万能鑑定士Qの事件簿Ⅱ:「力士シール」に隠された驚愕の真相とは

七月ですなあ

 7月に入ってしまいました。2017年という年が既に半分消え去ってしまったという現実に驚くばかりです。なんという時の流れの速さよ。

万能鑑定士Qの事件簿Ⅱ 

 本日は水曜日の記事の続編、松岡圭祐の「万能鑑定士Qの事件簿Ⅱ」を紹介します。一つの物語の前後編ということになり、日本の襲った真贋鑑定不能な偽札によるハイパーインフレ事件が解決します。

 前編「万能鑑定士Qの事件簿Ⅰ」はヒロイン凜田莉子が「万能鑑定士Q」の看板を掲げるまでと、週刊角川の編集者小笠原悠斗が持ち込んだ「力士シール」の鑑定、そしてひょんなことから嗅ぎ付けた犯罪計画の未然阻止と、それが日本をジンバブエ化してしまうハイパーインフレを引き起こしたということころまで描かれていました。

ハイパーインフレ発生 

 本書では持ち前のロジカルシンキングを発揮した偽札の製造元が沖縄にあると睨んだ莉子が、有り金を叩いて沖縄行きの飛行機に乗り、家族の協力も得て真相究明に乗り出します。片や東京で独自に探索に動いていた小笠原悠斗はストーカー容疑で拘束(笑)。一方、莉子の知人で早稲田大学理工学部准教授の氷室拓真は、当選しているはずなのに銀行で門前払いされた宝くじの鑑定を莉子から受けようとしていた女性と出会います。これが真相究明の決め手になるとは誰も気付かなかったでしょう。それでは例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

 『週刊角川』記者・小笠原は途方に暮れていた。わずか2日で、コンビニの弁当は数千円から数万円に、JRのひと区間は九千円以上になり、いくら金があっても足りないのだ。従来のあらゆる鑑定をクリアした偽札が現れ、ハイパーインフレに陥ってしまった日本。だが、まだ万能鑑定士・凜田莉子の鑑定がある! パーフェクトな偽札の謎を暴き、未曾有の危機から国家を救うことができるのか!? 書き下ろし「Qシリーズ」第2弾!

知の宝庫莉子 

 突如として出現した精巧な偽札により、金融市場で完全に信用を失った日本は一気にハイパーインフレに陥ります。当初は莉子が不法侵入を未然に防いだせいかとも思われましたが、結果的には全く関係ありませんでした。

竹富島 

 莉子の鑑定や氷室の科学的分析を以てしても真贋の見分けがつかない偽札。その鍵は沖縄にあると睨んだ莉子は苦労の末実家のある波照間島に戻りました。地元の知人が竹富島に怪しい男がいるという情報をもたらし、莉子は駐在さんと共に向かいます。 

八重山諸島地図 

 竹富島は石垣島のすぐ傍ですが、波照間島からはやや遠いですね。通常ならどうということはない距離ですが、なにしろハイパーインフレにより漁船のガソリン代も馬鹿にならなくなっています。伝手を求めてなんとかガソリンを入手して向かった先には怪しい男と印刷機が。おっかなびっくりで腰が引けながらも勇気を振り絞って向かって行く莉子が可愛いです。「さすが美由紀様です!」と言いたくなる「千里眼シリーズ」の万能ヒーロー岬美由紀よりも、私は凜田莉子のファンです。正直岬美由紀にはYOU、西村寿行流ハードロマンの餌食になっちまえYO!とか思ってしまうのですが、莉子には無事でいて欲しいし、なにか手伝ってあげたいという気になります。
西表島 

 結局は全くの空振りでしたが、今度は西表島に不審な兄弟がいたという話を聞きつけ、西表島に向かう莉子。こっちで調べた謝花兄弟は、なんと力士シールの制作者らしいことが判明しますが、やはり偽札作りとは関係ないようです。ロジカルシンキングを駆使しながら外しまくる莉子がドジ可愛くていいですね。

アンニュイ莉子ちゃん 

 何の収穫もなく東京に戻った莉子は、小笠原の釈放(この人も空振りしまくっていた)に一役買って事務所に戻ったところで氷室に出会います。そして当選しているのに銀行が受け付けてくれない宝くじの話を聞き、一挙に真相に辿り着くことになります。

 「力士シール」は偽札と無関係ではなく、「力士シール」で実証したことを偽札で実行したという流れになっています。それでは何者が何のために犯行を行ったのかということですが、真実は莉子にとって非常に苦いものとなりました。

山ほど力士シール 

 莉子や氷室を以てしても真贋の区別がつかなかったのも当然。実は偽札は偽札ではなかったのでした。もちろん偽札に見えるようなトリックはありましたが、そこに気付いて集中的に調べないと判明しないものでした。そしてハイパーインフレは実際のところ、枯れ尾花に驚いて自ら尻餅をついたようなものだったのでした。真相が判って急速に収束することでしょう。

 犯人にも犯人なりに動機というか理由はあったのですが、それが引き起こした混乱を考えるととても正当化はできないでしょうね。「Qシリーズ」は「人が死なないミステリ」を標榜しているし、実際莉子が死体に遭遇することもないのですが、この混乱ではヒャッハーになった暴徒によって殺傷事件とかも起きてそうですし、ハイパーインフレによって診療を受けたり薬を買ったりすることが出来なかった人も多数いたと思われます。見えていないところでどれだけの人が迷惑を被ったか…

ジンバブエの位置 

 なおハイパーインフレというえばジンバブエという印象があり、本書でもジンバブエ化という表現が使われています。ジンバブエでのハイパーインフレは2000年に発生。ムガベ大統領が内戦状態になったコンゴに派兵したことで経済や医療、教育などが悪化したのに対し、大統領が批判を避ける目的で白人農場を強制収用したことで、白人地主が持っていた農業技術が失われ、第二次大戦後で世界最悪となるジンバブエ・ドルのハイパーインフレが発生しました。

ジンバブエの恐怖 

 1980年に導入されたジンバブエ・ドルは、当初はアメリカ・ドルより価値が高いものでしたが、ムガベ政権の経済政策の失政から急速に通貨価値が無くなりました。新ドルを発行したりデノミを実行したりしましたがハイパーインフレは収束せず、2008年にはなんと5000億%という破天荒なハイパーインフレが発生しました。牛乳500mlで600億ジンバブエ・ドルとかパン1斤に3000億ジンバブエ・ドルなどということになり、これに対応して超高額紙幣が次々に刷られ、最終的には100兆ドルまで登場しました。

ジンバブエの100兆ドル札 

 ジンバブエ政府は2009年にジンバブエ・ドルを実質的に放棄し、2015年に公式に廃止しました。現在国内では、米ドルや南アフリカの通貨ランドなどを含めた多通貨システムを採用し、超インフレは改善しているそうですが…

5億ディナール 

 かつて私が住んでいたユーゴスラビア社会主義連邦共和国も、構成国が次々と分離独立して国連から経済制裁を受けた1990~1994年頃にハイパーインフレーションが発生しました。私が住んでいた頃はまだ落ち着いていましたが、午前と午後で桁が違ったとかいう昔話は良く聞きました。そのため国民は自国通貨を信用せず、外貨(米ドルとか独マルク)を好む姿勢は長く続いていました。私も家賃は米ドル、メイド(といっても限りなくお婆さんに近いおばさん)への報酬は独マルクで払っていました。

水商売の意味もわからず 

 現在は最強通貨と言われる円ですが、自国通貨が信用できなるなんて日が来なけりゃいいですね…。それはともかく、凜田莉子はいいですね。利他的なキャラは松岡圭祐に多いですが、美人だから黙ってると神秘的ではあっても、実際は心が純粋で天真爛漫で。沖縄時代のお馬鹿キャラは、まるで「アルジャーノンに花束」の手術前のチャーリィみたい(いやそこまでではないけど)ですが、莉子の場合は自分に適した勉強法を見いだしたことと、あとは努力の賜物なので元に戻ることはありません。

上京を誓う莉子 
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