ソロモンの犬:動物行動学からの推理が斬新ですが、どんでん返しが過剰?

ソロモンの犬
 
 今週はこれからどんどん暑くなって、週末には30度を越えそうという困った天気予報が。いくら七月になったからといってそう急がないでも。こういう予報に限って外れないんですよね。マーフィーの法則か。

ユースフ・トパロウル

 さて「ぼやきのユースフ」らしくばやきながら今日の本題に行ってみましょうか。あ、私のHN「ユースフ」は銀英伝に由来しているという訳ではありません。昔も聞かれたことあるんですが、偶然の一致と言う奴です。しかし、プロフィールに貼ってあるローレンシャンの秋の風景よりはこっちを使った方がいいのかも知れませんね。全然似てないのが難点ですが(笑)。

 本日は道尾秀介の「ソロモンの犬」です。道尾秀介の作品は初めて読みました。

道尾秀介

 道尾秀介は1975年5月19日生まれの推理作家・小説家です。兵庫県で生まれ、現在は茨城県在住だそうです。筑波嶺が見えるかどうかは定かではありませんが。

向日葵の咲かない夏

 大学卒業後、サラリーマンとして勤務する傍ら執筆活動を行い、2004年に「背の眼」で第5回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞して作家デビューしました。レベルの高い推理小説の書き手として注目を集め、「このミステリーがすごい!」などのミステリーランキングで上位にランクインを果たし、「向日葵の咲かない夏」が100万部を超えるベストセラーになり、一躍流行作家の仲間入りを果たしました。

月と蟹

 2009年から2011年にかけ、「カラスの親指」「鬼の跫音」「球体の蛇」「光媒の華」「月と蟹」と5回連続して直木賞候補になっています。これは戦後最多記録で、極めて異例なケースだそうですが、「月と蟹」で漸く直木賞を受賞しました。

 その他にも、2006年に「向日葵の咲かない夏」が第6回本格ミステリ大賞、2007年に「ラットマン」が第7回本格ミステリ大賞、2009年に「カラスの親指」が第62回日本推理作家協会賞、2010年に「龍神の雨」が第12回大藪春彦賞、「光媒の花」が第23回山本周五郎賞受賞と、錚々たる受賞歴を誇っています。

 初期は純然たる本格ミステリーが主流だったそうですが、文学賞レースの常連となってからは人間を描くことを意識し出し、多種多様な作品を発表していますが、子供や女性、老人を登場人物に多用し、虐待や性的暴行などの重い問題を扱いながら、叙述トリックでパズル的などんでん返しをはかる手法を多用しているということです。これは「ソロモンの犬」でも同様ですね。

 「ソロモンの犬」は2007年8月に文藝春秋から単行本が、2010年3月に文春文庫から文庫版が刊行されています。道尾秀介の作品で、タイトルに十二支が組み込まれているものを“十二支シリーズ”と呼びますが、本作も「犬」が入っているのでその一環ということになります。

 例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

 秋内、京也、ひろ子、智佳たち大学生4人の平凡な夏は、まだ幼い友・陽介の死で破られた。飼い犬に引きずられての事故。だが、現場での友人の不可解な言動に疑問を感じた秋内は動物生態学に詳しい間宮助教授に相談に行く。そして予想不可能の結末が…。青春の滑稽さ、悲しみを鮮やかに切り取った、俊英の傑作ミステリー。

 秋内が通う大学の「女医顔」(壇蜜さんみたいな顔?)と言われる美貌の助教授・鏡子の息子陽介は、自分が拾ってきたオビーという名の雑種犬に急に引き摺られて車道に出て、トラックに轢かれて死んでしまいます。主人に忠実だたオビーはなぜそんな行動を取ったのか?秋内は、居合わせた友人達がそれぞれ不可解な行動や表情をすることから、疑惑の目を向けることになります。彼らのうち誰かが、何らかの方法で?

ソロモンの指環

 表題になっている「ソロモン」とは、直接的には動物行動学者のコンラート・ローレンツの「ソロモンの指環」という著作から由来しています。ローレンツは、近代動物行動学の確立者の一人です。最大の業績は、動物行動の観察という当時軽視されていた古典的な手法を厳密に用い、科学の名に値するものに仕立てあげたことで、生理学や解剖学などからはわからない、動物の行動を直接研究する分野が生まれることになりました。

ソロモン王
ソロモンの神殿

 「ソロモンの指環」は、古代イスラエルの最盛期を築いたソロモン王が持っていたという、様々な天使や悪魔を使役し、あらゆる動植物の声までをも聞く力を与えるという魔法の指環のことです。ヤハウェの命を受けたミカエルから授けられ、これを用いてソロモン王は神殿を建設したのだそうです。

ソロモンの指環?
ソロモン王の指環 解説

 ローレンツは、ソロモンの指輪がなくても、多少なら動物の気持ちがわかるのだ、として同名の本を書いたのですが、本書においていも、オビーの奇妙な行動は何故なのかを解明することが事件解決の鍵となります。そこで活躍するのがマン・マミーヤと仇名される間宮助教授です。ボロアパートに様々な(気色の良くない)動物と住む奇妙な助教授は、決して女性にはもてそうにない風貌ですが、動物の行動にかけては流石に精通しています。それどころか、動物行動学のノウハウを以て人間の心理まで解明してしまいます。

コンラート・ローレンツ

 それと平行して綴られているのが、主人公秋内の恋ということになりますが、「夢にも思わない」の主人公が中学生離れした大人びた中学生だったのに対し、秋内は大学生離れした幼稚さを持った大学生です。ちょっと無知すぎるのと行動が突飛なので、感情移入しきれいないところがあります。彼の一人称で話が展開するならまだしも、秋内に寄り添いながらも描写はあくまで三人称で進んでいきます。

 この辺、「あれ?」という感じがするのですが、その理由は終盤判明します。そこまで読んだとき「えええええ!?」と感じ、まさしく

な…なんだってー!!

ということになりました。いっそ、そのままバッドエンド一直線でも良かったのだと思いますが。そうすれば冒頭のシーンも生きてくるし。しかし、結局は「夢オチ」になってしまいました。結局ラストの後味はそんなに悪くないのですが、むしろ後味悪くてもそのまま進め、謎の解明は間宮に任せてしまった方がストーリー的には良かったんじゃないかと思います。

 秋内の友人達はそれぞれ彼にとって思わせぶりな行動や表情をするのですが、結論からするとどれもこれも真相からはかけ離れたもので、読者を混乱させんがための故意のトラップという気配もあります。

 最後に、秋内の友人・京也の行動については…彼は刑法的には罰せられないかも知れませんが、道徳的にはちょっと許せない気がします。事情があるのはわかりますが、それで情状酌量の余地があるのは高校生までかなと。彼なりにけじめをつけたつもりなのかも知れませんが、そんなもので許されるはずがないことは、ある登場人物の行動からも明らかです。本人の心情はともかく、傍目にはのうのうと生きていくつもりなのでしょうか?

 読者を騙そうという意図が若干先走りし過ぎたところが残念ですが、動物行動学からの推理というのはなかなかに興味深かったです。そして間宮がそれを京也に応用して、本能的にはこういう選択をするところ、異なった選択をしているのはこういう事情があるからだろうと論理的な推理を行っている部分は面白かったです。

ソロモンの犬 単行本
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