彼女はいいなり(その2):壇蜜さんの「解説に代えて」に捧ぐ

 本日の記事は壇蜜さんへの公開書簡のようなものです。もちろん読んで頂いて差し支え有りませんが、気の利いた画像などが一切ありませんことをご了承下さい。

 壇蜜様

 拝啓

 久しくお目にかかる機会を得ておりませんが、お元気でご活躍の由、嬉しく思っています。

 さて、今般「彼女のいいなり」巻末の「解説に代えて」を読ませていただきましたので、ごく私的な感想をここに記させていただきたいと思います。

 まずは初出演にして初主演の映画撮影、本当にお疲れ様でした。DVDやテレビ出演などをこなしてきたとはいえ、初めての映画はさぞや大変だったと思います。それを完遂させたのは、偏にご自身の努力の賜でしょう。もちろん共演者や周囲のスタッフに支えられたということもあると思いますが、それも壇蜜さんの努力と姿勢あってのことだと思います。30年前なら角川四人娘になっていたかも知れませんね。

 さて、壇蜜さんはこれまでに様々な経歴を踏んでこられましたたね。大学を卒業して、就職して、専門学校に入って、葬儀関係の仕事をしたりして。そんなご自身について、あなたは「いつも自分の居場所がないような気がしている」とおっしゃっています。何足も草鞋を履いて、それがどれもしっくりこなったということなのでしょうか。

 これについて私は、壇蜜さんはいろいろな才能に満ち溢れすぎて、どの道を進んでいいのか判らなくなっていたのではないかなと愚考するものです。いわゆる「器用貧乏」というやつですね。あれもできるこれもできると言う反面、「これなら誰にも負けない、任せとけ」というものがない。スイスのアーミーナイフに例えればわかりやすいでしょうか。これ一本で何でもこなせて便利だけれど、もし専門の工具類があるならば迷わずそちらが選ばれてしまうという。

 もちろん、成長した時代背景というものもあったことでしょう。新卒で採用された会社一本でここまで愚直に生きてきた(生きざるを得なかった)私ですが、就職先が比較的楽に見つけられるという時代背景に大いに助けられたことは間違いありません。そういう時代でなければ性格の悪さが災いして就職先を見つけるのに大変な苦労をしたかも知れませんし、ニートや引きこもりになったことも十分考えられます。それで良ければという話ですが、壇蜜さんが同時期に就職先を探していたならば、きっとよりどりみどりだったと思います。その「居場所」に満足できるかどうかはまた別の問題ですが。

 壇蜜さんがご自分の「居場所」を探して生きてきたのだとするならば、それは巷間よく言われる「自分探し」の一種だったのでしょうか?かつて世界を放浪したり、様々な職種を経験したりして「本当の自分」を探すということがちょっとした流行だった時期がありました。世間の風潮もまたそれを良しとするところがあり、また探せばいくらでも仕事があって、フリーターで十分稼いでいけるという時代でした。その頃のそうした人々は、いつか「本当の自分」に出会ったのでしょうか?私ははなはだ疑問に思うのですが。

 じゃあお前は「なりたい自分」になったのか、と問われれば、「いいえ」と答えざるを得ません。「なりたい自分」というものは昔から漠然とはあります。しかし、それが自分自身の理想像であるとするならば、どこかに旅すれば出会えるとか、何かを経験すれば得られるというものではなく、どんなに長く辛くとも一歩一歩足を動かすように一日一日の人生を生きていく、その先に浮かんでいる蜃気楼のようなものではないかと思うのです。どんなに美しく、どんなに欲しても、決して手が届くことがないような(ああ、それじゃ壇蜜さんそのものだ)。でも、そこに向かって少しでも近づこうと足掻く、そんな地を這うような生き様こそ、私のような特段の才に恵まれない者の人生ではないかと、いつからかどこかで達観していたようです。

 まあ私のことはこの際どうでもいいので、壇蜜さんの話に戻りましょう。結論から言えば、壇蜜さんの「居場所」探しとバブル時代の流行であるところの「本当の自分」探しは似て非なるものではないかと思います。壇蜜さんは「『お金掛けていろんなことを習得した割には、全然それをお金に還元できていない』というのが、一番の引け目だったんです。」とおっしゃってますね。また、結婚についても「雇用主ではない夫と出会いたい」とも。

 つまり壇蜜さんの「居場所」というのは、一人の大人の女性として(或いは人間として)自立・自活できる場所(職業)ということになるのではないでしょうか。結婚関係においては夫と対等な立場に立っているということを意味することでしょう。それが器用貧乏が災いしてか、なかなか見つからなかったと。もちろん「解説に代えて」に記されていない様々な出来事が壇蜜さんの半生に起きていて、その生き方に影響を与えてきたことは疑う余地がありませんが、「居場所」がなかなか見いだせなかった大きな原因については、私は二つの要素が挙げられると思うのです。

 以下、もしかしたらお叱りを受けるかもしれませんが、それを覚悟して敢えて書きます。

 原因の一つは、壇蜜さんに天から付与された諸々の才能のうち、最大のものを敢えて活用しようとしてこなかったことではないでしょうか。そう、言うまでもなくその天性の容姿・美貌です。木嶋佳苗などはどれほどそれが欲しかったことでしょうか。ですが、あなたはつい最近になるまでれを積極的に活用しようとはしてこなかったのですね。もちろん人の生き様は人それぞれですから、非難するには当たりませんし、もしかしたら、そういう天与のものを利用することをよしとしないようなストイックなポリシーを壇蜜さん自身が持っていたのかも知れません。

 私たち人間は不平等極まりない世界に行かされています。日本国憲法や世界人権宣言が何を謳おうが、生まれつき決定されている不平等な要因の何と多いことか。運動会の徒競走が、足の速い子や遅い子を同列に扱っていて不平等だなんていう意見もあるようですが、そもそも我々の人生のスタートラインからして、裕福な家庭に生まれる者あり、貧しい家庭に生まれる者あり、望まれて愛されて育つ者あり、無関心の中で育つ者ありと、様々な差違が生じているのです。今更平等も何もあったものではありませんよ。むしろ無作為に走らせた上で「これがお前達の生きていかなければならない世界の現実だ!」とでも教えた方がいいのではないかと思います。

 壇蜜さんであってさえ、幼少期から何らかのご自身の中の「満たされない」もの、「欠けたる」ものの存在には気付いていたはずです。無論全てに満ち足りた人などほぼ皆無といっていいでしょう。例え人が羨むような境遇にある人であってさえ、何か凡俗には想像もつかないような何らかの「餓え」を抱えていたりするのではないでしょうか。しかし、その反面、壇蜜さんは人一倍恵まれた「才」も数多持っていたはずです。その最大のものの一つが、先ほど言った容姿・美貌です。

 これを利用することは、私のような持たざる者から見れば本当に不公平に見えるのですが(それゆえやっかむのですが)、反面、門地家柄や家族環境などと同様、自分では選択の余地無く与えられるものでもあります。それはもう、天が「使え」といって与えたものだと解釈するしかないのではないかと思います。

 だから私は思います。裕福な者はその恩恵に預かっていいし、門地家柄の優れたものはその条件を十分生かしていい。そして容姿・美貌に秀でた者もそれをためらわず活用していいと。無論、羨望や嫉妬に囲まれることもあるでしょうが、それは大砲を撃てば砲身が後退するような「反動」であると解釈するよりないでしょう。自発的にか受動的にかは判りませんが、壇蜜さんは二十代後半にしてようやくその天賦の才を利用することに踏み切ったようです。その時期の是非について今の私は判断できかねますが、世間的には今後の活躍ぶりによって評価されることでしょう。そして高い評価を受けることになればいいなと思っています。

 そして原因のもう一つは、お母様の存在です。こう書くと本気でお怒りになられるかも知れませんが、まずは私の見解をお読み頂けないでしょうか。お怒りはその後で存分に。

 壇蜜さんのお母様は素晴らしく立派な方でしょう。お目にかかったことはありませんが、そう断言できます。なぜならば壇蜜さんのお母様だから。そして壇蜜さんは映画出演に際して、「解説に代えて」で「最初に思ったのは『これ、母がみたら、なんて言うかな』でした。」「自分のことよりも『これ、母親はどう言うかな』しか無かったです。」とおっしゃってますね。一ページに二回もお母様を気にする文章が出てくるのは極めて特徴的と言わざるを得ません。

 この文章だけでも、お母様がとてもご立派な方であって、壇蜜さんの成長に深く関わっていること、そのお母様を壇蜜さんが深く愛していること、二人の中が非常に良いことなどが伺われます。それらがとても素晴らしいことであることに疑問の余地はありません。しかし、「個人としての独立」という点ではむしろそれが仇になったという側面がありはしないでしょうか。

 親と仲がいい、親が立派である、これらのことも「天賦の才」の一つであるといえましょう。しかし、人間は(というか生き物は)成長するにつれ、いつかは親離れをしていかなければならないものです。別に親と別居しろとか、仲良くするなと言っている訳ではなく、「親の意見がどうであれ自分はこう生きる」といった、人生の指針を自ら掲げる時、精神的な独立を果たす時がこなければならないのだと思うのです。これは別の言い方をすれば「親を乗り越える」ということです。そしてここで問題になるのが、「親が立派だった時」なのです。

 各界で偉大な足跡を残した人物の子息が味わうという重圧、プレッシャーはまさに「親を乗り越える」ことが人一倍大変であることを意味しているといえるでしょう。「親を乗り越える」ということは「精神的な独立」を果たすということなので、同じ道を進んで親以上の業績を上げるということを意味するのではありません。しかし、同じ道を進んだ子供達にとっては、親が偉大であれば偉大であるほど峻厳な山脈と化して立ちはだかるように見えることでしょう。そして、仮にどんな方面に進もうとも、「偉大な親」という存在は、乗り越えるにあたってはやはり大きな障害になることでしょう。

 「毒になる親」なんて言われるひどい親を乗り越えることはさしたる難事ではありません。むしろ早期に積極的に乗り越えていくかも知れません。また平々凡々に生きている世の多くの親たちも、乗り越えるに当たっては色々な苦労もあるかも知れませんが、やはり大多数の人々は乗り越えていくのです。しかし壇蜜さん、ひょっとするとあなたはお母様が立派すぎるが故に、仲が良すぎるが故に、愛するが故に、乗り越えていくことが遅くなってはいなかったでしょうか?いわゆる「一卵性母娘」になってはいなかったでしょうか?

 もちろん仮にそうだとして、一概に「悪」と断じるものではありません。肯定的な解釈も多数あると思います。しかし、安直な利用で申し訳ありませんが、Wikipediaでは否定的意見として次のような記述があります。

「第一に挙げられるのはパラサイトシングルの温床になっていることである。母親は可愛い娘を実家から引き離したがらず、また娘も経済的・精神的に居心地の楽な実家で母親の世話になり続けたいので、成人した後も実家から娘が離れなくなってしまうことが多くなっている。さらに「自分の老後の面倒を見て欲しいので、娘には外に出て欲しくない」といった要求を示す母親もいる。
パラサイトシングルは男女共通の現象であるが、特に女性にパラサイトシングルに対する満足感が強い。
(中略)
第二に挙げられるのはカップルや結婚後の夫婦の関係を妨害したり、崩壊させる要因となっていることである。娘のことに対して必要以上に口出しをする母親が増えてしまい、またそれを受容する娘も増えてしまったため、それにうんざりした恋人や夫が愛想を尽かして、別れたり離婚したりするケースが近年後を絶たなくなってきている。母親の心理としては嫁に嫉妬する姑と同じであり、形を変えた新たな嫁姑問題とも言える。母親は娘のことをどこかでライバル視しているので、娘の幸せを妨害しようとする深層心理があるという説もある。」

 この全てが壇蜜さんとお母様の関係に当てはまるとは思いません。もし全く思い当たる節がないとすれば、全力で謝るしかありませんが……いかがでしょうか?

 こんなことを書いていても、私は今の壇蜜さんについては心配していません。もしかすると他の人より少し時間はかかったかも知れませんが、現在の壇蜜さんは偉大なお母様を「乗り越えた」と思うからです。それは、お母様がどう思うかということをひどく心配しながらも、映画出演に踏み切ったときになされたのではないでしょうか。もちろん、「乗り越えた」上で尊敬したり、仲良くしたり、愛したりすることになんら問題はありませんから、引き続き仲むつまじい関係を維持していただきたいと思うのです。

 長々と書き綴ってしまいましたが、女優・壇蜜があなたの居心地の良い場所になることを、そしてその居場所があなたに幸福を感じさせてくれることを心から祈念しています。最近私がはまっている「ARIA」という漫画によると、どうやら幸福とはどこかを探して見つけるものではなく、自分の置かれた環境や周囲の中で感じるものらしいです。私にはおそらく生涯できそうにありませんが、壇蜜さんになら可能なことでしょう。

 それでは壇蜜さんの人生に「居場所」と幸があらんことを祈念して、最後に「ウンディーネ」をお贈りして終わりにしたいと思います。読んで頂きましてありがとうございました。

 敬具

http://www.youtube.com/watch?v=nzB3uBO8_Hw&feature=related

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