ニートな午後3時:ニートの応援歌?3年ぶりに音楽ネタです

「海の日」ということで久々の三連休、ハッピーマンデーというヤツなんですが、月曜日が休みなのはいったいいつぶりかと思ったら、なんとゴールデンウィークの5月6日以来。日本は比較的祝日の多い国とされますが、昔はGW明けから9月の敬老の日までの約4ヶ月間祝日が全くありませんでした。今でこそ海の日とか山の日とかありますが、それでも2ヶ月以上、9週間の空白があるんですね。6月にもぜひ祝日が欲しいところです。時の記念日とかどうでしょうかね。

という、やたら時間の観念に触れる前振りをしておいて始めるのは、なんと3年ぶりに音楽ネタ。音楽関係は権利団体がうるさくなってきて非常にやりにくいのですが、合法ラインで進めたいと思います。実は「記憶に残る一言」でやろうかとも悩んだのですが、同じカテゴリーが続くのもどうかと思いまして。

本日は松原みきの「ニートな午後3時」を紹介したいと思います。「ニートな午後3時」は1981年2月5日発売の5thシングルで、資生堂の「'81春のキャンペーンソング」になっています。作詞は三浦徳子、作曲は小田裕一郎、編曲は大村雅朗。化粧品会社のCMソングはかつて資生堂・カネボウ・ポーラ・コーセーといった各社が華麗にバトルを展開していたという記憶がありますが、資生堂は1977年に尾崎亜美の「マイ・ピュア・レディ」、78年に南沙織の「春の予感 -I've been mellow-」(これも尾崎亜美作品)、80年に竹内まりやの「不思議なピーチパイ」とヒットさせてきて松原みきの「ニートな午後3時」につなげています。

同時期にカネボウは矢野顕子の「春咲小紅」を繰り出してきました。当時は矢野顕子がサポートメンバーとして参加していたかの伝説の音楽グループ、イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)が大人気ということもあってか、売り上げでは「春咲小紅」が圧倒的勝利を収めていました。矢野顕子はそもそもシングルヒットとは殆ど無縁なミュージシャンでしたが、これは売れたんですよね。「ニートな午後3時」もそこそこ売れたのですが、キャンペーンソングとしては残念な結果に。

一方今回の主役の松原みきですが、1959年11月28日生まれで大阪府岸和田市出身。ママンがジャズシンガーということもあって3歳からピアノを習い、中学生時代からロックに興味を持ち、高3で歌手デビューのため転校して単身東京へ赴きました。

20歳になる直前の1979年11月5日に「真夜中のドア〜Stay With Me」でデビューしました。以後1991年1月21日までにシングル17枚、ベスト盤を含むアルバム15枚を発表し、全国各地で演奏活動を展開しました。以降は結婚などもあって歌手としての活動を休止し、CMソングやアニメソングなどを中心とした作曲家として活動しました。2001年にがんと診断されて闘病生活を送りましたが、2004年10月7日に子宮頸癌のため44歳で亡くなりました。美人薄命とは言うけれど、早すぎる死でした。

歌詞の内容やメロディとは全く無関係に、“ニート ニート Everyday”とか“She's just ニート!”というフレーズに思わず笑ってしまうのは私だけでしょうか。現代巷間で「ニート」と言えば即座に連想されるのは“NEET”、つまり“Not in Education, Employment or Training”のことですよね。この単語が初登場したのは1999年のイギリス政府機関・社会的排除防止局が作成した調査報告書「Bridging the Gap」の中の表記だそうなので、この歌は18年も先行していたことに。

すごいや、三浦徳子は予言者なのか?しかしニートが活動するなら午後3時より午前3時の方が適当なような、なんて無粋なツッコミも浮かんできますが、もちろんここでの“ニート”はNEETではありません。では何だといえば“NEAT”なんですね。小綺麗なとか、素敵なといったニュアンスでしょうか。

歌詞の意味は浮気者の男と別れた冬が去り、きらめく春が来たので自由かつ華麗に前向きに生きていきましょうといった感じなのですが、“Neat, Neat Everyday 自由になれるわ”という歌詞が“NEAT”を“NEET”に置き換えてもそれなりにはまってしまうというところがなんとも。“She's just Neat!”は“She”を“He”に置き換えて“He's just NEET!”とした方がさらにはまっている感じもしますが、まあ女性のNEETだっているでしょうから“She”のままでも特に不適切ということもなりでしょう。
「毎日NEETだ」とか「彼女はまさしくNEET」なんて、まるで30年以上未来の日本を予測したかのようで、MMRのキバヤシが冷や汗ダラダラで大騒ぎしないのが不思議なほどですが、肝心のNEETな人達はこの歌のことを知っているのかどうか。

イギリスのロックバンドThe Damnedも1977年2月18日リリースのファーストアルバム「地獄に墜ちた野郎ども」の1曲目にに「ニート・ニート・ニート」という歌を収録しています。もちろんこちらのニートも“NEAT”なんですが、タイトルどおり機関銃のように「ニート・ニート・ニート」と連呼するあたりがなんとも。
ちなみに本来のNEETは20歳未満を指していましたが、日本では対象年齢が15〜34歳になってます。もういっそ年金受給前まで広げてしまったらいいんじゃないかとも思いますが、就職していないのに十分な収入を手に入れているネオニートいう存在もいるそうです。

夏目漱石なんかの小説を読むと、明治から昭和初期にかけて、大学等の高等教育機関を卒業しながら、経済的に不自由がないため労働に従事することなく読書などをして過ごしている人のことを“高等遊民”と読んだそうですが、現代の高等遊民がネオニートになるんでしょうか。ニートにせよネオニートや高等遊民にせよ、働かなくても生きていけるというのであればなんともうらやましいことです。こちとらしがないリーマン生活を続けていかないとすぐに顎が干上がってしまうというのに。

古代ギリシャでは労働は自然に支配され、身体を酷使し、人間の生理的な欲求を満たすだけの目的であることから軽蔑され、奴隷の仕事とされていました。その頃の弁論家・教育家はソフィストと呼ばれましたが、「智が働くようにしてくれる人」「教えてくれる人」といった意味を持つにもかかわらず、富裕層を相手に金銭と引き換えに商売しているということで、大衆からは否定的な見方をされていたとか。

生活用具を作る職人やそれを売買する商人さえも否定的に見られていたということで、ニートが異世界転生するなら古代ギリシャの都市国家のような世界がいいのかも知れませんね。誰か「なろう系」で連載してみてはどうでしょうか。ただしもし奴隷になったなら…

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