるヤマトがムサシに反撃することなく沈んだ際、側を通りがかったムサシ直属のイ401に己のコアを譲り渡し、翔像の息子である群像に会うようにという命令を出したのでした。イオナが覚えている命令は、ヤマトが直々に出した遺言のようなものだったのですね。

ミョウコウ型四姉妹 

 パパンが人類を裏切った訳ではなく、“霧”との対話という自分と同じ事を指向していたことに感動する群像ですが、ほとんど全ての機能を封印されたイオナに「霧の生徒会」艦隊が迫ってきます。圧倒的不利な状況の中、絶体絶命の「蒼き鋼」はどうなるのか?

ヒエイ生徒会長 

 というところで、蒼き鋼の艦隊が救援にやってきます。まずはヒュウガの支援で硫黄島のナノマテリアルで船体を回復した重巡タカオ(ヒュウガのメンタルモデル付き)。そして霧の軽巡艦隊からナノマテリアルを強奪して(そんなこと出来るんだ!?)、船体を復活させたハルナとキリシマの合体戦艦ハルナキリシマ。イオナとの戦いでも合体していましたが、よくよく合体が好きな二人です。

セクシータカオさん 

 そしてミョウコウ型4隻と戦うタカオとハルナキリシマに対し、ヒエイに向かうのはテレビ版のラスボスだったコンゴウ。「艦これ」だと比叡は金剛お姉様ラブなんですが、こちらでも“霧”のあるべき手本としてコンゴウを慕っていたようです。しかし、コンゴウがイオナとの戦い→和解の後、“霧”を出奔してからは、慕情が憎しみに変わったようで「不良」呼ばわりしていました。

眼鏡のタカオ 

 一番の見所というか笑い処はタカオ対アシガラ。重巡同士の好勝負…といいたいところなんですが、アシガラはやたらテンションの高いお馬鹿娘で、超重力砲を装備していない代わりに重力子の銛を二本持っていて、ビームサーベル風の格闘武器としても使いこなします。一方タカオはもっとおしとやか…と思いきや、艦体を回復した際にヒュウガが勝手に組み込んだボーリング・システム(要するにドリル)2本で立ち向かうという。タカオはカッコ悪い、軍艦らしくないと大騒ぎでしたが、なんだかんだと格闘戦をチャンチャンバラバラとやっていました。終いにはそれぞれ艦を降りてメンタルモデル同士でキャットファイトを展開したりして。

アシガラビームサーベル タカオのドリル
タカオ対アシガラのキャットファイト 

 昔やった「鋼鉄の咆哮2 ウォーシップ・ガンナー」にもドリルとかノコギリを積んだ戦艦が出てきましたが、流石に腕のように振り回すところまではいかなかった。そのうちイオナとタカオ、ヒュウガ、キリシマ、ハルナの5隻が合体して大型人型ロボットになったりして。

鋼鉄の咆哮2 ウォーシップ・ガンナー 
ドリル戦艦アラハバキ

 アシガラはハイテンションで非常に面白いキャラですが、私のお気に入りはナチ。おしとやかで冷静で、なんといってもCVが佐藤聡美なもので。

ハイテンションアシガラ ノリノリのアシガラ

 そしてムサシと対峙するイオナ。北極海はムサシがヤマトを沈めた場所で、ムサシによればイオナはヤマトの操り人形に過ぎず、イオナを介して復活してくるであろうヤマトを再び沈めるのだと言います。ヤマトが復活した際には、当然イオナの人格は消滅するとムサシは考えていましたが、終盤にイオナがヤマトの力を発現させた際には、両者の記憶が混ざり合った状態でありながら、主人格はイオナのままでした。神様とピッコロが合体してもほぼピッコロだったかのような。

I401.jpg 
i-401(combined Yamato) 

 イオナが委譲されたヤマトのコアの能力を発揮したことで、北極海に沈んでいたヤマトの残骸を再構成した上でイ401と合体した形態は「I-401(Combined;YAMATO)」と呼ばれます。外見上は401がヤマトの船体を纏ったような姿で、超戦艦の能力を得た事で401を遥かに越える出力を獲得し、多数の浮き砲台や超重力砲とミラーリングシステムを同時に使用可能など、従来を遥かに越える戦闘力を発揮可能となります。

イオナとの別れ 
アルティメットイオナ 
消えるイオナ 

 そしてヤマトはイオナと意識を共有した状態で覚醒し、ムサシを打ち破り、全ての“霧”の艦艇に対し、今後は各々の思うとおりにしろという最後の命令を発し、消滅していきました。ただ、イオナについては、エンドロール後のパートで、両親の墓参りに来た群像がイオナのブローチを発見し、画面には映らない何者かに向かって「おかえり」と声をかけているので、実は健在であるという解釈も可能なラストになっていました。タカオがいるからいいじゃないという話もありますが、やはりイオナあっての蒼き鋼ですから。

ヤマト、ムサシ、生徒会

 結局最後まで“霧”の艦隊は誰が作ったのかという根本的な謎は未解明でした。これは「寄生獣」のパラサイトみたいなもの、つまり地球そのものを滅ぼしかねない人類に対し、天敵を生み出して制御しようという何らかの(例えば地球の)意思の反映なんでしょうか。しかし、パラサイトならまだ理解できるのですが、オーバーテクノロジーの塊である“霧”の艦隊は自然発生的には生まれるはずもないような。原作ではいずれちゃんと説明してくれるのでしょうか。

重巡ナチ 

 この後はそれぞれの随意にしろということで解散した“霧”の艦隊ですが、それでも人類は滅ぼすんじゃーとか考える艦艇もいるかも知れませんが、もう描かれないと思いますが、「蒼き鋼」は残敵掃討戦みたいなものも請け負うのでしょうか。また、世界新秩序の形成過程でどのような働きをする(させられる)のかとか、想像はいろいろできますね。狡兎死して走狗烹らる、なんてことにならなきゃいいですが。 

ナイスカップリング? 

パプリカ:終わりなき悪夢世界を描く筒井ワールドの映像化

富田勲

 冨田勲が去る日に亡くなりました。84歳ということで大往生といっていいかも知れません。日本のシンセサイザー奏者といえば、一に富田勲、二に喜多郎、三四がなくて五にYMOという感じでした。これは偉大さとか売れ行きの順とかではなく、私が認識した順番です。三四がないのは文枝になっちゃったから…なーんちゃって。それは三枝だろうと突っ込んで下さい。

富田勲の展覧会の絵 

 1975年度日本レコード大賞で企画賞を受賞した「展覧会の絵」とか、 1977年2月19日付けのビルボード(クラシック)で1位にランキングされた「惑星」とかは名盤でしたね。音楽賞は多数受賞していますが、今まで叙勲されていなかったとは驚きです。文化勲章ものだと思うのに。ご冥福を心からお祈りいたします。

富田勲の惑星 

 本日は私がゴールデンウィークに見たアニメ映画「パプリカ」を紹介したいと思います。2006年11月公開というほぼ10年前の作品ですが、今さら見て今さら感想を書くのが安定の筑波嶺クオリティー。

パプリカ 

 原作は筒井康隆の同名SF小説です。1991年から93年にかけて「マリ・クレール」誌に連載され、1993年に刊行されました。 

中公文庫版パプリカ 

 アニメ映画版の監督は今敏。1997年の「PERFECT BLUE」や2002年の「千年女優」などで知られます。監督として実績も経験も積んで脂も乗ってきてさあこれからという2010年に46歳のさで逝去してしまいました。

今敏 

 「自分のエンジンはアルコールとカフェインとニコチンで動いている」とで公言するほど不摂生な生活を送っていたそうです。死者を批判したくはないですが、ナンシー関といい、不摂生な生活は自慢出来ることではありません(別に自慢してなかったかもしれませんが)。養生してもっと長く生きて、我々を楽しませて
欲しかったというのは当方のエゴでしょうか。

今敏と筒井康隆 

 原作者の筒井自身が監督の今敏との対談で映画化をして欲しいと語ったものが実現したもので、二人とも映画に特別出演しています。

パプリカチラシ 

 精神医療研究所の天才科学者時田浩作が開発したDCミニ。それは他人の夢に侵入できる最新のサイコセラピー機器です。時田の幼馴染みにしてサイコセラピストの千葉敦子は、DCミニを用いてクライアントの治療を行う極秘のセラピーを行うことがあり、そんな時は小悪魔風の少女の姿をしたペルソナ“パプリカ”となって他人の夢に入り込み、心の秘密を探り出していくのでした。

DCミニを持つ時田 

 ある日、DCミニが盗まれる事件が発生します。DCミニは悪用すれば他人の人格を破壊する危険があるので、その行方と犯人を捜そうとする敦子達。しかし、既に精神医療研究所内では次々と犠牲者が出始めてしまいます。他人の夢に強制介入し、悪夢を見せ精神を崩壊させていく犯人。敦子達は犯人の正体・目的、そして終わり無き悪夢から抜け出す方法を探りますが…

ガンギマリな所長 

 犯人は時田の助手だった氷室だと判明するのですが、精神医療研究所所長の島が真っ先に精神崩壊を起こしてしまいます。悪夢のパレードで王様のように振る舞う島所長。その姿が怖くてキモイので、その後正常に戻ってからもいつヤバいことになるのかとヒヤヒヤしました。目が怖いんですよねこの人。

パプリカの百鬼夜行 
パプリカの百鬼夜行その2 

 醒めない悪夢らしく、このパレードは本編で何度も登場しますが、さしずめ現代の百鬼夜行のようです。

百鬼夜行図 

 百鬼夜行は、日本の説話などに登場する、深夜に徘徊をする鬼や妖怪の群れ、或いは長い年月を経た道具などが変じた付喪神の行進です。今昔物語や宇治拾遺物語に登場するほか、大鏡には右大臣藤原師輔が藤原氏に恨みを持って死んでいった蘇我入鹿、蘇我馬子、蘇我倉山田石川麻呂、山背大兄王、大津皇子、山辺皇女などの亡霊の行列に遭遇し、仏頂尊勝陀羅尼を読んで難を逃れたという話があります。

仏頂尊勝陀羅尼 

 仏頂尊勝陀羅尼は、唱える事によって滅罪、生善、息災延命などの利益が得られるとして日本でも古くから知られ、特に百鬼夜行に巻き込まれた場合は特効薬のような効能があります。そんなに有り難いものなら覚えておきたいところですが、長すぎて私は一瞬で諦めました。根性のある方はどうぞ。

アムロ声の天才デブ 

 時田は天才ですが、精神的には子供のままで、しかも超肥満体。CVは古谷徹ですが、声のイメージに悩んでいた際、スタッフに「アムロのままでいいですか?」と尋ねたところ、快く了承されたそうです。なのでアムロ声です。時田も「親父にもぶたれたことないのに」タイプなんだと思います。ガンダムに乗らなかった10年後のアムロ?

ひっつめ髪の敦子さん 

 相棒を務める千葉敦子は時田に「あっちゃん」と呼ばれていますが、その度に怒っているツンタイプです。引っ詰め髪で白衣でと、いかにも知的で冷たい印象ですが、彼女はなかなかに美人で魅力的ですよ。

実は美人なあっちゃん 

 敦子のペルソナであるパプリカは小悪魔チックで、冷静かつ禁欲的な敦子とは対照的に自由奔放な雰囲気です。二人は似ても似つかないように見えますが、パプリカのセラピーを受けた刑事の粉川は敦子を見てすぐにパプリカだと気付いた模様。

敦子とパプリカ 

 やはり元は同一人物だから?パプリカに言わせれば「敦子があたしの分身だって発想はないわけ?」だそうです。「我は汝、汝は我」だとまさしくゲームの「ペルソナシリーズ」です。

敦子とパプリカその2 

 DCミニは他人の夢を見ることができ、記録できるだけでなく、その夢の中に入り込んで介入することが可能という画期的な装置です。似たような装置は1983年のSF映画「ブレインストーム」にも登場していました

ブレインストーム 

 こちらに登場する「ブレインストーム」という装置は、人間の記憶・知覚を他人に伝達する装置でした。研究中に心臓発作に襲われた女性研究者はブレインストームを起動し、死の瞬間を記録しつつ亡くなります。そうして記録された臨死体験の世界を見ると…という話でした。こちらはDCミニと違って介入することは出来ませんが、人間の脳から直接命令を行うことができるということに軍部が注目して、軍事転用しようとするというくだりがありましたっけ。

色っぽいあっちゃん パプリカの中からあっこちゃん

 生粋のサイコセラピストのパプリカをもってしても、あまりに深い悪夢の世界は手に余り、犯人の手中に堕ちたりパプリカから敦子を抜き出されたりしますが、仲間の支援を得てなんとか戦いを継続していきます。

フェアリーパプリカ ローゼンパプリカ

 最後は敦子とパプリカが同時に併存し、犯人を追い詰めようとするパプリカと、時田を救おうとする敦子が別行動を取ったりします。時田にツンツンだと思った敦子、実はツンデレであることが発覚。こんないい女は時田にはモッタイナイ……時田、もげろ!結婚後は当然敦子の尻に敷かれるんでしょうが、「我々の業界ではご褒美です」ってやつでしょうな。チッ!!

林原めぐみ20160510 

 千葉敦子とパプリカは林原めぐみが演じています。この人についてはもう流石としかいいようがないのですが、敦子役なんで田中敦子にやらせてみるというのも面白かったんじゃないかと。草薙素子のイメージが強く、クールビューティー専門のようにも見られがちですが、パプリカみたいな役をどう演じるのか興味があります。

ピノキオパプリカ 

 夢を題材にしているだけに、いかにもドリーミングな映像が続きますが、悪夢にやられた人の戯言がいかにも筒井康隆作品らしくていいですね。例えば…

パプリカ百鬼夜行その3  

 「蛙たちの笛や太鼓にあわせて、回収中の不燃ごみが後から後から吹き出してくるさまは圧巻で、まるでコンピュータグラフィックスなんだそれが!総天然色の青春グラフィティーの一億総プチブルを私が許さないことぐらい、オセアニアじゃ常識なんだよ!さぁ!今こそ青空に向かって凱旋だ!絢爛たる紙ふぶきは鳥
居をくぐり、周波数を同じくするポストと冷蔵庫は先鋒を司れ!」

パプリカ百鬼夜行その4 

 「賞味期限を気にする無頼の輩は花電車の進み道にさながら死人となって憚る事はない」 

イッチャッてる感じの所長 

 「魂の肥満はダイエット知らず、進め!超人!何処までも!有史以来の待ち人、その笛の音はニューロンの癒し、香しき脂肪分は至上のランチ、スパイシーに不足、欠如はパプリカ!円満成就に足りない一振りのスパイス」 

日本でいうパプリカ 

 パプリカって、日本ではピーマンに似た形の肉厚で辛みが無く甘い品種の野菜のことを言いますが、ヨーロッパなどでは滅茶苦茶辛いトウガラシやそれから作られる辛い香辛料をパプリカと呼びます。青唐辛子のピクルス…滅茶苦茶辛かったっけ。

青唐辛子 

 赤い唐辛子だと見た目にヤバイのがわかるんですが、青唐辛子はシシトウみたいで一見辛そうに見えないので騙されてしまいます。本作のヒロイン・パプリカは髪や服の色、そして言動からして当然香辛料のパプリカですね。

ぴりっと辛いパプリカ 
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