あしたは戦争 巨匠たちの想像力[戦時体制]:戦争に絡めたSF短編アンソロジー

11月の雪

 一昨日の雪にはびっくりしましたね。札幌なら11月の雪はデフォルトだし、10月に初雪が降るのも普通ですが、筑波嶺で11月に初雪、しかも積雪とは。東京都心では54年ぶりの11月の初雪で、明治8年の統計開始以降、初めての積雪だそうですが、ホント首都圏は雪に弱くてマイッチングでした。

雪で転倒する子供 

 まだ積もってもいないのに雪が降っただけで遅れる鉄道。アイスバーンでもないのに転倒して負傷する人々。きっと道産子が見たら大笑いするような情けなさですが、雪が滅多に降らない地方なので仕方が無いかも知れません。ま、このユースフは札幌で2年修行してきたのでこの程度の雪では転倒などしなくってよ。翌日の凍った路面を見た時は札幌の悪夢が甦ってちょっとビビリましたけどNE!5回の転倒経験は伊達じゃない。まさに…

痛くなければ覚えませぬ 

 それでは本日の本題です。今日は「あしたは戦争 巨匠たちの想像力[戦時体制]」を紹介しましょう。19日に紹介した「たそがれゆく未来 巨匠たちの想像力[文明崩壊]」の姉妹編です。2016年1月7日刊行のアンソロジーで、もう一冊「暴走する正義: 巨匠たちの想像力[管理社会] 」というのがあるはずなので、図書館にあったらぜひ借りましょう。裏表紙に内容紹介がないので、Amazonの内容紹介です。

あしたは戦争 

 小松左京、星新一、手塚治虫…、昭和のSF作家たちが描いた未来社会。民族紛争・管理社会など、私たちへの警告があった! 解説 斎藤美奈子 

いわゆる赤紙 

 まずは小松左京の「召集令状」(1964年)。小松左京は前回の「たそがれゆく未来」にも登場したので写真はパス。終戦後20年近くが経過し、戦争の記憶が薄れた頃、突如若い男性に届く赤紙。何の冗談かと思いきや、赤紙を受け取った若者は突如失踪してしまいます。どんどん減ってゆく若者達。そして代わって届き始める戦死公報。怪談に近いストーリーですが、SFらしい味付けがされているのは流石です。真相に近づいた主人公のラストが衝撃的。

山野浩一 

 山野浩一「戦場からの電話」(1976年)。あまりに短いショートショートで、パラレルワールド物のような気もするし、安保闘争とか反戦闘争といった、60~70年代に高揚した左派武装闘争を戦争と言い換えているだけのような気も。あの人達って、戦争は嫌いらしいけど闘争は大好きですよね。「戦」も「闘」もほぼ同義なのに。

東海道戦争 

 筒井康隆「東海道戦争」(1965年)。筒井康隆も「たそがれゆく未来」に登場しているので写真はパス。自衛隊が東西に別れて戦争を開始するというとんでもない(褒め言葉)ドタバタSF。筒井康隆初期を代表する作品だと思います。北海道に当時最大の仮想敵国だった旧ソ連対策で大部隊が配備されているので、まともに戦ったら西軍は勝ち目がないせいか、北海道の部隊は九州出身者が多いので混乱を怖れて静観ということで東京と大阪がドンパチします。オリンピックや万博のごとき疑似イベントとして多数の市民がお祭り騒ぎで参加しますが、実際前線では大変なことに…

手塚治虫 

 手塚治虫「悪魔の開幕」(1973年)。今回唯一のマンガ作品。改憲が強引になされ、戒厳令下で核武装化が進められる日本。地下に潜った反体制派の指導者は、彼の思想に共鳴する一人の若者に首相暗殺を指示します。計画通り劇場に暗殺装置を仕掛けた若者ですが、なぜか計画は事前に発覚し、暗殺未遂を口実にさらなる弾圧が開始されます。真相に気付いた若者は消されますが、最後のどんでん返しが鮮やかです。

海野十三 

 海野十三「地球要塞」(1940年)。少年向け小説で、もはや中編の大ボリュームです。南北アメリカ大陸を統合した汎米連邦と、欧州とアフリカを統合した欧弗同盟が鋭く対立し、第三次世界大戦前夜という状況で、大東亜共栄圏の黒馬博士は彼が開発した潜水する島「クロクロ島」で南米沖を極秘任務中、謎の電波を捉えます。その後、正体不明の超人X大使が出現し、てんやわんやの物語が展開されていきます。

海底要塞サルード 

 オルガ姫という名の美人アンドロイド、マジンガーZに登場した「海底要塞サルード」を彷彿とさせるクロクロ島、魚雷型高速潜水艇、怪力線砲、磁石砲、原子弾破壊機、四次元振動…様々なSFガジェットが登場するあたりは流石日本SFの始祖。ですが少年向けのせいかストーリーがかなり強引かつ急展開です。主人公の黒馬博士が快男児的すぐる。

地球要塞 

 地球を凌ぐ科学力を持つ金星に対し、いち早く要塞化した日本は、さらに地球全体を要塞化して金星に対抗するようですが、地球上の戦争が終わっても今度は宇宙戦争が待っているというのがちょっとやるせない結末ですが、当時の子供達はイケイケドンドンと解したかも。

江戸川乱歩 

 江戸川乱歩「芋虫」(1929年)。アンソロジー中最古の作品です。反戦的な表現と勲章を軽蔑するような表現があるため、掲載時は伏せ字だらけだったそうで、戦時が始まると乱歩作品の多くは一部削除を命じられましたが、本作は全編削除を命ぜられたそうです。確かにこれを読んで戦意高揚は無理でしょう。というより、戦前に良くこれを書いたな乱歩は、と思います。戦場での負傷で四肢を失い、視覚と触覚のみが無事な傷病軍人とその妻のエロ・グロに満ち満ちたおどろおどろな物語です。

芋虫 

 作品発表時に「左翼からはこの様な戦争の悲惨を描いた作品をこれからもドンドン発表してほしい」との賞賛が届いたそうですが、乱歩自身は全く興味を示さず、戦時中の全面削除についても「左翼より賞賛されしものが右翼に嫌われるのは至極当然の事であり私は何とも思わなかった。」「夢を語る私の性格は現実世界からどのような扱いを受けても一向に痛痒を感じないのである」と述べています。表面的に見るとイデオロギー的な作品なんですが、おさらく乱歩にしてみればイデオロギーなど全く無関係で、「人間のエゴ、醜さ」の表現の題材としただけなんでしょう。


最終戦争 今日泊亜蘭 

 今日泊亜蘭「最終戦争」(1974年)。この人も「たそがれゆく未来」に登場しているので写真はパスベトナム戦争を題材にしていますが、遂に米国対ソ連・中国の間に全面核戦争が勃発してしまいます。それを止めようと突如出現したスターリンに皆が驚愕しますが…。スターリンが復活しただけでなく、本人が絶対に言わなそうなことを言っているので尚更です。その真相解明あた
りから極めてSFチックになっていきます。全面核戦争に迷惑を被るのは我々だけではないという話。

辻真先 

 辻真先「名古屋城が燃えた日」(1980年)。小説家というよりはアニメの脚本家として高名な人です。名古屋大空襲の日に起きた事件を背景にしたブラックユーモア的な作品。小人閑居して不善を為すと言いますが、それでも平和な方がいいかな。

荒巻義雄 

 荒巻義雄「ポンラップ群島の平和」(1991年)。レヴィ・ストロースなんかの文化人類学を下敷きに、遭難した夫婦が、宇宙のある惑星の知的生命体が行っている奇妙な儀式を観察する話。米ソ対立のような構造から住民緊張指数が高い、つまり常時戦争状態と判定された彼らが、実に巧妙な平和維持の構造を作っていたというお話です。文化人類学は大学の講義で聴きましたが、大好きでした。

星新一 

 星新一「ああ祖国よ」(1969年)。星・小松・筒井で日本SFの御三家ですが、只一人「たそがれゆく未来」には掲載がなかった星新一が遂に登場。「ショートショートの神様」と言われ、1000本以上のショートショートを執筆しました。SFファンが選ぶ年間ベスト賞である星雲賞を一度も受賞しておらず、SFファンからの評価はいま一つという感じがありましたが、文壇での評価は決して低くなく、大物作家にも評価されていたようです。「現代のイソップ」と称される寓話的作品の数々は多くの読者を獲得し、少年少女がSF作品に触れるきっかけともなっていました。

ショートショートの遊園地 

 で本作ですが、アフリカの独立したての小国が米国と中立条約を締結後に日本に宣戦を布告し、米国払い下げの中古艦二隻がはるかに喜望峰をわたってインド洋からマラッカ海峡を越えて日本にやってきます。テレビ局は視聴率獲得のためにあの手この手でこの艦隊を取り上げますが、次第に日本に近づいてくるにつれ国内は大騒ぎになり…という話で、平和ボケしまくった戦後の日本の体たらくが情けないです。これを見た世界各国の小国が米国と中立条約を締結後に日本に宣戦布告するのが流行する気配が出てきたりして。今ならもうちょっとはましな対応が取れそうですが。
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