眠りの森:恋と職務の狹間で苦悩する刑事・加賀恭一郎

大寒の侯

 大寒の候、寒い日が続いておりますが、昨日から気温が上がって、今日は晴天で風もなかったおかげで春が来るかのような陽気でした。肩の力が抜けるような気がしますが、一度暖かくなってからまた寒くなるともっと辛いんですよねえ。インフルエンザも流行の気配ですし。

文庫版眠りの森 

 本日は東野圭吾の「眠りの森」を紹介しましょう。加賀恭一郎シリーズの第2作です。加賀恭一郎シリーズは既に第1作の「卒業」(旧題「卒業―雪月花殺人ゲーム」)、8作目の「新参者」を紹介しております。また第3作「どちらかが彼女を殺した」も読んでおりますが、ここでは加賀恭一郎は主役ではなく、脇役として登場しています。

 「眠りの森」は1989年5月8日に講談社から単行本が刊行され、1992年4月15日に講談社文庫から文庫版が刊行されています。デビューしてから潜伏期間十数年。いい作品を描きながらもなかなかヒットせず、人気が低迷していた時代の作品ですが、ビッグネームとなって以降は当時の作品も続々と増刷されています。特に「眠りの森」は後述しますが2回もテレビドラマ化されており、評価の高い作品といえるでしょう。可憐なバレリーナとの悲恋という展開がロマンチックなのがいいんじゃないかと思います。

旧版文庫版眠りの森 

 「卒業」では剣道学生日本一とはいえ一大学生に過ぎなかった加賀恭一郎は、本作では警視庁刑事部捜査一課の刑事となっています。「卒業」の頃は教師か警察官になろうと考えた加賀恭一郎は、一旦は教師になったものの、自ら「教師としては失格」と判断して教師を辞めて父親と同じ警察官となったようです。

 「新参者」では日本橋署で勤務するようになっていますが、ある事件の裁判で弁護側の情状証人として出廷し、そのせいで本庁から所轄に異動となった旨が記されていました。おそらくそれは「眠りの森」の被疑者に対してだと思われます。

眠れる森の美女の城 

 それにしても加賀恭一郎、「卒業」では高校・大学を共に過ごした相原沙都子にプロポーズしていましたが、どうやら上手くいかなかったようですね。「眠りの森」では沙都子から年に1、2回手紙が届くと記されていますが、恭一郎はそれを“過去からの手紙”と考えているようで、特に未練とかはないようです。おっと遅くなりましたが例によって文庫本裏表紙の内容紹介です。

眠れる森の美女 

 名門バレエ団で男が殺された。被疑者は居合わせたバレリーナ。正当防衛を主張するが、その証拠は見つからない。事件が昆明をきわめる中、「眠りの森の美女」を模した殺人事件が起こる。捜査にあたる加賀恭一郎は、被疑者の親友のダンサーと出会う。気丈に稽古に励む彼女に惹かれながらも、辛い決断の時が迫る。

高柳バレエ団 

 ということで、高柳バレエ団事務所に侵入した正体不明の男が、たまたま居合わせたバレリーナの斎藤葉瑠子に花瓶で殴られて殺されます。強盗ということなら正当防衛が順当ですが、バレエ団の事務所に金目のものはなく、何者で何が目的で侵入したのか全く不明なので正当防衛とも殺人とも決めかねる事態となります。

バレリーナ 

 葉瑠子の幼馴染みでルームメイトでもある浅岡未緒は、そんな事態を憂慮しながらも、公演が迫る「眠りの森の美女」の練習に余念がありません。バレリーナはバレエが全て。その他の全てを犠牲にしても踊るべく宿命付けられた存在のようです。

悪の妖精カラボス 

 捜査陣の一員である加賀恭一郎は、もともとバレエには興味がありませんでしたが、上司に押しつけられたお見合いの際に高柳バレエ団の「白鳥の湖」を見たことがあり、黒鳥オディール役を演じた浅岡未緒の演技に魅了されたことがありました。その未緒に再会したことでときめきを覚える恭一郎。

白鳥の湖ののオディール 

 「白鳥の湖」のヒロイン・オデット姫のライバルというか恋敵役のオディールは、オデットを白鳥に変えた悪魔ロットバルトの娘で、オデットと恋仲のジークフリート王子をたぶらかすために魔法でオデットに似せており、まんまとジークフリードを騙します。

オデットとオディール 

 オデットとオディールは白鳥と黒鳥で対比されるとおり正反対の性格なのですが、通常は一人のバレリーナが両方演じるようです。ですが高柳バレエ団では分けて演じさせたようですね。オディールには32回連続のフェッテという超技巧を必要とする難役ですが、未緒はド素人の恭一郎が驚くほどに上手に演じたようです。

Xの悲劇の凶器

 捜査によって被害者の男の身元は判明しましたが、高柳バレエ団との接点がなく、動機は全く不明のままです。そんな中、第2の事件が発生します。バレエ団のバレエ・マスターで演出家兼振り付け師の梶田康成が、最終リハーサル中に死亡します。凶器は発見されませんでしたが、針を使ってニコチンを体内に注入するという殺害方法で、恭一郎は「Xの悲劇」での凶器であるコルク球(一面にニコチンを塗った針が無数に刺してあり、どこを触っても刺さる)を連想します。いや、「Xの悲劇」と名指しはしていませんが、思い浮かべた凶器でそれと知れました。

フロリナ王女と青い鳥 

 この第2の事件は高柳バレエ団の内部犯行でしかあり得ないのですが、第1の事件との関連性が判りません。偶然の連鎖か?かろうじて第1の被害者と第2の被害者に2年前のニューヨーク渡航歴という接点を見いだした警察は、その細い糸を辿ろうとしますが、葉瑠子と恋仲の柳生というダンサーが独自にこの件を調査しようとしたところ、ニコチン入りのコーヒーで危うく殺されそうになります。しかし濃度は前回より薄く、本気で殺害を企図していたのか疑われるほど。これら一連の事件の真相はいかに?

6人の妖精 

 謎が謎を呼ぶ背景には、高柳バレエ団の「バレエバカ一代」的んs体質がありました。いや、このバレエ団だけでなく、全てのバレエ団、バレリーナに共通しているのかも知れません。バレエに全てを賭け、他の全てを犠牲にしてひたすら踊るバレリーナ達。楽器の練習は1日休むと元に戻すのに3日掛かるなんていいますが、バレエも似たようなところがあり、「1日休むと自分にわかり、2日休むと仲間にわかり、3日休むと観客にわかる」というそうです。原則的に稽古は一日たりとも休まず、1日5~6時間をレッスンに当てているようです。でも収入は多くなく、かといってアルバイトする時間も取れないことから、無名のバレリーナは実家からの仕送りが必須とか。

キスで目覚めるオーロラ姫 

 そんなバレリーナの中でも、可憐な姿で華麗に踊り、清楚な暮らしぶりの未緒に惹きつけられていく恭一郎。未緒も恭一郎を憎からず思っており、デートまがいなことをしたりもします。しかし、恭一郎の隙のない鋭い観察眼は、次第に事件の真相に到達していき、やがて哀しい結末を迎えることになります。何年かかってもいい、いつか結ばれて欲しいのですが…

加賀恭一郎と未緒 

 可憐なバレリーナとの恋というロマンチックな展開のせいか、2回もテレビドラマ化されています。最初は1993年9月11日にテレビ朝日「土曜ワイド劇場」枠で「眠りの森の美女殺人事件」のタイトルで放送されました。加賀恭一郎役は山下真司、浅岡未緒役は原田貴和子(原田知世の姉)でした。

テレビドラマ版眠りの森 

 2回目は2014年1月2日にTBS系列で「新春ドラマスペシャル “新参者”加賀恭一郎『眠りの森』」のタイトルで放送されました。阿部寛が加賀恭一郎を演じる2010年4月期の同局系列ドラマ「新参者」のシリーズの続編となっています。浅岡未緒役は石原さとみ。石原さとみにバレリーナ役をやらせるとは、わかってるなあ。とはいえ両方とも例によって未見です。アニメばっかり見てんなよ(笑)。

結ばれるといいですが 
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