小説・秒速5センチメートル:心に“明里”が住む全ての人に

文庫版 秒速
 
 こんばんは。早くも梅雨入りの気配がありますね。早い梅雨、早い夏はいいとして、それなが秋も早く来て欲しいのですが、最近秋さんは出不精だからなあ…。

 さて、本日はお約束通り、新海誠の「小説・秒速5センチメートル」を取り上げたいと思います。新海誠の小説は現時点ではこれだけです。

新海誠

 今さらな気もしますが、初出小説家のプロフィール紹介は一応やっておきましょう。新海誠は1973年2月9日生まれ。長野県出身のアニメーション作家・映画監督です。中央大学文学部国文学専攻を卒業しています。

ほしのこえ

 大学生時代からゲームソフトの開発・販売の日本ファルコムでアルバイトをしており、大学卒業と同時に入社しました。同社のパソコンゲームを手掛ける傍らで自主製作アニメーションを製作し、、1998年に「遠い世界」でeAT'98にて特別賞、2000年に「彼女と彼女の猫」でプロジェクトチームDoGA主催の第12回CGアニメコンテストでグランプリを獲得しましたこの頃、5年ほど勤めた日本ファルコムを退社しフリーランスになっています。

雲のむこう、約束の場所

 2002年にほぼ一人で作成したフルデジタルアニメーション「ほしのこえ」で多数の賞を受けて一躍注目され、2004年に初の劇場長編アニメーション「雲のむこう、約束の場所」を、2007年に連続短編アニメーション「秒速5センチメートル」を公開しています。この3作は、いずれも主人公の2人の心の距離と、その近づく・遠ざかる速さをテーマとしたもので、世界観は全く違いますが、三部作と捉えてもいいかと思います。「秒速5センチメートル」は中でも集大成的な作品といえ、これまでに多数の人々の胸を引き裂いて「秒速病」患者を生み続けています。

星を追う子ども
言の葉の庭

 その後は2011年に「星を追う子ども」を公開し、本年は「言の葉の庭」を公開予定です。運が良ければ大成建設のテレビCM「母スポラス海峡トンネル篇」でも新海アニメを見ることができますね。まだ見たことがないという方はこちらをどうぞ。

大成建設CM

 http://www.youtube.com/watch?v=OKoCl-3E0Vw

小説・秒速5センチメートル雑誌連載時の様子

 「小説・秒速5センチメートル」は映像版の「秒速5センチメートル」が公開された2007年3月から執筆が開始され、雑誌「ダ・ヴィンチ」(メディアファクトリー)に連載されたもので、単行本は2007年11月に出版され、2012年10月にMF文庫から文庫本が出版されています。今回私が購入したのは文庫版です。装丁は単行本と全く変わっていません。 

小説・秒速5センチメートルの宣伝

 これも今さらですが、文庫版裏表紙の内容紹介です。

闇夜を飛翔していく鳥

 「桜の花びらの落ちるスピードだよ。秒速5センチメートル」いつも大切なことを教えてくれた明里、そんな彼女を守ろうとした貴樹。小学校で出会った二人は中学で離ればなれになり、それぞれの恋心と魂は彷徨を続けていく―。映画『秒速5センチメートル』では語られなかった彼らの心象風景を、監督みずからが繊細に小説化。一人の少年を軸に描かれる、三つの連作短編を収録。

チョビとミミのいた神社

 第一話「桜花抄」は映像版同様、貴樹の一人称で進められています。映像版に較べると、小学生時代の明里のセリフが少し多かったり(「少しは自分で考えなさいよ」なんて明里に言われています)、中学校に進んでからは貴樹はちゃんと一人でやって行けているように見受けられましたが、実際にはずっと辛さに耐えていたこと、明里からの手紙を貰って彼女の同様の境遇であることを知り、手紙をやりとりすることで理解者がいることを改めて知り、生きることが楽になったことなどが綴られています。

貴樹の風に飛ばされた手紙

 それから大事なのは、例の風に飛ばされた貴樹の手紙ですが、あれは便せん8枚の大作だったらしいです。当ブログ“「秒速5センチメートル」考察(その4):渡せなかった手紙”(2012年6月15日)で明里の渡せなかった手紙と貴樹の風に飛ばされた手紙の全文を掲載しています。その貴樹の手紙は非常に短いのですが、おそらくこれは貴樹が手紙の内容の大半を忘れてしまったからなのでしょう。一方、明里の手紙は大切にしまってあったので全文が判明していたと。

雪野原の夜明け
 
 雪の一夜では、頬や首筋にあたる明里の髪の柔らかさや甘い匂いが貴樹を昂ぶらせたようですが、もちろん中学一年生、明里の体温を感じているだけで精一杯だったようです。明里を押し倒したりしていなくておじさん安心したよ。いや、信じてましたけどね(笑)。

種子島の帰り道

 第二話「コスモナウト」も映像版同様、花苗の一人称で進みます。ご飯をおいしく食べて風邪一つ引かない非常に健康的な明里の心情描写が非常に上手いと思います。新たにに判明したことは、

コンビニ・アイショップ

① 貴樹と花苗がよく寄っていたコンビニが九州地方を中心に展開しているアイショップであること

② 花苗と一緒にお弁当を食べている友達の名前(愛称)がユッコとサキちゃんであること

③ 丘の上の貴樹と会話して、進路調査用紙を飛行機にして飛ばした夜、ご飯を3杯食べて「ご飯三杯も食べる女子高生なんか他にいないわよ」とお姉さんにあきれられていること

④ 告白しようとして貴樹の袖を掴んだときの貴樹の表情、瞳、声に「何も言うな」という強い拒絶を感じたこと
などでしょうか。それにしてもお姉さん、いい人だなあ。この人がいるから花苗は絶対大丈夫だと思います。

貴樹の夢の風景

 ロケットの打ち上げを見て、貴樹とずっと一緒にいることが叶わないことを自覚した夜、花苗は布団の中で映像版以上に号泣しますが、それでもやはり貴樹のことがずっと好きな花苗なのでした。「それでも貴樹が好き」、この花苗の気持ちを覚えておいて下さい。

また君と二人ぼっち

 そして問題の第三話「秒速5センチメートル」です。ここでは、高校卒業後の貴樹の足取りが詳細に描かれています。ここでは新たに判明したことは多いです。

① 貴樹の入学した大学は立教大学理学部らしい。池袋駅から徒歩で30分ほどの場所のアパートに住んだということと、「大学を素通りし、池袋駅に向かう途中の小さな公園で本を読んで過ごした」という記述からほぼ間違いないかと。付近だと学習院大学にも理学部があるのですが、こちらだと最寄りの駅は目白なので、立教でほぼ間違いないかと思います。現役で立教とはやるなあ、貴樹。私は現役の時立教の文学部を受験して見事に振られましたよ。一浪後は、立教は柄じゃないと自覚して受けませんでした。貴樹にはわりと似合っているかも知れません。

② 大学時代に2人と交際しています。一年生の秋に同じ大学の女の子と。生協で弁当の売り子をしていた時にペアとなった子で、彼女は横浜の実家から通っていました。初体験も彼女と。彼女もそうかどうかは書かれていませんが。1年半で彼女から別れを切り出されて別れました。「あたしは遠野君のことが今でもすごく好きだけど、遠野君はそれほどあたしのことを好きじゃないんだよ」

③ 2人目は3年生の終わり頃ということで、神楽坂の塾で講師のアシスタントのバイトをしていて知り合った坂口さんという早稲田の女子学生。おお、後輩!彼女は驚くほど美しかったそうですが、交際期間はわずか3ヶ月。「お互いにどうすればもっと愛してもらえるのかだけを必死に考える二ヶ月があり、どうすれば相手を決定的に傷つけることができるのかだけを考えた一ヶ月があった」のだそうです。彼女は貴樹と同時に塾の数学講師とも付き合っていたようです。2人の元カノのコミック版の描写は原作準拠ということになりますね。

④ 就活は大学4年の夏から。完全に出遅れているようですが、4年生になる直前に彼女と別れて人前にでる気持ちになるのにそれだけかかったそうです。大失恋だったのね。しかし秋には就職が決まっているあたり、さすが理系というか立教というか貴樹というか。

こんなとこにいるはずもないのに

⑤ 映像版でも描かれている勤務先は三鷹の中堅ソフトウェア開発企業です。新海誠の勤めた日本ファルコムは立川だから、もっと都心寄りですね。SEという仕事は貴樹にぴったりだったそうで、中野坂上のマンションには寝に帰るだけというような日々を送っても苦にしませんでした。仕事はできて給料は上がり、全然遊ばないのでお金は貯まる一方。

⑥ 水野理紗と出会ったのは日曜日の新宿駅で、理紗から声をかけられました。以前のクライアントの担当者の部下だったので名刺交換をしていましたが、すっかり忘れていました。彼女との会話は心地よく、そこから礼儀正しく関係を深めていきました。上京後の二回の恋愛の失敗は性急さにあったと貴樹は感じており、同じ事を理紗で繰り返したくないと思っていたのに……

⑦ 入社3年目に、映像版で言うところの「敗戦処理」のような仕事の担当になり、チームリーダーと衝突したりしながら不毛な仕事に没入していきます。そうなると理紗と過ごす時間は一層貴重なものになったのですが……

⑧ 敗戦処理が終わって会社を辞めた頃、理紗との交際も終焉を迎えました。「決定的な出来事は何もなかった」と貴樹は回顧しています。故にコミック版の描写は漫画の作者の完全オリジナルでしょう。会社を辞めたことと理紗との別れも直接関係はないのだろうと貴樹は感じています。映像版での貴樹のモノローグ

岩舟の夜

この数年間 とにかく前に進みたくて
届かないものに手を触れたくて
それが具体的に何を指すのかも
ほとんど強迫的とも言えるようなその想いが
どこから湧いてくるのかも分からずに
僕はただ働き続け
気づけば日々弾力を失っていく心がひたすら辛かった
そしてある朝 
かつてあれほどまでに真剣で切実だった思いが
綺麗に失われてることに僕は気づき
もう限界だと知ったとき
会社を辞めた


のままに、弾力を失った貴樹の心は、切実な思いを失ってしまったのでしょう。仕事にも、恋にも。
プロジェクトが終了したのはクリスマスイブ。終電で新宿に着き、タクシー乗り場の長蛇の列を見て徒歩で帰ることにした貴樹の携帯を鳴らしたのは理紗でした。映像版のあのシーンで、「貴樹、電話に出ろ!」と誰もが思ったと思うのですが、衰弱しきった貴樹の精神状態ではもはや出ることができなかったのでしょう。その気持ち、ちゃんと説明されるとよく分かります。かつて私にも似た経験があるから。言い訳にならないかも知れないし、今となっては本当に申し訳ないと思いますが、通常ならごく簡単なことが不可能になってしまう精神状態ってあるんですよ。

⑨ 貴樹が言って欲しくて、誰も言ってくれなかった言葉は、「あなたはきっと大丈夫」。貴樹は別れの朝、明里の言ってくれたあの言葉を求め続けていたのです。

⑩ 理紗の別れのメールの全文が判明しました。以下綴ります。

 あなたのことは今でも好きです。

 これからもずっと好きなままでいると思います。貴樹くんは今でも私にとって優しくて素敵で、すこし遠い憧れの人です。

 私は貴樹くんと付きあって、人はなんて簡単に誰かに心を支配されてしまうものなんだろう、ということを初めて知りました。私はこの三年間、毎日まいにち貴樹くんを好きになっていってしまったような気がします。貴樹くんの一言ひとこと、メールの一文いちぶんに喜んだり悲しんだりしていました。つまらないことでずいぶん嫉妬して、貴樹くんをたくさん困らせました。そして、勝手な言い方なのだけれど、そういうことになんだかちょっと疲れてきてしまったような気がするのです。

 私はそういうことを半年くらい前から、貴樹くんにいろんな形で伝えようとしてきました。でも、どうしても上手く伝えることができませんでした。

 貴樹君もいつも言ってくれているように、あなたはきっと私のことを好きでいてくれているのだろうと思います。でも私たちが人を好きになるやりかたは、お互いにちょっとだけ違うのかも知れません。そのちょっとの違いが、私にはだんだん、すこし、辛いのです。


……例の「でも私たちはきっと1000回もメールをやりとりして多分心は1センチくらいしか近づけませんでした」がありませんでした。

明里の渡せなかった手紙

⑪ そして、理紗の「少し辛いんです」、元カノ坂口さんの「私たちはもうダメなのかな」、花苗の「優しくしないで」そして「ありがとう」、チームリーダーの「悪かったな」、そして明里の「あなたはきっと大丈夫」の声が、次々と貴樹の心の表層に浮かび上がってきて、貴樹は激しく嗚咽するのでした。明里と別れた岩舟の駅舎以来、15年ぶりの涙。

⑫ そして貴樹は思います。「たったひとりきりでいい、なぜ俺は、誰かをすこしだけでも幸せに近づけることができなかったんだろう」……しかし、本当のところ、貴樹は人を不幸にしてきたのでしょうか?
 花苗は号泣しながら「それでも貴樹くんが好き」と思います。これは不幸ですか?
 元カノ一号は「あたしは遠野君のことが今でもすごく好き」だと言っています。二人は別れるけど、彼女は不幸なのですか?
 理紗も「あなたのことは今でも好きです」と言っています。
 そういう気持ちを持ち続けながらも別れていく女性達。しかし、誰かを好きになるという気持ち、それは不幸なのでしょうか?
 そして明里。「貴樹くんが元気でいますように」と祈っている明里は不幸なのでしょうか?貴樹との思い出について、「大切な自分の一部」「切り離すことのできない私の心の一部」だと言い切っている明里は、貴樹によって幸せに近づけなかったなどとは決して思っていません。

東京の桜

⑬ 映像版で明里は、「むかしのもの」と書かれた段ボール箱の中に入っていたクッキーの空き缶から、貴樹に渡せなかった手紙を発見します。しかし、明里は、少し読んだだけでまた手紙を丁寧にしまったのでした。「いつかもっと歳をとったら、もう一度読んでみようと思う。まだきっと早い。」と。もうすぐ愛する人と結婚するというその直前においてすら、「貴樹くんがこの先どんなに遠くに行ってしまっても、私はずっと絶対に好きです」という気持ちを思い出すことは明里にとって少し危険だったのかも知れません。

 大学時代の元カノ達や理紗は、もしかしたら貴樹によって一時的に悲しみや辛さを感じたかも知れません。しつこいようですが、人を好きになるということは果たして不幸なのか……。少なくとも明里と花苗の場合は、貴樹を好きになったことによって不幸になったとは言えません。

別れても好きな人

 早稲田の坂口さん以外は、みんな別れても貴樹のことがずっと好きみたいですし、坂口さんも案外そうなんじゃないかと個人的には思っています。貴樹は「別れても好きな人」……ロス・インディオス&シルヴィアか(古い!)。

明里のいない踏切

 ラスト、踏切を渡って振り返る二人の間を疾走する小田急線。しかし、小説は小田急線が通り過ぎた後までを描きません。でも映像版ではわかりにくかった貴樹の前向きの心をきちんと描いています。

 この電車が過ぎた後で、と彼は思う。彼女は、そこにいるだろうか?
 ―どちらでもいい。もし彼女があの人だっとして、それだけでもう十分に奇跡だと、彼は思う。
 
 この電車が通り過ぎたら前に進もうと、彼は心を決めた。


単行本 秒速
 
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

No title

アニメと、小説2冊(新海誠版、加納新太版)を読み終えたあとに更なる秒速5センチメートルを求めてここにたどり着きました。
トゥルー・エンドはそれこそ私が求めていた貴樹と明里の未来で、それを読んでホッといたしました。やっぱりこの二人は幸せに結ばれて欲しい、そう願わずにはおれません。
(とはいうものの、理想の恋を知ってしまった二人が新たな未来を得て踏み出していくオリジナルの終わり方もそれなりに好きです)
私はコミック版はまだ読んでおりませんが加納新太版の小説を読み終えました。そこにはオリジナルにはないエピソードがあり、それによりオリジナルだけでは不詳な事柄や心の動きが読み取れる部分があります。もしよろしければご一読ください。
私は加納版小説の、大人になった貴樹と明里が踏み切りですれ違う瞬間、それが明里とは気づかなかったのですがその女性から満ち足りた幸せな雰囲気を感じ取り、貴樹の中に優しい気持ちや何か新しいことができる予感が生まれて新に歩み始めるというエンディングが好きです。
そしてこれは私の解釈ですが、明里はかつて貴樹から一人で生きていくことのできる力をもらい、そして貴樹はあの踏み切りで新に歩き始める力を明里からもらう。現実社会で結ばれることこそなかったけれど、やはり二人は奇跡に導かれ結ばれている、というのがこの物語の真のエンディングでは、と思っています。

Re: No title

 cygnetさんこんばんは、初めまして。こんな僻地にようこそいらっしゃいました。

> アニメと、小説2冊(新海誠版、加納新太版)を読み終えたあとに更なる秒速5センチメートルを求めてここにたどり着きました。

 相当な「秒速病」患者の方とお見受けします。すなわち同士です。

> トゥルー・エンドはそれこそ私が求めていた貴樹と明里の未来で、それを読んでホッといたしました。やっぱりこの二人は幸せに結ばれて欲しい、そう願わずにはおれません。

 私も全く同意見です。そういう姿がどうしても見たかったです。

> 私はコミック版はまだ読んでおりませんが加納新太版の小説を読み終えました。そこにはオリジナルにはないエピソードがあり、それによりオリジナルだけでは不詳な事柄や心の動きが読み取れる部分があります。もしよろしければご一読ください。

 5月27日の記事の冒頭にも書きましたが、つい最近読みました。感想は来週中には書きたいと思っています。このところ曜日によって書く記事が立て込んでおりまして、遅くなって恐縮です。

> 私は加納版小説の、大人になった貴樹と明里が踏み切りですれ違う瞬間、それが明里とは気づかなかったのですがその女性から満ち足りた幸せな雰囲気を感じ取り、貴樹の中に優しい気持ちや何か新しいことができる予感が生まれて新に歩み始めるというエンディングが好きです。
> そしてこれは私の解釈ですが、明里はかつて貴樹から一人で生きていくことのできる力をもらい、そして貴樹はあの踏み切りで新に歩き始める力を明里からもらう。現実社会で結ばれることこそなかったけれど、やはり二人は奇跡に導かれ結ばれている、というのがこの物語の真のエンディングでは、と思っています。

 いずれ書きますが、エンディングについては私も異論はないのですが、それまでの過程の描写については私は必ずしも加納版には同意できない部分がありまして。もしかするとcygnetさんとは見解を異にしてしまうかも知れない部分があるかも知れません。高校生の頃からタバコ吸ってたり、花苗のお姉さんを敬遠してたりと、貴樹の“ちょいワル”度が上がっている気がしますね。コミック版については既に当ブログでも取り上げていますが、さらなるオリジナルストーリーが展開されていて、貴樹はすっかり悪役です(水野さんにとって)。女性から見ると貴樹はああなってしまうのでしょうかね。

 一方、女子大生時代の明里についても同意出来ない部分が。なぜあの講師が好きになったのかとか、押しに弱そうなところとか。もっとも当ブログではもっと勝手に女子大生時代の恋模様や失恋模様を勝手に妄想しているので人のことは言えませんが。宜しかったらご覧下さい。昨年8月30日の記事の“南野陽子の歌で妄想する「秒速5センチメートル」(その1):明里の恋模様”と、同じく9月4日の記事の“斉藤由貴の歌で妄想する「秒速5センチメートル」(その1):女子大生・明里の恋の終わり”です。その他にも時折歌で妄想しています。

Re: Re: No title

 稚稿にresを頂きありがとうございます。
 秒速病ですか。確かにその通りですね。自分でもそうかなと思っています。しかも今のところ治癒の見込みはありません(笑)。結構重症ですね。

 そもそも私がここまで秒速に嵌ってしまったのはやはりアニメ版エンディングの不全感というか、本当にこれで終わってしまうのか終わって良いのかという憤懣やるかたなき想い?と、あの奇跡の一夜を過ごした二人がその後どのように成長しどんな大人になっていくのか自分なりに知りたい、納得したいというところから始まりました。そしてこのホームページにたどり着いたとき、あの文を見つけてしまったのです。
「人が現実よりも理想の愛を知ったとき、それは人にとって幸福なのだろうか?不幸なのだろうか?」
この言葉は私にとってとてもインパクトがありました。あの一夜のあとの貴樹君の状態はまさしくそれであったのだろうと。
しかし前回の書き込みにも記しましたがこの物語の私の解釈は
>明里はかつて貴樹から一人で生きていくことのできる力をもらい、そして貴樹はあの踏み切りで新に歩き始める力を明里からもらう。現実社会で結ばれることこそなかったけれど、やはり二人は奇跡に導かれ結ばれている。
私のそうであって欲しいという願望も込められてはいますが、少なくともあの奇跡の一夜を経験した二人には、幸せになって欲しい。。。そう心から願わずにはいれません。

 そんな私が今こんな2次小説があればいいな、と願っているものがあります。
 もうそれは後日談というか、あの踏み切りでのすれ違い(オリジナルの)から何年もあと、いえ十何年、もっと数十年後でもいいかもしれません。貴樹も結婚し、お互いの子どもも彼らが奇跡の一夜を過ごした中学生、いえ踏み切りでのすれ違った大人くらいの年になっているかもしれません。その時に昔二人が過ごした学校かその近く、桜の季節、全く偶然に出会うのです。
 お互いの姿はすっかり変わっているのに一目見るなり誰だかがわかる二人。ごく自然に「やあ、ひさしぶり」などと挨拶を交わし桜の花の舞い散る中談笑をします。いままでのこと、今の生活、お互いのパートナーや子どものこと。思い出話にも花が咲きます。そして核心のあの一夜についても。
 明里はあの一夜で、いえ貴樹という存在から生きる力をもらった。貴樹がいたから今の自分がいる。ありがとうと心から礼を言います。貴樹も自分も苦しかった時期もあるけれどあの一夜があったから、明里がいたから、そしてあの踏み切りでの出会い、あれこそが自分を救って今の幸せを得ることができたのだと告白します。
 現実には結ばれることがなかった二人。でもとっても小さいけどこの上なく貴重な宝物として二人の思い出があり、あればこそお互いに幸せになれたのだと二人は心の中で確信します。
 誰言うなく二人は頭上の桜の木を見上げます。満開の桜からは風に揺られて雪のように花びらが二人の上に舞い降りてきます。小学校卒業式のあの日から二人で桜の花を見ることはできなかったけれど、長い年月を経てようやく見ることができました。そのあと二人は再開の約束もなく別れますが、、、もうその後のエピソードは必要ないでしょう。
 イメージとしてはバックに水越恵子のToo Far Away(谷村新司のFarawyではなくて)が流れています。
見えない糸で結ばれている そんな約束僕は欲しいよ
月並みだけどこの世に一人 君だけ好きだ 君だけ好きだ、、、、、
ちょっと歌詞の意味からするとそぐわないところもありますが、その場の感情としては良いかな、と思います。

Re: Re: Re: No title

 cygnetさんこんばんは、いらっしゃい。

 秒速病は不治の病ですが、症状には個人差があります。重篤な場合も、ほとんど自覚症状がない場合もありますが、大切なのは、あまりとらわれすぎないことなのかなと思います。つまり「秒速5センチメートル」以外の作品(小説でもアニメでも漫画でもゲームでも構いません)にも積極的に触れて行った方が良いのではないかと。

 また幸福と不幸ということについても、主観と客観が一致しない場合があります。傍から見た場合にどう考えても不幸なのに、当人はいたって幸福だと思っているいう場合もあれば、誰もが羨む境遇にいながら、当人は不幸だと感じているという場合もあるでしょう。

 映像版の場合、当人が幸福かどうかは、当事者が明言しているわけではない以上、見た人が各々の主観で解釈しなければなりませんが、その際に多くの人が貴樹が不幸だと解釈しているのでしょう。そこに“「秒速5センチメートル」は鬱アニメ”という定評が発生している原因があるのでしょう。

 そういう評価も私は“あり”だと思うので、センチメンタルになったままであっても構わないのですが、それとはまた別に“それじゃいけない”という気持ちが自然と湧いてきたのも事実で、自分自身の気持ちをすっきりさせるためにハッピーエンドのSSを書いてみました。

 映像版では大人になった明里は一見して幸せそうですが、それが尚更に不幸そうに見える貴樹とのコントラストを明確にしていて、“明里はビッチだ”という一部の解釈が発生しているだと思います。そうした解釈が間違っていると断じるつもりはなく、イソップ童話の「キツネとブドウ」のように、明里はビッチだからもう拘らずにもっといい女探そうよ貴樹、と考えることも“あり”なのだと思います。

 ただ個人的には、貴樹は明里をいつもひとりぼっちのイメージで捉えており、心の底では助けてあげたいと常に思い続けていたのではないかと思いますので、貴樹の幸せとは明里が幸せであることで、貴樹の不幸とは明里が不幸であることだという解釈も可能なのではないかと思います。つまり貴樹の明里への思いとは、最初は結ばれることであったかも知れませんが、次第にどういう形であれ明里が幸せになることを願い、そのために力になりたいと望むという形に変化したのではないでしょうか。

 貴樹が別の女性と交際して上手くいかなかったのは、理紗などを明里の代用品とみなしていたからとかではなく、明里が幸せかどうか確信がないので貴樹自身も幸せをつかむことができなかったからで、ラストシーンで貴樹が微笑んだのは、遂に明里が幸せであることに確信が持てたから=貴樹自身も幸せを感じたからという解釈では、あまりに貴樹は明里に依存しすぎでしょうか?

 cygnetさんの二次小説案、面白そうですね。ぜひ書かれてみてはいかがでしょうか。書くという行為は秒速病によって生じたフラストレーションの解消に極めて有効ですよと、私自身の実体験からも言わせていただきます。

こんにちは

始めまして。急性の「秒速病」患者です。様々なサイトを拝見しているうちに、こちらに辿り着きました。このWEBを拝見している方の中では、かなりの年配者だと思います。あえて年齢は申し上げませんが・・・。
実は私は、この作品を知ってまだ1月経っていません。先月まではこの作品はおろか、新海監督のお名前すら存じ上げませんでした。それがあるきっかけで映像版を拝見し、漫画版を読み、あっという間に重症患者になってしまいました(笑、、なお、小説版はまだ読んでおりません。
私がアニメや漫画にこれほどまでに心を奪われるのは、今世紀初頭に白泉社「ヤングアニマル」に連載されていた「藍より青し」以来2度目でしょうか(いかん、年齢がばれる・・・・)
それにしてもユースフ様のこの作品に対する考察・二次創作・歌による妄想(←特に)など、現実味に溢れた数々の文章、興味深く読ませていただき、深謝申し上げます。
決して複雑なストーリーだとは思いませんが、それ故に観る人の想像力を現実社会と照らし合わせて大いに発揮できるのが、私がこの作品に魅せられた所以だと考えています(なお、私はファンタジーの要素が多い作品にあまり興味はないので、「星を追うこども」等は拝見しておりません)
これからも楽しい考察を期待しております。また、秒速の各考察に関してコメントをさせていただきますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

Re: こんにちは

 satoruさん初めましてこんにちは。こんな僻地にようこそいらっしゃいました。

> 始めまして。急性の「秒速病」患者です。様々なサイトを拝見しているうちに、こちらに辿り着きました。このWEBを拝見している方の中では、かなりの年配者だと思います。あえて年齢は申し上げませんが・・・。

 急逝秒速病ですか。かなり危険ですね。ドズル兄さんが「戦いは数だよ兄貴!」と言っているように、なるべく多く「秒速5センチメートル」に接して慢性化させたほうがいいと思います。とりあえず毎日「One more time,one more chance」を聞くとかすると、最初は苦しいですがだんだん耐性がついてきます(症状には個人差がありますが)。

> 実は私は、この作品を知ってまだ1月経っていません。先月まではこの作品はおろか、新海監督のお名前すら存じ上げませんでした。それがあるきっかけで映像版を拝見し、漫画版を読み、あっという間に重症患者になってしまいました(笑、、なお、小説版はまだ読んでおりません。

 私もsatoruさんの同じく映像版→コミック版と進んでしまいましたが、小笠原流の正統作法(笑)は、映像版→小説版(新海版)→小説版(加納版)→コミック版のようです。確かにこの順が適切だろうと私も思います。映像版から離れるほど、他者の見解が入り込んでいくように思われます。

> 私がアニメや漫画にこれほどまでに心を奪われるのは、今世紀初頭に白泉社「ヤングアニマル」に連載されていた「藍より青し」以来2度目でしょうか(いかん、年齢がばれる・・・・)

 「秒速病」に年齢はあまり関係ないと思います。強く反応する人とそうでもない人がいるのは確かなので、それまでの人生の軌跡とか感性の差が影響しているのではないかと思います。「秒速」に反応するのがいいとか悪いとかいうことはできませんが、私は秒速病患者を同志と呼ばせて貰っています。

> それにしてもユースフ様のこの作品に対する考察・二次創作・歌による妄想(←特に)など、現実味に溢れた数々の文章、興味深く読ませていただき、深謝申し上げます。

 恐悦至極です。考察の原型は2011年に初めて「秒速」を見た後に描いたもので、当ブログ開設目的の一つはこれを皆さんにお目に掛けたいということでしたので、喜んでいただければ幸いです。

> 決して複雑なストーリーだとは思いませんが、それ故に観る人の想像力を現実社会と照らし合わせて大いに発揮できるのが、私がこの作品に魅せられた所以だと考えています(なお、私はファンタジーの要素が多い作品にあまり興味はないので、「星を追うこども」等は拝見しておりません)

 私も「星を追うこども」は未見です。ただ、「ほしのこえ」と「雲のむこう、約束の場所」は「秒速」と共に新海誠の初期三部作を構成している作品だと思いますので、機会があれば一度ご覧になっても損はないかと思います。「時間と距離に引き裂かれる恋人達」を描くのに、大げさなSFギミックは必要ないのだということが次第に判明して進化していったという感じがします(私はSF者なのでそれはそれで好きですけど)。前二作のラストにはあった希望が、「秒速」で無残に打ち砕かれた…そういう解釈も可能です。

> これからも楽しい考察を期待しております。また、秒速の各考察に関してコメントをさせていただきますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

 こちらこそぜひお願いします。satoruさんのコメントを楽しみにしています。

シンデレラエクスプレス

拝啓 レスありがとうございます。
監督の他の作品や小説版は、心にゆとりが出来たら味わいたいと思います。なお、最新作の言の葉の庭は先日拝見しました(理由は秒速病の治療の為、但し効果は殆ど無し)。

時間と距離に引き裂かれる恋人・・・・・切ないですね

世の遠距離恋愛の皆様、そんなものに負けたらいけませんよ。昔の新幹線のCMにも
「距離に試されて、2人は強くなる亅とあるんだから!

Re: シンデレラエクスプレス

 satoruさんこんにちは、いらっしゃい。

 新海誠版「秒速」は映像版を補完する非常にいい小説だと思います。

 シンデレラエクスプレス、ありましたね。私は牧瀬里穂のCMが好きでした。柱の陰に隠れている彼女の表情がとても良かったです。

 それにしても種子島は遠すぎです。列車も届きません。何よりも、自然に変わっていってしまう二人の心がもの悲しいです。ポストを開けてがっかりする姿とか、さりげない哀しみの情景が胸を打ちます。

カテゴリ分けありがとうございます(^_^)

拝啓 拝読致しました。もう少しだけ書かせて頂きます。
・・・種子島、ええ、遠いですね。私も対岸(鹿児島県佐多岬)から見た事しかありません。今でこそ東京近郊在住で、羽田から何処へでも行けますが、出身地(北国の某県)に住んでいた頃は、九州なんて最果ての世界でしたから・・・・
私は転校や遠距離恋愛の経験は無い(転勤はある)のですが、何故この作品に「強く反応」してしまったのでしょう・・・涙もろくなった気もしますが、歳でしょうかね(笑。

今年の夏休みは種子島に行って見たくなりました。岩舟は・・・・この間、東北道で通ったからいいか(笑

Re: カテゴリ分けありがとうございます(^_^)

 satoruさんこんばんは、いらっしゃい。

 東京と岩舟だったなら、続いていたんじゃないかという気がするんですよ。小学生には遠くても、中学生なら行き来が可能な距離ですから。しかし流石に種子島は…。大人の遠距離恋愛だって危ない距離です。
 
 「秒速」を見てなにゆえに心が痛むのかは人それぞれ…といってしまえばそれまでですが、一つの理由として、「おのずと変わっていく心」というものが哀しいのではないかと思うのです。

 昔のドラマ「君の名は」で、“忘却とは忘れ去ることなり。忘れ得ずして忘却を誓う心の悲しさよ”というナレーションが流れましたが、「秒速」の場合はその逆で、貴樹も明里も相手を無理に忘れようとしたのではなく、むしろ相手を忘れまい、変わらぬ気持ちを持ち続けたいと強く思いながら、逢えない時間が過ぎゆく中で、自然と心が変わっていってしまうのを止めることができなかったのではないかと。

 我々は、貴樹と明里の関係を通じて見る「諸行無常」ぶりが哀しいのではないでしょうか。永遠を誓った愛すらも形を変え、やがては滅んでいくものなのかと思ったりして。

 以上、愚考でした。

この記事では最後のレスです

拝啓 レスありがとうございます。

いや、決して愚考ではありません。その通りだと思います。

秒速病患者・叶わぬ想いに悩む人々、そしてこの作品の登場人物全ての人に幸せが降り注ぎますように。

Re: この記事では最後のレスです

 satoruさんこんばんは、いらっしゃい。

> 秒速病患者・叶わぬ想いに悩む人々、そしてこの作品の登場人物全ての人に幸せが降り注ぎますように。

 そして、皆さんが心に抱くそれぞれの「明里」の中で、私たちが“良い記憶”であり、彼女の重要な血肉の一部となっていることを祈りましょう。彼女の幸せを支える要素の一部となっているのであれば光栄です。
プロフィール

ユースフ

Author:ユースフ
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
カテゴリ
リンク
ブロとも一覧

秒速5センチメートル・・・桜花抄の軌跡を追ってみた

心理兵器:秒速5センチメートル
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
FC2カウンター
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
日記
54位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
会社員・OL
9位
アクセスランキングを見る>>
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

最新トラックバック
検索フォーム
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ