インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実:「フジコ」は続編もイヤミスの極み

殺人鬼フジコの真実
 
 こんばんは、暑いですね。昨日管理者(つまり私)しか閲覧できないコメントが来て、何事かと見てみたら、営業関係でした。つまりブログで小遣い稼ぎせんかねというヤツです。以前も別の会社から同様のコメントが来ていたので、その際は丁重にお断りしたのですが、今回はもう面倒くさくなったのでレスも返さずコメントを削除しました。どうせ再び注目するのはメールが返ってきた場合だけでしょうから。純然たるコメントには決してこんなことはしませんし、必ずレスしますから。嘘だと思ったらコメントしてみて下さい(見え透いたことを…)。

 さて戯れ言はこの辺にして今日の本題に。本日は真梨幸子の「インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実」です。先日紹介した「殺人鬼フジコの衝動」の続編になります。

 実は「殺人鬼フジコの衝動」(長いので以後「衝動」とします)と「殺人鬼フジコの真実」(同じく以後「真実」)の間には「私は、フジコ」という短編があります。64ページの短編ですが、「衝動」の限定版にセットとなっています。図書館で借りたのは通常版だったので未読なのですが、Amazonの内容紹介は以下のようになっています。

私は、フジコ

 元アイドルの小川ルミに、初めて主役の話が舞い込んだ。高視聴率の再現ドラマ番組で「殺人鬼フジコ」を演じることになったのだ。フジコは十五人も殺害した平成の鬼女として、世間で大きく騒がれた犯罪者だった。大きなチャンスに、ルミは全霊を賭けてフジコを演じようと試みるが……。ベストセラーとなった戦慄のミステリー「殺人鬼フジコの衝動」。その続編につながる短篇が、いちはやく電子書籍で登場です!

 これを読んでいなくてももちろん「真実」は楽しめますが、主要登場人物の一人である構成作家の吉永サツキが上記ドラマ制作に深く関与しており、しかも茂子の所属する宗教団体の圧力でお蔵入りになったという経緯があります。また上記小川ルミは本名藤原留美子で「真実」の事件に関与しています。

 それでは例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

 一本の電話に月刊グローブ編集部は騒然となった。男女数名を凄絶なリンチの末に殺した罪で起訴されるも無罪判決を勝ち取った下田健太。その母・茂子が独占取材に応じるという。茂子は稀代の殺人鬼として死刑になっ たフジコの育ての親でもあった。
茂子のもとに向かう取材者たちを待ち受けていたものは。50万部突破のベストセラー『殺人鬼フジコの衝動』を超える衝撃と戦慄のラストシーン !

インタビュー・イン・セルPOP

 「衝動」のフジコは既に死刑執行されており、「真実」に登場することはありませんが、登場人物達によって言及されることで相変わらず存在感があります。

 下田健太というのは殺人鬼フジコの叔母である茂子の息子です。「真実」にも登場しており、フジコの3歳年下ですが、「真実」ではほとんど言及されることはありませんでした。フジコの従兄弟であるにも関わらず、フジコの眼中にはなかったようで、寝苦しい真夏の夜、唯一冷房のある6畳間(茂子の夫が寝ている)に行って寝ているようだが、自分は流石にそれはできないといったモノローグがあった程度です。

 その健太もまた第二の殺人鬼となっていたことは、流石に血は争えないということなのでしょうか。虚言癖があってクラス中からシカトされていた少年だった健太が、フジコが家を出た(高校中退して出来婚して玉の輿に乗ったと思ったら一層ひどい状況になったあの時)後に急に変身し、学級委員や生徒会役員になってカリスマ性を身につけていき、新任女教師を自殺に追い込み、その後はまさしくサイコパスとして近づく人々を犠牲にしながら生きているようです。

 健太は男女数名を殺害したとして起訴されるも、物証が少なくて一審では無罪を勝ち取り、検察が控訴しなければ確定という状況にあります。健太の事件は2002年3月に起きた「北九州監禁殺人事件」をモデルにしており、健太自身がこの事件に範を取っているようです。この事件の加害者はWikipediaによると

ジン横丁

 “病的な嘘吐きで自意識が強く目立ちたがり屋。饒舌でいくつもの顔を持ち、エリートを演じる傾向がある。礼儀正しく愛想が良いが、猜疑心・嫉妬心が強い(アフェクションレスキャラクターの傾向) 。異常なまでに執念深く嗜虐的。神経質で臆病な面もあるが虚勢を張る。”

 と記されており、健太の性格とほぼ一致していることから、健太自身がこの加害者をモデルにしているのだろうと思われます。「北九州監禁殺人事件」では加害者への死刑判決が2011年12月に最高裁で確定しています。詳細はWikipediaをご覧頂きたいのですが、概要を淡々と記述した文章を読んでいるだけで気持ち悪くなってしまいました。この事件そのものがイヤミスですが、大きく異なるのは実際に起きた事件であるということですね。まさに事実は小説より奇なり、です。

 「真実」の健太は残念ながら無罪判決となっていますが、前述の構成作家吉永サツキは何とか物証を得て健太を控訴、そして死刑に持ち込みたいと思っています。そこで雑誌編集者の井崎智彦と村上里佳子とともに健太の母・茂子の住むSヶ丘団地に向かいます。

 インタビューは1日で終わる予定でしたが、茂子の異様な対応により、何と6日に亘ってしまうことになります。

 以下はまたもやネタバレですので、読まれる方はドラッグしてどうぞ。

 やはり私が思っていたとおり、「衝動」の1章は早季子の物語で、フジコではありませんでした。そして2章からがフジコの物語だった訳です。15人殺害の殺人鬼として知られるフジコですが、実際には両親と妹を殺害したのも当時11歳のフジコであり、なんと18人もの人間を殺していたことになります。そして事件をフジコからそらす役割を果たしていたのが茂子と小坂初代でした。

 この点は「真実」を読めばはっきり判明しますが、読む前に気付いたことは我ながら「よくやった」と言いたいです。伊達にミステリーは読んでいない(まだまだビギナーですが)。

 そして明らかになった真実は、フジコは実際は茂子の娘であり、母親だと思われていた慶子(茂子の姉)は伯母だったのです。ここでフジコが「衝動」で散々行っていた「お母さんのようにはならない」という言葉の意味が大きく変わっていくことになります。慶子が近所で評判の美人だったにも関わらず、フジコが全く似ていなかった理由も、やはい不美人だった茂子の娘と言うことで納得です。

 そして今回のシリアルキラー・健太は、フジコの従弟ではなく、異父弟ということになります。つまり茂子の子供達はいずれも殺人鬼となっている訳です。これだけでも茂子の血筋の恐ろしさが凄まじいことが判ります。茂子自身は殺人は犯していないようですが、彼女の精神の異常さはサイコパスそのものといえましょう。

 雑誌記者の村上里佳子は茂子と健太の術中にまんまとはまり、見事に地獄送りとなってしまうのですが、サイコパスという連中は本当に被害者になりやすいタイプを見いだすのが上手いですね。「どうして逃げない!?」と突っ込みたく場面もしばしばですが、「北九州監禁殺人事件」を知ると、加害者の様々な手口によるマインドコントロールの深刻さが判るので、村上里佳子も取り込まれてしまったのでしょう。健太のみならず、茂子と遭遇した時点でそれは始まっていると言って良いでしょう。

 それから意表を突かれたのは、「衝動」に登場してフジコの半生を書いた後に死んだ早季子の妹、美也子は生きていたことです。健太の事件の生存者ですが、てっきり茂子と初代に殺されたのかと思っていました。実際に拉致したのは健太だったのでした。健太とフジコは茂子の子供であり異父姉弟なので、フジコの娘である美也子は茂子の孫にして健太の姪なのですが、それを餌食にしてしまうと言う…

 事件は検察が控訴を断念したことにより急転直下します。吉永サツキが健太と茂子を殺害してしまうのです。正直この二人は生きていて良いことは一つもないような人間の皮を被った鬼なので、死んで当然ですが、自分自身は直接被害を受けていない吉永サツキがなぜ犯行を決意するのかという点で、恐ろしい疑惑が湧いてきます。

 吉永サツキは美也子と接触して彼女のあまりの不幸ぶりにひどく同情していましたが、美也子はフジコの娘、茂子の孫、そして健太の姪なのです。彼女自身にもサイコパス、或いはシリアルキラーの血は流れていて、吉永サツキをマインドコントロールすることによって、自身にとっての障害(茂子と健太)を排除したのではないか……

 茂子の血統はほぼ死滅しましたが、唯一の生き残りが美也子です。今後彼女がどのように生きていくのかを想像すると、怖い考えになってしまうのは私だけでしょうか。


 真梨雪子の小説は面白いのですが、「衝動」「真実」を連続して読んだせいか、イヤミスはもうお腹いっぱいという感じです。心が温かくなる読後感の小説が読みたくなってきました。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ユースフ

Author:ユースフ
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
カテゴリ
リンク
ブロとも一覧

秒速5センチメートル・・・桜花抄の軌跡を追ってみた

心理兵器:秒速5センチメートル
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
FC2カウンター
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
日記
43位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
会社員・OL
11位
アクセスランキングを見る>>
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

最新トラックバック
検索フォーム
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ