尼僧殺人巡礼:順番バラバラで読んだ「尼僧サスペンスシリーズ」三部作の第一作

釧路冬紀行
 

 二日ぶりにこんばんは。出張に行っておりました。行き先は釧路。道東の冬なんていうと「寒いっ!」というイメージですよね。まあ寒かろうが暑かろうが仕事なら行かなければならんわけですが、道東は寒流の千島海流の影響を受けるので、一般に冷涼です。特に夏季は海霧に覆われる日が多くて、札幌などで夏日や真夏日を記録しているような日でも「天然のクーラー」(北海道の気象情報でよく使われる表現)が効いた状況であることが多いです。意外にも秋・冬・春は日照時間が比較的長く、年を通じての日照時間は札幌や東京よりも多いそうです。

釧路湿原の冬

 釧路の冬は晴れの日が多くて降雪量は少ないのですが、寒いので一度降るとなかなか溶けません。また海に面している割りに真冬日が多く、年に44.7日(平年値)もあるとか。今日は低気圧のせいで暴風雪状態で、釧路には似つかわしくないほど雪が降りました。朝起きて思わず「札幌か」と言ってしまいましたよ。

釧路駅

 釧路は道東最大の市…ではあるのですが、約18万人で、帯広市(約17万人)に迫られつつあります。両市とも少子化の影響で人口は減らしつつあるのですが、釧路の減少幅が大きいので近い将来に帯広市に抜かれるだろうといわれています。

帯広駅

 例えば駅舎を見ても両市の勢いの差が窺われるというものです。帯広の元気さに比べて釧路の老朽化が目立ちます。もっとも釧路以東は根室市とかも元気がないので、やはり大きな要因は漁業の低迷、そしてその直接的原因は北方領土問題なんでしょうね。

尼僧殺人巡礼

 本来なら北海道カテゴリーで釧路について語りたいところなのですが、出張だし悪天候だしであまり語ることがありません。札幌に無事帰ってこられて良かったなと。そこで本日は赤松光夫の「尼僧殺人巡礼」を紹介します。前に紹介した「尼僧まんだら地獄」で触れたように、「尼僧サスペンスシリーズ」三部作の第一作になります。古い本だし読めないかなと思っていたのですが、札幌のブックオフで発見しました。これで尼僧サスペンスシリーズ(特に注目されてないけど)を読破したことになります。

 例によって文庫本裏表紙の内容紹介です。前回も掲載しましたが改めて。

 学園粉争のさなか、関東大学医学部事務局次長・小栗精一郎は不正入学にからんだ詐欺横領の容疑に問われていた。そんな折、大学二年になる小栗の娘・桐子が体育会系の学生らにレイプされた。数週間後、小栗は故郷徳島で自殺。傷心の桐子も大学を中退してインドを放浪。十二年後、尼僧・寂蓮となった桐子は、桜舞う和歌山の紀三井寺で、かつてレイプを謀った忘れ難い男と偶然にも再会した。官能サスペンス巨篇。

紀三井寺

 桐子は剃髪した尼僧ですが、ウィッグを被ると色っぽい女性になれ、スナックやバーで働くことも可能です。彼女をレイプして処女を奪った男達は4人いたのですが、紀三井寺で出会った男を殺害したことから彼女の「殺人巡礼」が始まります。

 そもそも桐子の事件の後ほどなくして彼女の父は3億円という巨額の横領容疑を抱いたまま自殺するのですが、その金は出てくることがありませんでした。一体どこに行ったのか?レイプ事件との関わりはどうなのか?そして本当に自殺だったのか?

 紀三井寺で再開した加山を殺害したのは偶然のようなもので、青酸カリの入ったカプセルと入っていないカプセルを飲むということでどちらかが死ぬというロシアンルーレットのようなことをした結果ですが、桐子はそこでカルマの存在を確信して、「殺人巡礼」に入る訳ですが、彼女が殺したのは3人で、レイプ犯のうち実際に殺害したのは2人だけです。一人は仲間内の争いで既に殺害されており、もう一人はチベットに刺客としてやってきたのを、昔彼女が愛したベトナム戦争脱走兵のサイモンが射殺したのでした。

ポカラ宮

 しかし、サイモンこそかつて桐子がチベットを訪れたときに彼女を殺す役目を担っていたことを知るに至り、桐子は陰謀の全貌を掴むことに全力を尽くすことになります。そして現れてくるのが新興宗教の教祖・白光とその妹の冴子。冴子は関東大学理事長の夫人でしたが、離婚してホテルのオーナーとなっています。どうやら新興宗教の教祖・白光が教団を立ち上げるのに必要だった資金こそが、桐子の父が横領したとされる3億円だったようなのですが……

 本書と、三作目の「尼僧まんだら地獄」については影村英生が解説を書いているのですが、私が最初に読んだ「尼僧呪いの祭文」は別の人が解説を書いており、しかも最初に読んだのが「尼僧呪いの祭文」だったせいで三部作であることを知ったのはつい最近のことです。

 既に「尼僧まんだら地獄」の記事で触れたように、三部作は相互の関連性はさほどないのですが、唯一共通するのが、本人は一度も実際に登場しないものの、様々な人々の発言に登場し、また重要人物の父となっている“邪淫の祈祷師”鈴木道覚でしょう。「尼僧まんだら地獄」の時はまだ確証が持てなかったのですが、本書を読んで確信できました。

尼僧のイメージ

 鈴木道覚は戦前、福井県の薬芳寺の僧侶でしたが、寺の後継者争いで弟弟子に敗れ、その後出征して戦後は富山の薬売りになったそうです。弟が富山で薬売りとして成功していたので頼っていったようです。最後は四国で行商中になくなったということですが、好色というか女たらしというか、各地で色々な女性とねんごろになっていたらしく、多くの異母兄弟姉妹を遺しています。

 そして本書の白光と冴子こそは鈴木道覚の息子・娘なのでした。「尼僧呪いの祭文」の主人公の桐村麻子も60歳を過ぎた道覚とイタコの若い女性の間に生まれた娘で、「尼僧まんだら地獄」では後半の主要登場人物の一人である過激派学生崩れの殺し屋殺・風間精二が道覚の息子です。

真言(マントラ)

 そしてどうやらこの道覚、薬売りの得意先だった桐子の母とも性的な関係があった模様です。まさか桐子の父ということはないでしょうけど、こうなってくるともしかするともしかするのかも知れません。

 桐子は尼僧にもかかわらず僧侶の護るべき全ての戒律を破っており、しかも自ら手を下して悪人とはいえ人を殺すなど、道覚の娘ながら善人で誰も殺していない「尼僧呪いの祭文」の主人公桐村麻子や、やはり運命に流されつつも人を殺さない「尼僧まんだら地獄」の薬師寺葵とは大きく異なっています。

 作中の老婆が言うように桐子は羅刹であり、全てを受け入れるかのような葵は菩薩なのかも知れません。人を殺し、しかもろくに隠蔽工作も行わなかった(それどころかわざわざ余計な証拠を残したりしています)せいで、桐子は警察にも追われるようになりますが、展開上警察は姿を現しません。代わりにニセ刑事に捕まったりはしますが。しかし最後の最後、全てが終わってインドに向かおうとした桐子の前に警察が登場し、インドに行く代わりに引導が渡されるわけです(駄洒落か)。

チベットの山

 でも多分、いずれ自分も地獄行きだと確信していた桐子なので、無念さはなく、むしろ清々として警察に連れられていったのではないかと思われます。彼女はまあいいのですが、途中彼女を助ける元カレで四国の新聞記者(現在は妻子持ち)は、彼女と関わったせいで命を落とすことになってしまし、作中一番理不尽な目にあっているような気がします。殺した側は「即身仏になった」なんて嘯いていましたが。

 作中には密教の要素が濃厚で、三部作中一番仏教的説明が多い作品になっていますが、クンダリニーとかチャクラとかカルマとかマントラとか、どっかで聞いたような気がするなあと思ったら、思い出したのは某オ○ム○理教ですね。本書は1982年4月の出版なので、松本サリン事件や地下鉄サリン事件の10年以上前の作品ですから、あの教団に影響を与えたとかいうことはないのですが、密教というものがインドのヨガと関係があるのだということは勉強になりました。というか、古代インドやチベットの仏教思想から大きな影響を受けたのがあの教団なんでしょうね。

チベットの山その2

 三部作は日本各地を転々とするほか、海外にも向かいますが、「尼僧呪いの祭文」はフィリピン・ピナツボ火山、「尼僧まんだら地獄」はスペイン・グラナダに飛びましたが、本書でもチベット・ポカラに飛んでいます。チベットか…行ってみたい気もしますが、最果てという感じがしますね。私の両親の出身地である岩手県は、かつて「日本のチベット」とか呼ばれていましたが、代替品にはなりませんか(笑)。
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