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河童が覗いたヨーロッパ:50年前の欧州貧乏旅日記

台風進路

 お盆を直撃しそうな台風7号。新幹線が止まりそうとかいう話で、のんびり帰省中の人たちは気が休まらないかも知れません。東北は暑さのピークは過ぎたのかなと思っていたら、この台風の通過で発生するフェーン現象でまた暑くなりそうです。

河童の覗いたヨーロッパ

 本日は本の感想で、妹尾河童の「河童が覗いたヨーロッパ」です。例によって文庫版裏表紙の内容紹介から。

 旅の愉しみは、その土地に行ってみなければ分らないものとのふれあいにある。風土による人の違いはもちろんのこと、あらゆることが興味をさそう……。1年間で歩いた国は22カ国。泊った部屋は115室。国際列車の車掌たちのお国ぶりは?泊り歩いたホテルの部屋は?ビデってなんだ?舞台美術家の著者が、心優しい眼と旺盛なる好奇心で、ノート片手に覗いた“手描き"のヨーロッパ。

 著者の妹尾河童は本名肇で、1930年生れで現在93歳。さすがに高齢なので最近の動静は伝わっていませんが、グラフィックデザイナー・舞台美術家として名をはせ、草創期のフジテレビの番組美術を支え、1980年にフリーとなってエッセイスト・小説家としても活躍しました。

少年H

 97年に出版した、自身の少年時代を描いた「少年H」は上下巻を合わせて300万部以上の大ベストセラーになってテレビドラマ化や映画化されました。Hは本名である肇のイニシャルな訳ですね。ではなぜ河童というけったいな名前を付けたのかというと、若い頃に付けられた「河童」というあだ名が異常に浸透してしまって本名を思い出してもらえなくなり、「妹尾河童」でないと生活にも支障が出るほどになったのだとか。

文庫版少年H

 それで家裁に改名を請求したところ、「改名というのは珍奇な名前で苦しんでいる人を救済するためにあり、普通の名前から珍妙な名前に改名というのは前例がない」と却下されましたが、食い下がって上申書を提出して認められたのだそうです。

間違いだらけの少年H

 なお「少年H」については「自らの記憶と体験を元に書いた作品である」と主張していますが、児童文学作家の山中恒は作品内の事実誤認や歴史的齟齬を数多く指摘し、“「少年H」は自伝でもなんでもなく、戦後的な価値観や思想に基づいて初めから結論ありきで描かれた作品である”と批判しています。山中恒は妹尾河童と同時代の人で、少年時代に“皇民化教育”を受け、戦後はその反動で反戦・平和活動に注力するようになりました。「少年H」は反戦平和を訴えることを主眼とした内容のようですが、山中からすると、当時の少年たちが「少国民」として戦争の大義を信じていた事実を隠蔽し、自身を戦争に疑問を抱く少年として描いたことは許せなかったようです。

映画版少年H

 この山中の批判に対し、妹尾河童は一切の反論せず、「少年H」の文庫化に際しては、指摘された部分を中心に何箇所もの訂正や変更、削除などを行っているようです。また映画化に際しては、監督の降旗康男は、他の資料とともに山中の「間違いだらけの少年H」も参照し、直すべき個所は直したとそうです。

文化庁

 本題から大きく外れていまったので閑話休題。「河童が覗いたヨーロッパ」は、1971年に、文化庁が行っている新進芸術家の海外研修で1年間の海外の劇場を視察研修するために派遣された際の記録です。この研修制度は今も続いていて、昨年末までに約3,700名が研修を受けており、ピアノの諏訪内晶子、バレエの森下愛子、劇作家の野田秀樹なども参加しています。研修期間は長期(1~3年)か短期(20日~80日)のコースがあるようですが、妹尾河童は長期では一番短い1年のコースだった訳ですね。まあ働いている人間からすると1年でも相当長いですが、フジテレビは社員待遇のまま快く送り出してくれたそうです。この頃のフジテレビは余裕があったんですね。

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 で、旅の途中で様々な気づきを書き留め、スケッチしたノートが知人達の目に留まり、面白がられて勝手に小冊子を作られたりしたあげく、一冊の本にまとめてはと提案されたのだそうです。本人はそのつもりで描いていたわけではなかったのでかなり抵抗したそうですが、結局はこのように出版の運びに。

JALパック誕生

 海外渡航自由化が実現したのは1964年。海外パッケージツアー「JALパック」が誕生したのが1965年。それ以降、次第に物見遊山の海外旅行が広がり始めたそうですが、海外旅行は費用も高額で、行けるのは一部の富裕層に限られ、一般大衆には夢であったことでしょう。海外渡航者数が100万人を突破したのが1972年で、海外旅行ツアーが都市圏の中流層に一般化し始めたのは1970年代後半からだったそうです。

 戦後長らく1ドル=360円だった通貨レートは1971年12月に1ドル=308円になり、さらに変動相場制に移行して円高や旅行費用の低下が進むと共に飛行機も大型化して新婚旅行が海外になるのが一般的になっていく、その直前の時代のヨーロッパ旅行の話が本書です。何しろ50年前の話なので、トピック的には「今更そんなことを…」とツッコミたくなる話(ビデとか)もありますが、そういう時代だったということを頭に入れておけばと。

 序盤は各国の窓の大きさに関する話(気候により大きくなったり小さくなったり、窓に求める機能が変わる)、各国の車掌さんのスタイル、列車の内部(馬車時代に由来するコンパートメントスタイルが日本とは大きく異なるので)のスケッチなどがありますが、本書の大半を占めるのは、著者が泊まったホテルの部屋の間取りです。

地球の歩き方

 なにしろ貧乏旅行なのでとにかく安い部屋を探して泊まっており、南は安く北は高い(その傾向は今もあるかも)とか屋根裏部屋はいいとか、かつて「地球の歩き方」を片手に海外を出歩いていた若者達には大いに参考になりそうですが、とにかく昔の話なので今行って同じホテルがあるかどうかはかなり怪しいですが、こんな時代もあったのだという記録としては非常に面白く読めます。読むと行ってもスケッチが多いので眺めるといった方が正しいのかも知れませんが。

 実はこの本、買うのは2回目で、1回目に買ったのは20数年前の海外勤務時代でした。そのまま現地に置いてきたので後任の人も読んだかも知れません。そのままずっと忘れていたのですが、先日たまたま書店で目にしてしまい、懐かしさのあまり再度購入。私が買ったのは二回とも新潮文庫版でしたが、講談社文庫からも出ています。

クロイツェンシュタイン城

 講談社文庫版で表紙になっているウィーン郊外のクロイツェンシュタイン城。実は本書を読んで行ってみたくなって行きましたっけ。著者は「城を一つあげよう」と言われたらこの城を選ぶと言っています。確かに小さいのにヨーロッパの古城のイメージが全部入ったような城でした。本来は12世紀に築かれた正真正銘の古城でしたが17世紀にほぼ完全に破壊され、現在の城は19世紀後半になって再建されたもので、かつての外観とは異なり、当時流行のロマン・ゴシック様式で建てられているそうです。

シュノンソー城

 城といえばシュノンソー城とかシャンボール城といったロワール川沿いの城も紹介されており、私も帰国直前にパリで「ロワールの城めぐり」ツアーに参加しましたっけ。場所は全然違うけどモンサンミシェルも行きましたが、著者はそれほど惹かれなかった様子。

シャンボール城

 あと不思議にフランスのヴェルサイユ宮殿とかルーブル美術館、オーストリアのシェーンブルン宮殿とかには全く触れられていませんね。城は好きだけど宮殿は好きじゃないのでしょうか。あと50年前も今も建造中のサグラダファミリアとかミラノ大聖堂は紹介されていますが、焼けちゃったノートルダム大聖堂とか有名な寺院も軒並みすっぽかしています。興味の方向性とかもあるんでしょうけど。

 とにかく作者は好奇心の塊のような人で、ツッコみまくったその内容を読むのはとても面白いのですが、一緒に旅をしたいかと言われるとちょっと…。きっちりした予定を立てても全然スケジュールどおりに動いてくれなさそう。知り合いレベルならいいけど家族とかにいたらかなり鬱陶しいんじゃないだろうかと思ってしまいます。
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飲んだら酔うたら:酒にまつわるシーナエッセーの集大成

梅雨の田んぼ

 2週連続で雨の土曜日。梅雨だから仕方がないかも知れませんが、一週間で唯一運動らしきことをする土曜日だけは勘弁して欲しいものです。艱難汝を玉にす、とは言いますが、玉になったら坂道を転がり落ちてしまいますね。

飲んだら酔うたら

 本日は本当に久々にカテゴリー「本」です。どれくら久々かと言うと、2017年12月2日以来なんと5年半以上ぶりです。もともと通勤時間は読書タイムでしたが、筑波嶺に移住して長距離通勤となってからは、通勤時間=読書タイムになってしまい、それ以外の時間に本を読まなくなっていました。そんな訳で徒歩通勤とか短時間電車通勤となった昨今はなかなか本を読まなくなってしまい。

哀愁の町に霧が降るのだ

 あとスマホの登場は確実に影響しましたね。ソシャゲを始めてしまった日にはそりゃあもう…。やらなきゃいいんでしょうが、こちとらファミコン時代から40年近いゲーム歴なもので(笑)。“遊びをせんとや生れけん 戯れせんとや生れけん”(梁塵秘抄)…でも課金は身を滅ぼしかねないので、ほどほどに。

アド・バード

 それでも一応、眠る前にベッドでパラパラ程度には読んではいます。でも寝る前に神経が高ぶってはいけないので昔から呼んで内容を熟知している本とか肩の凝らない本ばかりです。そんな中、今回は珍しく新刊を買ったので紹介しましょう。例によって裏表紙の内容紹介です。

ビールのCM

 人生には酒に助けられる瞬間というものがある―――
 ドイツで、ロシアで、モンゴルで、東北で、沖縄で……
 世界中で飲んだ酒、日本のあちこちで飲んだ酒、どんな場所でも、その土地で作られた酒の味は格別。
 イラストも写真もたっぷり収録。
 読めば絶対飲みたくなる、極上の酒エッセイ!

魚を盗む猫

 椎名誠は好きな作家の一人で、“SF三部作”と呼ばれる「アド・バード」「水域」「武装島田倉庫」、自伝的作品「哀愁の町に霧が降るのだ」「新橋烏森口青春篇」「銀座のカラス」などの小説の他、“怪しい探検隊”シリーズなどのエッセイ、紀行文を結構読んできました。

怪しい探検隊

 個人的には作家というより日本や世界のあちこちを旅しては焚き火をして酒を飲みまくっている人という印象が強い(まんま怪しい探検隊のイメージ)のですが、340冊以上の本を出版してきて、これまで酒だけについて書いた本が一冊もなかったそうで、まるまる一冊酒だけの本を出そうということで本書が出来たそうです。

怪しい探検隊2

 第1章「世界のあちこちでこんなサケを飲んできた」はまさに世界の旅人・椎名誠の面目躍如で、なんか一年中世界を旅して暮らしている人のように思えます。職業・旅人で喰っていけるならうらやましい限りですが…妻子もいることですし、傍目にそう見えるだけでちゃんと地に足を付けているのでしょうが。この章で「ロシアのうまションビール」についても書かれているのですが、思わず膝を手で打って「知っている!」と叫びそうになりました。チェコのビールはとても旨いので、スラブ系だからビールがまずいとかいうことはないとは思いますが、私の赴任国(スラブ系)のビールも「うまション」でした。「うまション」とは、要するに馬の小便のことで、ビールがまだ馴染みのなかった時代、日本人はこう言って敬遠していたのだとか。飲んだことあるんかい!?とツッコミたくなりますが、色とか泡立ち方とかがまあそういう印象だったんでしょうね。その後ビールはすっかり日本人に馴染み、なくてはならない酒になりましたが…ロシアや任地のビールはビール好きが飲んでも「うまション」状態でした。あれから長い年月が経過しているので、今ではうまいビールもあるかもですが。

ロシアビール

 第2章「シングルモルトウイスキーの旅」は、シングルモルトウイスキーを訪ねてスコットランドのスペイサイド・アイラ島を訪れているほか、日本でもサントリーの山崎・白州蒸留所を訪れています。スペイサイドでは「ザ・マッカラン」と「グレンフィディック」、アイラ島では「ボウモア」と「ラフロイグ」の蒸留所で銘酒を堪能するシーナさん。実は私も最近ウイスキーにはまりつつあり、昨年の正月はバランタインの12年、今年の正月はサントリー・ローヤルと白州を飲みました。マッカランと山崎も飲んだことがありますが、来年の正月は「グレンフィディック」や「グレンリベット」といった初心者向きとされるシングルモルトを飲んでみるつもりでいましたが…「ボウモア」や「ラフロイグ」も検討しようかな。「ボウモア」はいけそうですが、「ラフロイグ」は癖が強いので好き嫌いが分かれるそうですが。

マッカラングレンフィディック

 第3章「ビールがいつも旅人を助けてくれた」は、酒の中でもビールが一番好きだというシーナさんが友人の沢野ひとしのイラストで連載したビールに関するエッセイがまとめられています。イラストのビールがモルツらしいのは、やはりそういうことか(笑)。昔、シーナさんはビールのCMに出演してて、釣った魚を盗んでいく野良猫がいい味を出していましたが、当時からサントリーだったっけ。さらにたどれば、ザ・マッカランもボウモアもグレンフィディックもラフロイグも日本ではサントリーが販売しています。うーん、サントリーの使徒。まあスポンサーがそうなら仕方がない。私はビール党ではないので、旅の途中で飲むのはハイボールとかチューハイなんですが、シーナさんのエッセイを読むとビールも悪くないかなと思ってしまいますね。

ラフロイグ
ボウモア

 第4章「さぁ今日もグラス囲んで黄金時間」は「月刊たる」という酒専門雑誌に連載した四方山話。日本や外国や、過去や現在の酒にまつわるあれたこれやで、寝小便しないよう、潜在意識があらゆる悪夢で起こそうとするという「悪夢のおくりもの」は特に身につまされました。私もかつて、いくらトイレで小便してもすっきりしないという夢を見たことがありますが、すっきりしちゃったらヤバイんですよね。今は家ではほとんど酒を飲まず、夜はハーブティーとか雑穀茶とかを飲んでますが、その場合は夜中に必ず目覚めてトイレに行くので悪夢の出る余地なしです。

山崎

 正月以外家で酒を飲まなくなってもう5年以上経ちましたが、別に酒が嫌いになった訳ではなく、飲みたくなったら旅に出かけてたりします。旅の車中でも軽く飲みますが、旅先のビジホ(ドーミーインがお気に入り)で“カイジの豪遊”のような一人宴会をするのが好きなのです。シーナさんはほぼ毎日酒を飲んでいるそうですが、私は飲酒後のダメージというか不快感の方がヤバくなってきたので、たまに飲む程度が良くなってきました。シーナさんはもうすぐ80才。傘寿というやつですね。改めて時間の流れに驚きますが、まあ体調と相談して飲んでもらえればと

白州

幻夜:名作「白夜行」の姉妹編

12月じゃ

 とうとうやって来ました12月。毎年思いますが、一年って本当に早いですね。数ヶ月前には暖冬という予報を聞いたような気もするのですが、あにはからんや今年の冬は寒いみたいです。今年は8月に涼しい日が続いたり、9月になってから暑くなったり、10月に雨ばかり降ったりと妙な気象が続いたので、冬らしい冬というのはある意味正常に戻ったともいえなくもないですが…今年は11月から寒かったんですよね。おかげで秋を満喫できなかった気がします。

幻夜文庫版 

 本日は久々に読書感想文です。東野圭吾の大作「幻夜」を読みました。「幻夜」は「週刊プレイボーイ」2001年No.19/20号から2003年No.16号に連載され、加筆訂正された後に2004年1月26日に集英社より単行本として刊行され、2007年3月25日には集英社文庫から文庫版が刊行されています。

 東野圭吾は私が最も好きな作家の一人です。有名な「ガリレオ」シリーズや「加賀恭一郎」シリーズも素晴らしいですが、単発作品で三大好きな作品を挙げるとするならば、これまでは「秘密」「白夜行」に「手紙」あたりかなと思っていましたが、「手紙」に代わって入ってくる勢いなのが「幻夜」かなという気がします。しかし本作、「白夜行」の姉妹編ともいえるので、「白夜行」シリーズになってしまうかも。

白夜行 

 本作は2004年に第131回直木三十五賞にノミネートされましたが、受賞は逸しています。「秘密」も「白夜行」も「手紙」も候補作になりましたが受賞せず、受賞は2006年、6回目のノミネートである「ガリレオ」シリーズの一作である「容疑者Xの献身」ででした。正直それ以前の候補作品で受賞させない審査員は頭おかしいんじゃないかと思います。もしくはこぞって海のリハク。南斗五車星が全員海のリハクだったらイヤすぎますね。

 「白夜行」こそは東野作品の白眉ではないかと思うのですが、それとの関連はひとまず置いて、例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

阪神淡路大震災 

 阪神淡路大震災の混乱の中で、衝動的に殺人を犯してしまった男。それを目撃していた女。二人は手を組み、東京に出る。女を愛しているがゆえに、彼女の指示のまま、悪事に手を染めていく男。やがて成功を極めた女の、思いもかけない真の姿が浮かびあがってくる。彼女はいったい何者なのか?!名作「白夜行」の興奮がよみがえる傑作長編。

 実は「白夜行」を読んだのはブログ開始前だったので、当ブログでは紹介していないという痛恨。一応内容紹介だけしておきますと…

白夜行映画版 

 1973年、大阪の廃墟ビルで質屋を経営する男が一人殺された。容疑者は次々に浮かぶが、結局、事件は迷宮入りしてしまう。被害者の息子・桐原亮司と、「容疑者」の娘・西本雪穂――暗い眼をした少年と、並外れて美しい少女は、その後、全く別々の道を歩んでいくことになるのだが、二人の周囲に見え隠れする、幾つもの恐るべき犯罪の形跡。しかし、何も「証拠」はない。そして十九年の歳月が流れ……。伏線が幾重にも張り巡らされた緻密なストーリー。壮大なスケールで描かれた、ミステリー史に燦然と輝く大人気作家の記念碑的傑作。
 
 もちろん「幻夜」は「白夜行」を知らずに読んでも面白いです。全く関係のない作品と割り切っても構いません。が、「白夜行」を読んだ人にはちらっちらっと見え隠れする影が気になってしまうところなんですね。

 美冬と雅也

 「白夜行」では美貌のヒロイン雪穂の成功を、滅私奉公のように影で支え続ける亮司という関係がありましたが、今回も似た構造となっています。つまり美貌の新海美冬を支える水原雅也という関係です。しかし、大きく違うのは、雪穂と亮司の関係が自然発生的であったのに対し、美冬と雅也の関係は人為的に築かれたかの感があることです。まるで雪穂と亮司の関係を知っていて、その再現を企図したかのような。

 そして、雪穂についてはその半生が明らかになっているのですが、美冬は震災以前の経歴がよくわかりません。というより、過去を知っている人を寄せ付けず、やむを得ない場合は雅也を使って消してしまうほど。しかし雅也にも計略を使っており、雅也の殺人を知っている人物だと思わせて“雅也のために殺す”という態を取っています。このあたり、実は読んでいてすぐには気付かないケースもあるでしょうが、ミステリーずれしてしまった私はすぐに気が付きました。

宮部みゆきの火車 

 というか、美冬についても「こいつは宮部みゆきの『火車』(これも直木賞を受賞していないのが不思議な大傑作)の新城喬子だ!」とわりと早くに気付きました。つまり本物の美冬は震災で死亡し、それに成り代わった何者かが今の美冬であると。では美冬の正体は?

 美冬に疑念を抱き始め、独自に調べる雅也とは別に、一匹狼の刑事・加藤も美冬に異様な執着を見せ、独自の捜査を行っています。本書では美冬の視点は一切なく、雅也か加藤の視点が主となっていて、もちろんお互いの知っている事実は知らないままなんですが、読者からはそれぞれが知り得た事実を総合できるので、美冬の正体がはっきりと暗示されていきます。でもそれをはっきり明示してこないのが東野流。

幻夜キャスト 

 “二人の幸せのため”と称して基本自分の幸福のために雅也を使い倒す美冬。薄々それを感じながら美冬の呪縛から逃れられない雅也。美冬は明らかに属性・悪なんですが、その美貌とともに悪の魅力というものもありますね。

 なお野望達成の道具として雅也を使い倒している感もある美冬ですが、ここ一番では自分もちゃんと動いています。自ら手を汚すことも厭わないその姿勢はまさに悪の美学。女版ディオ・ブランドーと呼びたくなります。きっと美冬が悪と判っていて、それでもついてくる支持者も出るんではないかと。

加藤刑事、美冬、雅也 

 「白夜行」はラスト、雪穂を守るために亮司が命を落としますが、本作はちょっと違います。美冬に使い捨てにされていることに気付いた雅也は復讐を考えます。豪華客船でミレニアムの年明けを迎えようというラストシーンは華やかというか何というか。

 美冬は属性・悪なので、美冬の正体を暴こうとする加藤刑事は属性・善と言いたいところなんですが、この刑事は今ひとつ好きになれないんですよね。どうして加賀恭一郎みたいな刑事を持ってこなかったんだろうかと思っていたのですが…ラストを読んで理解しました。これは加賀恭一郎を持ってきてはダメだ(笑)。

美しい美冬 

 例によって未見ですが、2010年11月21日より2011年1月16日まで、WOWOWの連続ドラマW枠でテレビドラマ化されています。美冬役は深田恭子。おお、これはナイスキャスティング。巻末の解説で作家の黒川博行言っていますが、もう一作執筆して「白夜行」三部作なんていいんじゃないかと思うのですが、「幻夜」出版から10数年も経過してしまうともうないんでしょうかね。

 一見幸せを掴んで万々歳な美冬。悪の勝利的なエンディングなんですが、美冬本人は本当に幸せなのかな。傍から見ると充分幸せなはずの美冬ですが、彼女は一生幸せを求め続け、そして実感としてそれを得られないまま幸せに飢え続ける人生を送っているような気がします。

幸せを掴みたい美冬 

万能鑑定士Qの事件簿Ⅴ:凜田莉子、おフランスでも活躍す

希望の党ですってよ奥様

 ほとんど政治的な案件には触れないノンポリ野郎である当ブログですが、昨今の「希望の党」とやらをめぐる一連の騒動の展開ぶりには驚きますね。ジリ貧極まれりの民進党ですが、まさか解党して合流とは。20数年前の「日本新党」の騒ぎを思い出します。実現したら、それって名前が変わっただけで事実上ほぼ民進党なんじゃないかなんて思ってしまいますが、自分の議席を守るためには綺麗事は言ってられないということでしょうか。しかし、そうはいっても綺麗に見せないと…あんまり露骨なのはどうなんでしょうか。

万能鑑定士Qの事件簿Ⅴ 

 それはさておき、本日は松岡圭祐の「万能鑑定士Qの事件簿Ⅴ」を紹介しましょう。凜田莉子がヒロインを務める「Qシリーズ」は全12巻なんですが、なんと筑波嶺の図書館には本巻までしかない模様。何回書棚を見てもⅥ以降が見当たりません。なので好きなシリーズなんですが今回で紹介は終わりなのかも知れません。まずは例によって文庫版裏表紙の内容紹介をどうぞ。

パリですがな 

 お盆休みにパリ旅行を計画した凜田莉子を波照間島の両親が突然訪ねてきた。天然キャラで劣等生だった教え子を心配した高校時代の恩師・喜屋武先生が旅に同行するというのだ! さらにフランスで2人を出迎えたのは、かつて莉子がデートした同級生の楚辺だった。一流レストランに勤める彼は2人を招待するが、そこでは不可解な事件が起きていた。莉子は友のためにパリを駆け、真相を追う! 書き下ろし「Qシリーズ」第5弾!

花畑よしこ 

 「アルジャーノンに花束を」で言えば手術後のチャーリー状態(しかも元に戻ることなし)の莉子ですが、波照間島に住んで石垣島の高校に通っていた時代は「アホガール」の花畑よしこに匹敵するお馬鹿な女子校生でした。いや、まあさすがによしこよりはましだったとは思いますが、体育・音楽・美術以外はオール1の万年最下位学生だったので…ってそれでよく卒業できたなオイ。

 あれから5年。上京してスーパーインテリとなった莉子はもはやフランス語をある程度話すほどになっていますが、両親からすればまだまだ子供。自分達の元を去った後の成長はなかなか実感が掴めないのはわからないでもありません。ましてや散々手を焼かされた担任教師においてはなおさら。

 ということで、莉子がパリ一人旅なんてとんでもない!と無理矢理同行することになった高校の恩師喜屋武先生。まだ卒業を認めていないとかなんとか牽強付会な理屈をこねてますが、そんなもん傍から見たら美女につきまとうストーカーだぜよ。

 莉子もややうんざり気味なんですが、そこは万能鑑定士。喜屋武の強引さの裏に潜む何かに感づいたようで、無理矢理振り切ったりはしません。感受性がとても豊かで美貌と比例するくらいに心が綺麗なのは今も昔も変わらない莉子なので、先生の立場を忖度するわけです(何か今では良くない言葉にされているきらいがありますが、本来は悪い意味ではありません)。

 しかしまあ喜屋武先生からすれば、体育・音楽・美術以外オール1の莉子を卒業させるにあたっては、校長先生に「自分が責任をとる」と申し出てなんとかしたといういきさつがあるので、既に成人したとはいっても莉子のことを他の卒業生以上に気に掛けるのは仕方ないかなとも思えます。

 先生が強引に決めた寄宿先は、やはり教え子で、パリで料理人の修行をしている楚辺のアパートでした。この人は莉子の同級生で、かつては清いデートをしたこともあるという仲。いわば莉子の淡い恋の相手です。別に「桜花抄」のようなことはなかったので、あれから5年、もう淡い恋心は思い出に変わっているようですが。

 楚辺は自分が勤める一流レストランに2人を招待しますが、そこで巻き起こる不可解な食中毒事件。店は営業停止となり、“犯人”と思われるフォアグラの製造業者まで徹底的に調べられることになります。失業の危機に直面した楚辺を救うべく、莉子はパリを、いなフランスを駆けて真相を追うことになります。 

フォアグラ 

 例によって意外な人物が意外な動機で犯行を行っていたということになるのですが、そこはまあお読みいただくとして、折々登場するいけすかないフォアグラ業者の社長が、「これを売れば大金が入る」と豪語するアンティークを、繰り返し一目で偽者と見破ってその根拠もきっぱりと述べる莉子が素敵すぎます。ここは笑いを取る場面なのですが、「なんでも鑑定団」は莉子一人で鑑定させれば人件費が浮くんじゃないかと思ったり。

強制給餌 

 ところでフォアグラ。世界三大珍味の一角として有名ですが、ガチョウやアヒルなどに沢山の餌を与えることにより、肝臓を肥大させて作ります。その給餌のやり方は強制というか無理矢理で、動物虐待じゃないかという声もあり、EUでは生産・販売を禁止する動きもありますが、生産地を抱えるフランスは生産者保護に動いています。確かに酷いなあとは思うのですが、食べればやっぱりうまいからなあ(笑)。もちろん普段はお目にかかりませんが、たまに食べるとやはり旨いと言わざるを得ません。

キャビア 

 トリュフとキャビアは稀少ではあってもフォアグラのような無理矢理感はないので特に文句はつけられないようですが、基本が魚卵は苦手な私が美味しく食べられるのがキャビアで、基本キノコ類が得意でない私がその香りを楽しめるのがトリュフです。そしてレバー系もなるべき敬遠したい私がお喜んで食べるのがフォアグラ。……みんな旨いのがいけんのじゃ。フォアグラ味のレバーを作ってくれたらいくらでも食べるんですけどね。

トリュフ各種 

 ところで万能鑑定士Qの経営なんですが、依頼客で賑わっているのは結構なんですが、大抵鑑定でお金を取らないのはいかがなものか。莉子的には一目で偽者とわかった場合はお金を取りづらいらしいのですが、事務所の家賃だって払わなければならない訳だし、一目見るだけであっても一鑑定千円とか決めておけばいいのになあと思ったりして。まあ欲のなさが莉子のいいところではあるんですが。

モナリザの瞳 

 ちなみに2014年公開の映画版「万能鑑定士Q -モナ・リザの瞳-」は本作が原作ではありませんが、やはりパリに飛んでいます。

映画版の莉子と小笠原 

 キャストは莉子が綾瀬はるかで相方的存在の「週刊角川」の小笠原が松坂桃李。それはまあいいのですが、喜屋武先生はなんとアンジャッシュの大島一哉(児島だよッ!!)。どうなんでしょうその配役は。本作では莉子がすごすぎるせいでポンコツ気味に描かれていますが、本来は莉子の探偵的技能の最初の師匠ともいえる人なんですよね。中島さんじゃ(児島だよッ!!)ポンコツ過ぎやしないでしょうかね。

児島だよッ 

北海道幸せ鉄道旅15路線:北海道へのラブレター

ドラゴンクエストⅪ

 「ドラゴンクエストⅪ」が発売され、やろうかどうしようか悩みつつ、ついついゲットしてしまいました。3DS版です。「ドラゴンクエストⅩ」がオンラインゲームになったことで、「私のドラクエはⅨで終わりました」と言いふらしていたこともあってちょっと恥ずかしいのですが、買ったからにはやるのみです。復ッ活ッドラクエ復活ッッ

ドラクエ復活 

 本日は矢野直美の「北海道幸せ鉄道旅15路線」を紹介しましょう。矢野直美の著作は初めて読みました。そういう訳でまずは著者紹介から。

北海道幸せ鉄道旅15路線 

 矢野直美は1967年生まれで札幌市出身。札幌市のタウン誌「さっぽろタウン情報」の編集者を経て、1990年よりフリーライターになりました。自ら写真を撮って紀行文を書くというスタイルで、「フォトライター」という肩書きを使用しています。鉄道についての執筆活動を中心としており、鉄道好き女子、通称「鉄子」のパイオニア的存在として知られています。

矢野直美 

 「北海道幸せ鉄道旅15路線」は、2005年7月に北海道新聞社から刊行された「北海道幸せ鉄道旅」を改題し、加筆、改筆し再編集したもので、講談社文庫から2009年7月20日に刊行されました。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

 ガイドブックにない風景との出合いを求めた、約3年にわたる各駅停車の旅。「鉄子ブーム」のパイオニア的存在として知られる著者が、出身地・北海道の鉄道の魅力を旅情あふれる写真と文章でていねいに綴ります。廃止された「ふるさと銀河線」の貴重な写真を含め、15路線を徹底網羅。北海道と鉄道旅がもっと好きになる、旅のおともに最適の一冊です。

雪の鉄道 

 JR北海道って、JR九州と並んで特急に力を入れていた会社だと思うんです。それは住民の利用以上に観光客を集めたいという思いもあってのことだと思うのですが、最近でも元気に豪華寝台列車「ななつ星in九州」が人気を博しているJR九州に対し、JR北海道は寂れ気味。廃線も相次いでいますし、事故や不祥事も頻発していますし。

 本書は、北海道出身で北海道をこよなく愛する著者の、北海道にちゃんと好きと言いたいという気持ちから書かれたラブレターですが、もちろん愛の対象には北の大地を走るJR北海道の鉄道も多分に含まれている訳です。そして私も北海道ラブ。札幌は第二の故郷と呼ばせて欲しいほど好きです。

ルピナスとローカル線 

 実は先週こっそり札幌にショートトリップしたんですが、その際に持っていったのがこの本。見かけは結構厚い本ですが、写真たっぷりなのでボリュームはそれほどではありません。私も乗った釧網本線、根室本線、宗谷本線、石勝線などのほか、学園都市線といった観光客はあまり乗りそうにないマニアックな路線も紹介しています。

 著者は北海道の鉄道旅のベストシーズンを6月と2月だと言っています。6月は梅雨のない北海道ではまさにベストシーズン。暑くもないし、ライラックやらルピナスといった綺麗な花々も咲きますし。2月の方は雪真っ盛りで、住んだ身としては生活するには色々苦労がある頃だぜと思ってしまうのですが、鉄道旅に限って見れば一面の雪景色の中を走るというのは確かに美しいし北海道ならではの光景といえるでしょう。

黄昏の鉄道 

 注目されるのは、新千歳空港から札幌に入る人の多くが乗るであろう千歳線(快速エアポートにはお世話になりました)も紹介されていること。見飽きて面白いものなんかないじゃんなんて思いましたが、北海道愛に溢れる作者にかかれば“ああ、こんなに素敵な路線だったのか”と再認識してしまいます

 今回札幌在住時代にお世話になっていた床屋のおばちゃんを訪ね、およそ1年半ぶりに散髪して貰ったのですが、おばちゃんはやたらに東京がスゴイスゴイと言い張り、それに比べて札幌は…という自虐的なセリフを吐くのですが、私は快速エアポートが札幌駅に到着する寸前の札幌中心部の街並みが好きだし、札幌は自然と人工物のバランスが実にいいし人口の適当だと思うと言うとまんざらでもない顔でうなずいていたりします。言うても札幌ラブなツンデレなんですね。

カーブするスーパー白鳥 

 最後にお知らせがあります。当ブログ、しばらくの間お休みになります。ドラクエに専念する…という訳ではなく、いわゆる「一身上の都合」です。ご愛顧いただいている方々には申し訳ありませんが、再開を気長に待っていただければ幸甚です。お暇があった時にでもたまに巡視に来ていただければ、もしかしたら復活しているかも知れません。

民王:池井戸潤による政界の「転校生」?

隅田川花火大会2017

 今日の筑波嶺は30度を切っていて比較的過ごしやすいです。湿気は高めなんで動くとアツゥイ!んですけどね。昨夜はテレビで隅田川花火大会を見ましたが、雨の中開催を強行しましたね。数年前は開始後豪雨になってさすがに中止してましたが、あれほどではなかったということでしょうか。

民王 

 本日は池井戸潤の「民王」を紹介します。ポプラ社のWebサイト「ポプラビーチ」で2009年8年から連載され、「鉄の骨」で第31回吉川英治文学新人賞受賞した直後の2010年5月にポプラ社から単行本が刊行され、2013年6月7日に文春文庫から文庫本が刊行されました。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です

民王単行本 

 「お前ら、そんな仕事して恥ずかしいと思わないのか。目をさましやがれ!」漢字の読めない政治家、酔っぱらい大臣、揚げ足取りのマスコミ、バカ大学生が入り乱れ、巨大な陰謀をめぐる痛快劇の幕が切って落とされた。総理の父とドラ息子が見つけた真実のカケラとは!?一気読み間違いなしの政治エンタメ!

国会議事堂 

 総理大臣が二代続けて1年で辞任して、民政党幹事長だった武藤泰山が新首相に就任します。ところがどうしたことか息子のバカ大学生武藤翔と人格が入れ替わってしまいます。「転校生」かよ!いや古いか。「君の名は。」かよ!の方がうけるでしょうかね。

 総選挙の機運が高まっており、サミットも間近という情勢下、なんとか秘密を保ちつつ乗り切ろうとする泰山。翔を国会に向かわせ、自身は就職活動に臨みますが、バカの極みの翔はろくに漢字も読めず、泰山も就職活動で面接官を偉そうに論破しては不採用になるなど、お互い不調です。

衆議院本会議場
 

 そんな中、経産大臣の鶴田もそのバカ息子と人格が入れ替わってしまいます。そればかりか、野党第一党である憲民党の蔵本も娘のエリカと人格が入れ替わりますが、エリカは政治家志望の優等生だったせいかさほど破綻せず代役をこなしています。しかし、こんなに立て続けに人格が入れ替わるということは偶然とは思えません。防衛大臣に調査をさせたところ、米CIAが研究していた技術が流出した模様。何者が、何のために仕掛けたのか?

 泰山は彼なりの理想があって政治家になりましたが、政界の因習やら派閥抗争などに明け暮れた結果、当初の志はすっかり忘れてしまっており、翔はヤンキーっぽい性格で、政治には全く興味がなく、二留するなど勉強も苦手です。

就職面接

 どっちもクソみたいだなあと思えますが、入れ替わったことでお互いの立場や思いを知ることになります。泰山は翔の純粋さや正義感に気付き、翔も政界の因習やマスコミの愚かさに曝される苦労を痛感します。

 警視庁からやってきて人格入れ替わりの調査にあたる公安部警視の新田がいい味出しています。公務員とは思えないヤクザのような強面ですが、絶大な諜報能力と格闘能力を持っています。人格入れ替わりの調査も、泰山のためとか民政党政権のためではなく、日本に対するテロ行為として当たっており、人間的にも信頼感があります。

サミット写真

 ところで2009年という時期、二代続けて短期政権が続いたというあたりで、実際の政界の状況をモデルにしたことは間違いありません。泰山は秋葉原で人気という設定もあり、明らかに自民党が下野する直前の首相、麻生太郎がモデルなんだろうと思われます。ということは蔵本はハトポッポか。

 ドタバタ劇の中、お互いマスコミや面接官相手に本音をぶちかました泰山と翔ですが、泰山は翔の第一志望の企業で最終面接にまで進み、翔はスキャンダル追及に終始するマスコミに、そんなことばかりやっているから国民がバカになるんだと啖呵を切ります。
主演者二人と池井戸潤 

 最終的には新田らの捜査によって事件のからくりが発覚し、二人の人格は元に戻ります。女子大生との合コンに浮かれてマイウェイを熱唱していた途中の泰山はアメリカ大統領の前で元の身体に戻りますが、大統領がマイウェイが大好きだったことで好評を得てしまい、翔も第一希望の企業から内定を取り付けます。

 そして法案成立と同時に衆議院を解散して総選挙に臨む泰山。結果はどうなったのかまでは書かれていませんが、現実世界では政権が交代し、新風に期待した国民を裏切りまくって暗黒の3年間が続くことになりました。せめてフィクションの中ではもうちょっと明るいといいですな。

民王テレビドラマ版 

 2015年7月から9月にかけ、テレビ朝日系でドラマ化されました。泰山は遠藤憲一、翔は菅田将暉が演じました。もちろん視聴していません(キリッ)が、ドラマ化されたから誰かが図書館にリクエストしたんだろうなと思います。筑波嶺の図書館の本、読後調べると映画化・ドラマ化というパターンが多いのですが、ミーハーなリクエストがされているんでしょう。嫌いじゃないですけどね。

続編とスピンオフ 

 テレビドラマ版は平均視聴率7.1%でしたが、ゴールデンタイムではなかったので苦戦という訳でもないでしょう。内容への評価は高く、オリコンの「コンフィデンス・ドラマアワード」で第1回作品賞・主演男優賞など4部門、放送批評懇談会ギャラクシー賞の9月月間賞、ザテレビジョンドラマアカデミー賞で最優秀作品賞など4部門などを受賞しました。その結果、2016年4月15日にその後を描いたスペシャルドラマ「民王スペシャル~新たなる陰謀~」、4月22日には泰山の秘書である貝原茂平が主役の「民王スピンオフ~恋する総裁選~」が放送されました。

選挙ポスター風メインキャスト 

万能鑑定士Qの事件簿Ⅳ:「催眠」シリーズ主人公・嵯峨敏也登場

大暑です

 本日大暑。曇天で暑さはやや控えめでしたが、これまでもう充分暑かったですからね。しかーし、これから立秋までが暑さのピークと言われます。しかし関東あたりでは処暑の頃までピークが続くような気がします。暦の上では秋とかいってもそんなの関係ねえ!というのが関東の夏のやり方。処暑を過ぎたら涼しいかといえば、別にそういう訳でもないのですが、日が徐々に短くなってくるのが救いですね。

大暑が来ると言うことは 

 本日はまたまた松岡圭祐の「万能鑑定士Qの事件簿Ⅳ」。ⅠとⅡの頃は春だった東京は、Ⅳでは初夏になっています。ということで、一連の事件はわりと短期間に起きているんですね。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

万能鑑定士Qの事件簿Ⅳ 

 希少な映画グッズのコレクターの家が火事になり、プレミア品の数々が灰になった。翌朝、やはりレア物のパンフレットやポスターを扱う店が不審火で全焼する。連続放火魔の狙いは、かつて全国規模でヒットを飛ばしながら存在を封印された1本の邦画だった。ミリオンセラー『催眠』の主人公、カウンセラー嵯峨敏也が登場、凜田莉子との初顔合わせを果たす。頭脳明晰な異色コンビが挑む謎とは? 書き下ろし「Qシリーズ」第4弾!

 ノストラダムスの大予言 ポスターその2

 ということで、狙われているのは1974年公開の東映のトンデモ特撮映画「ノストラダムスの大予言」のポスターでした。1974年の邦画部門の興行収入第2位で、まさかの文部省(当時)推薦映画でもありました。

ノストラダムスの大予言

 原作となっている五島勉の「ノストラダムスの大予言」は、1973年に祥伝社から発行されてベストセラーになり、、1999年7の月に人類が滅亡するという解釈を掲載したことにより、実質的に日本のノストラダムス現象の幕開けとなりました。「ちびまる子ちゃん」でもノストラダムスショックの話がありましたが、私も友人達とコワーイコワーイと騒いだ記憶がありますが、翌日から何事もなかったかのように日常生活を送ったような気がします。子供にとって20数年語というのはあまりに遠かったのかも知れません。

ノストラダムスの大予言 ポスター 

 前年の「日本沈没」の大ヒットを受けて東宝が製作したパニック映画の第二弾で、原作からはかなり離れたフィクション脚本による娯楽性の高い作品となっています。劇中、ニューギニアの原住民が被曝して食人鬼化して探検隊に襲いかかるシーンや、核戦争で滅亡後の世界に放射能で異形の姿となった新人類が描かれていますが、これが実際の原爆症による奇形をデフォルメしたものではないかと取り沙汰され、被爆者団体や反核団体から抗議を受けました。その影響でビデオ化やDVD化はされていませんが、完全ノーカット版の海賊版ビデオが出回った他、海外では"Last Days of Planet Earth" または "Catastrophe 1999" というタイトルで公開され、ビデオソフトやLD、DVDなどが発売されており、比較的容易に入手可能だったりします。

ルパン三世 念力珍作戦 

 ちなみに同時放映は「ルパン三世 念力珍作戦」。ルパン三世を目黒祐樹、次元大介が田中邦衛、峰不二子を江崎英子、銭形警部を伊東四朗が演じるという。「念力珍作戦」は、「何か時代性のあるタイトルにしろ」という東宝側の指示で、当時流行していた超能力ブームにかこつけてスタッフがつけたもので、内容とは特に関係ないようです。ルパンがワルサーP38ではなくワルサーPPKを使用しているなど、なかなか香ばしい作品のようです。

catastrophe1999.png 

 「ノストラダムスの大予言」のポスターは映画が封印状態になったこともあり、好事家の間ではかなりの高値になっているということですが、それを狙った連続放火事件が発生します。莉子は映画マニアが保険会社から保険金を受け取るためにポスターの価値の鑑定を依頼され、嵯峨は警察から犯人の心理状態などの分析を依頼されます。この二人が出会い、共に行動したら事件はたちどころに解決…と言いたいところですがそう簡単にはいきません。

ニューギニアの食人鬼 

 嵯峨と莉子、警察が見張って密室状態なのに燃やされるポスター。持ち主がちょっと目を離した隙に持ち出され、燃やされるポスター。そして持っていることを知られていないはずなのに燃やされるポスター。単独犯ではないことは明かですが、どうやってポスターの在処を探知しているのか。そして何のために焼いているのか。

新人類 

 そして莉子が辿り着いた結論。犯人は…まさか嵯峨なのか!?オチは読んでいただくとして、わかってみれば確かに色々と思い当たる節があります。どんなミステリーを読んでいてもそうなんですが、その時はスルーしてしまうのですよね。その辺りが探偵になれるかファンにとどまるかの瀬戸際なのかも知れませんが、莉子には探偵の才能がありますね。ここまで、犯人は莉子を恨むどころか、出逢えて良かったと思うばかりです。莉子が美人だからということもないわけではありませんが、なによりも莉子の心の清らかさが犯人を浄化しているようです。私も出逢いたいものですね、心が清らかな美人さんに。

莉子の浄化イラスト 

万能鑑定士Qの事件簿Ⅲ:凜田莉子歌手デビュー?

猛暑でぐったり

 梅雨が明けて猛暑襲来…というところなんでしょうが、とっくに来ていた猛暑。空梅雨でマイッチングな訳ですが、猛暑を防ぐ科学というのはないんでしょうかね。「こうすれば涼しい」といった対症療法ではなく、抜本的に猛暑を防ぐようなヤツ。SFには天候を操る気象兵器なんてのが登場しますが、その平和利用的なのが欲しいですね。

万能鑑定士Qの事件簿Ⅲ 

 本日は松岡圭祐の「万能鑑定士Qの事件簿Ⅲ」を紹介しましょう。「催眠」「千里眼」と彼のシリーズの第一作は読みましたが、続けて読みたくなったのは万能鑑定士シリーズのみ。モデルのように美人だけど天真爛漫で、まるで沖縄の海のように清らかな心の持ち主の凜田莉子は素敵ですよね。恋愛要素とかいらんのですけど、雑誌記者小笠原とくっついてしまうのでしょうかね。

 ⅠとⅡは凜田莉子の人となり、そしてかなりお馬鹿な波照間島の純真女子校生が万能鑑定士になるまでが描かれていましたが、ここからが本当の事件簿という感じでしょうか。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

お馬鹿だったJK時代の莉子 

 人気ファッションショップで、ある日突然、売り上げが落ちてしまう。いつも英語は赤点の女子高生が、東大入試レベルのヒアリング問題で満点を取る。この奇妙な事象をともに陰で操っていたのは、かつてミリオンセラーを連発した有名音楽プロデューサー・西園寺響だった。借金地獄に堕ちた彼は、音を利用した前代未聞の詐欺を繰り返していた。凜田莉子は鑑定眼と機知の限りを尽くして西園寺に挑む。書き下ろし「Qシリーズ」第3弾!

 西園寺響…あからさまにモデルは小○哲○ですね。90年代に一大ブームを築き上げ、数々のミリオンセラーやヒット曲を打ち立て、各メディアにおいて「小○ファミリー」「小○サウンド」「小○系」といった名称でカテゴライズされる社会現象を起こしたあの人です。

小○ファミリー 

 その小○とは別人のはずの西園寺ですが、独立やブーム消滅、離婚などで財産はなくなって借金地獄。ですが、もう一度スターダムに登るという夢(というか妄執)に囚われ、なお熱狂的ファンでいてくれる40代の男女(バブルを引き摺ったまま時代の変化を拒絶している)をも手駒&金づるにしています

 発端は、飯田橋のコンサバファッションのブティックで突如売り上げが急落し、売り上げの35%を振り込めば元に戻るという脅迫まがいの電話が来たことから。牛込警察署に相談したものの相手にされず、「週刊角川」が取り上げた、流行っていたはずの店が突如閉店するという「ストアシック症候群」の記事を見て記者の小笠原に接触します。実はその記事は海外記事の翻訳だったのですが、それなら頼りになる人がいるということで、凜田莉子が紹介されます。

高級ブティック 

 莉子はすぐに原因を突き止めます。JASRACに金を払いたくないために、著作権フリーのBGMを無料で配信しているサイトが、咳やくしゃみの音を送り込み、ハース効果で客が寄りつかなくなる、すぐに立ち去るという現状を自然に起こしていたのです。

 ハース効果とは、①同じ音が②複数の方向から③同音量で、音が発せられたときに、最も早く到達した音の音源の方向からすべてが聞こえているように感じてしまう現象のことです。左右同時に音を発した場合は、その中間点から音が聞こえたように感じます。店の中央付近にいた客は、自分のすぐそばに咳やくしゃみを聞くことになり、風邪やインフルエンザを忌避して思わず立ち退いていたというのが真相でした。

ハース効果 

 それとは別に、私立神楽坂学園高校では、出席日数が足りない美人JKを卒業させろというモンペチックな親に対し、担任の英語教師がテストで高得点を取ったら認めるということにします。教師だけが利用出来る、毎日ヒアリング問題を無料で提供するサイトからランダムに選択して作ったヒアリング問題を出題しますが、なんと満点を取るJK。東大レベルの問題も入っていたのになぜ?これも莉子が早稲田の氷室准教授の協力を得て、正解のセンテンスにモスキート音が入っていたことを突き止めます。

モスキート 

 モスキート音は、鬼の哭く街・A立区の公園に導入されたことで有名ですが、小型スピーカーから17キロヘルツという、非常に高周波数のブザー音を流すもので、20代後半以降の者には気にならない者が多いですが、聞こえる者にとっては、かなり耳障りであり、強く不快に感じる者も出ます。先生はおっさんなので聞こえませんでしたが、若いJKは聞き取って、モスキート音がした選択肢をチェックして満点をとっていたのです。

A立区の公園 

 この両方のサイトとも、巧妙に尻尾を出さないようになっていましたが、警察にも協力していた自称「サウンドコンシェルジェ」西園寺が浮上してきます。これら以外にも様々な詐欺まがいな手法を駆使して小金を集めては再起を期す西園寺。元歌手で妻の如月彩乃も心配する中、誰にも計画を知らせずに謎の行動を取る西園寺を莉子は止められるのか?

津波の被害に遭ったアチュ州 

 インドネシアまで飛んだり(ⅠとⅡの沖縄行きと同じで空振りですが、結果的には役に立つ)と、相変わらず人のためにとことん尽くす莉子。鑑定士の商売の方でちゃんとご飯食べていけるのか心配になりますが、単に美人なだけではなく、どこまでも心が綺麗なのが莉子の魅力。途中西園寺にスカウトされて自宅に連れて行かれたり、その後謎のリムジンに拉致まがいに連れ去られたりと、頭は切れるけど腕っ節の方はからっきしであろう莉子危うしな展開もありますが、幸い西村寿行流ハードロマンな展開はありません。というか、莉子には暴力沙汰は似合わないですけどね。莉子だけは勘弁してやってつかあさい。

リムジン 

 ことごとく計画を莉子に邪魔される西園寺は、最後には思いあまって莉子の毒殺を示唆します。二人は高級料亭で食事をしますが…。万能鑑定士の名に恥じない博覧強記ぶりで自分の安全保障まで確実にしている莉子に、西園寺もかたなし。一緒に花火を見て綺麗綺麗と素直に喜ぶ莉子にはきっと西園寺も毒気を抜かれたことでしょう。前作の犯人もそうですが、莉子にはそういう力があるんですね。 

高級料亭 

 ところで「催眠」も「千里眼」もそうでしたが、松岡圭祐は各章にサブタイトルをしっかり記載する人ですね。各章にサブタイトルを付ける作家は珍しいわけではありませんが、280ページくらいの本作にはなんと30章もあって、全部サブタイトルが付されています。これぐらい細かくサブタイトルを付ける作品とえば、昔読んだ、子供向けに改筆・圧縮されて翻案作品となったホームズシリーズややルパンシリーズを思い出しました。そのあたりのテイストを狙っているんでしょうかね?

旅する胃袋:食を楽しめればどこでも楽園

言うまいと思えど今日のアツゥイかな

 言うまいと思えど今日の「アツゥイ!!」かな それにしても暑いですね。土曜日が暑かろうが寒かろうが雨が降ろうが雪が降ろうがウォーキングには行くのですが、暑さのダメージはことのほかです。今までは水をがぶ飲みしてから歩きに出て、中間地点あたりの自販機で水かスポーツドリンクを買うのですが、先週辺りはもう往路でバテ気味になったので、初めての試みとして最初からペットボトルを持って出てみました。

いろはす 塩とレモン 

 経口補水液にしようと思ったけどスーパーになかったので、「いろはす 塩レモン」を買ってみたのですが、なかなかよかったですね。最初から給水しながら歩くと、いつもよりバテなかったような気がします。 
 
旅する胃袋 

 本日は篠藤ゆりの「旅する胃袋」です。篠藤ゆりの作品は初めて読みましたので、例によって作者紹介からです。

篠藤ゆり 

 篠藤ゆりは1957年生まれで福岡県出身。国際基督教大学(ICU)卒業後、コピーライターとして広告代理店に勤務しましたが、5年後に退社。その後、世界各地を旅する生活を経て、1991年「ガンジーの空」で海燕新人文学賞を受賞しました。

海燕 

 海燕新人文学賞は、福武書店(現ベネッセコーポレーション)が発刊していた文芸雑誌「海燕」の新人文学賞で、1982年から1996年まで続きました。「海燕」は埋もれている才能の発掘に力をいれていた文芸雑誌でしたが、文芸雑誌全体の不振のなかで部数を減らし、末期には実売部数よりも新人賞の応募者数のほうが多いとさえ揶揄されるほどの不振に陥り、廃刊となりました。

吉本ばななのキッチン 

 海燕新人文学賞の受賞者には、私が知っているところでは、吉本ばなな(「キッチン」で1987年受賞)、小川洋子(「揚羽蝶が壊れるとき」で1988年受賞)、角田光代(「幸福な遊戯」で1990年受賞)らがいます。

単行本版旅する胃袋 

 以後、おもに旅と食のエッセイを雑誌等で執筆しています。「旅する胃袋」は2002年7月に単行本がアートンから刊行され、2012年7月5日に文庫版が幻冬舎文庫から刊行されました。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

漢口 

 標高4000メートルの寺でバター茶に癒され、香港で禁断の食材を味わい、砂漠で人生最高のトマトエッグスープに出会う――。食に対してずば抜けた好奇心を持つ著者が、強靭 な胃袋を通して世界に触れた11の風味豊かな旅。「美味しいっ」と言う旅人に、土地の人はこんなにもあたたかな顔を見せてくれる。世界の美味が楽しめるレシピ付き。

パキスタン フンザ 

 紀行文学は気軽なのでいろいろ読んできましたが、食事に焦点を当て、さらに美味しい物ばかり食べているのは本作が白眉ではないでしょうか。まずい食事遭遇編なら「洗面器でヤギごはん」(石田ゆうすけ)なんて作品もありますが。

タイのアカ族 

 1979年、まだ大学生時代にタイ経由でインドに旅をしたのを皮切りに、2000年までに中国、パキスタン、タイ、香港、ブラジル、ミャンマー、モロッコを旅し、各地でおいしいものを食べまくっています。

サンパウロ 

 世界各国、どこに行ってもその地の民族の文化や歴史に根ざした料理があるのは当然ですが、旅行者がそれを美味しいと感じるかどうかはまた別問題です。ゲテモノにしか見えないものもありますし、当初は美味しく食べられても、次第に味に飽きたり、香辛料や油に辟易し始めたりするということはよくあることです。

インド レー 

 篠藤ゆりは、冒頭に“人並みはずれて丈夫な胃腸と、どんな過酷な旅にも耐えられる頑強な肉体を私に与えてくれた両親に、感謝の気持ちを込めて”と書いていますが、この人は世界のどこに行っても食あたりに合わず、美味しい美味しいと現地の食べ物を食べまくっています。

アトラス山脈 

 日本人だって、外国人が日本の食べ物を美味しい美味しいと食べているのを見れば悪い気はしないですが、それは外国人だってそう。異郷から来た日本人が日常食べているものを美味しい美味しいと称賛して貪り食い、そればかりかレシピを教わりたいと言ってくれば、よほど偏屈者でもない限り好意的に接してくるというものです。

なじむ 実になじむぞ 

 インドにはまった中谷美紀は、南インドでココナッツオイルにどうしてもなじめず苦労していましたが、篠藤ゆりにはそういう問題は全くなし。イスラム圏なのに酒を入手したり、ヘロインシンジケートの村に長逗留したり、どこへ行っても食や環境になじんでいきます。この適応力…もやは旅人になるために生まれてきたかのようです。

香港夜景 

 タイ料理やインド料理は、今となっては日本でも案外手軽に本格的なものを食べられるようになっていますが、篠藤ゆりが初めて海外旅行に行こうとした頃はまだまだそういう店はあまりありませんでした。でもそんな中にあってもインドやタイで暮らすなら、辛い料理に耐えられないとダメだとトライしまくったという冒頭の話が笑えますが、そういう意識の高さ(褒めてます)が、後年世界のどこに行っても当地の料理を愛し、それゆえに現地人に愛されるという好循環を作り上げることに寄与したのではないかと思います。

ラジャスタン 

 私の場合、篠藤ゆりのように辺境には行ったことは無く、まあまあメジャーな場所ばかり攻めていますが(この人も行っていないであろう超マイナーなエリアに行ったこともあることはありましたが)、まあまあ現地の食べ物には適応できていましたね。でもそれは短期間だったからかなあとも思います。

エーヤワディー川 

 紀行文を読むと旅はいいなあ、また行きたいなあと思ったりもしますが、しかし個人的大航海時代(海外旅行時代)はもう終わったなあという思いもあります。昔はあれほどワクワクした海外旅行が、今や面倒くさいなあという気持ちの方が先行するようになってしまい。国内旅行は面倒がないので、そっちの方が良くなったというのは、やはり年を取ったからなんでしょうかね。元気な人は年を取っても海外に出かけてますが。

砂漠の夜 

春期限定いちごタルト事件:“小市民”たらんと願う“狐”と“狼”

逃げ水出てくる

 オイオイオイ!これだけアツゥイ!!でまだ梅雨が明けてないの?てゆ~か~暑くなるのが早すぎるんですけど~。なんか口調がギャルというかオネエみたいになってますが、みんな暑さが悪いんじゃ。

RWBY アウト 

 それはそうと、夏季アニメ「RWBY Volume 1-3: The Beginning」は1話切りです。今季は視聴打ち切りがなければいいなあと思っていたんですが、カッとなって打ち切った。今も後悔していない。アメリカ製アニメで吹き替え声優陣は豪華なんですが…。声優はキャラに命を吹き込む存在。そういう認識は今も変わりませんが、アニメである以上絵もまた重要なんだということを再認識しました。見続ければ慣れるのかも知れないですが、アメリカンスタイルな会話もちょっと。

賭ケグルイ イン 

 代わって「賭ケグルイ」を追加。「RWBY」ははやみん枠でしたので、やはりはやみん主演の「賭ケグルイ」を見れば枠は埋まるということで。キャラの顔芸の凄さもさることながら、はやみんの狂気を滲ませた演技が実にいいですね。こういうはやみんを見たかった。ところで「シグルイ」とタイトルが似ているけど、関係あるんでしょうか。「ぬふぅ」「なまくらと申したか」「ごゆるりと」「む~ざんむざん」…なんか当てはまりそうで怖い(笑)。

春期限定いちごタルト事件 

 本日は米澤穂信の「春期限定いちごタルト事件」を紹介します。テレビアニメ「氷菓」を見てたせいか初めてとは思えないのですが、実は米澤穂信の作品は初めて読みました。よって例によって作者紹介から。

米沢穂信 

 米澤穂信は1978年生まれで岐阜県出身。物心ついた頃から漠然と作家を志望していたそうで、中学生のころから小説を書き始めました。金沢大学文学部の2年時から、ウェブサイトでネット小説サイト「汎夢殿」(はんむでん)を運営し、作品を発表し始めました。当初は各種エンターテイメント作品を書いていましたが、「六の宮の姫君」などの北村薫のミステリー作品に衝撃を受けたことから、ミステリーへの傾斜していきました

六の宮の姫君 

 大学卒業後、岐阜県高山市で書店員をしながら執筆を続け、2001年に「氷菓」で第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞してプロ作家デビューしました。当初は「氷菓」をはじめとする「〈古典部〉シリーズ」や、「春期限定いちごタルト事件」をはじめとする「〈小市民〉シリーズ」といったラノベテイストの青春ミステリと呼ばれるジャンルにおいて、「日常の謎」を扱った作品を主に発表していました。

小説版氷菓 

 その後、2010年発表のファンタジーテイストを取り入れた本格推理小説「折れた竜骨」で日本推理作家協会賞を受賞し、2014年には短篇集「満願」で第27回山本周五郎賞を受賞しました。直木賞候補には2度なっていますが、まだ受賞は果たしていません。

折れた竜骨 

 「〈古典部〉シリーズ」は、2012年に「氷菓」というタイトルで京都アニメーション制作により2クールにわたってアニメ化され、人気を博しました。これによって米澤穂信の名は私などアニメファンにも知れ渡るようになりました。「氷菓」はぜひ続きも見たいんでよろしくお願いします。

満願 

 「春期限定いちごタルト事件」は、2004年12月24日に創元推理文庫から刊行されました。先述のとおり「〈小市民〉シリーズ」の第一弾です。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

アニメ版氷菓 

 小鳩君と小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校一年生。きょうも二人は手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す。それなのに、二人の前には頻繁に謎が現れる。名探偵面などして目立ちたくないのに、なぜか謎を解く必要に迫られてしまう小鳩君は、果たしてあの小市民の星を掴み取ることができるのか?新鋭が放つライトな探偵物語、文庫書き下ろし。 

 高校合格

 そこそこの難関公立校である船戸高校に合格した小鳩常悟朗と小佐内ゆき。中学で知り合った二人はよく一緒にいますが、恋人同士という訳ではなく、共に小市民たらんとして相互互恵関係を結んでいます。

小市民 

 小鳩常悟朗は頭の回転が良くて問題事を推理したがる性格でしたが、中学時代にそのせいで苦い経験をし、もうしゃしゃり出ずに静かに暮らしたいと願うようになりました。小佐内ゆきは、恨みに対して執念深く復讐するという厄介なタイプだったようで、詳細は不明ながらやはり中学時代にそれを封印することを決意して小市民たらんと願うようになりました。そんな二人が小市民生活のために互いを利用し合い、庇い合うつもりでしたが、平凡かつ平和な高校生活を求めながらも日常の中で発生する事件の謎についつい挑んでしまう様子が描かれています。

狐と狼 

 本作は5編の短編(+プロローグとエピローグ)からなる連作短編で、高校合格直後から中間試験終了後まで、すなわち一年生の一学期半ばまでの出来事が綴られています。終始語り手は小鳩常悟朗で、小佐内ゆきの内心についてはブラックボックス状態となっています。

赤いポシェット 

 「羊の着ぐるみ」は女子生徒のポシェットを探す話。探偵はやめたんじゃないのかとツッコミたくなりますが、小鳩の小学校時代の同級生で、高校でまた一緒になった堂島健吾に頼まれたのでした。堂島は小生意気に事件に嘴を挟みまくっていた小鳩を知っており、嫌な奴だと思いながらもその推理力を認めていましたが、高校で再会した小鳩については、腹に一物を抱えて性質が悪くなったと否定的に見ています。小鳩の方は小市民でいたいだけなんですが、全く小市民とはかけ離れていた過去を知られているのは彼にとって困ったことですね。小鳩と小佐内ゆきは一緒に探していた男子生徒の奇妙な行動からあっさり真相を見抜きますが、小市民らしくそれは伏せておきました。

いちごタルト 

 「For your eyes only」は新聞部に入った堂島がもってきた奇妙な話でした。美術部の卒業生が2年前に書いた絵の謎を解くというものですが、絵のタイトルを聞いたらそれがなんなのかあっさり判明してしまいます。ただ、推理した結果が中学時代同様、感謝される形ではなかったことから、やはり小市民で行こうと決意を新たにするという。その傍らで、小佐内ゆきは、あまり偏差値が高くないらしい水上高校のサカガミという不良性とに、春期限定いちごタルトを籠に入れたままの自転車を盗まれてしまいます。

小佐内ゆきの自転車 

 「おいしいココアの作り方」は美術部の謎を解いた例と言うことで堂島の家に招かれた小鳩と小佐内ゆきが美味しいココアをご馳走になる話。それだけでは全然謎ではありませんが、堂島の姉・千里が乾いたままのシンクを見て、三つのカップだけでどうやってココアを作ったのか首を捻っているのを見て、その謎を解くことになります。堂島の作り方は、ココアの粉を少量のホットミルクで溶いてペースト状にしてから新たにホットミルクを注ぐことで粉っぽさを解消するというもので、カップの他にホットミルクの容器が必要なのですが…。謎が解けると非常にしょうもなかった(笑)。そもそも堂島は謎を仕掛けているわけでもなかったし。

バンホーテンココア 

 「はらふくるるわざ」。中間試験中、最後の科目「理科Ⅰ」のテスト中、小佐内ゆきのクラスでは突如栄養ドリンクの瓶が落下して割れるというハプニングがありました。そのせいで回答をど忘れしたとお冠のゆきは、暗に小鳩に謎を推理するよう迫りますが、小鳩は推理しつつも、それは小市民としての生き方に反するとしてわざとすっとぼけます。約束違反になるのではっきり推理を依頼できないゆきはケーキバイキングでウサをはらします。確かに言いたいことを言えないのははらふくるるわざですね。

ケーキバイキング 

 「孤狼の心」は、「For your eyes only」でサカガミに盗まれたゆきの自転車を発見する話ですが、なんとぞんざいに扱われた上に車に轢かれて無残な様に。何にも悪いことをしていないのにと怒り心頭のゆきは、過去の「狼」だった頃の自分に戻って復讐を企図します。なんとか止めようとする小鳩でしたが…。ちっちゃくて人見知りでおどおどした小動物系の女の子…のように見えるゆきでしたが、それは小市民たらんとして作られた仮初めの姿だったんですね。小鳩に言わせれば自分が狐ならゆきは狼なんだとか。おっかないなあゆき。そしてどうして狼をやめようと思ったのか知りたいですね。推理物としては一番本格的で、復讐を果たしつつ謎も解いて社会正義も守るという言うことなしの結果なのですが、結果やはり小市民たらんと改めて誓う小鳩とゆき。

やる気のかけらもない折木奉太郎 

 「氷菓」の主人公で探偵役の折木奉太郎も「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に。」をモットーとする省エネ主義者で、やる気をみせないキャラでしたが、彼もそうなるにあたっては過去に何かあったんでしょうね。アニメでは描かれていなかったけど。
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