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空を見上げる古い歌を口ずさむ:ゲスモノ、マレビト、タガイモノ

藤井某のマネ

 将棋で歴代最多タイの28連勝中で時の人となっている藤井聡太四段の顔真似をした物真似タレントのツイッターが炎上して当該ツイートを削除するという騒ぎがありました。確かに顔真似は似ていましたが、バカにしたり貶めようとした印象はなかったので、削除までしなくても…とは思いますが、その一方で、芸人ならツイッターではなくテレビとか舞台で芸の一環として見せればいいのになあとも思います。ともあれ、あまり住みにくい世の中にならないといいのですが。

単行本 空を見上げる古い歌を口ずさむ 

 本日は小路幸也の「空を見上げる古い歌を口ずさむ」を紹介します。小路幸也の作品を読んだのは初めてですので、例によって著者紹介から。

小路幸也 

 小路幸也(しょうじ ゆきや)は1961年4月17日生まれで北海道旭川市出身。学生時代はミュージシャンを夢見ましたが、24歳の時に広告制作会社に就職しました。30歳の誕生日に「職業として」の作家を志し、ゲームシナリオの執筆や専門学校のゲームシナリオ科講師を務めながら小説の執筆を続け、2002年11月、本作で第29回メフィスト賞を受賞し作家デビューしました。

メフィスト誌 

 メフィスト賞は、講談社が発行する文芸雑誌「メフィスト」から生まれた、未発表小説を対象とした公募文学新人賞です。対象となるジャンルは、ミステリー、ファンタジー、SF、伝奇などを含めたエンタテインメント作品で、明確な応募期間は設けられておらず、「メフィスト」誌編集者が直接作品を読んだ上で選考を行うなどの特徴を持っています。

メフィスト賞とは 

 当初から賞金はありませんが、受賞作品はそのまま出版につながるため、印税が賞金代わりとなるほか、受賞に至らなくても編集者の興味を惹いた作品があれば応募者とコンタクトを取り、それが講談社からのデビューに繋がることもあるということで、ほぼ「持ち込み」を制度化したような賞といえるでしょう。

すべてがFになる クビキリサイクル

 基本「面白ければ何でもあり」で、まるで漫画雑誌みたいですが、受賞作家のジャンルは本格的ミステリ、純文学的作品、ライトノベル的作品など多岐にわたっています。受賞作家には、先日読んだ「群衆リドル Yの悲劇'93」の古野まほろ(2007年受賞。受賞作は「天帝のはしたなき果実」)、アニメで見た「すべてがFになる」の森博嗣(1996年受賞)、やはりアニメで見た「〈物語〉シリーズ」や「刀語」の西尾維新(2002年受賞。受賞作は「クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い」)、「殺人鬼フジコの衝動」など“イヤミス”の女王・真梨幸子(2005年受賞。受賞作は「孤虫症」)などがいます。

孤虫症 天帝のはしたなき果実

 小路幸也は青春小説・家族小説からミステリー・SFまで多彩なエンターテインメント作品を次々と発表しています。代表作はシリーズ化された「東京バンドワゴン」で、2013年10月から12月にかけて「東京バンドワゴン〜下町大家族物語」のタイトルで日本テレビ系でテレビドラマ化されました。

東京バンドワゴン
 
 また「東京公園」は、2011年に映画化され、第64回ロカルノ国際映画祭で金豹賞(グランプリ)審査員特別賞を受賞し、第85回キネマ旬報ベスト・テンにて第7位に選ばれました。

東京公演 

 現在は北海道江別市在住で、本、音楽、映画、スポーツをこよなく愛し、スポーツでは特にサッカー好きで、地元のコンサドーレ札幌を応援しているそうです。また、70年代のTVドラマやバラエティー番組に強い郷愁を抱いており、作品にもその影響を見ることができます。

文庫版 空を見上げる古い歌を口ずさむ 

 「空を見上げる古い歌を口ずさむ」は“pulp-town fiction”シリーズの第一作で、2003年4月に講談社から単行本が刊行され、2007年5月に講談社文庫から文庫版が刊行されました。それでは例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

 みんなの顔が<のっぺらぼう>に見える――。息子がそう言ったとき、僕は20年前に姿を消した兄に連絡を取った。家族みんなで暮らした懐かしいパルプ町。桜咲く<サクラバ>や六角交番、タンカス山など、あの町で起こった不思議な事件の真相を兄が語り始める。懐かしさがこみ上げるメフィスト賞受賞作!

 旭川市中心部

 凌一・美佳夫婦の一人息子彰は、小学5年生になった春のある日、急に人の顔がのっぺらぼうに見えると言い出します。すわ病院かというところで凌一は20年会っていない兄・恭一の言葉を思い出します。恭一は姿を消す直前、「いつか、お前の回りで、誰かが<のっぺらぼう>を見るようになったら呼んで欲しい」と言ったのでした。

 電話するや否やすぐにやってきた恭一は、自分も人がのっぺらぼうに見えるのだと言い、28年前の出来事、すなわち人がのっぺらぼうに見えだした頃の話を語り始めます。本書の大半は、恭一の昔話で出来ているので、事実上の主人公は恭一ですね。

旭川市パルプ町

 恭一と凌一、そしてその家族が住んでいたのはパルプ町と呼ばれる製紙工場を中心とする町でした。実際旭川市にはパルプ町という町があり、日本製紙の工場があります。本書においては大半が製紙工場職員の社宅か系列会社の職員の住舎で構成されており、床屋や銭湯は無料だったとされています。おそらく職員とその家族への福利厚生の一環だったのでしょう。

 恭一は謎の高熱で数日寝込んだ後、人の顔がのっぺらぼうに見えるようになってしまいました。知っている人なら声を聞けば誰だかわかり、写真のような画像がのっぺらぼうの顔に張り付くので識別可能ですが、知らない人はのっぺらぼうのままです。これは一体どうしたことかと思い悩みながら秘密にしていた恭一ですが、旭川市のデパートに行った時、群衆の中にはちらほらとのっぺらぼうではない人もいることを知ります。向こうも恭一のことがわかるようで、そのうちの一人のデパガは、「こちら側にようこそ」と囁きます。

日本製紙の工場 

 そうしてパルプ町では次々と奇怪な事件が発生するようになります。自殺する警官、失踪する友人、心臓麻痺で死ぬ大人達。恭一を見張っているらしいのっぺらぼうの白シャツの男(誰だか判らない)、顔は見えるけど誰だか判らない中学生くらいの少年。やがて恭一は自分が何者なのか、そして顔が見える人達が何者なのかを知ることになり、それが家族の元を去る転機をももたらすことになります。

 恭一と凌一は6歳差で、当時はわずか5歳。恭一の抱えた苦悩を知るには幼すぎ、ほとんどが初めて聞く話でした。内容紹介では“懐かしさがこみ上げる”と言っていますが、個人的にはあんまり。なにしろ旭川だし、年代も私よりだいぶ上なせいかも知れません。

旭橋 

 ちなみに人がのっぺらぼうに見えるようになった恭一が見た、ちゃんと顔がある人の一部は、ゲスモノ、マレビト、タガイモノとされます。ゲスモノは「解す者」、マレビトは「稀人」、タガイモノは「違い者」で、作中のある人物によるプロレスでの例えによると、「解す者」は日本人レスラー(つまり善玉:ベビーフェイス)、「違い者」は外人レスラー(つまり悪役:ヒール)、「稀人」はレフェリーなんだそうです。今ではそういう構図は崩壊していますが、70年代頃までは一部を除き日本人は善玉、外人は悪玉でしたね。無論外国に行けば日本人が悪玉になるんでしょうが。

 恭一は「稀人」で、強力な「違い者」を「解す者」が倒すためには「稀人」の協力が必要なんだそうです。それじゃあレフェリーを抱き込んでいるみたいですが、「違い者」の凶器や反則をしっかりチェックすれば自ずと「解す者」が勝つということでしょうか。

BI砲 

 恭一によればおそらく先祖に「稀人」の血が流れていたのだろうということで、弟の凌一にはその気配がなく安心していたが、その息子の彰に発現したということで、今後は近くに住んで教えられることは教えるということになります。これまで遠ざかっていたことについては、恭一としてはちゃんとした理由があり、本当に正しいかどうかはともかく切ないというか悲しいというか。

 なお、恭一から顔が見えるのは「解す者」と「違い者」ばかりではないようで、それ以外のタイプもいるようです。一時行方不明になっていた(「違い者」に拉致されていた)恭一の友人の「ヤスッパ」も、救出後には顔が見えるようになっており、それまでとは違い何かに変わっていましたが、「解す者」でも「違い者」でもないようです。顔が見える人は、恭一に好意的(例えばデパガ)な人もいれば、敵意や悪意を持つ者もいますが、そういう人には近づかないようにすれば向こうも何もしないのだとか。まあプロレスに例えれば、善玉や悪玉という分類以外に、格闘技色の強いU系とかショー的要素の強いお笑い系や怪奇系、さらにデスマッチ系など様々なレスラーがいますから、デパガの言う「こちら側」にもいろんなタイプがいるんでしょう。

ブッチャーとタイガージェット・シン 

 どちらかというと物事ははっきりさせたい方ですが、よくわからないまま終わってしまう朦朧法も嫌いではありません。なおのっぺらぼうに見えるかどうかはともかく、「顔を見てもその表情の識別が出来ず、誰の顔か解らず、もって個人の識別が出来なくなる症状」を相貌失認といいます。頭部損傷や脳腫瘍・血管障害などの脳障害が後天的に相貌失認を誘発する要因となるそうですが、親しい知人の顔が突然認識できなくなるという、典型的な症状は古代ギリシャ時代から確認されています。実は先天的に相貌失認を発症するケースもあり、その確率は2%程度と推定されるそうです。……結構多いですね。ただ、人間の個体識別は顔の認識だけでなく声や着衣、体格、振る舞いなど様々な情報を総合して行われているので、顔の認識に障害があっても他の機能で代償し、日常生活に支障をきたしていないため、相貌失認を自覚していない人が相当に存在するのだと考えられるそうです。実は私達も…

相貌失認の例 

千里眼 完全版:“女流ジャック・バウアー”岬美由紀八面六臂の大活劇

夏至なんですが

 昨日は全国的に夏至だった訳ですが、関東地方は大雨&強風でミニ台風といった感じでした。一番昼が長い日が曇天というのは宿命のようなものですが、せめて梅雨らしくシトシト降って欲しいものです。そういえば昨日は北陸と東北で梅雨入りが発表されましたが…まだ入ってなかったんかい(笑)。

千里眼 完全版 

 本日は松岡圭祐の「千里眼 完全版」を紹介します。千里眼シリーズは、デビュー作「催眠」から始まる催眠シリーズに続くもので、旧版「千里眼」は1999年6月に小学館から刊行されました。旧版は小学館文庫から全12巻が刊行され、一旦完結しましたが、角川文庫で再発売する際、初期作には内容に大きく手を加えて「完全版」と銘打ち、クラシックシリーズとして一部作品は新作と入れ替えて刷新しました。さらに角川文庫からはクラシックシリーズの続編の新シリーズも刊行されています。

旧版千里眼 

 千里眼シリーズは、元航空自衛官2尉でイーグルドライバー(F15のパイロット)だった経歴を持ち、今は臨床心理士となっている岬美由紀を主人公としたミステリー・エンターテインメントで、今までに累計600万部以上を売り上げる人気シリーズですが、手にしたのはこれが初めてでした。りゅ、流行を追わない漢なもので(汗)。

映画版千里眼 

 「千里眼 完全版」は2008年11月1日に角川文庫から刊行されました。旧版から10年近い歳月が流れているということで、「催眠」同様、アップデートが行われており、旧版で描かれていた「目の動きで心理を読む」という技術は科学的根拠がないとして否定しているほか、世間の“催眠術”なるものへの偏見を様々な形で否定しています。それでは例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

東京湾観音 

 房総半島の先にそびえる巨大な観音像を参拝に訪れた少女。突然倒れたその子のポケットから転げ落ちたのは、度重なるテロ行為で日本を震撼させていたあるカルト教団の教典だった…。すべてはここから始まった!元航空自衛隊の戦闘機パイロットにして、現在戦う臨床心理士岬美由紀の活躍を描く、千里眼シリーズの原点が、大幅な改稿で生まれ変わり、クラシックシリーズとして刊行開始!待望の完全版!

ジャック・バウアー 

 「催眠」シリーズに比べ、ミステリー色よりもアクション・エンターテイメント色が強い作品で、ヒロイン岬美由紀が「24」シリーズのジャック・バウアーも仰天の不死身の活躍を見せます。解説者は本作をリアリティーが高いと評していますが、むしろリアリティーを度外視して面白さを優先したように思えるのですが。

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 防衛大学校を首席卒業し、航空自衛隊に入隊して女性自衛官として初のF-15Jパイロット、イーグルドライバーとなった岬美由紀は、被災地救援や不審船追尾で命令逸脱があったことで査問にかけられましたが、上層部は優秀かつスターである美由紀の免職を好まず、代わりに上官を失職させて決着を図ろうとしましたが、美由紀はこれに反発して自衛隊を辞め、被災地で出会った「千里眼」の異名を持つ臨床心理士兼脳外科医の友里佐知子に惹かれ、臨床心理士になりました。

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 友里が院長を務める東京晴海医科大付属病院で臨床心理士として勤務を始めた美由紀ですが、折りしも日本では社会不安が増大しています。恒星天球教を名乗る謎のカルト教団が日本全国各地で爆破テロを連発させ、その実態が皆目見当も付かないという状態が続いています。

イージス艦 

 恒星天球教のテロは、在日米軍のイージス艦をジャックして高速対地ミサイルを総理官邸に向けて発射態勢にするまでに至ります。犯人は制圧したものの、目標はパスワードでロックされています。日本政府は「千里眼」である友里に一抹の望みをかけ、犯人からパスワードを読み取ることを依頼します。美由紀は友里と共に横須賀に向かい、心理学的手法を駆使してパスワードを割り出してすんでのところで発射命令をキャンセルしましたが、犯人は米兵から拳銃を奪って自殺してしまいます。

アストンマーティンDB9 

 恒星天球教は失敗も折り込み済みだったらしく、5日の猶予を与えて日本政府に“全面降伏”を要求します。美由紀の示唆もあり、警察はようやく恒星天球教の幹部一人を割り出しますが、潜伏先に踏み込んだ時、信者十数人と共に自爆してしまいます。教祖阿吽拿(アウンナ)以下、勢力も全貌も不明のままの恒星天球教。そして催眠では犯罪や自殺はできないとの美由紀の主張とは裏腹に凶悪犯罪は自決を厭わない信者達。一体どんなからくりがあるのか。

ベレッタM92 

 事件解決の契機は、美由紀がカウンセラーを担当する幼女の行動でした。なぜか早朝東京湾観音に向かう彼女が後催眠にかかっていることに気付いた美由紀は、事件の鍵が東京湾観音にあると睨み、張り込みますが…

C4爆薬 

 物語は美由紀の行動の他、官邸の官房長官、美由紀のかつての上司である航空総隊司令官らの行動を交互に織り交ぜて進んでいきます。美由紀の相棒は、美由紀こそ恒星天球教と関わりがあるのではないかと疑っている警視庁捜査一課の蒲生警部補。最初はいがみ合っていた二人がやがて協力関係になるという展開は、その後恋仲に…と言いたいところですが、スーパーレディ美由紀の相手におっさんは務まらないのでした。

東京湾観音の後ろ側 

 あまりにも意外な恒星天球教教祖阿吽拿の正体もさることながら、終盤のアクションの連続はスゴイですね。東京湾観音に仕掛けられたジャミング装置により、羽田空港に向かう航空機がミサイルと誤認され、パトリオットPAC3による迎撃準備が行われる中、なんとか装置を止めようとする美由紀と、立ちふさがる凶暴な信者のバトル。その後F15での激しい空中戦、そして銃撃によりコクピットが破壊されてパイロットが死亡した航空機に乗り移り、なんとか空港に着陸させる…

早一ヶ月か 

 これが数時間の間に連続して発生しています。イベントと度に負傷する美由紀ですが、なぜか超人敵ミッションをこなしまくっていきます。個人的には「男塾」みたいにそれぞれのイベントの間に一ヶ月位は欲しいところだと思いますが。「早いモノじゃのう…○○からもう一ヶ月か…」的なのがないと、途中でダメージの大きさにノックアウトされていそうです。いくら元自衛隊員でも強すぎる。

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 催眠では犯罪や自殺は起こさせられないにも関わらず、なぜかそれを行っている信者という矛盾。実はそれを解決していたのは、いわゆるロボトミー手術でした。側頭部に穴をあけ、前頭葉を脳のその他の部分から切り離し、催眠のほか薬品も使って完全な操り人形にしていたという。

ロボトミー手術 

 ロボトミーという言葉から人を「ロボット (robot)」 のようにしてしまうという誤解がありますが、ロボトミー(lobotomy)は、肺や脳などで臓器を構成する大きな単位である「葉(lobe)」を一塊に切除することを意味する外科分野の術語です。前頭葉は、現在の行動によって生じる未来における結果の認知や、より良い行動の選択、許容され難い社会的応答の無効化と抑圧、物事の類似点や相違点の判断に関する能力や課題に基づかない長期記憶の保持といった役割も担っているほか、社会的に好ましい規範に適合するように情動を調整する機能を持っているとされ、ロボトミー手術は精神疾患を抱える患者の苦悩を軽減することに成功した場合もありましたが、副作用として感情、意思、人格の鈍化といった深刻な副作用も見られ、手術の危険性もあいまって、現在では精神医学的な療法としてはほぼ姿を消していますが、まさかカルト教団の信者作りに利用するとは。

こめかみからのロボトミー 

 オウム真理教をモデルとしたらしい恒星天球教、そして航空機を使ったテロも9.11以後は現実のものとなってしまいました。そういった意味では恐ろしいカルト教団が凶悪なテロを引き起こすと言う事態は決して夢物語とは言えないのですが、本作では美由紀以外があまりにも無能なのと、美由紀があまりにも超人なのでリアリティを感じるかといえばちょっと…。ラノベだったら丁度良かったんじゃないかと思いますが。

羽田空港

 リアリティに疑問を感じる部分その1:イージス艦に侵入した犯人を捕らえたのはいいとして、腕を前にして手錠を掛け、さらに抜きやすい状態で拳銃を持った兵士がそばをうろうろしている。銃社会のアメリカでは、警察も容疑者拘束の際には後ろ手にしているようですが、軍はしないのか。

パトリオットPAC3 

 その2:単独行動する警視庁捜査一課警部補。そしてそれをとがめる参事官。上司といえば上司だけど、警部補(主任)との間には係長(警部)とか管理官(警視)といった連中がいるはず。なぜに警視正の参事官から直接命令されたり叱られたりしているんだ。

ロボトミーカード 

 その3:ロボトミー手術を受けて教団の操り人形と化しているのに、誰にも疑問を持たれずに日常生活を送っている信者達。さすがに以前とは違うとか周囲に思われないのでしょうか。中にはカウンセラーをやっている信者まで。

DVD 千里眼 キネシクス・アイ 

 旧版の方を原作に、映画「千里眼」が2000年6月10日に公開されていますが、脚本を松岡圭祐が担当したにも関わらず、実際には使用されず、作者としては忸怩たる内容だったようです。その後監督・脚本・編集を松岡圭祐が務めた「千里眼 キネシクス・アイ」が制作されました。元は千里眼シリーズ10周年記念として同名タイトルの小説単行本にDVDを封入して期間限定発売されたものでしたが、2009年9月12日、SBS静岡放送でCGリニューアル版が放送されました。

アウトサイダー 組織犯罪対策課 八神瑛子Ⅲ:「八神瑛子」シリーズ完結編

早見沙織のふり~すたいる♪

 先週の「早見沙織のふり~すたいる♪」を聞いていたら、はやみんが最近ビタミンBを摂っているので喉の粘膜の調子がいいと言っていました。それを聞いて奇遇だなあと思ったのは、私も最近ビタミンBの摂取を始めてたから。私は声優ではないので喉ではなく、口角炎対策でした。

口角炎 

 春先から口角炎ができまして、オロナインを塗って対抗していたんですが、なかなか治りませんでした。そもそもオロナインが効くのかという抜本的問題もありますが、外傷にはオロナインと子供の頃からマインドコントロールされているもんで。プラシーボ効果かも知れませんが一応治ったんですが、最近再発しまして。

ビタミンB群 

 またオロナインで泥沼というのも馬鹿馬鹿しいので、そもそもどうして口角炎になるのかを調べたら(ネットは偉大ですね)、ビタミンB2とB6が欠乏すると口角炎が起きやすくなるという情報が。食事から摂取するのが王道だろうとは思うのですが、普段の食事で足らないというのなら、この際サプリに頼っても良かろうと手に取ったのが。アサヒのDear-NaturaのビタミンB群。ビタミンBには、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンB12、葉酸の八種類があるのでビタミンB群と呼ばれていますが、お互い助け合いながら働くのでビタミンB群は全部一緒に摂るのが望ましいらしいです。おかげで飲み始めたらあっという間に口角炎が治りましたが、30日分あるので全部摂るぞ。

アウトサイダー 

 本日は深町秋生の「アウトサイダー 組織犯罪対策課 八神瑛子Ⅲ」を紹介しましょう。八神瑛子シリーズは、当ブログでは第1弾「アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子」を2013年6月17日(http://nocturnetsukubane.blog.fc2.com/blog-entry-404.html)、第2弾「アウトクラッシュ 組織犯罪対策課 八神瑛子Ⅱ」を2016年4月20日(http://nocturnetsukubane.blog.fc2.com/blog-entry-1287.html)に紹介しており、4年掛けて堂々完結です。作品の方は2011~2013年の2年間で完結していますが、紹介記事が倍かかってしまっているという謎仕様。

 本作は2013年6月30日に幻冬舎文庫から書き下ろしで刊行されています。刊行後ほぼ4年かかってようやく読めるとは。図書館頼みだとこんなもんでしょうかね。みんなビンボがいけないんじゃ。ぼやきはさており、例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

八神瑛子三部作 

 自殺とされた夫の死の真相に迫る警視庁上野署の八神。警察による証拠改ざんの疑いが増す中、執念で摑んだ手がかりは、新宿署の五條の存在だった。権威と暴力で闇社会を支配する五條に、八神は命を賭した闘いを仕掛ける。硝煙の彼方に追い求めた真実は見えるのか? 美しくも危険すぎる女刑事が疾走する警察小説シリーズ、壮絶なクライマックスへ。

 警視庁上野署組織犯罪対策課に勤務する警部補八神瑛子は、過去に雑誌記者だった夫を亡くし、そのショックで娘を流産しています。その原因が、夫が追っていた暴力団印旛会系高杉組会長芦尾の死と関係があると睨む八神ですが、捜査一課は自殺との判断を変えませんでした。そのため、警察組織にありながら警察組織を恨む八神は、敏腕マル暴刑事という評価の裏で、警官達に低利で金を貸して協力者に仕立て、外部でも情報提供者を多数抱えています。その全ては夫の死亡事件を殺人と断定し、その犯人や黒幕を暴くことにあり、合法非合法を問わず、あらゆる手段を駆使していきます。

深町秋生 

 上司である上野署長の富永は、八神を腐敗警官とみなして危険視し、こちらも八神の部下や元刑事を使って八神の動向を監視しています。第1作では強くて美しい八神のスーパーウーマンぶりが目立ちましたが、2作3作と続くうちに敵も強力になって、やられるシーンが多くなっていきます。今回は特に拉致や死の危険にさらされることに。

 八神瑛子は未亡人ですが、もの凄い美人という設定で、2014年8月9日にフジテレビ系で放映された「アウトバーン マル暴の女刑事・八神瑛子」(第1作が原作)では米倉涼子が演じていました。個人的イメージでは、中谷美紀とか木村佳乃あたりの方が合っている気もするのですが。

テレビドラマ版では米倉涼子が演じていた

 八神の危険を伴う探索行の傍ら、署長の富永と八神の対立という構図もあるのですが、本作では最後の最後に遂に共闘という形になります。富永も警察の腐敗を憎む心が強く、それが故に不良警官として八神を危険視して忌み嫌っていたのですが、八神が追っている敵がどうやら警察内部に存在するということを知って助けることになるのですが、やっぱり八神の美貌あってのことのような気がするのは私だけでしょうか。

 それだけ美貌なら拉致→レイプという危険もありそうなもので、実際ちょっと危険な状況になったりもするのですが、最後まで操(?)は守られました。どんなに強い女でも平然と性奴隷に堕とす西村寿行だったら大変な目に遭っているところで、それはそれで好物なんですが、まあ仮にやっちまうと、西村寿行のエピゴーネンだと言われるでしょうしね。西村版八神瑛子は妄想するだけに留めましょう。「男根様」とか「男様」とか口走っちゃう八神や、ワンパンで倒せるようなチンピラに陵辱されまくる八神…うーむ、ハードロマン。

峠に棲む鬼上下巻 

 内容紹介にあるとおり、実行犯は新宿署の五條。そのバックには元警視庁警備部長で現在は警察共済組合理事の殿山がいました。彼らが高杉組を使って財テク&マネーロンダリングを行っていたのを逆手に取って脅そうとした高杉組長は、五條に返り討ちにされて自殺に見せかけて殺され、事件を追っていた八神の夫もやはり同じく自殺を装って殺されていたのでした。

トカレフ 

 第二作目のメキシコ人の殺し屋“グラニソ”も強力な敵でしたが、五條も強い。身体的能力も極めて高い上に躊躇無く殺人を実行し、防弾ベストなどで防御もバッチリです。五條に言わせれば、理由はどうあれ警察内外に多くの手下を作っている八神は自分と同類なんだそうで、ショットガンを向けながら「組まないか」と持ちかけたりします。道下君なら「ウホッ!いい刑事」とホイホイ付いていってしまったことでしょうが…残念!八神は女だった(笑)。

組まないか 

 一応大団円ということになるのでしょうが、五條は自殺、殿山も自殺してしまい、もっといたはずのグループの全容はできていません。なおも捜査にあたって実はさらにビッグな黒幕がいたという話にもなりそうですが、物語はここで終わっています。いがみ合っていた富永署長と八神が和解できたということで、今後は共闘もスムーズに進みそうですが、実は富永署長、ツンデレなだけで実は最初から八神が好きだったんじゃないかという疑惑も。男女を問わずモテモテでいいなあ八神。仮に警察を追われても中国マフィアの劉英麗がクラブのホステスとして(ゆくゆくはパートナーとして)すぐに雇ってくれるという。

ショットガン 

 破天荒刑事を描くにしても、本作は矢月秀作の「もぐら」シリーズよりはよほどリアリティがありますが、それでも同僚刑事の拳銃を不発に細工するなど、そんなこと簡単にできないだろうというシーンはあります。そもそも「警察官等けん銃使用及び取扱い規範」なんかを見ると、刑事は拳銃なんてそんなにいつも持ち歩いていないようですし、管理は徹底されているので他人の拳銃に細工するなんてとてもとても。公務じゃないから拳銃を持たず、それでやられてしまうという方がリアルなのかも知れません。ま、嘘は嘘でも上手に嘘をついている分こちらの方がいいですな。

ドラマ版アウトバーン 

禁断の魔術:ガリレオシリーズの最終作?

野際陽子逝去

 女優の野際陽子が13日に亡くなっていたことが本日判明しました。数々のドラマに出演してきたベテラン大女優ですが、なんと81歳にもなっていたんですね。個人的にインパクトがあったのは「ガラスの仮面」の月影先生。

原作から抜け出てきたかのよう 

 今から20年前の1997年のことで、ヒロイン北島マヤは安達祐実が演じていましたが、他のキャスティングはともかく、月影先生(月影千草)の半端ない再現率には驚愕したものです。月影先生は何かというとマヤの演技に「おそろしい子……」というのですが、本当におそろしい(素晴らしい)のはあなたでした。ご冥福を心からお祈り致します。
 
禁断の魔術 文庫版 

 では本題ですが、本日は東野圭吾の「禁断の魔術」を紹介します。2015年6月10日に描き下ろしで文春文庫から刊行されました。流行を追わない(追えない)私としては最新刊の部類ですね。

 「禁断の魔術」は、もともと2012年10月15日に文藝春秋から刊行された連作短編「禁断の魔術 ガリレオ8」に収録された最終話「猛射つ(うつ)」を大幅に加筆・改稿したものです。残りの三編(「透視す(みとおす)」「曲球る(まがる)」「念波る(おくる)」は2015年3月10日発売の文春文庫「虚像の道化師」に収録されています。

禁断の魔術 単行本 

 ガリレオシリーズは1996年10月に第一作「燃える」を皮切りに長編3作、短編集5作が刊行された訳ですが、「猛射つ(うつ)」を長編化した本作が4作目の長編にしてシリーズ最終作になる可能性があります。東野圭吾は本書の公式HPで“この物語では、湯川に試練を与えようと思いました。私の頭に浮かんだのは、「もし自分のせいで殺人犯になりそうな人間がいたら、湯川はどんなふうに苦しみ、どうやって責任を取るだろう」というアイデアでした。(中略)クライマックスで湯川がとる行動には、きっと多くの方が驚かれることだろうと思います。”と言っていますが、湯川の行動はまさに最終回的というか、一歩間違えれば本当に最終回にせざるを得ないものでした。

 また“ガリレオのことは当分考えたくありません。”とも言っており、最後かどうかはともかく、当面は書かないような雰囲気です。まあその間、加賀恭一郎シリーズをやってくれれば個人的にはそれはそれで結構なんですけどね。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

禁断の魔術 コシマキ

 高校の物理研究会で湯川の後輩にあたる古芝伸吾は、育ての親だった姉が亡くなって帝都大を中退し町工場で働いていた。ある日、フリーライターが殺された。彼は代議士の大賀を追っており、また大賀の担当の新聞記者が伸吾の姉だったことが判明する。伸吾が失踪し、湯川は伸吾のある“企み”に気づくが…。シリーズ最高傑作

 進学校である統和高校の物理研究会は部員ゼロの危機に陥っていました。最後の部員古芝伸吾は、支援要請を快く引き受けた湯川の指導により、あっと驚くパフォーマンスで新入生から部員を獲得することに成功し、部活消滅の危機を乗り越えます。

公式HPの煽り文 

 一年後、古芝は帝都大学に入学し、湯川に挨拶に来ました。湯川も古芝を飲み込みの良い後輩として目を掛けており、二人の交流はこれからもっと本格化するのか思われましたが…。小芝の両親は既に亡く、新聞記者をしている姉が保護者となっていましたが、なんと小芝の帝都大入学直後に急死してしまったのです。

 小芝は帝都大を中退し、足立区梅島(自慢じゃないですが、西新井に長く住んだ私には土地勘がありますよ)の金属加工の町工場で働き始めます。保護者が誰もいなくなった以上仕方ないじゃないかと思われますが、実は姉の尽力で結構な奨学金を得ており、勉学を続ければ続けられたのです。それでも中退を選んだ意味は…

子宮外妊娠 

 小芝の姉・秋穂の死因は子宮外妊娠による卵管破裂でのショック死。つまり殺人事件とかではなかったのですが、政治記者だった秋穂は担当であった大物代議士大賀仁策と深い仲だったことが判明。その日もホテルで密会していたはずなのですが、秋穂の異変をフロントに知らせるわけでもなく、救急車を呼ぶでもなく放置して逃げ出した模様。小芝の狙いは姉の復讐なのか。

 一方、大賀の地元・光原市では、大賀のお声掛かりで「スーパー・テクノポリス計画」が推進中。環境破壊などになり地元では反対運動が起こっていますが、そんな中、反対派の有力メンバーで大賀仁策のスキャンダルを追っていたフリーライターの長岡が殺害されるという事件が発生します。現場に残されたメモリーの映像は、不思議な爆発シーンでした。

学園都市 

 これは小芝が高校時代にパフォーマンスで行った「レールガン」の実験と同じものなのではないか。また屋形船の窓が突然破壊されて火災が発生したり、倉庫の壁に孔が空いたり、オートバイのガソリンタンクが突然火を吹いたりという怪事件も頻発。小芝は復讐のためレールガンで大賀を狙っているのか?

 今回湯川は最初から警察には非協力的です。ギリギリ嘘は言わないまでも、知っていることを積極的に語ったりはしません。そもそも直木賞受賞作「容疑者Xの献身」以降、湯川は警察に批判的になっており、正義感が強く真相究明に全力を注ぐ内海薫という女性刑事が登場したおかげでなんとか繋ぎ止めている状況でしたが、今回は愛弟子が容疑者ということになっているのでなおさらなのでしょう。

悪代官的悪徳代議士 

 今回「へぇ~」と思ったのは、普通の作家なら“絶対悪”として描いてもおかしくない大賀サイドの状況についても触れている点でしょう。秋穂も深い仲になるにあたってはそれなりの接触があった訳で、まあ男女の関係というものは、肉親、つまり弟であっても計り知れない部分があるということでしょう。が、大賀には弁解する機会も意思もないわけで、小芝が復讐に突っ走っても仕方がないとも言えます。

 そして最後の最後。大賀を射程に捉えたレールガンのコントロールを奪った湯川は、小芝に「もし撃てというのなら私が撃つ」と言い放ちます。遠距離射撃なので当たるかどうかはわかりませんが、当たれば殺人、当たらなくても殺人未遂は免れないところ。そして湯川を守る構えの薫。ここは旧友草薙も拳銃を引き抜いて欲しかった。薫も湯川も射殺するも、湯川のレールガンも大賀を殺害するなんてバッドエンドもありの展開はゾクゾクします。

フレミングの左手の法則 

 ところで復讐というか犯行に使われるレールガンですが、フレミングの左手の法則により、電磁誘導を利用して物体を加速して打ち出す装置です。原理的には古くから知られており、SFやゲームなどに幅広く登場しています。太平洋戦争中には日本でも研究されていたようです。

ウォーシップガンナー2 鋼鉄の咆哮 

 大好きな馬鹿ゲー「ウォーシップガンナー2 鋼鉄の咆哮」でも登場しました。画像の細長いのがレールガンです。ただ、発射シーンなどが他の超兵器(レーザー、荷電粒子砲、光子魚雷、波動砲などなど)に比べて地味で、威力のほどがよくわからなかったので、私はあまり使いませんでしたが。

ウォーシップガンナー2のレールガン 

 レールガンのメリットとしては次のようなものがあります。
① 初速・射程を調整可能(弾体をどれだけの速度で打ち出すかは掛ける電力次第)
② 長射程(米海軍の艦載レールガンの計画射程は300~500km以上)
③ 超高速の発射速度(理論上は光速まで。実際は現状で秒速8キロ程度。戦車砲で秒速2キロ弱なので4倍以上の速度)

レールガンの原理 

 デメリットとしては以下のようなものが。
① 大電力が必要
② 異常な発熱(加速が桁違いのため。冷却できるまで次弾発射不能)
③ レールが消耗(定期的に要交換。まあ通常の砲身も要交換ですが、頻度はもっと高い)

現実のレールガン 

 米海軍は近い未来に本気でレールガンを艦載仕様で実用化しようとしているとみられ、もし実用化が可能になると、既存のミサイルシステムに比べ大幅に安価に、対空防御や弾道ミサイル、巡航ミサイルからの防衛が可能になると見られます。最新鋭のズムウォルト級ミサイル駆逐艦にレールガンを装備すれば、大規模な空母打撃群が必要なくなったりして。

映画の中のレールガン 

 よーし日本も負けずに…と言いたいところですが、平成27年度概算要求で「艦載電磁加速砲の基礎技術に関する研究」を記載している段階で、米国とは比較にならない段階のような。アニメ世界では「超電磁砲(レールガン)」の通り名を持つ御坂美琴がいるんですけどねえ。この人をクローンで量産すれば…って原作でやってましたね(噛ませ犬でしたが)。

一番役に立ちそうなレールガン 

 あとレールガンを直訳して「列車砲」としないこと。これならドイツが昔使いましたけど、ドーラのようにどんなに大きくても通常の火砲ですから。なお、ロマン砲(絶大な威力や効果が期待されるものの、事前準備が非現実的だったり使用した際のデメリットがあまりにも大きなもの)といわれる根拠の一つとして、第二次大戦後に列車砲を調査した連合軍の「技術的には驚異的だが、戦術的には失敗策だ」「列車砲に注がれた資金、資材、技術者、兵員を爆撃機の開発に回していれば大きな脅威になったが、列車砲に回されたおかげで連合軍には有利に働いた」という評価があります。

列車砲ドーラ 

催眠 完全版:ショーやオカルトではない“科学的”な催眠とは

チューチュー明里ちゃん

 空梅雨の予感ひしひしですね。梅雨入り宣言以降全然雨降らないし、今日は「アツゥイ!」し。リアル明里ちゃんも思わずプリキュア系ゼリーをちゅうちゅう。リアル明里パパによると、最近保育園で下ネタ系単語を覚えてきてしまっているそうな。いかん、いかんぞ。明里が下ネタ全開だと貴樹がドン引きしちゃいますよ。

催眠 完全版 

 本日は松岡圭祐の「催眠 完全版」を紹介しましょう。松岡圭祐の作品を読んだのはこれが初めてです。いい歳のおっさんになっても“初めて”があるのは素敵なことなのか未熟の証しなのか…。まずは例によって作者紹介から

松岡圭祐 

 松岡圭祐は1968年12月3日生まれで愛知県出身です。実はプロフィールに関する情報が少なく、学歴とかは不明ですが、元臨床心理士なので大学で心理学を学んだのでしょう。1997年10月に「催眠」で作家デビューし、いきなりミリオンセラーとなり、シリーズ化されて映画化・テレビドラマ化もされました。「催眠」は「本の雑誌」で1997年国内ミステリの4位に選定されています。

千里眼 完全版 

 以後、「千里眼」シリーズ、「マジシャン」シリーズ、「探偵の探偵」シリーズ、「Q(万能鑑定士Q)」シリーズと立て続けにヒットシリーズを放っています。残念ながら大きな文芸賞とはノミネート段階でまだ縁がないようです。

探偵の探偵 

 作家になる前は、臨床心理士だった他、催眠術師としてテレビにも出演していたようです。学術的な催眠誘導法の他、エンターテイメント性が強いショー用の舞台催眠術(テレビ番組でよく見るアレですね)を学んでいた事で業界から声がかかったそうで、1990年代の後半に芸能事務所と契約し、催眠術師としてのキャラクターで活動していたそうで、フジテレビ系の深夜番組「A女E女」などに出演していたそうです。

A女E女 

 この番組は同時間帯にテレビ東京で放送されてヒットしていた「ギルガメッシュないと」に対抗するもので、「日本一のお下劣バラエティー」を謳って、松岡圭祐がAV女優や売れないモデルたちに催眠術をかけて太鼓や木魚などの音を聞かせて悶させていたそうです。しかし、1997年度の民放深夜番組で最高視聴率を記録したものの、「あまりにも低俗すぎる」との批判を浴び短命番組に終わったとか。私は至極真面目なタイプなので(笑)、一度も見たことないんですが。

若い頃の松岡圭祐 

 番組開始時、既に松岡圭祐は「催眠」を出版していた訳で、テレビ番組誌では「テレビで催眠なんてバカらしい。そういう質のものではない。徹底的にバカをやってこの手の番組を鼻で笑えるようにしたい」と表明していたとこのとで、確信犯的に出演していたようです。また、他番組でも「催眠が人を意のままに操るというのは幻想で、ショーはその思い込みを利用して見せるもの」という趣旨の発言をしています。

催眠 

 今回読んだのは「催眠 完全版」で、これは2008年1月に刊行されています。「催眠」は作者に言わせれば、学術的な正しさに徹する作風ではなかったのだそうです。これはまだ臨床心理士という職業というか資格がまだ定着していなかったことなどによりますが、その後定着してきたことや、心理学や脳医学が発展して世間一般もオカルト的な催眠術というものに囚われなくなったことから、リアリティと現代性を念頭に全面的改稿を行ったのが「催眠 完全版」なのだそうです。

永遠の仔 

 このため旧版「催眠」で描かれていた「目の動きで心理を読む」という技術の原理(つまり視線をどこに向けているかで心理が読めるという)は科学的根拠がないとして「完全版」では否定しています。また天童荒太の「永遠の仔」などで描かれている子供時代の抑圧されたトラウマが引き起こす犯罪というものも否定しています。「永遠の仔」が1999年作品なので「あれ?本作の後の作品じゃん」と思ったのですが、「完全版」での改稿によるものだったのですね。「永遠の仔」、ずいぶん前に宮部みゆきの「模倣犯」と一緒に外国暮らしの頃に読みました。でも外国暮らしをしていたせいか(なぜ)、どちらもあまり感銘を受けなかったんですよね…。宮部みゆきはその後色々読んでますが、天童荒太はあれ以来縁がありませんね。

永遠の仔のワンシーン 

 そもそも単行本の文庫化の際には数十ページ単位の加筆や大幅な改稿がなされたり、別シリーズの人物同士を登場させるなどしており、読者を飽きさせない工夫をしてきた人ですが、「催眠」シリーズや「千里眼」シリーズについては大幅改稿した「完全版」を角川文庫から刊行しており、これを一連のシリーズ正史としています。それでは例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

ショーの催眠術 

 インチキ催眠術師の前に現れた不気味な女性。突然大声で笑い出しては、自分は宇宙人だと叫ぶ彼女が見せる予知能力は話題となり、日本中のメディアが殺到した。その頃、2億円もの横領事件の捜査線上には、ある女性が浮かび上がっていた。臨床心理士・嵯峨敏也が、催眠療法を駆使して見抜いた真実とは?衝撃のどんでん返しの後に感動が押し寄せる、松岡ワールドの原点が、最新の科学理論を盛り込んで完全版となって登場! 

臨床心理士になるには 

 本作では主人公である嵯峨敏也(東京カウンセリング心理センター催眠療法科長)、その後輩の小宮愛子、そして二人の上司にあたる室長の倉石勝正の三人の臨床心理士が登場し、それぞれ解決すべき問題を抱えて対応していく様子が描かれます。嵯峨は上記のインチキ催眠術師がスカウトした“自称宇宙人”の入絵裕香が解離性人格障害(いわゆる多重人格)を抱えていると睨み、彼女を救おうと奔走。小宮愛子は場面緘黙症の小学生竹下みきを、そして倉石室長は、別れた妻・脳外科医の根岸知可子と、彼女が手術した女性患者(手術は成功したものの、顔面麻痺などが現れ、手術の失敗が疑われる)を救おうとします。

ベタな催眠術アイテム 

 最も厄介なのはやはり入絵裕香のケースで、多重人格である他、以前務めていた証券会社で発生した2億円もの横領事件の重要参考人(ほぼ容疑者扱い)を受けています。また、インチキ催眠術師実相寺も入り絵裕香を金づると思っており、ことごとく嵯峨とぶつかります。臨床心理士といっても民間資格で特別な権限は一切ない中、本人からの依頼も受けずにまっすぐに警察にぶつかっていく嵯峨。カッコイイけど、組織の長としてはトラブルメーカーとしてクビにしたくなるかも知れません。

カウンセリング中の臨床心理士 

 催眠に関する世間一般の知識は大きく変わったということですが、本書を読んで改めて「へぇー」と思ったのは、催眠術というのは相手を意のままに操れるようなものではなく、電車の中でのうたた寝がほぼ催眠状態だということ。降りるべき駅ではっとなって慌てて駆け降りるとうことは誰でも経験すると思いますが、つまり催眠状態というものは状況によって簡単に解除できるもので、術者が説かなければずっと催眠状態が続くというものではないのです。

パチンコ屋の中 

 ただ催眠状態にあると、暗示にかかりやすくなるのは事実のようで、それを応用(悪用)しているのがパチンコ業界なんだそうです。あの音と光で催眠状態にしてパチンコを打たせ、時間の経過や投入した金額をおぼろげにしてしまうだけでなく、常習性まで持たせてしまうという。

昔のパチンコ屋 

 私自身はパチンコは数えるほどしかやったことがなく、負けっ放しだしタバコで煙いしで二度と行かないなあと思っていますが、最近のパチンコ屋はだいぶ様相を異にしているんですねえ。よく夏の乗用車内に子供を置き去りにしてパチンコに熱中して子供が大変な事態にというニュースを耳にしますが、「だからパチンカスは」としか思っていませんでしたが、そういう罠があったんですね。

悪魔ッ子 

 かつて「ウルトラマン」の前番組に「ウルトラQ」というのがあって、「悪魔ッ子」というシリーズ屈指のホラー回として名高いエピソードがありました。シリーズ屈指のホラー回として名高い催眠術で幽体離脱の芸を披露していた魔術団の少女リリーが、催眠術かけ過ぎの影響でシナプス(神経細胞間や多種細胞間の信号を伝達する部位)の破壊現象が起こり、毎晩精神のみがさ迷い出て、数々の災厄を引き起こします。

分裂したリリー 

 リリーの精神はリリー本人の意思とは関係なく深夜にさまようようになり、最後には自らの肉体をも抹殺しようとして線路に誘います。まああわやという所で助かるのですが…。なにしろ50年以上前の作品なんですが、娯楽が少ない時代とはいえ、視聴率31%超えだったという。このエピソードなんかは松岡圭祐のような催眠のプロからすれば噴飯物なんでしょうが、当時の視聴者が催眠術を恐ろしいものだと誤解してしまうには十分なインパクトがあったと思われます。

 解離性同一性障害のイメージ

 そしてダニエル・キイスの「五番目のサリー」や「24人のビリー・ミリガン」で知られるようになった解離性同一性障害については、心因性の障害で、ほとんどの場合で幼児期から児童期に強い精神的ストレスを受けているとされます。入絵裕香はアラサーの女性ですが、人格交代の甚だしさはここ数年によるもののようです。嵯峨達の尽力により辿り着いた真相は、彼女を食い物にしようとするかなり酷いものでしたが、嵯峨達には真犯人とおぼしき人物を逮捕することもできません。しかし、入絵裕香が犯人ではないことを証明すれば、警察も馬鹿ではないので再捜査により真相に辿り着くことでしょう。入絵裕香の症状が軽減して記憶が戻ればなおさらです。

五番目のサリー
 
 そしてその希望はあります。嵯峨は入絵裕香の症状は完全に治ることはないと言っていますが、ラストの驚愕のどんでん返し(「時計館の殺人」以来、久々に驚きました)結末は、決して暗いものではないからです。これは旧版とは全然違うラストだそうですが、おそらくこちらの方が良いラストなんではないかと思います。

24人のビリー・ミリガン

 なお、解離性人格障害のゴールは、以前であれば人格の「統合」でしたが、最近はあまり言われなくなっています。分離した人格が生じるには生じるだけの理由があり、記憶や意識を分離し、解離することによって、ギリギリで心の安定を保ってきたので、むやみに「統合」を焦るとその安定が崩れかねないのだそうです。そういう意味で、嵯峨は完全には治らないと言ったのでしょう。

多重人格のイメージ 

 嵯峨が組織人としてはかなり逸脱していて、この人はフリーランスの方が性に合っているのではないかという気もしますが、全ては入絵裕香を救いたいという純粋な動機からのものなので、刑事たちも苦笑いしつつ大目に見ているというところがいいですね。

映画版催眠 

 1999年の映画版の「催眠」は稲垣吾郎主演で菅野美穂が入絵裕香を演じましたが、理知的な原作と異なり、異常な事件が起こるサスペンスホラー映画として製作されたそうです。また続編として2000年にTBSでテレビドラマ版が放送されています。原作との差違については、松岡圭祐自身が「世にも奇妙な物語」風アレンジによるホラー方向を目指していたらしいので、特に問題はないのですが。

映画 千里眼 

 その後の「千里眼」の映画化(2000年)については、脚本を松岡圭祐が書いたにも関わらず、大幅に違う作品になってしまったということで、かなり不満があるのではないかと囁かれています。

検察捜査:現役弁護士が書いた江戸川乱歩賞受賞作

梅雨入りですと

 本日気象庁が四国、中国、近畿、東海、関東甲信地方が「梅雨入りしたとみられる」と発表しました。九州沖縄地方だけだったのに一気に来ましたね。なんかやっつけ仕事のような気がしないでもないですが、梅雨来たりなば、夏遠からじ。この梅雨寒天気を懐かしむ日がもうすぐそこに来ているのですね。

検察捜査 

 本日は中嶋博行の「検察捜査」を紹介しましょう。中嶋博行の本は初めて読みました。

中嶋博行 

 中嶋博行は1954年9月12日生まれで茨城県筑西市出身。早稲田大学法学部卒業後、1985年に司法試験に合格し、横浜に弁護士事務所を開業しました。1994年に「検察官の証言」で第40回江戸川乱歩賞を受賞し、作家デビューしました。

検察捜査新版

 弁護士と作家の二足の草鞋を履く異色の作家…と思ったら、大平光代、和久俊三、佐賀潜と結構居るみたいですね。「リーガル・サスペンス」と題し、弁護士としての専門知識を生かした推理小説が特徴でとなっています

ホカベン 

 犯罪被害者の支援活動にも尽力しており、新米弁護士が犯罪に立ち向かう「ホカベン」というマンガの原作も行っています。マンガでは主人公は男性弁護士ですが、テレビドラマでは女性弁護士に変更されて上戸彩主演で2008年に日本テレビ系でテレビドラマになっています。なっていますが…視聴率的はあまり振るわなかったようです。

ホカベン ドラマ版 

 また、遊戯銃への造詣が深く「トイガン文化を守る会」代表、日本遊戯銃協同組合ソフトエアガン安全会議常務理事を務めています。ちなみに直接関係ありませんが、最近引退を撤回した宮崎駿はかつて「鉄砲オタクっているのが一番嫌いなんですよ。はっきり言いますけど、ああいうのはレベルが低いと思っているんですよね。鉄砲の中でも、ピストルのマニアっていうのは一番レベルが低いんです。一番幼児性を残してるんです(笑)。」と言っています。

宮崎駿の主張 

 ああそうか、だから「ルパン三世 カリオストロの城」ではピストルが活躍しないんですね。次元のコンバットマグナム(S&W M19)はカリオストロ公国の暗殺部隊・カゲには全く通用せず(代わりに対戦車ライフルで対抗)、ルパンのワルサーP38なんか使う間もなくレーザーで溶かされてしまったんですね。だけど宮崎駿の言っているピストルマニアが“一番レベルが低い”とか“一番幼児性を残している”というのはちょっと理解できない主張ですね。銃オタクよりも戦車オタクや戦闘機オタクの方が高尚とか(笑)。オタクじゃない人から見ればオタクなんか五十歩百歩じゃないかと。

次元の対戦車ライフル 

 おっと話が逸れてしまいました。「検察捜査」は、受賞作「検察官の証言」を改題して同年9月に講談社から刊行され、文庫版は1997年7月15日に講談社文庫から刊行されています。黒木瞳主演で1995年に「検察捜査 知られざる強制捜査の裏側」と題してフジテレビ系で単発ドラマとして放映されたそうですが…が、画像がない(汗)。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

 横浜の閑静な高級住宅街で、大物弁護士・西垣文雄が惨殺された。横浜地検の美人検察官・岩崎紀美子は、捜査を進めるほど、事件の裏に大きな闇を感じる。日弁連と検察庁、警察庁そして県警の確執……。現役弁護士作家が法曹界のタブーを鋭くえぐった、第40回江戸川乱歩賞受賞の傑作リーガル・サスペンス!

弁護士会館 

 日弁連会長候補として出馬が噂され、内閣法制局の法制審議会委員も務める大物弁護士が、横浜市の自宅で拷問を受けたとしか思えない無残な姿で殺害されているのが発見されます。任官2年目の美人女性検事・岩崎紀美子が捜査担当を命じられますが、それはたまたま彼女だけがヒマだったからという。

 実は検察庁では検事の定員割れが深刻化し、若手検事でプロジェクトチームを作って司法修習生のリクルートを行ったのですが、結果は惨憺たるものでした。紀美子岩の戦果は堂々のゼロ。関東甲信越の地検の元締めである東京高検で油を絞られた直後のことです。

横浜地検 

 捜査といっても部下は検察事務官の伊藤ただ一人。捜査への介入を嫌う神奈川県警は非協力的です。殺害状況から怨恨ではないかと睨んだ紀美子は、警察と同じ事は出来ないと言うことで、西垣の過去の裁判記録を調べることにします。過去五年でも500件はあるというファイルを一つずつひっくり返すという根気のいる仕事です。

 しかしその甲斐あって、西垣が被告となった民事裁判の記録を発見します。さらには懲戒請求も受けていたという。日弁連もいつくかの派閥に別れており、会長選挙を巡っては水面下で暗闘があるようで、どうやら西垣は自分の派閥の中で反乱が起きていた模様。

裁判所合同庁舎 

 そうなると西垣の旧腹心で今や次期会長の最右翼となった宮島を取り調べる必要がでてきましたが、日弁連を真っ向的に回すのということにはさすがの向こう見ずの紀美子もたじろぎます。それでも地検のナンバー2である首席検事に申請を行いますが、なぜか首席検事は雲隠れ。そうこうしている内に、なんと東京地検が弁護士会館の家宅捜索を行い、紀美子の手から事件をかっさらってしまいます。

 どういうことだオイと首席検事に詰め寄る紀美子ですが、首席検事は事件は君の手を離れたと言うばかり。そして紀美子は、日弁連のみならず、検察庁の中にも派閥があることに気が付きます。検察官不足を一気に打開するべく、検察至上主義者が取った驚くべき手段とは?そして紀美子にも魔の手が迫ります。

法務合同庁舎 

 本作では殺人の実行者が誰かということはあまり問題ではありません。真性ドSのプロの犯行なので。むしろそのプロを操っているのは誰かということなんですが…本作では作者が弁護士のせいか、検事に思いっきり泥を被せてしまいましたな。

 法曹界の闇を描くという意味では、現職の弁護士というのは実にぴったりなんですが、「この作品はフィクションであり…」という例のお約束があれば大丈夫だと思うところ、作者はさらに用心深くなっているようです。そのせいでリアリティーが損なわれているように感じる部分が。例えば…

検察庁 

 その①:東京高検に司法部というセクションがある。総務部、刑事部、公安部、公判部はわかります。主要地検には特別捜査部(特捜部)とか特別刑事部というのもありますね。でも…司法部というのはどこにもありません。一体何をやってるセクションなんだこれ。法務省は戦前は司法省といいましたが、戦後司法権といえば最高裁を頂点とする裁判所ですよね。検察庁が司法部なんてセクション作ったら大問題になりそうです。

 その②:横浜地検で紀美子は首席検事の指揮を受けます。首席検事って…?地検、すなわち地方検察庁のトップは検事正で、ナンバー2は次席検事です。弁護士なんだからうっかりミスという訳でもないでしょうが、架空のポストを作らないとヤバイと思ったんですかね。

検察官バッジ 

 その③:東京高検と横浜地検なら、組織上の上下関係でいえば当然東京高検>横浜地検です。トップ同士、つまり東京高検検事長と横浜地検検事正ならこれももちろん東京高検検事長>と横浜地検検事正なんでしょうが、それ以外だとどうなんでしょうか。すなわち、東京高検の部長クラスと横浜地検の次席検事(作中では首席検事ですが)だと、一方的に東京高検部長>横浜地検次席になるのかどうか。ましてや東京高検の部長の部下である次長が横浜地検次席に一方的に指揮命令している様子なんですが、それって組織的に正しいのでしょうかね。

 あと、ヒロイン紀美子のキャラ立ちがイマイチのような。切れ者なんだか猪突猛進なんだかはっきりしません。どっちかにハッキリさせた方が良かったかも。それから事務官の伊藤を自宅に泊めたりして、ただならぬ仲のような気配も感じたりしますが、こっちもなんだかよくわかりません。仕事と恋愛は切り離すタイプの方が個人的には好きですが。

弁護士バッジ 
 

 あと紀美子の相方的存在となる、神奈川県警の郡司刑事はいい味出していますが、最初は米山係長という警部が出てきましたが、紀美子の相手を嫌ったようで郡司刑事に相手を押しつけたかのようです。それはともかく、一介の平刑事(もしかすると警部補くらいになっているかも知れないけど、「刑事」では巡査だってありえます)に検事の相手をさせるというのが組織として「あり」かなあ。それに郡司はいつも一人で登場し、しかも紀美子との情報交換によって独自の捜査も行うのですが、警察小説では捜査は二人一組が常識となっているのにやや不自然な観が

神奈川県警

 リーガルサスペンスという異色の作風は評価できますが、私が読んだ江戸川乱歩賞受賞作品、東野圭吾の「放課後」(第31回)、桐生夏生の「顔に降りかかる雨」(第39回)、藤原伊織の「テロリストのパラソル」(第41回)、野沢尚の「破線のマリス」(第43回)、池井戸潤の「果つる底なき」(第44回)なんかに比べるとミステリーとしてのストーリー展開やキャラ造詣などがいまいちな気がしました。

江戸川乱歩賞 

 本作が書かれてから23年が経過しましたが、作中デスマーチ状態となっていた検事不足は、最近ではあまり聞きませんね。司法試験制度の改革で合格者が増えたからでしょうか。弁護士も東京のような大都市圏では過剰となり、仕事の奪い合いみたいになっているようで、弁護士や医師は高額所得者というイメージも変わりつつあるのかも知れません。反面過疎地には弁護士や医師がいないということも往々にしてあるようですが、お金のためだけではないでしょうけど、お金が全然稼げそうにない地域であえて開業というのもなかなかに決断出来ないことでしょうね。

雀蜂:雪中の山荘で展開されるパニックホラー

駆逐艦水無月

 あっという間に6月になってしまいました。またも艦これネタで恐縮ですが、4月には卯月をゲットし、5月には皐月を育ててきた訳ですが、水無月は通常海域でのドロップがなく、建造でも入手不可という悲しい現実が。現状ではイベントでのドロップ入手しか方法がなく、この前の春イベントでもドロップ設定があったそうですが、残念ながら出逢えませんでした。

雀蜂 

 本日は貴志祐介の「雀蜂」を紹介しましょう。貴志祐介の作品は初めてではないのですが、当ブログで取り上げるのは初めてですね。よって例によって作者紹介から。

貴志祐介 

 貴志祐介は1959年1月3日生まれで大阪市出身。中学生時代からミステリやSFを読み、京都大学経済学部在学中に小説の投稿を始めました。京大卒業後に生命保険会社に入社しますが、数年後に小説執筆意欲が芽生え、1986年に第12回ハヤカワ・SFコンテストに「岸祐介」名義で応募した短編「凍った嘴」が佳作入選します。この作品は後の大長編「新世界より」の原点だそうです。

十三番目の人格 

 1989年、30歳の時に会社を退職して執筆・投稿活動に専念し、1996年に「ISOLA」で角川書店の日本ホラー大賞第3回長編賞佳作を受賞し、作家デビューしました。同作は後に「十三番目の人格 ISOLA」と改題して刊行されています。1997年には「黒い家」で第4回大賞を受賞しました。

黒い家 

 人間の欲望や狂気が呼び起こす恐怖を描いたホラー作品を発表する一方、ミステリー、SFと幅広いジャンルを手掛けています。受賞歴は、2005年に「硝子のハンマー」で第58回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)、2008年に「新世界より」で第29回日本SF大賞、2010年に「悪の教典」で第1回山田風太郎賞、2011年に「ダークゾーン」で第23回将棋ペンクラブ大賞特別賞を受賞しています。

硝子のハンマー 

 「雀蜂」は、2013年10月25日に描き下ろしで角川ホラー文庫から刊行されました。刊行された小説としてはなんと最新刊。最近は何をしているんでしょうか…。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

悪の教典 

 11月下旬の八ヶ岳。山荘で目醒めた小説家の安斎が見たものは、次々と襲ってくるスズメバチの大群だった。昔ハチに刺された安斎は、もう一度刺されると命の保証はない。逃げようにも外は吹雪。通信機器も使えず、一緒にいた妻は忽然と姿を消していた。これは妻が自分を殺すために仕組んだ罠なのか。安斎とハチとの壮絶な死闘が始まった―。最後明らかになる驚愕の真実。ラスト25ページのどんでん返しは、まさに予測不能!

雀蜂のPOP 

 ダークなミステリーやサスペンスを得意とする小説家安斎智哉は、出版不況にも関わらずまずまずの売れ行きをキープし続けており、八ヶ岳山麓に山荘を持ち、年の三分の一はここで過ごしています。妻の夢子も絵本作家として有名で、昨夜は二人の新刊のヒットに祝杯を挙げた…はずですが、翌朝妻の姿はなく、またなぜか車の鍵やPCや電話のコードも抜かれて外部との連絡を絶たれていることに気付きます。

 そして山ではもはや降雪もあって完全に冬だというのに次々に現れるキイロスズメバチ。スズメバチなんて誰でも嫌ですが、安斎は特に怖れる理由がありました。3年前にスズメバチに刺されており、今度刺されたらアナフィラキシーショックで命が危ないと医者から警告されていたのです。

雀蜂コシマキ

 次々に現れるキイロスズメバチは夢子と、夢子の同級生で大学で昆虫を研究する男の陰謀なのか?キイロスズメバチの攻撃をかいくぐって地下のボイラー室に入った安斎は、さらに恐るべき事態に気付きました。なんとボイラー室はオオスズメバチの巣と化していたのです。

 キイロスズメバチは日本に生息するスズメバチの中では最も小型ですが、攻撃性が非常に高く、スズメバチ類の刺傷例ではキロスズメバチによるものが最も多いとか。

キイロスズメバチ 

 オオスズメバチは日本に生息するハチ類の中で最も強力な毒を持ち、かつ攻撃性も高い非常に危険な種です。ミツバチどころか、キイロスズメバチの巣すら攻撃することがあるそうです。筑波嶺でもたまに見ますが、その大きさといいオレンジと黒の毒々しいカラーリングといい、一目でヤバイヤツだとわかりますよ。九州では幼虫やさなぎ、成虫を珍味として食す習慣があるそうですが…くわばらくわばら。

オオスズメバチ 

 アメリカでキラービーというはアフリカミツバチとセイヨウミツバチの交雑種がはびこり、攻撃性が強くて人間の死亡例も多いため、駆除用にオオスズメバチを導入しようかと検討されたことがあったそうですが、研究用に取り寄せたオオスズメバチをキラービーと戦わせてみたところ一方的な虐殺劇となり、「こいつら放したら俺らまで駆除されんじゃね?」とビビって取りやめにしたそうです。

キラービー 

 キラービー拡大のニュースを見た日本人は「ふさふさしててかわいい」「子リスみたいで好き」「ストラップにしたい」などとマスコット扱いで、反面「こいつ超ザコだし」「絶対スズメバチのほうが強い」「スズメバチ最強!」と、小学生男児のような口ぶりでスズメバチをプッシュする声が多く見られたそうですが、そりゃあキラービーといっても所詮はミツバチ。ヤンマやカマキリといった大型肉食昆虫と食うか食われるかのバトルを展開しているスズメバチとまともに戦えるわけありませんね。

キイロスズメバチの巣 

 そんな話も通じない獰猛なキイロスズメバチとオオスズメバチに挟まれてまさに前門の虎後門の狼状態の安斎、どうやって危機を乗り越えるか…というだけなら動物パニック小説になるんですが、そもそもなぜ安斎は殺されそうになっているのか?やはり妻とその愛人の計略なのか?それにしてもなぜスズメバチという手段を取ったのか?など謎も多く、その謎が安斎を苦しめます。家から出れば昆虫が生きていけない寒さなんですが、安斎も長時間は生きていけないという(笑)。

オオスズメバチの巣 

 安斎はスズメバチとバトルするだけでなく、死亡を確認するためにやってくるであろう妻と愛人とも相対しなければなりません。そうした中で彼が取った作戦は…。内容紹介にもありますが、ラスト25ページで真相が明らかになって驚くことになるのですが、これはネタバレになるので書くわけにはいきません。作中のそこかしこに「あれ?」と思う部分があるのですが、それがちゃんと伏線になっているのですね。スズメバチの大群もホラーだけど、ホラー要素はそれだけはなかったという。

雀が乗っ取ったスズメバチの巣 

 私なら…とりあえず山荘の窓という窓を開けて外部に脱出して物置に逃れ、スキーウェアなどを着てから山荘に戻り、ボイラー室のドアはしっかり閉めておいて、天井裏のキイロスズメバチの巣も隔離(寒さで大半死んでるかも知れません)。その後窓を閉めて保温すればいいかなと。なんとなれば風呂もありますし。まあ冬なのに室内でスズメバチに遭遇したらそんなに冷静に行動できるかどうかわかりませんが。

雀がドヤ顔で再利用中 

 雀蜂の画像を探していたら、雀蜂の巣を乗っ取った雀の画像が。そうか、昔の人は雀蜂が年を経ると雀になると思っていたので雀蜂という名前を付けたのか(爆)。真面目な話、雀蜂は巣を一年で使い捨てにするらしいので、その後をちゃっかり雀が再利用しているようです。雀さんなら何羽住んでいても安全なのでいいのですけどね。

インド旅行記2 南インド編:女優・中谷美紀のインド一人旅PART2

カール販売中止

 森永製菓のコーンスナックの代表格ともいえる「カール」が東日本で販売中止となるそうです。カールといえば幼少期からお世話になったB級銘菓なんですが、販売不振だったんですね。そこにあるのが当然と思っていましたが、よく考えてみればここ4~5年で一回位しか食べていませんでした。おいしいんですが、チーズの匂いが結構キツイのと、歯にくっつきまくるんですよね。

カールおじさん心の叫び 

 なくなったら食べたくなるのが人情ですが…カールおじさんの心の叫びが胸に響きますね。廃線が決まるとどっと鉄道マニアが押し寄せるみたいな。しかしカールは関西以西ではまだ販売されるらしいので、出かけた際には酒のアテにでもしましょうか。

インド旅行記2 

 本日は中谷美紀の「インド旅行記2 南インド編」を紹介しましょう。先週読んだ北インド編の続編です。前回インドの旅に疲労困憊して早く日本に帰りたいと言っていたにも関わらず、その舌の根も乾かぬうちにまた旅にでかけるという。

インド旅行記2コシマキ 

 妹尾河童によると、インドの旅は二度とゴメンという人と、何度でも出かけたくなる人に二極化するそうですが、河童さんはもとより、鉄道マニア宮脇俊三も途中で「インドなんか懲り懲り、二度と来るもんか…」と思ったにも関わらず、乗り切れなかった鉄道に乗るために再訪しています。だから中谷美紀もインド好き好き派ということなら再訪しても不思議はないのですが、その間隔が異様に早い。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

インドでヨガ 

 インド旅行から21日後、嫌味を言うマネージャーを後目に、南インドへいざ出発! 今度こそはインド人に負けまいと、ヨーデルを声高に歌い、しつこいお土産屋を撃退するも物乞いにお金を渡せば、少なすぎると追い掛けられ、ホテルではシャツを紛失されたにもかかわらず従業員に居直られる……。さらにパワーアップした一人旅の記録、第2弾!

コモリン岬 

 本書は2006年10月6日に幻冬舎文庫から書き下ろしで刊行されました。前作から2か月後でハイペースですが、何しろ三週間後の旅ですから。北インドに続いて南インドを旅します。実は続編「インド旅行記3」では東西インドを取り上げ、「インド旅行記4」は写真編となっていますが、残念ながら筑波嶺の図書館にはありませんでした。

チェンナイのゴプラム 

 季節は秋ということですが、なにしろ暑さの本場南インドです。4週間の旅はなかなかにハードだったようです。メインイベントは、ケララ州のソマチラムビーチリゾートでのインド伝統医学であるアーユルヴェーダ三昧(ヨガ&エステといったところ)と、バックウォーターでのハウスボートでの周遊です。

チャールミナール 

 その他めぼしい寺院にも行っていますが、それほどの感慨はなかった模様。まあごてごてと神像がてんこ盛りのゴプラム(塔門)なんか、最初は驚きますが何度も見ているとなれてくるでしょうしね。やたらと飛ばすドライバーの乱暴な運転や基本カレーばっかりの食事に辟易しているのは前巻のとおりなんですが、だからなぜ間隔を開けなかったし(笑)。インドに住んでも大丈夫そうな妹尾河童でさえ二回目のインド訪問は5年後だったというのに。もっとも彼の場合は行きたくても行けなかっただけのようですけど。

ソマチラムビーチリゾート 

 しかし今回中谷美紀は食欲不振に悩みます。ダイエットにいいなあとも思いますが、女優さんはたいていほっそりしているので食事が出来ないとむしろ危険ですね。なぜなのかとあれこれ考えた挙げ句、出た結論は「ココナッツオイルがダメ」ということでした。南インドではほぼ全ての食事にココナッツオイルが使われており、これとの相性が最悪だった模様。

ココナッツオイル 

 私もシンガポールでココナッツジュースなら飲んだことがあり、ちょっと青臭いけど悪くなかったし、中身の白い胚乳もガンガン食べたんですが、ココナッツオイルの方は経験したかどうか不明です。ココナッツジュースがいければ大丈夫というものでもないのでしょうが、そこまで嫌いになるもんなんでしょうか。確かにオリーブオイルとかでも連日となればうんざりするかも知れませんが。

バナナの葉の上の料理 

 そういう訳で前巻からなんちゃってベジタリアンの中谷美紀、今回はヤギの解体シーンや鶏を絞める場面をガン見したことで、肉はもう食べられないと思うに至りましたが、ココナッツオイルへの拒否感はそれ以上だったらしく、ココナッツオイルフリーの魚介類入り料理はいっちゃってます。もちろん誰かに誓ったとかではないので構わないのですが。

バックウォーターとハウスボート 

 今回はわざわざ「私が肉を食べないわけ」なんてサブタイトルまでつけているんですよね。南インドでベジタリアンとしての意志をさらに堅固にしたかのようなんですが…6年後、体調不良で放棄するに至りました。まあいいんですよ、ベジタリアンだろうが肉ばかり食べようが、酒を飲もうがタバコを吸おうが。基本本人の自由だと思います。他人に押しつけたり迷惑をかけたりしなければ。

漫然と口に運ぶな 

 食については地上最強の生物・範馬勇次郎が含蓄の深い言葉を残しています。曰く“漫然と口に物を運ぶな。何を前にし、何を食べているのか意識しろ。それが命喰う者に課せられた責任。義務と知れ。”“防腐剤…着色料…保存料… 様々な化学物質 身体によかろうハズもない。しかし、だからとて健康にいいものだけを採る。これも健全とは言い難い。毒も喰らう 栄養も喰らう。両方を共に美味いと感じ血肉に変える度量こそが食には肝要だ。”

マイソールのパレス 

 地球という星は、生命が生命を喰らうということが常態化して数億年を経ている訳で、いまさら他の命を奪いたくないといっても土台無理な話です。なにしろ我々が意識していなくても、体内に侵入した細菌なんかは免疫機構が殺しまくっていますから。魚介類ならいい、野菜ならいい、微生物ならいいと勝手にボーダーを引くのもいいのですが、他の生物の命を奪わずには生きていけないという現実は変わりません。広い宇宙にはもっと生命が稀で、稀であるが故に相互に尊重するなんて星もあるかも知れませんけど。

海岸寺院 

 じゃあこの世はもういいと自殺したとして、腸内細菌など膨大な体内の共生者ないし寄生者も道連れですしね。もう他者の命を奪わずには生きることも死ぬこともできないということを知るべきでしょう。そんなのどうでもいいと割り切るならそれはそれですけどね。

ゴプラムその2 

 前巻ではヨガ三昧だった中谷美紀、今回はタイミングが悪くてあまりヨガは出来ませんでした。それにしてもインチキガイドや、何かと金をふんだくろうとする悪徳商人(本人は全然悪びれていないけど)や物乞いに遭遇しまくる度に、突然のヨーデルで対抗してインド人すらドン引かせる中谷美紀。なかなか逞しくなりましたね。もともと気が強そうな顔立ちですが、やはり旅は人を成長させるものなんでしょうか。

南インドの水田 

 妹尾河童の場合、北インドよりもむしろ南インドの方が性に合ったようですが、中谷美紀はココナッツオイルのせいかあまり性に合わなかったようですね。その辺がボリュームの差でしょうか。まあどの地方、どの国が相性がいいかなんて人それぞれなんでしょうけど。

西ガーツ山脈 

群衆リドル Yの悲劇'93:ラノベにするべきな本格推理

大鳳キター!!

 装甲空母・大鳳さんキタ━━━(゚∀゚).━━━!!!一昨日のことですが、資源に余裕があったので大型艦建造を回したんですよ。正空母、軽空母、あきつ丸、まるゆ以外をほぼ確実に弾くレシピとしてはボーキサイトの消費量が今のところ最低のレシピとされる、“燃料4000・弾薬2000・鋼材5000・ボーキ5200・開発資材20”で。前回これで回したら軽空母瑞穂が来たんです。大鳳狙いだったのでハズレではあったんですが、まだ持ってなかったので結果オーライでしたが、やはり本命中の本命が来ると興奮しますね。

胸が飛行甲板の大鳳さん 龍驤

 来ない人には何年プレイしてても来ないそうなんで、プレイ歴1年未満の新米提督のところに来てくれて光栄の至りです。空母・軽空母は中破で艦載機を発艦させられなくなって海上の置物と化するんですが、装甲空母は中破でも艦載機を飛ばせるんですよね。しかもCVはときめきの能登さんだし。それにしても大鳳、艦娘の姿で胸部が飛行甲板状態なのははぜ。赤城さんとか加賀さんとかは立派なモノをお持ちなのに。軽空母でやはり胸が俎板の龍驤が親近感を持つかも知れないですが、龍驤はかなりコンプレックスを持っている様子なのに対し、大鳳は全然気にしていないようです。

大鳳と龍驤 

 本日は古野まほろの「群衆リドル Yの悲劇'93」を紹介しましょう。古野まほろの著作は初めて読みました。実は覆面作家で本名や性別・年齢・画像などは非公開です。11月25日生まれで東京大学法学部を卒業し、国家公務員Ⅰ種試験に合格して警察庁に入庁。警察大学校主任教授を最後に退官しました。フランスのリヨン第三大学法学部の専攻修士課程を修了しているそうです。フランス留学が警察庁入庁後かどうかは不明ですが、何となく官費で留学したんじゃないかという気が。

群衆リドル 

 なおⅠ種試験というのは1984年度から2011年度まで行われており、現在は総合職試験と名前を変えております。ここから、古野まほろは2007年に作家デビューしているので、1985年~2012年度警察庁入庁者の誰かということになりますし、作家デビューが2007年なのでそれ以前に辞職しているものと思われます。警部が准教授(助教授)、警視が教授になるようなので、主任教授ということはそれより上の警視正クラスでしょうかね。現在はともかく、Ⅰ種で入庁した女性警察官で中途退官した人なんて、調べれば身バレしてしまいそうなので、古野まほろは男性で決まりでしょう。そしておそらく90年代の入庁者なんじゃないかと。こんなところで探偵しなくてもいいのですが、覆面作家なんていうとつい(笑)。

天帝のはしたなき果実 

 2007年1月、「天帝のはしたなき果実」で講談社の第35回メフィスト賞を受賞し小説家デビューしました。本格推理の巨匠である綾辻行人、有栖川有栖の両氏に師事したそうで、デビューからおよそ10年で長編作品を20作品以上、短編集も含めて25作品以上と、非常にハイペースな刊行が続いています。

群衆リドル単行本 

 「群衆リドル Yの悲劇'93」は2010年12月16日に光文社から刊行され、2013年8月に文庫版が光文社文庫から刊行されました。本書のあとがきによれば、デビューは講談社にも関わらず、本書以前に講談社から刊行された9冊は絶版になっていたようです。既に「恩讐の彼方」だそうではっきりした理由は記されていませんが、“弱いものいじめが罷り通る世界から距離を置きたい”“この世でもっとも醜悪なのは、強者が弱者をいたぶることだ”などの表現がなんとはなしの理由示唆になっているような。既に両者の関係は修復されたようですが…

 「群衆リドル Yの悲劇 '93」は、2012年の本格ミステリ・ベスト10で9位に入っています。“イエユカシリーズ”の第一作で、古野まほろの代表作である「天帝シリーズ」と共通の世界観を有しているそうですが、「天帝シリーズ」は未読なのでなんとも言い難いです。それでは例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

覆面作家古野まほろ 

 浪人生の渡辺夕佳の元に届いた、壮麗な西洋館への招待状。恋人で天才ピアニストの、イエ先輩こと八重洲家康と訪れた『夢路邸』には、謎を秘めた招待客が集まっていた。そこに突如現れた能面の鬼女が、彼らの過去の罪を告発し、連続殺人の幕が切って落とされる。孤立した館に渦巻く恐怖と疑心。夕佳とイエ先輩は、『マイ・フェア・レイディ』の殺意に立ちむかうことができるか!?

月光ゲーム 

 副題にある「Yの悲劇」からはエラリー・クイーンの超有名推理小説が連想されるのですが、むしろ正体不明の人物からの罪の告発などの形式はアガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」に近いです。孤立した洋館で繰り広げられる連続殺人事件。しかも様々な形の密室状態で起きるので、犯人もさることながら、それぞれの事件のトリックも気になるところです。

 クイーンの「Yの悲劇」自体より、師と仰ぐ有栖川有栖の「月光ゲーム Yの悲劇'88」の方をオマージュしているようです。舞台も同じ矢吹山で、陸の孤島で次々と起きる連続殺人という展開も同じです。「月光ゲーム Yの悲劇'88」は有栖川有栖のデビュー長編で、「群衆リドル Yの悲劇'93」は講談社と揉めた後の古野まほろの再デビュー長編といった様相を呈しているあたりも類似しているような。

クセがスゴイ!! 

 文庫版の表紙を見ると、ラノベ風のイラストになっていることが判ると思いますが、正直最初からラノベ・ミステリーとして打ち出した方が良かった気がします。なぜかと言うと…千鳥風に言えば「クセがスゴイんじゃ!!」なので。おっさん読者としては、トリックとか犯人がどうとかいう前に、本書の強烈なクセの強さに慣れられるかどうかが問題になります。

 主人公にして語り手は浪人生の渡辺夕佳。妙な招待に乗っていないで勉強しろよと思いますが、恋人で天才ピアニストの八重洲家康と一緒ならという条件で招待に応じます。この八重洲家康が名探偵役になるのですが、とにかくクセがスゴイ。17歳でショパン国際ピアノコンクールに参加し、優勝確実とされながらなぜか直前に出場辞退し、表舞台から姿を消し、現在は東大生(正確には東京帝大生)になっています。夕佳は家康と同じ大学に行きたくて浪人しているという。

クセがすごいその2 

 それだけなら天才っているのねで済むんですが、この家康、ルックスは超二枚目なんだそうですが、とにかく性格が悪い。しかもコミュ障の気があり、なぜかむやみに上から目線でガキの分際で人をアゴで使う気マンマンという。演奏が素晴らしいというのならCD位は買ってもいいですが、個人的お付き合いは御免被りたいタイプです。画家でいえばパブロ・ピカソ的な?

 洋館到着から登場人物全員集合、そして最初で最後の晩餐(全員揃って、という意味で)までの序盤のまあ読みにくいこと。途中で読むのを止めようかと思ったほどですが、まあ「能面の鬼女」出現以降は、気持ちがいいほど連続的に人が殺されていくので一気に読めます。ネタばれは控えますが、「そして誰もいなくなった」や「かまいたちの夜」に見られるトリックは使われていません。

クセがすごいその3
 
 それにしても八重洲家康…。天才ピアニストはいいです。凄まじい絶対音感を持っているというのも結構。東大生になれるくらいだから頭もよろしいのでしょう。でも東大生がすべからく探偵の素質を持っている訳ではないので、彼がここまで鮮やかに謎を解くのには非常な違和感がありまくりなんですよ。せめて生粋のミステリーマニアだとかいった説明があればいいのですが、20歳そこそこのガキで人生の大半をピアノに捧げてきた(そしてその後はそれなりに受験勉強もしたんでしょうよ)人物がそこまでミステリーに造詣が深くなれるものか。ホームズやポアロ、その他の名探偵の指摘なら素直に納得できることでも、家康だと極めて納得いかないんです。これが若さか…

花山薫です 

 しかもポーランドの幻の伝統的殺人舞踏・裏マズルカをマスターしているということで何気に超武闘派なんだそうですが、ちょっと範馬勇次郎と戦ってみてくれんかね。いや、君より年下の範馬刃牙や花山薫あたりで結構。花山薫なんて身体を鍛えたり武術を嗜んだりしていないので相手にちょうどいいんじゃないでしょうかね。

 ま、推理とかより家康の言動の不愉快さが気になるのですが、本書の語り手である夕佳も結構おかしい。変態紳士家康にぞっこんラブという点は蓼食う虫も好き好きなので目をつぶりますが、普通の浪人生の語りとは思えない部分が散見されます。シリーズ一作目ということで語られていない部分も多々あるようなのですが、一筋縄ではいかない人なんじゃなかろうか。浪人生のくせにセーラー服を着ていくあたりも怪しい(笑)。

何だオマエ?… 

 で、集まった他の参加者もまあ俗物というか露悪的というか…殺されてもしょうがないかとつい思ってしまう連中が多いです。ただ、「こんなところにいられるか!」とか「殺人鬼と同じ部屋にいられるか!」といったベタベタな反応をするのが笑えてしまう。自ら死亡フラグ立てるというスタイルは今時ちょっとなあ。

 終盤、連続する密室殺人事件のトリックを鮮やかに解きほぐしていく家康ですが、抜本的に無理がないかというかなり強引なトリックなんですがこれは本格推理的にOKなんですかね?ネタバレになるから詳しく書けないんですが、そこまでやらせるのは無理じゃね?と思ってしまいます。せめてガリレオシリーズみたいに再現実験でもしてくれないと納得できないような。
 
スティーブン・キングの文書読本 

 まあ中盤以降はクセがスゴイ文体にも慣れるので一気に読めますが、多分スティーブン・キングが自身の文書読本(書くことについて)で主張しているところに照らすと、古野まほろの作品は唾棄すべき表現法の好例ということにされてしまうのではないかと。ま、世界的ベストセラー作家といえどもそれに従ういわれはないのですが、私も東野圭吾のような平易な文体の作家の方が好きですね。

泥眼 

 あと殺人の動機が弱い。「能面の鬼女」が糾弾する各人の罪状。それは実は本来の動機を隠すためのフェイクなんですが、罪状自体は虚偽ではないようです。どうやって調べたんでしょう。特に夕佳の“罪状”なんて、ちょっと調べようがないような。最終盤の犯人の告白に出てくる謎のパトロンが教えたのか。だとするとシリーズを通じた家康・夕佳(これでイエユカ)の宿敵となるのかも。

 そして犯人には第三者から見て弱いなあとは思われるけれども一応殺人の動機はある。それはいいのですが、デコイである「能面の鬼女」まで殺しているのはどうなのか。この人物も実は殺害対象の一人であるところ、上手いこと騙して「能面の鬼女」を演じさせた……というなら判らんでもないのですが、最後までそういう記述はありませんでした。目的のためなら手段を選ばないというなら、節子それ復讐と違う、テロや!という気がします。

群衆リドル POP 

 本書の世界は、現実の世界とは違って、日本帝国というパラレルワールドを舞台となっていて、軍が幅を効かせたりしていますが、ほぼ年代とかテクノロジーは現実に準拠していると思われます(そうでなければ90年代とかいう設定に意味がない)。それを踏まえて、そしてやたら家康が自分の頭の良さをひけらかすスタイル(衒学的というのか)なのであえて指摘しますが、登場人物に外務省大臣官房の儀典長という人物が出てきます。

昔の儀典長 

 作品が出版されたのは2010年で、確かにその時点で外務省の儀典長は大臣官房に属する現在のポストとなっています。しかし、1969年から2004年までは、省名を冠さない「儀典長」であり、次官級ポストでした。つまり現在よりも偉かった訳ですね。作中儀典長の人物は自身のポストを審議官級と称していますが、審議官にも次官級の省名審議官(外務省なら外務審議官)と各省庁の大臣(長官)官房に置かれている局長級の審議官、そして各局に置かれる局次長級の審議官がいます。

 1993年時点なら、この人物はただ「儀典長」を名乗るべきで、そのランクは次官級ということになるはずなのですが、大臣官房儀典長とされていて局長級のランクに不当に引き下げられている点が、作者の調査不足だなあと思われる点です。

洋館のイメージ 

 密室殺人やそのトリックなど、見るべき点はあるので(家康病でこっちまでエラそうになってしまいました)、“オレ強えー、オレ最強!!”的存在が罷り通り易いラノベならさらに人気を博するんじゃないかと思います。もちろん作中イラストも豊富にね。実際光文社文庫版は限りなくラノベっぽい装丁だと思いますし。

雪山の密室 

インド旅行記1 北インド編:女優・中谷美紀のインド紀行

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 久しぶりにリアル明里パパンから明里ちゃん画像が来ました。4歳になってお洒落に目覚めた明里ちゃん。すっかり小さなレディですね。9年後には岩船に行くことになとも知らずに……(行きません)

インド旅行記1 

 本日は中谷美紀の「インド旅行記1 北インド編」を紹介しましょう。著者は女優さんと同姓同名の人ではなく、かの女優その人です。有名人ですが、中谷美紀の本は初めて読んだので一応著者紹介を。

中谷美紀 

 中谷美紀は1976年1月12日生まれで東京都出身。女優デビューは1993年に「ひとつ屋根の下」でですが、それ以前にテレビ朝日系のバラエティ番組「桜っ子クラブ」のアイドルグループ「桜っ子クラブさくら組」の一員として歌手活動をしていました。

桜っ子クラブさくら組時代の中谷美紀 

 余談ですがこの「桜っ子クラブさくら組」、当時は「おニャン子クラブ」のエピゴーネンかよなんてと思っていましたが、よく考えれば「おニャン子クラブ」より全体的なルックスはかなり高かったような気がします。強いて例えるならば「おニャン子クラブ」がAKB48だとすると、「桜っ子クラブさくら組」は「乃木坂46」あたりでしょうか。

桜っ子クラブさくら組 

 なにしろメンバーには井上晴美、加藤紀子、菅野美穂、持田真樹と錚々たる面子が揃ってましたからね。その中の一人が中谷美紀で、東恵子と「KEY WEST CLUB」という内部ユニットを結成していました。というか、当時は彼女が女優としてこれほど名を馳せるとは思っていなかったという。なにしろ目がリハクなもので。

KEY WEST CLUB 

 アイドル活動は黒歴史かも知れませんが、駆け出しの頃は皆いろいろやっているものなので恥じることはないと思います。女優としては数々の受賞歴を誇り、「壬生義士伝」「ゼロの焦点」「利休にたずねよ」で日本アカデミー大賞優秀助演女優賞を、「「自虐の詩」「阪急電車~片道15分の奇跡~」で同優秀主演女優賞を、そして「嫌われ松子の一生」で最優秀主演女優賞を受賞しています。

嫌われ松子の一生 

 で、最も高い評価を受けた「嫌われ松子の一生」を取り終えた直後の2005年8月、精根尽き果てた中谷美紀は、本場でヨガを体験したというただそれだけを望んでインドに向かい、北インドで40日弱を過ごしました。当時29歳。27歳の頃からヨガを始めたのだそうです。

タージ・マハール 

 本書は「嫌われ松子の一生」公開後の2006年8月5日に書き下ろしで幻冬舎文庫から刊行されました。彼女はすっかりインドにはまったらしく、2006年1月までの5か月の間に4回もインドを旅しています。本書はその第一回目にして最長だった旅の日記となっています。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

オールドデリー 

 チューブわさびで体内消毒に励み、持参したウエットティッシュは数知れず。そんな努力の甲斐もむなしく、腹痛に見舞われ、暑いホテルで一人淋しく回復を待つ。町に出れば、パスポートを盗まれ、警察署長に懇願書を書くはめに……。単身インドに乗り込んだ、女優・中谷美紀に襲い掛かる困難の数々。泣いて、笑った38日間の一人旅の記録。第1弾!

河童が覗いたインド 

 椎名誠曰く「インドはああいう国なので、なんとなく行けば誰でもなにがしかのことは書ける。」ということで、インド関係の本は玉石混淆でゴマンとあるようです。中谷美紀もインドに向かう飛行機の中で遠藤周作の「深い河」や妹尾河童の「河童が覗いたインド」を読んだそうです。「深い河」は小説ですが、「河童が覗いたインド」の方は地を這うようにして描かれた旅行記&スケッチで、椎名誠も絶賛していますがインド本ナンバー1の誉れも高い名著です。

インド鉄道紀行 

 私が読んだインド本といえば「河童が覗いたインド」と宮脇俊三の「インド鉄道紀行」でしょうか。どちらも面白いですが、両作品を読んで思うのは、バイタリティーがないとインドは無理だなあということです。疲弊した状態で女一人旅なんて、大丈夫なのかと思ってしまいますが、案外女性の方がバイタリティーがあるのかも。

サリーの女性達 

 滅菌ウエットティッシュや消毒スプレーなどを携え、裸足になった後は足もサンダルも消毒し、食事の後はワサビで体内消毒と、潔癖症かよいかにも女性らしいなと思う行動を取る著者ですが、それでもやってくる腹痛。インドではこれは通過儀礼らしく、妹尾河童も宮脇俊三も旅の途中でやられています。河童は好奇心のままに何でも飲み食いするのでなるべくしてなったとも言えますが、無茶をしない宮脇俊三や潔癖症気味の中谷美紀ですら腹痛は襲うので、インドに行ったら腹痛になると思った方がいいのでしょう。

レイクパレス 

 デリーをはじめ町はやたら汚く、物乞いは殺到し、ガイドは土産物店と結託し、タクシーやオートリキシャは隙あらばボろうとする中、女の細腕一本で泳いでいくのはさぞや大変だろうと思いますが、自己主張の強い韓国人のふりをしたり英語がわからないふりをしたりと、女優らしいテクを発揮しているのが面白いですね。

チャパティとカレー 

 あと食べ物についての記述がかなり詳細で、旨い不味いもしっかり書いています。各種カレーはそこそこおいしいようですが、毎日カレーだとさすがに飽きるらしく、中華料理店があるとすかさず入る中谷美紀ですが、その度にインド人の作る中華はダメだと思い知らされるという。自分でも言っていますが、一回で学習しろよと思います(笑)。

エストニアのタリン 

 かつてエストニアを旅した際、中華料理店があったので入ったら、何とインド人がやっていました。バリバリインド人スタイルだったのですが、エストニア人にはばれないのでしょうか?私がはいったら中国人と間違えたらしく、「やっべッ!本物が来ちゃったよオイ!」という激しい動揺を見せていたのが笑えましたが。私が欧州滞在で学んだのは、「中華料理屋はどんな国にでもあるが、豊かな国ほどおいしい」ということです。

バラナスィ 

 中谷美紀のインド旅行の主目的がヨガなので、ヒマラヤ山麓のリシケシュでヨガ修行に励んだりするのですが、まあ修行といってもそれほど辛いものではなく、エステシャンによるマッサージも楽しんだりしています。ヨガはともかくマッサージは私もやってもらいたいですね。

ダルシムフィギュア 

 私のヨガの印象というと、ストリートファイターⅡのヨガマスター・ダルシムなんですが、両肘や両膝の関節を自由に外して手足を伸ばしたり、空中浮遊したりテレポーテーションしたり火を吹いたりして、流石の私でも節子これヨガとちがうと思ったものでした。相手をヘッドロックしながら殴りつつ「ヨガ!ヨガ!」と叫ぶあたり、インド政府から公式に抗議が来なかったのかと思ってしまいますが。

ヨガフレイム 

 ヨガは日本ではもっぱらハタ・ヨーガ(ヨーガ体操)が主流となっていて、運動とか健康法として捉えられていますが、本来は心身を鍛錬によって制御し、精神を統一して輪廻転生から解脱しようとするもので、多分に宗教的なのです。なので興味がないこちらとしては「アーハーン?」的な読み飛ばしをするしかないのですが、中谷美紀はインドに来てベジタリアンになり、さらには酒まで飲まなくなっていきます。いや、酒は飲みたいけどないから仕方が無いというケースもありますが、ベジタリアンは本格化し、肉が入った料理を受け付けなくなるほどです。

 リシケシュ

 ベジタリアンとか、さらに厳格な(卵や乳製品もダメという)ヴィーガンとか、まあ人の食習慣は人それぞれなので他人に強要しない限りは好きにすればいいのですが、中谷美紀はインド旅行を契機に6年間ベジタリアン生活を実践していたそうです。ただしその間にはめまいや突発性難聴が起こり、精神的にも機嫌が悪かったり人と口を利きたくなかったりしたそうです。結局体力が尽き果ててベジタリアン生活からは足を洗ったそうです。私もまあ2、3日なら精進料理一色でも耐えられるでしょうし、そもそも普段そんなに肉は食べていないのですが、雑食が人間の本性だと思っているのでベジタリアンになろうとは思いませんな。

レー 

 好んでいったインドにも関わらず、結構インド人の押しの強さや理屈っぽさ、何かと言えば金を取ろうとするところに辟易していく中谷美紀。盗難にあってパスポートを無くしたり、被害届を貰いに警察に行っても嫌な目にあったりと同情します。そんな彼女のごく自然な反応を、上から目線だとか批判するレビューもありますが、私は素直な感想を綴っていて好感を持ちました。女優も一般人とあんまり変わらないんだなあと。そして思います、私はインドは止めておこうと。やっぱりヨーロッパが向いているんだ私には(笑)。

風の宮殿 

 食事や衣類には関心が高い反面、寺院とか城とか遺跡関係にはあまり強い関心を示さない中谷美紀。そうはいってもタージ・マハールとか押さえるべきところは押さえていますけどね。ヨガは好きだけど特に宗教的な入れ込みはしていないようで、わりと日本人としては普通の感性ではないかと思われます。インドマニアにはとにかく貧乏旅行を推奨する向きもあるようですが、私もなるべく彼女のように高くても清潔なホテルに泊まりたい派です。それでもお腹を壊すのだからインド恐るべし。実は図書館には「インド旅行記2 南インド編」もあったので、次回借りてきましょう。
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