MM9 invasion:今度は宇宙からの侵略です

MM9 invasion 単行本表紙
 
 6月6日はオーメンの日です。この日に生まれた同窓生が「ダミアン」と呼ばれていましたっけ。今時の若い人はもはや知らないかも知れませんが。もっとも正確には朝か夕方の6時に生まれなければならないみたいですが。

 今日はいろいろと忙しいので早速本題に入っちゃいます。本日は山本弘の「MM9 invasion」です。

 本書はタイトルからして一目瞭然、先日紹介した「MM9」の続編です。「MM9」は特撮怪獣映画へのオマージュに満ちた作品でしたが、「MM9 invasion」は円谷プロの作品、ぶっちゃけていえばウルトラマンシリーズに完全に傾斜しています。またウルトラマンシリーズで疑問に思われること(なぜ宇宙人は地球に来るのかとか、どうやって光速を超えてくるのかとか、どうして科学兵器ではなく怪獣を使うのかなどなど)について、前作にも登場した「多重人間原理」での説明を行っており、本作品の舞台においては合理的解釈が可能となっています。特撮番組をSFサイドから批判するのではなく、合理的な解釈を試みるするというその発想がとてもいいですね。

 本書は2011年7月に東京創元社から刊行されていますが、まだ単行本が出ていないので、GWで電車が空いていることに期待して大きい単行本を借りてきたのですが、あっさり読み切ることができました。文章が簡明というだけではなく、子供の頃から親しみのある特撮ヒーローもの(ここではヒロインか)のせいかも知れません。

 Amazonの内容紹介です。

 地震、台風などと同じく自然災害の一種として“怪獣災害”が存在する現代。有数の怪獣大国である日本では、気象庁内に設置された怪獣対策のスペシャリスト集団“気象庁特異生物対策部”略して“気特対”が、人を守るため昼夜を問わず駆けまわっている。7年前に出現した、少女の姿をした怪獣6号「ヒメ」。眠りについたままのヒメを移送中のヘリが、突如飛来した青い火球と接触、墜落する。それと相前後して、つくば市に暮らす高校1年生、案野一騎の頭の中へ呼びかけてきた少女の声―それは、宇宙怪獣の地球襲来を警告するものだった!未曾有の“宇宙怪獣災害”に巻きこまれた一騎とその女友達、亜紀子は…!?本格SF+怪獣小説『MM9』第2部。

 ということで、本書は「MM9」の6年後のが舞台となっており、主人公も気特対から気特対のメンバーで宇宙物理学の案野悠里博士の一人息子・一騎に変わっています。彼は「MM9」では小学生でしたが、今や高校生となっているわけです。気特対のニューフェースだった藤野さくらも、結婚を意識するアラサーになっています。時の流れは早いなあ。

 「MM9」2話で登場し、5話で神話・伝説レベルのMM9級の大怪獣「クトウリュウ」(クトゥルー…)を倒した美少女型怪獣「ヒメ」が今回も登場します。登場するだけではなく、10歳位だった体は15歳位になり、また精神生命体ともいうべきジェミーが憑依することで(この辺、科特隊のハヤタとウルトラマンの関係とほぼ同じ)、人間と同じ知性を身につけることになりました。ジェミーは人間より遥かに高度な知性を持っているのですが、「ヒメ」が猿並なので人間レベルに落ち着いたらしいです(笑)。また「ヒメ」は人語を解することはできるようになっても、発声することができないので、テレパシーの相性が良い一騎としか意思疎通ができません。

 地球は相変わらず神話宇宙(ミス・ユニバース)からビッグバン宇宙への移行期にありますが、ビッグバン宇宙に完全に移行してしまえば存在そのものが消滅してしまう神話宇宙の住人達(妖怪)は、神話宇宙の消滅を阻止すべく、決して記憶から消えない怪獣災害を引き起こそうと画策しています。前作で切り札のクトウリュウを倒されて手がなくなった妖怪達ですが、今回宇宙から救いの手がやってきます。冒頭の異星人とのコンタクトシーンはウルトラマンの第2話「侵略者を撃て」に登場したバルタン星人と科特隊のコンタクトを想起させてとても面白いのですが、それはさておき、妖怪達は地球侵略を目論むチルゾギーニャ遊星人から与えられた宇宙怪獣で大怪獣災害を引き起こそうとし、それを阻止しようとする「ヒメ」や気特隊、自衛隊との攻防が展開されます。

 「ヒメ」は巨大化しても20メートル程度で、大型宇宙怪獣に較べて大きさが足りませんが、頑張れば40メートルまで大きくなることができるものの、エネルギー消費が激しいので3分しか持続できません。このあたりの設定がモロにウルトラマンでにやりとしてしまうところですね。ヒメの主力武器である光の輪もウルトラマンの「八つ裂き光輪」(別名ウルトラスラッシュ)を連想させますし。

 本書において多重人間原理で仮説づけられたところによると、宇宙人もビッグバン宇宙ではなく、神話宇宙の住人であり、それ故に光速の壁などなく大宇宙を渡って地球に来襲し、反重力などを駆使できるのだとされています。第一次世界大戦中に大規模な宇宙人の侵略がありました(これは明らかにウエルズの「宇宙戦争」を指しています)が、火星人とされた彼らも宇宙人で、使用した武器(トライポッド!)も金属の皮革を持った宇宙怪獣だったのだろうと結論付けています。

 ジェミーが断片的に語るところでは、ジェミー自身もそうですが、宇宙では物質文明より精神文明の方がポピュラーなようです。これは神話宇宙の方がビッグバン宇宙に較べて優勢ということなのかも知れません。本来秘密だという、宇宙にはジェミー達精神生命体が入り込めないエリアがところどころにあって、ある時不意に入れるようになって調査すると、物質文明の滅亡した痕跡があるという話は、要するにビッグバン宇宙論の文明が展開されていたエリアが、文明の滅亡により消滅したということを示しているのでしょう。地球もビッグバン宇宙に完全に移行すれば、一帯はビッグバン宇宙の法則で支配されるので、他の法則に基づく宇宙人達は入り込めないようになるのだと思われます。また同じビッグバン宇宙の法則に基づく他の文明は、光速の壁があるので他の星にやってくることはできません。

 また怪獣は怪獣と戦いたがる、戦いが怪獣の本能だという話もあり、まして「ヒメ」は怪獣と妖怪が支配していた地球を、人間が支配する地球に移行させた際の「女巨人」「女神」そのもの(それが時代の変化で男神とか男英雄の所行として認識されるようになったとしています)なので、他の怪獣と戦うことは宿命なのでしょう。

 今回高校生の一騎が主人公となったことで、一見美少女のヒメとのドタバタやコミカルなやりとりも多く、前作よりもジュブナイル寄り(今ではライトノベル寄りというべきなのでしょうか)になっていますが、SFマインドがしっかりと溢れているのでSFファンも面白く読めると思います。またこの作者特有の説教性がほとんどないのも好感が持てます。
 
 本書では宇宙怪獣は2体のみ…透明なナメクジか蛇といった風情の「ガラスネーク」と直立したエイのような「ゼロケルビン」(ただし本書中では命名されず)だけが登場します。単行本カバーの怪獣はゼロケルビンなのでしょう。しかし三作目の「MM9 destruction」ではなお多数のチルゾギーニャ遊星人の連れてきた宇宙怪獣が登場するようです。単行本はなお未刊ですが、楽しみに待ちましょう。
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