陽だまりの迷宮:少年時代に出会った名探偵のあの人は…

陽だまりの迷宮
 
 今日は北海道・東北は猛吹雪で大変なことになっていたようです。関東あたりも少し冷え込んでいましたが、これは3月らしくてむしろいいなと思ったりしました。青空に桜の花というのはなかなかいい景色でしたが、あと10日位後の風景だよなと思います。

 さて本日は青井夏海の「陽だまりの迷宮」です。青井夏海の作品は初めて読みました。

 青井夏海は1960年生まれ、千葉県出身です。本名など詳しいプロフィールは公開されていないようですが、1994年に野球に関するミステリー「スタジアム 虹の事件簿」を自費出版したところ、ネット内で「幻の名著」として取り上げられるようになり、2001年に創元推理文庫として出版され、広く世間に知られるところとなったそうです。故に、著書が本格的に刊行されているのは21世紀以降ということになります。

青井夏海

 青井夏美というペンネームは「スタジアム 虹の事件簿」を自費出版した際に思いつきでつけたそうで、どうせこの一作で終わるかもしれないしと思ったまま、ずるずると10年以上使い続けているそうです。

 自身の助産院での出産経験をヒントにした助産婦(現在は「師」ですね)探偵シリーズの第1作「赤ちゃんをさがせ」は2003年2月にNHKの連続テレビドラマになっています。

 例によって文庫裏表紙の内容紹介です。

 生夫は小学三年生、姉九人・兄一人の十一人きょうだいの末っ子だ。病気で学校を休みがちの彼のまわりに起きる日常の謎・謎・謎―消えてしまった鉄道模型に、繰り返される無言電話、玄関に置いていかれた象の絵本…。でも大丈夫、いつも最後には下宿人のヨモギさんが現れて見事解決してくれるのだから。子どもの頃の懐かしさと切なさを、ほのぼのとした筆致で描く連作ミステリー、書き下ろしで登場。

 それぞれ4人の子を持った父母が再婚してさらに3人を子供を作った、ということで雛飾り並の11人兄弟・13人家族ができました。主人公の生夫は末っ子ですが、小学三年生の時点で家に残っているのは兄1人と姉4人。他の5人は結婚したり就職したりで家を出ています。

 「おチビ」といわれて姉たちにはからかわれながらも構ってもらってますが、9歳年上の唯一の兄は全然構ってくれません。生夫は病弱でちょっとしたことですぐ体調を崩してしまいがちです。そんな生夫が遭遇する3つの事件が描かれています。

 事件といっても、これらは重大犯罪とは一切関係なく、いわゆる「日常の謎」というやつばかりです。「日常の謎」に該当する作品は、謎が解明される過程で、日常生活に潜む人間心理なども同時に明かされる場合が多いので、多くは本格推理小説に分類されています。私は最近は猟奇的な事件よりも「日常の謎」系のミステリーが好きなんです。

 第一話「黄色い鞄と青いヒトデ」は、隣家の中学生の兄弟の間で悶着となった、高価らしい鉄道模型の紛失を巡って、犯人と目される小学生を探す話です。事件の発端となったのは中学生と小学生の自転車の衝突。目撃していたらしい生夫の姉はなぜそれを否定するのか。様々な人の心理が明らかになっていきますが、もちろん小学三年生の生夫は特段推理が得意な訳ではなく、ほぼ解明してくれのは下宿人の「ヨモギさん」です。

 第二話「届かない声」は、生夫が出るとすぐに切れてしまう無言電話の謎です。結婚した姉の出戻りや別の姉の友人とある親子の悶着に巻き込まれたり、大人の事情というやつに生夫は翻弄されっぱなしですが、やはりラストにちょっとだけ出てくる「ヨモギさん」が謎を解明してくれます。

 第三話「クリスマスのおくりもの」は、誰宛とも知れない象の絵本が置かれていた話です。誰に宛てたものなのか、どういう意味があるのか、誰も知らないと言っているが本当なのか、と日常の謎がてんこ盛りです。途中で贈り主が登場し、誰宛なのかが判明しますが、その人が贈った物は象の絵本ではなかったということで謎はさらに深まったりして。途中、車に轢かれた生夫は「ヨモギさん」に助けられ、謎も解明してもらうのですが、生夫に怪我も痛みもなかったというのは別の意味で謎です(笑)。

 プロローグとエピローグは事件から17年後、両親が死んで一周忌を迎えた時点です。生夫もすっかり大人になっています。その生夫が他の兄姉達待ちながら、子供の頃にあった事件について姉の一人に語ったのが以上の三つの謎なのですが、なんとエピローグでさらなる謎が提示されます。

 実はその件については中盤あたりで「おや?」と思ったのですが、まあいいかと読み飛ばしていたのでした。その謎が浮上してきたときは、「おお、やっぱり!」と思いました。作者の勘違いなんかじゃなくて良かったと。

 ただ、生夫は小学三年生にしてはあんまり子供らしくない感じがします。兄姉ばかりなのでこまっしゃくれてしまうのか。それとウルトラ兄弟ではあるまいに、さすがに兄弟11人は多すぎではないでしょうか。結局名前しか出てこない人もいるし、多少リストラした方が良かったのでは。シリーズ物になれば生きてくる設定なのかもしれませんが。

 あと、生夫のクラスメートの女の子の斎藤さんは、ちょっと良い感じの子なので、もっと登場させて欲しかったです。生夫の淡い恋心なんて話の相手にちょうどいいと思うのですが。兄姉ばかりでなく、生夫自身の学校での交友関係なんかも描いて欲しかったです。というより、一冊であれもこれもはさすがに無理なので、ぜひシリーズ化を。 
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