美しき凶器:究極のドーピングの果てに生まれた悲劇

美しき凶器
 
 段々と暖かくなってきましたが、明日から雨模様。今度は梅雨が近づいてきたような気がします。尖閣諸島の領海にやたらと中国船が侵入しましたが、そんな暇があったら大地震後の四川地方をなんとかいしろよと思うのは私だけでしょうか。

 話はがらりと変わりますが、本日は東野圭吾の「美しき凶器」です。今回は内容紹介の画像があったので貼り付けてみます。

内容紹介

 東野圭吾はスポーツを題材にした作品を多数書いています。デビュー作の「放課後」からして高校のアーチェリー部の話でしたし、このブログでも野球を題材としたミステリー「魔球」とかスキージャンプを題材としたミステリー「鳥人計画」を取り上げてきました。

 今回の「美しき凶器」は、競技というよりは、アスリート達への誘惑と、それに乗ってしまった人々のその後の運命を描いている作品です。

 「禁じ手」に手を出したことで栄光を手にした5人のアスリート。しかし1人が自殺したことにより、秘密の発覚を恐れた4人は、彼らの「過去」を消去しようとして、結果的に彼らの過去を知る人物を殺害してしまいます。しかし、その人物には「最終兵器」があったのです。その「最終兵器彼女」は、4人への復讐のために行動を開始します。

 本作で難しいのは、主人公は誰なのかということかも知れません。女なのか、追われる4人組の一人の日浦なのか、それとも山梨県警の紫藤刑事なのか。それぞれの視点で物語が進行するので、誰を主人公としていいのか悩みます。

 4人組が殺害したのは、言ってみればマッドサイエンティストなのですが、その最後の作品は、女性ながら190センチくらいの大女で、しかしあらゆる競技で驚異的な記録を生み出せるだけの資質を持った「生体ターミネーター」のような人物です。ですが、外国人なので日本語がよくわからず(漢字の読みは絶望的)、4人組の住所を入手してもそれがどこなのかよく分かりません。その苦労は、ちょうど我々がニューヨーク近辺で放り出されて、アメリカ人4人を追跡しろと言われるが如きです。

タイトルは一緒だけど違った

 彼女の超人的能力は、やり投げのやりで自動車を貫通したり、自転車やローラースケートを駆使して追跡行を続けたりと凄まじいものがあり、警察は常に後手に回り、4人組(これも警察は把握していないのですが)も次々と殺されていきます。しかし、土地勘もなく日本語も不自由な彼女が殺害を成功させている裏にはおそるべきトリックもあったりします。

 タランチュラと4人組から呼ばれる彼女ですが、例え復讐が終わったとしても逃走に成功する見込みはありません。事件とは直接関係のない警官や警備員を殺害したり重態に陥らせたりしているので、感情移入もちょっとしずらいですし。途中登場する暴走族についてはあれでいいかな、なんて思ってしまいますが(笑)。

 とにかく大柄で目立つのに、自動車や交通機関を使用しないので検問や非常線をかいくぐって、後から目撃情報を得るという展開で、警察の面目は丸つぶれです。また、4人組についても彼女が警察に確保されることは、彼らの犯罪が明るみになることでもあり、最大限避けたいところだというのが物語のキモとなっています。

 物語の中盤で、マッドサイエンティストの研究していた恐るべき肉体強化策が出てきますが、ラストで、まさしく彼女がその手法を持って強化されたのだということが明らかになります。その際の彼女の心情を思うと、非常に哀れではあるのですが…彼女の人となりが一切語られていないので、その点で彼女を主人公とするにしても感情移入をしにくいかなと思います。

カッパノベルズ版

 4人組の一人、日浦の方がいろいろと彼の周囲の状況が判明してくるので、感情移入しやすいのですが、しかしこいつはそもそも犯罪者だし、終盤で…おっといけない。紫藤刑事に頑張ってもらうのが一番いいのですが……山梨県警の彼が東京で大活躍では警視庁の面子が立ちませんし。

 という訳で、はっきりした主人公が確立しないままに終盤にもつれ込むのですが、一番恐るべきタランチュラは彼女ではなく…というところがゾクッとするところです。まさしく衝撃の真相と言う奴でした。

 1992年の作品ということでブレイク前の作品なのですが、サスペンスなのにミステリーの要素もあるというところはさすがだなあと思います。

 最後に惜しいと思う点。

① 「彼女」の人となりはもっと掘り下げておくべきでは。ラスト部分、流し読みした場合はちょっと判らないかも知れません。

② 彼女は4人組以外は殺さないで欲しかった。たしかに殺さないようにしている部分もあったけど、最初の警官は復讐対象ではないのにあっさり殺してしまいましたね。暴走族は正当防衛なのでノープロブレムですが。

 途中ご都合主義的な展開だな…と思われる部分があるのですが、終盤そればすべて計算されていたことが判明して、「黒幕」の狡猾さに驚くと共に、作者の伏線の張り方は凄いなあと改めて思います。やはり東野圭吾はすごいや。

新版
 
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