チーム・バチスタの栄光:エンターテイメントとしては◎、ミステリーとしては…

単行本
 
 ああ拍手が貰えない。コメントも来ない、天は我々を見放したー!と思っていたら拍手いただきました。ありがとうございます。しかも「ナースを彼女にする方法」に。この記事で来る人が多い割に評判良くないなあと思っていたので本当にありがたいです。

 さて、たまにはベストセラーにも手を出そうと、というよりはミーハーなので図書館で発見すれば必ず手を出すのですが、本日は海堂尊の「チーム・バチスタの栄光」です。

 「チーム・バチスタの栄光」は2006年2月に出版された海堂尊の処女作で、原題は「チーム・バチスタの崩壊」でした。第4回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作で、選考委員の満場一致、しかも選考会開始後数秒で受賞が決まったそうです。その後320万部を超えるベストセラーとなり、2008年2月には映画が公開され、同年10月にはフジテレビ系列でテレビドラマ化されています。「このミステリーがすごい!」大賞については聞いたことはありましたが、大賞受賞作は今回初めて読みます。

海堂尊

 作者の海堂尊は1961年生で千葉県出身。本名は非公開ですが博士号を持つ現役の医師で、現在は独立行政法人放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院Ai情報研究推進室室長を務めているそうです。現役の医師らしく、現代日本の医療問題をとりあげた小説をエンターテイメント性豊かな文体で執筆しています。全ての作品が東海地方の架空の地方都市である「桜宮市」を中心に舞台設定を共有しているのが大きな特徴です。藤沢周平の時代小説によく登場する東北日本海側の架空の藩「海坂藩」みたいですね。医師と言うだけで多忙そうですが、業界屈指の速筆として知られているそうで、いつでもどこでも執筆できるのだそうです。医者と作家…どちらか一方でもなれればと思う人が数多いる中、天が二物を与えた人ですね。

 文庫版の裏表紙の内容紹介です。

チーム・バチスタの栄光(上)

(上巻)東城大学医学部付属病院の“チーム・バチスタ”は心臓移植の代替手術であるバチスタ手術専門の天才外科チーム。ところが原因不明の連続術中死が発生。高階病院長は万年講師で不定愁訴外来の田口医師に内部調査を依頼する。医療過誤死か殺人か。田口の聞き取り調査が始まった。第4回『このミス』大賞受賞、一気にベストセラー入りした話題のメディカル・エンターテインメントが待望の文庫化。

チーム・バチスタの栄光(下)

(下巻)東城大学医学部付属病院で発生した連続術中死の原因を探るため、スタッフに聞き取り調査を行なっていた万年講師の田口。行き詰まりかけた調査は、高階病院長の差配でやってきた厚生労働省の変人役人・白鳥により、思わぬ展開をみせる。とんでもない行動で現場をかき回す白鳥だったが、人々の見えなかった一面が次第に明らかになり始め…。医療小説の新たな可能性を切り拓いた傑作。

映画版

 とうことで、「チーム・バチスタの栄光」は「田口・白鳥シリーズ」の第一弾でもあり、その後このコンビで「ナイチンゲールの沈黙」「ジェネラル・ルージュの凱旋」「イノセント・ゲリラの祝祭」「アリアドネの弾丸」「ケルベロスの肖像」が執筆されています。

 本書では、上巻では白鳥圭輔は登場せず、病院長から無体な内部調査を依頼された田口公平がチーム・バチスタのメンバーに対し聞き取り調査を行い、下巻で突如厚労省から派遣されてきた白鳥が登場し、彼が言うところの「アクティブ・フェーズ」調査を開始します。白鳥によれば、田口の聞き取り調査は優れた「パッシブ・フェーズ」調査だそうで、パッシブとアクティブの両方の調査を行うことで真実の仮名が可能なのだそうです。

フジテレビ版

 ではアクティブ・フェーズとは何かというと、挑発や揺さぶりや激昂や指弾など、とにかく相手を感情的にさせることで仮面をはがして本当の人間性を見ようとするもので、白鳥は自ら感情的になって(みせたり)、調査相手に殴られたりしますが、真相解明のためには意に介しません。

 登場当初から白鳥の“異常性”はあますことなく語られるので、名探偵役ということもあり、彼が何をしても別に驚かないのですが、本書で驚くのは、彼が登場してから思慮深くて聡明だったはずの田口医師が完全に狂言回しと化してしまうことで、白鳥が糾弾するところの「愚昧」の象徴的存在になってしまうことです。故に上巻と下巻で本書の雰囲気は一変します。まるで出題編と回答編のように。この田口医師を白鳥の噛ませ犬にしてしまう手法はもう少しなんとかならなかったかと残念に思う所です。

テレビドラマ版人物相関図

 ミステリーとして読んだ場合、医療ものということで大学病院内の力関係や人間関係、バチスタ手術の様子など、普段の我々のあずかり知らない場面が多くて興味深いのですが、通常のミステリーと違って犯行方法が医学的・技術的に過ぎて真相がわかっても「はー…」くらいにしか思えませんでした。また犯人の動機も「え?そんなことで?」的でちょっと納得いかないところがあり、もういっそ快楽殺人鬼ということにした方がいいような気がします。しかも、術死後に解剖を行わなかったせいで犯人を殺人犯として立件できそうなのは最後の一件だけということで、多分死刑にもならずいずれ獄中から出てくるかと思うとフィクションとはいえ気分が悪いです。あ、これは本書の問題的ではなく、本書が間接的に指摘する医療現場の問題なのですが。

白鳥役の阿部寛と田口役の竹内結子

 映画版では田口が女性に設定変更され、竹内結子が演じています。白鳥は阿部寛。ちょっと白鳥が格好良すぎる気がしますね。

テレビ版の白鳥(仲村トオル)と田口(伊藤淳史)

 テレビドラマ版では田口を伊藤淳史、白鳥を仲村トオルが演じています。だから白鳥格好良すぎだってば。作中小太りだって表現されているのに。

 後に明らかになる白鳥の行動を考えると、田口が高階病院長から調査指示を受けたころかそれ以前から白鳥は活動を開始していた様子なのですが、それが上巻ではほとんど示唆されていない部分が弱いかなと思っていたら、著者は構想から一週間で200枚書き上げ、そこで田口公平にこれ以上調査を任せるのは酷だとわかったため筆が止まり、田口と正反対の性格のヤツが外部から調査に来ればいいと思い至ったために、白鳥が生み出されたのだそうです。それじゃ示唆されない訳ですね、影も形もなかったのだから(笑)。

 白鳥自身、技官であり医師でもあるし、厚労省の役人には色々変わった人達がいるそうですが、「探偵ガリレオ」くらいならともかく、白鳥くらいになるとちょっとリアリティに欠けるかなあという気はします。案外厚労省には白鳥クラスがごろごろしているのかも知れませんが……働きたくねえ、そんな職場(笑)。


 
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No title

海棠作品、気にはなっていたんですよね。
タイトルのセンスが秀逸なので。

うーん、そういうタイプの謎解きかぁ。
あえて買わないで良さそうですね。ありがとうございました。
浮いたお金でおとなしく『狼と香辛料』の2巻を買ってきます。(ラノベと括るには出来が良かったです。1巻は。)

Re: No title

 ヤクトさんこんばんは、いらっしゃい。

 あくまで私の感想なので(汗)。何しろ320万部のミリオンセラーなので買っても大丈夫だとは思いますが、図書館で借りられればそれでいいかも知れませんね。実は二作目以降の出来がどうなのか気になります。改善されていればいいのですが。

 ただ、医師としての自分の主張を登場人物にさせているという部分に個人的にはちょっと違和感が。
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