腑抜けども、悲しみの愛を見せろ:形の違う「中二病女」の噺

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ
 
 今日は比較的暖かかったですね。節分や春分も間近、「冬尽く」という季語を使いたい頃ということで、これからは徐々に温かい日も入ってきて欲しいですね。

 さて本日は本谷由希子の「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」です。この本の季節は真夏なんで、まったく季節外れで申し訳ないのですが(笑)。

本谷由希子

 本谷由希子は石川県出身。1979年生まれでまだ33歳の若さですが劇作家・演出家・女優・声優そして小説家と様々な顔を持っています。高校時代に演劇部に所属し、演劇の専門学校に在学中から女優活動を開始し、1998年に庵野秀明の「彼氏彼女の事情」で声優デビューしています。2000年9月には21歳の若さで「劇団 本谷由希子」を創設し、劇作家・演出家としての活動を開始し、2002年には「江利子と絶対」で小説家としてもデビューしました。早熟の天才少女といった感じですね。

劇団キャラクター あいにくちゃん

 ちなみに「劇団、本谷有希子」は「劇団」という名前は付いているものの、特定の所属俳優を一切持っていないそうで、公演によって出演者が変動する「プロデュースユニット」なのだそうです。分野は違うけどSound Horizonみたいですね。劇団のキャラクター「あいにくちゃん」は、片方は愛、片方は憎しみを象徴しているが体は離れず一心同体の双子の子供だそうです。自意識に絡め取られた妄想過多な人間を主人公に、独特の劇世界を展開しているのだそうですが、その片鱗は「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」でも窺えます。

 「腑抜けども、悲しみの愛をみせろ」は、2000年に「劇団、本谷有希子」で公演された戯曲を原作に、2005年に刊行された小説です。文庫版裏表紙の内容紹介は

単行本

 「あたしは絶対、人とは違う。特別な人間なのだ」―。女優になるために上京していた姉・澄伽が、両親の訃報を受けて故郷に戻ってきた。その日から澄伽による、妹・清深への復讐が始まる。高校時代、妹から受けた屈辱を晴らすために…。小説と演劇、二つの世界で活躍する著者が放つ、魂を震わす物語。

 となっています。

澄伽

 北陸の山間部という舞台は、本谷有希子自身の出身地である石川県を連想させます。超が付くほどの我が儘で自意識過剰な澄伽は、あるいは本谷有希子自身(の一部)の投影なのかも知れません。小学生時代から自分は他人とは違う特別な存在だと思い続けてきた澄伽は、ある意味早期中二病患者だった感じもしますが、恐ろしいことに22歳になった現在もなお絶賛発症中です。

清深

 妹の清深は4歳年下ですが、姉の日記を盗み読んだことで姉の特異すぎる思考にはまりまくり、14歳の時に何とかして表現したくて漫画にして、さらに誰かに見せたくて漫画雑誌の新人賞に投稿します。ホラーの漫画雑誌なので趣旨違いで受賞しないだろうと思っていたら、ホラーとして高く評価されてしまって雑誌に掲載され、狭い村中の知るところになってしまいます。

 その後澄伽は状況して自身の天職と信じる女優になるべく活動します。容姿は端麗なのですが哀しいほどに演劇の才能がない澄伽は、小劇団を転々として4年が経過しましたが、当然ながら全く芽は出ず、親からの仕送りを受け続けていましたが、両親が交通事故で死亡したため故郷に戻ってくる…というところから物語は始まります。

 澄伽は、自身が女優として認められないのは、清深が描いた漫画のせいだと信じ切っているので、清深に復讐を開始しますが……

メインキャスト4人の揃った図

 登場人物は主に4人で、澄伽と清深の姉妹とその兄である宍道(しんじ)とその嫁の待子です。宍道は父の連れ子、澄伽は母の連れ子なので二人には血縁はありませんが、澄伽の「お兄ちゃんは私なしではいられない」という妄想的確信を受け止めてしまっている宍道は結婚した待子を抱くこともなく、DVばかりを振るっています。待子は孤児だったため、初めてできた自分の居場所である「家族」がたまらなく好きで、一人でエジプトに新婚旅行に行かされたりという無茶振りにもめげずにひたすら宍道を愛しています。

 清深は姉の虐待にひたすら耐える内気で内向的な少女かと思っていたのですが、実は……というところがストーリーのキモになっています。「お姉ちゃんは、自分のおもしろさを全然分かってない!」「でも、どうしても私がお姉ちゃんに現実を教えてあげたかったから……」というセリフが全てを集約しているような。澄伽の中二病的妄想(でもそれが真実だと思い込んでいる)は、清深によって完全に崩壊させられたのでした。

 ラスト、澄伽は完全に人格が崩壊してしまったのかと思いましたが、呪いの気持ちが壊れた扇風機(しかもコンセントにつないでいない)を回すというちょっとせこい奇跡を引き起こしているところを見ると、呪怨的ななにかに変わっていくのかも知れません。続編とかあっても面白そうですね。

映画チラシ

 2007年には映画化されています。澄伽役が佐藤江梨子、清深役が佐津川愛美、宍道役が永瀬正敏、待子役が永作博美です。キネマ旬報の2007年度日本映画ベスト・テン第10位になっているほか、第23回ワルシャワ国際映画祭フリースピリット部門の大賞を受賞しています。第29回ヨコハマ映画祭では佐藤江梨子が主演女優賞、永瀬正敏が助演男優賞、永作博美が助演女優賞を受賞しています。永作博美はブルーリボン賞や報知映画賞でも助演女優賞を受賞しています。


 映画の予告編です。なにげにHD対応ですね。

予告編

 http://www.youtube.com/watch?v=5dpjl-Ma-aQ
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