十字屋敷のピエロ:東野圭吾のブレイク前の本格推理

十字屋敷のピエロ

 秋深しというよりは、冬の気配が漂ってきそうな一日でした。虫の音も息絶え絶えです。私の家の近所では死に絶えたかも(笑)。

 さて、本日紹介するのは、先日読んだ東野圭吾の「十字屋敷のピエロ」です。

 Amazonでの内容紹介では

 ぼくはピエロの人形だ。人形だから動けない。しゃべることもできない。殺人者は安心してぼくの前で凶行を繰り返す。もし、そのぼくが読者のあなたにだけ、目撃したことを語れるならば…しかもドンデン返しがあって真犯人がいる。前代未聞の仕掛けで推理読者に挑戦する気鋭の乱歩賞作家の新感覚ミステリー。

ということになっています。

きさま!見ているなッ!

 まさにピエロは色々見ているのですが、もちろん誰にも告げることはできません。

 悲劇を呼ぶというピエロの人形を買った富豪の竹宮家の屋敷で起きる連続殺人事件が描かれています。東野圭吾というと「手紙」とか「秘密」のように登場人物の心情を切なく描いた作品が印象的なのですが、本作では比較的淡々としていて、エラリー・クイーンの国名シリーズ的なミステリーの風情があります。ピエロの視点が時折出てくるのですが、ピエロ自身は何かするわけではなく、登場人物達にもなんら影響を与えることはありません。また、ピエロが不幸を呼ぶので回収しようとする人形師(ピエロはこの人の父親の作品らしいです)が登場してくるのですが、非常にミステリアスな存在です。探偵役として推理や犯人捜しに大活躍してもいいところなのに、実際にはピエロ同様傍観者的な関わりしかせず、面白くもないガラス工芸美術館に毎日いたりして。実はこの人が犯人ではないかなんて思ったのですが、そういうこともなく。

 事件の真相に迫った登場人物が、それを言う前に殺害されるという、ある意味ベタな場面もありますが、主人公である水穂自身は危機に見舞われることはありません。事件の背後には、竹宮一族内どろどろした関係があるのですが、水穂自身は同居している訳でもなく、利害関係に全く関わっていないためですが、ではなぜある事実を終盤まで伏せたままにしていたのかが謎です。途中でまさかの「水穂が犯人」という可能性も考えましたが、さすがにそれはありませんでした。

 人形師はラストシーンで水穂に事件の背後にある意図(犯人ではなく、水穂ら登場人物達を気付かれずに操っていた人物の意図)について示唆を与えます。最後のピエロの独白によると、どうもそれは正鵠を射たものだったようです。しかし復讐のためとはいえ、よく犯人と一緒にいて感情を抑えることができたなあと思います。犯人と二人っきりになったりもしているというのに。

弱いのう……君は

 一見か弱そうに見える人ほど心の芯はしっかりしているのかも知れませんね。

 事件のトリックと犯人以外の登場人物達のそれぞれの思惑による証拠の移動などがあるので、事件の推移中は犯人自身も内心焦っていたこと請け合いなのですが、犯人自身の思いと他の登場人物達の犯人への思いの落差が大きく、犯人がもし最初からそれに気付いていたら犯行に及ばなくても良かったのですが…なぜ気付かなかったんでしょう。その機会があったはずなのに。もっとも、犯人の行動は先ほど述べた「背後の人物」にとっては復讐の代行でもあるので、以前からさりげなくマニュピレートされていたのかも知れません。

 1989年刊行作品ということで、東野圭吾30才頃の執筆と思われます。「秘密」でブレイクしたのが1999年なので、意欲作を出してもあまり関心が集まらないという「苦節」の時代の作品といえるでしょう。その頃の作品も面白いので、ブレイク前の作品もぜひ読んで貰いたいところです。が、本作でちょっといただけないのは、主人公水穂に「…ですわ」という台詞が目立つところです。実際の女性はそういう言い回しは滅多にしません。古い作品や翻訳物だと気分がでるんですが、流石に平成に入った時期のものでこのしゃべり方は不自然な気がします。名家のお嬢様だから?でも水穂はオーストラリアで働いたりとアクティブな設定なのでやはり違和感があります。「若さ故の過ち」なんでしょうか(笑)。

 そういえば事件の舞台となる十字屋敷は、上から見るとスイスの国旗のような形状でまさに十字型をしているのですが、それが事件のトリックにも使用されています。一階には食堂や居間や客間などがあり、二階は個室となっていますが、八室ある部屋がそれぞれ10畳以上あるようです。おまけにおそらく屋敷の後継者である佳織の部屋にはシャワールームも付いています。描写はありませんが、トイレもあるんじゃないかと思います。ほとんどホテルですね。水回りが多いと掃除も大変そうですが、この屋敷に使用人はおばあさんといって良い年齢の女性一人しかいません。過労で倒れないか心配です。

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