検察捜査:現役弁護士が書いた江戸川乱歩賞受賞作

梅雨入りですと

 本日気象庁が四国、中国、近畿、東海、関東甲信地方が「梅雨入りしたとみられる」と発表しました。九州沖縄地方だけだったのに一気に来ましたね。なんかやっつけ仕事のような気がしないでもないですが、梅雨来たりなば、夏遠からじ。この梅雨寒天気を懐かしむ日がもうすぐそこに来ているのですね。

検察捜査 

 本日は中嶋博行の「検察捜査」を紹介しましょう。中嶋博行の本は初めて読みました。

中嶋博行 

 中嶋博行は1954年9月12日生まれで茨城県筑西市出身。早稲田大学法学部卒業後、1985年に司法試験に合格し、横浜に弁護士事務所を開業しました。1994年に「検察官の証言」で第40回江戸川乱歩賞を受賞し、作家デビューしました。

検察捜査新版

 弁護士と作家の二足の草鞋を履く異色の作家…と思ったら、大平光代、和久俊三、佐賀潜と結構居るみたいですね。「リーガル・サスペンス」と題し、弁護士としての専門知識を生かした推理小説が特徴でとなっています

ホカベン 

 犯罪被害者の支援活動にも尽力しており、新米弁護士が犯罪に立ち向かう「ホカベン」というマンガの原作も行っています。マンガでは主人公は男性弁護士ですが、テレビドラマでは女性弁護士に変更されて上戸彩主演で2008年に日本テレビ系でテレビドラマになっています。なっていますが…視聴率的はあまり振るわなかったようです。

ホカベン ドラマ版 

 また、遊戯銃への造詣が深く「トイガン文化を守る会」代表、日本遊戯銃協同組合ソフトエアガン安全会議常務理事を務めています。ちなみに直接関係ありませんが、最近引退を撤回した宮崎駿はかつて「鉄砲オタクっているのが一番嫌いなんですよ。はっきり言いますけど、ああいうのはレベルが低いと思っているんですよね。鉄砲の中でも、ピストルのマニアっていうのは一番レベルが低いんです。一番幼児性を残してるんです(笑)。」と言っています。

宮崎駿の主張 

 ああそうか、だから「ルパン三世 カリオストロの城」ではピストルが活躍しないんですね。次元のコンバットマグナム(S&W M19)はカリオストロ公国の暗殺部隊・カゲには全く通用せず(代わりに対戦車ライフルで対抗)、ルパンのワルサーP38なんか使う間もなくレーザーで溶かされてしまったんですね。だけど宮崎駿の言っているピストルマニアが“一番レベルが低い”とか“一番幼児性を残している”というのはちょっと理解できない主張ですね。銃オタクよりも戦車オタクや戦闘機オタクの方が高尚とか(笑)。オタクじゃない人から見ればオタクなんか五十歩百歩じゃないかと。

次元の対戦車ライフル 

 おっと話が逸れてしまいました。「検察捜査」は、受賞作「検察官の証言」を改題して同年9月に講談社から刊行され、文庫版は1997年7月15日に講談社文庫から刊行されています。黒木瞳主演で1995年に「検察捜査 知られざる強制捜査の裏側」と題してフジテレビ系で単発ドラマとして放映されたそうですが…が、画像がない(汗)。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

 横浜の閑静な高級住宅街で、大物弁護士・西垣文雄が惨殺された。横浜地検の美人検察官・岩崎紀美子は、捜査を進めるほど、事件の裏に大きな闇を感じる。日弁連と検察庁、警察庁そして県警の確執……。現役弁護士作家が法曹界のタブーを鋭くえぐった、第40回江戸川乱歩賞受賞の傑作リーガル・サスペンス!

弁護士会館 

 日弁連会長候補として出馬が噂され、内閣法制局の法制審議会委員も務める大物弁護士が、横浜市の自宅で拷問を受けたとしか思えない無残な姿で殺害されているのが発見されます。任官2年目の美人女性検事・岩崎紀美子が捜査担当を命じられますが、それはたまたま彼女だけがヒマだったからという。

 実は検察庁では検事の定員割れが深刻化し、若手検事でプロジェクトチームを作って司法修習生のリクルートを行ったのですが、結果は惨憺たるものでした。紀美子岩の戦果は堂々のゼロ。関東甲信越の地検の元締めである東京高検で油を絞られた直後のことです。

横浜地検 

 捜査といっても部下は検察事務官の伊藤ただ一人。捜査への介入を嫌う神奈川県警は非協力的です。殺害状況から怨恨ではないかと睨んだ紀美子は、警察と同じ事は出来ないと言うことで、西垣の過去の裁判記録を調べることにします。過去五年でも500件はあるというファイルを一つずつひっくり返すという根気のいる仕事です。

 しかしその甲斐あって、西垣が被告となった民事裁判の記録を発見します。さらには懲戒請求も受けていたという。日弁連もいつくかの派閥に別れており、会長選挙を巡っては水面下で暗闘があるようで、どうやら西垣は自分の派閥の中で反乱が起きていた模様。

裁判所合同庁舎 

 そうなると西垣の旧腹心で今や次期会長の最右翼となった宮島を取り調べる必要がでてきましたが、日弁連を真っ向的に回すのということにはさすがの向こう見ずの紀美子もたじろぎます。それでも地検のナンバー2である首席検事に申請を行いますが、なぜか首席検事は雲隠れ。そうこうしている内に、なんと東京地検が弁護士会館の家宅捜索を行い、紀美子の手から事件をかっさらってしまいます。

 どういうことだオイと首席検事に詰め寄る紀美子ですが、首席検事は事件は君の手を離れたと言うばかり。そして紀美子は、日弁連のみならず、検察庁の中にも派閥があることに気が付きます。検察官不足を一気に打開するべく、検察至上主義者が取った驚くべき手段とは?そして紀美子にも魔の手が迫ります。

法務合同庁舎 

 本作では殺人の実行者が誰かということはあまり問題ではありません。真性ドSのプロの犯行なので。むしろそのプロを操っているのは誰かということなんですが…本作では作者が弁護士のせいか、検事に思いっきり泥を被せてしまいましたな。

 法曹界の闇を描くという意味では、現職の弁護士というのは実にぴったりなんですが、「この作品はフィクションであり…」という例のお約束があれば大丈夫だと思うところ、作者はさらに用心深くなっているようです。そのせいでリアリティーが損なわれているように感じる部分が。例えば…

検察庁 

 その①:東京高検に司法部というセクションがある。総務部、刑事部、公安部、公判部はわかります。主要地検には特別捜査部(特捜部)とか特別刑事部というのもありますね。でも…司法部というのはどこにもありません。一体何をやってるセクションなんだこれ。法務省は戦前は司法省といいましたが、戦後司法権といえば最高裁を頂点とする裁判所ですよね。検察庁が司法部なんてセクション作ったら大問題になりそうです。

 その②:横浜地検で紀美子は首席検事の指揮を受けます。首席検事って…?地検、すなわち地方検察庁のトップは検事正で、ナンバー2は次席検事です。弁護士なんだからうっかりミスという訳でもないでしょうが、架空のポストを作らないとヤバイと思ったんですかね。

検察官バッジ 

 その③:東京高検と横浜地検なら、組織上の上下関係でいえば当然東京高検>横浜地検です。トップ同士、つまり東京高検検事長と横浜地検検事正ならこれももちろん東京高検検事長>と横浜地検検事正なんでしょうが、それ以外だとどうなんでしょうか。すなわち、東京高検の部長クラスと横浜地検の次席検事(作中では首席検事ですが)だと、一方的に東京高検部長>横浜地検次席になるのかどうか。ましてや東京高検の部長の部下である次長が横浜地検次席に一方的に指揮命令している様子なんですが、それって組織的に正しいのでしょうかね。

 あと、ヒロイン紀美子のキャラ立ちがイマイチのような。切れ者なんだか猪突猛進なんだかはっきりしません。どっちかにハッキリさせた方が良かったかも。それから事務官の伊藤を自宅に泊めたりして、ただならぬ仲のような気配も感じたりしますが、こっちもなんだかよくわかりません。仕事と恋愛は切り離すタイプの方が個人的には好きですが。

弁護士バッジ 
 

 あと紀美子の相方的存在となる、神奈川県警の郡司刑事はいい味出していますが、最初は米山係長という警部が出てきましたが、紀美子の相手を嫌ったようで郡司刑事に相手を押しつけたかのようです。それはともかく、一介の平刑事(もしかすると警部補くらいになっているかも知れないけど、「刑事」では巡査だってありえます)に検事の相手をさせるというのが組織として「あり」かなあ。それに郡司はいつも一人で登場し、しかも紀美子との情報交換によって独自の捜査も行うのですが、警察小説では捜査は二人一組が常識となっているのにやや不自然な観が

神奈川県警

 リーガルサスペンスという異色の作風は評価できますが、私が読んだ江戸川乱歩賞受賞作品、東野圭吾の「放課後」(第31回)、桐生夏生の「顔に降りかかる雨」(第39回)、藤原伊織の「テロリストのパラソル」(第41回)、野沢尚の「破線のマリス」(第43回)、池井戸潤の「果つる底なき」(第44回)なんかに比べるとミステリーとしてのストーリー展開やキャラ造詣などがいまいちな気がしました。

江戸川乱歩賞 

 本作が書かれてから23年が経過しましたが、作中デスマーチ状態となっていた検事不足は、最近ではあまり聞きませんね。司法試験制度の改革で合格者が増えたからでしょうか。弁護士も東京のような大都市圏では過剰となり、仕事の奪い合いみたいになっているようで、弁護士や医師は高額所得者というイメージも変わりつつあるのかも知れません。反面過疎地には弁護士や医師がいないということも往々にしてあるようですが、お金のためだけではないでしょうけど、お金が全然稼げそうにない地域であえて開業というのもなかなかに決断出来ないことでしょうね。
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