コミック版秒速5センチメートル(その1):映像版第1話「桜花抄」相当部分を読む

秒速5センチメートル1巻
 
 いや、今年の12月はしばれますね。霜柱ガチガチです。京都では雪が降って金閣寺もうっすらと雪化粧白していたり。

 さて、今日からしばらく、不定期で非リア充を死に誘うと言われる禁書中の禁書であるコミック版の「秒速5センチメートル」について語ってみたいと思います。映像作品については6月に語り尽くした感があるのですが、コミックの方は映像版の補足的にしか扱ってこなかったきらいがあるので、一度きちんとコミック自身を取り上げておきたいと思います。

 コミックは1巻2巻で完結していますが、1巻は5話構成で、映像版の第1話「桜花抄」と第2話「コスモナウト」の途中までが取り上げられています。今日はこのうち第1話「桜花抄」分を取り上げます。

第1話「桜花抄」
 巻頭カラーでいきなり踏切ですれ違う貴樹と明里。そこから時間は一気に戻って踏切を渡って学校に向かう明里親子の後ろ姿と、それを見つめる貴樹が描かれます。小学校4年生で転校してきた明里と3年生で転校してきた貴樹は、転校族同士すぐに仲良くなります。似た境遇が親近感を持たせるとはいえ、小学4年生くらいで異性同士がこんなにすぐに打ち解けるなんて羨ましい。私なんて女の子をどう扱って良いのかわかりませんでしたよ(まあ今でもそうか)。

 ストーリー展開は映像版を踏襲していますが、より丁寧に描かれているので細かいディテールが判ります。例えば
① 貴樹は音痴だけど明里は歌が好き
② 貴樹はぜんそく持ちで明里は運動は逆上がりができない。共に運動が苦手
③ 例の黒板に書かれた相合い傘を消して二人で走るシーンですが、走って走って校舎の外の渡り廊下で明里が力尽きるまで走ります。手を握っていたことに気付いて照れる貴樹
④ 明里は動物園の飼育係、貴樹は宇宙飛行士になりたいと思っていた
⑤ 5年生では別のクラスになってしまうが、同じクラブ(科学クラブ)に入る
⑥ 6年生で再び同じクラスに。Vサインする明里が可愛い
⑦ 中学受験を相談する。私立の西中(私立とは思えない名前だ。私の通った公立中も西中でした)を一緒に受けようと言う。明里は算数が苦手らしい
⑧ 映像版に出ていた生徒会の先輩の女子学生は出てきません。明里と貴樹の文通の中で種子島転校が語られます

 …しかし考えてみると、仮に明里が岩舟に転校せず、一緒に西中に通ったとしても、二年進級時に貴樹が種子島に転校してしまうのだから、一緒の中学生時代はたったの一年だけということになったのですね。この一年間というものの有無は彼らの運命に影響を与えたのでしょうか?

叶わない願い

第2話「焦燥」
 転校前に岩舟に行って明里と会うことにした貴樹の旅が描かれます。その前に、第2話に入る前の余白のページに、お母さんらしき女性と料理を作る明里の姿が描かれています。これは岩舟駅に持ってきたお弁当を作っているところなのでしょうか。

 第2話の扉絵は、貴樹からの手紙を読む明里の姿が描かれています。縁側に座る明里は半袖のセーラー服姿なので、初めて貴樹に出した手紙の返事を貰ったところなのかも知れません。中学生になった明里はこの扉絵で初お目見えです。第1話では手紙文の文字だけでした。

 そしてご存知、名残雪による列車の遅延。貴樹の表情はまるで地球滅亡が迫っているかのようです。そしてコートのポケットに入れていた明里への手紙が突風に掠われて飛び去っていきます。立ち食いそばの匂いにつられて、せめて暖かい缶入りドリンクでもと思った矢先の痛恨の一撃。貴樹、大事なものは鞄に入れておこうよ。

動かない両毛線

 動かない両毛線の中、人気のない車両のボックス席に座って貴樹は明里の手紙に思いを馳せます。
 「手紙から想像する明里はなぜかいつも一人だった」
 これは映像版でも流れる貴樹のモノローグですが、コミック版には続きがあります。

 「そして多分僕も同じように 本当の意味では一人だった 明里がいなくなった町で ちゃんとやっていけるつもりだった 出も違うんだ この姿が本当の僕なんだ」

 これは映像版ではうかがい知れないかなり重要な「告白」です。明里を失ったあとの半年、貴樹はサッカー部に入って体を鍛えたり、充実した日々を送っていたように思えました。そして明里から手紙が来るまで、貴樹から手紙を出そうとはしていなかったので、てっきりそれなりにリア充していたと思ったのですが、どうやら違ったようです。「雪の一夜」を迎えるまでもなく、既に明里なしでは生きられない体になっていたのか貴樹(笑)。

 そしてようやくたどり着いた11時過ぎの岩舟駅。もちろん待合室には明里の姿が。再会に涙する二人。貴樹のコートをぎゅっと握りしめる明里がいじらしいです。

第3話「想い出は遠くの日々」

 さて「雪の一夜」キター。その前に第3話扉絵前の余白ページには、手紙を書いているらしい明里とそれを見守る駅員さんが描かれています。長いこと待っているので心配してくれたのかも知れませんね。親切ついでに待合室で夜明かしさせてあげればよかったのになあとも思いますが、明里の家にでも行くんだろうと思ったのでしょうね。

 第3話の扉絵は雪の中を走ってくる明里の姿です。これは映像版の第3話でも描かれていましたね。「One more time,One more chance」が流れてきそうです。

 例の桜の古木に向かう道すがらの貴樹と明里の会話は映像版にはないものでしたね。貴樹が体力をつけるためにサッカー部に入ったように、明里はバスケット部に入りました。同じようなことを考えていたことを明里は「ああやっぱり」と思ったそうです。その気持ちを疑問に思う貴樹に対し、明里は答えます。

 「貴樹君の好きな本は私も好きだったでしょ」
 「だけど…中学には貴樹君がいないんだから変わらなきゃダメなんだって思ったの。貴樹君もそうだったのかなって」

 貴樹はその気持ちに同意しつつも、
 「同じだけど…正直まだそれが自然だって思えないんだ」

 こうしてみると、貴樹より明里の方が変化に対して前向きな姿勢のように思えますね。

 そして桜の木の前でのキスと、物置(?)での一泊。鹿児島とは聞いていたけど種子島とは初耳の明里。しかし明里は貴樹の小学生時代の夢「宇宙飛行士」を覚えていました。勉強になるじゃないと我が事のように喜ぶ明里に対し、貴樹はちょっと憂鬱そうです。
 
 「そんな本気で応援してくれるの 明里くらいだよ」
 「貴樹君ならなれるよ 宇宙飛行士じゃなくたって 何にだってなれるよ」

 うわあ…明里の「呪縛」の詠唱は既に始まっていたのでした。 

 ラストは後朝(きぬぎぬ)の別れです。とは言ってももちろん「事後」じゃありませんよ。貴樹にもたれて眠る明里がちょっと大人っぽい感じです。ファイブスター物語風に言えば「あの一夜だけ明里は本当にお前のものになったのさ」というところでしょうか。
 上りの両毛線に乗り込む貴樹に対し、明里の言葉。

呪縛となった言葉

 禁呪の詠唱完了!その威力は「死黒核爆裂地獄」か「暴凶飢餓地獄」かそれとも「超原子崩壊励起」なのか…!

 最後の必殺呪文を喰らった貴樹のモノローグがもの悲しいです。

 「君が遠ざかっていく きっといつか僕は 埋めようのない距離と時間に負けて 君の声も顔も忘れてしまうだろう」
 「それに抗う力は どうしたら得られるんだろうか どうすればまた君に会えるんだろうか」

 “どうすればまた君に会えるのか”……その気持ちだけがその後の貴樹を駆り立てていくんですね。

貴樹を見送る明里

 以下はまた次回に。 
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