銀行総務特命:「花咲舞が黙ってない」の原作でもある連作短編

カエサル暗殺

 今日は冬が戻ってきたかのように寒い一日でした。雪との予報もあったので、なごり雪になるかと思いましたが、冷たい雨でした。紀元前44年の今日、ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)が腹心だったブルトゥス(ブルータス)らに暗殺されたそうです。「ブルータス、お前もか!」ですね。きっと飼い犬のゴールデン・レトリバーが赤ちゃんをかみ殺した時、周りの人達は同じような気持ちになったことでしょうね。

銀行総務特命 

 本日は池井戸潤の「銀行総務特命」を紹介しましょう。今や人気作家の池井戸潤ですが、「銀行総務特命」が講談社から刊行されたのは2002年8月。1998年のデビューから4年という初期の作品にあたります。講談社文庫版の刊行は2005年8月。

特命係長只野仁 

 “特命”なんて聞くと、窓際族の役目(つまり特に何の仕事もない)という場合と、本当に重要な任務に衝く場合と両極端な印象があります。言うなれば「特命係長只野仁」の昼の顔と夜の顔ぐらい違うという。しかし本書の銀行の特命は後者、つまり重要任務を任されているようです。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

旧版銀行総務特命 

 帝都銀行で唯一、行内の不祥事処理を任された指宿修平。顧客名簿流出、現役行員のAV出演疑惑、幹部の裏金づくり…スキャンダルに事欠かない伏魔殿を指宿は奔走する。腐敗した組織が、ある罠を用意しているとも知らずに―「総務特命担当者」の運命はいかに!?意外な仕掛けに唸らされる傑作ミステリー。 

銀行総務特命新版 

 「銀行特命総務」は、講談社の「週刊現代」に2001年11月17日号から2002年6月15日号まで連載されたもので、池井戸潤にとっては初の週刊誌連載だったようです。帝都銀行で副頭取直々に任命されて不祥事処理を任された総務部調査役の指宿(いぶすき)修平。

調査役のポジション 

 調査役とはなんじゃらほいと思いますが、銀行では各行である程度相違はあるようですが、だいたい本店で係長から課長の間あたりに位置する中堅の役職のようです。支店では支店長代理(或いは課長代理)あたりに相当でしょうか。支店長代理って、副支店長と混同しそうですが、課長より下なんですね。

 本書には8編の短編が収録されており、顧客名簿流出、現役行員のAV出演疑惑、幹部の裏金づくりといったスキャンダルが次々発生します。銀行は伏魔殿か!そして解決に向け奔走する指宿。一編50ページくらいなんですが、誘拐、殺人未遂といった凶悪な事件まで発生しており、いくら特命でも単独では手に余りますが、そういう場合はさすがに警察が登場して協力して解決というはこびになっています。

銀行員AVその1 

 印象に残るのは第三話「官能銀行」。これは現役女子銀行員がAVに出演するというスキャンダルを描いたものですが、「官能銀行」というのはそのAVのタイトルです。指宿はモザイクに隠された彼女の正体を探るということの他に、何が彼女にそうさせたのかということを暴くという二つのミッションを同時にこなしていくことになります。さすが大銀行、美人女子行員多数なのですぐ容疑者が判明ということはありません。うらやましい執務環境ですなあ(笑)。

枕営業 

 美人OLとオフィスラブ、なんてベタベタですが、なんとそのベタベタ展開ありです。一般職から総合職への転換を希望する女子行員を、便宜を図ってやるふりをして貪る人事部幹部…それで総合職になれせてくれたんならともかく、ならせてくれないのだから救われません。枕営業だってちゃんと見返りはないと。それにしてもそんな「食い逃げ」で何もないと思っていたのでしょうか。浅はかすぎますね。銀行員なら、いや社会人ならギブアンドテイクは常識でしょうに。

銀行員AVその2 

 ちなみに銀行員系のAVは結構あるみたいですが、顔見せばかりですね。銀行員のていをしているだけでAV嬢がやっているだけなんでしょうかね。

 指宿には鏑木という部下がいるのですが、三話で鏑木は栄転となり、四話以降は三話から登場した人事部調査役の唐木怜という女性とコンビを組むことになります。指宿の所属する総務部と人事部は犬猿の仲のようで、総務部に異動して指宿と組むようになっても唐木と指宿はなかなかしっくりいきませんでしたが、やがては指宿の仕事に理解を示すようになっていきます。

 第六話「特命対特命」は、人事課にも特命担当の調査役が登場し、指宿の失脚を試みます。三話で人事部次長が沈められた(自業自得なんですが)こともあり、人事部の指宿に対する敵意は相当なものです。債券部の花形トレーダーが20億円の穴を開けたことを、指宿の稚拙な調査により焦ったために発生した大損害だというシナリオで追い込んでいこうとします。人事部特命の星川は、唐木怜と恋仲だったらしく、元の関係に戻ろうと怜を誘います。またオフィスラブかよ!なんて銀行だ。怜がヒロインらくしく、指宿と仕事をしながら敵側の男に抱かれたくないという潔癖な仕事観を持っていて良かったです。

狼男だよ 

 どの短編もミステリー要素があり、謎解きや犯人当てがあるのですが、カタルシスを感じる前に修了してしまうもどかしさを感じます。例えて言えば…平井和正の「ウルフガイ」シリーズの前半だけというか。つまり散々酷い目にあって、ようやく満月がやってきてさあ反撃だぜベイビーというとことで終わらせてしまうのです。その反撃部分をもって描いてくれればスカッとするんですが。

花咲舞が黙ってない 

 2014年に日本テレビ系で「花咲舞が黙ってない」というテレビドラマが放映されました。原作は花咲舞が登場する「不祥事」ですが、「銀行総務特命」も原作として使用されています。テレビドラマ第6話「支店長が女子行員にセクハラ!? 同期の絆と舞の涙」は「官能銀行」が原作となっており、テレビドラマ第8話「銀行が経営破たん!? おばあちゃんの預金を守れ!!」は「銀行特命総務」第八話「「ペイオフの罠」が原作になっています。

不祥事 

 「不祥事」はエンターテインメント性を強く出し、現実にはできないことをキャラクターがやり、読者に漫画のように面白がってもらえる作品を目指して執筆されたそうで、おそらく「銀行特命総務」に足りなかった部分を補充したのではないかと思われます。そして唐木怜の発展型が花咲舞なのではないかと。じゃあ唐木怜は杏みたいな女性を連想すればいいのか。もうちょっと暗くて理知的な気もしますけどね。

花咲舞役の杏 
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