ブラジル蝶の謎:有栖川有栖の国名シリーズ第三弾

20160516地震

   今し方かなり強い地震が来てびっくりしました。緊急地震速報が間に合わなかったぜ。筑波嶺地方は概ね震度4でしたが、一部に震度5弱も出ました。震源が茨城県南部ということで、いわゆる直下型。激しい縦揺れでかなり焦りましたが、横揺れがたいしたことなくて助かりました。日本中、地震フリーな場所はどこにもありませんね。

文庫版ブラジル蝶の謎 

 本日は有栖川有栖の国名シリーズ第三弾、「ブラジル蝶の謎」を紹介したいと思います。私が読んだ順では第四弾の「英国庭園の謎」、第一弾の「ロシア紅茶の謎」に続区作品です。

コミック版ブラジル蝶の謎 

 「ブラジル蝶の謎」は1996年5月に講談社ノベルズから新書版が出版され、1999年5月に講談社文庫から文庫版が出版されています。1992年から96年にかけての短編6編が収録されています。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

 美しい異国の蝶が天井を埋めた部屋で殺害されていた男。何のために蝶の標本が天井に移されたのか。鮮烈なイメージの表題作ほか、小指ほどの小さな鍵の本当の用途が秘書殺しの謎を説く「鍵」など、おなじみ有栖川・火村コンビの名推理が冴えわたる傑作ミステリ全6篇。読者待望の〈国名シリーズ〉第3弾!

演劇版ブラジル蝶の謎 

 それでは各編の紹介。まずは表題作の「ブラジル蝶の謎」。蝶のコレクターだったサラ金の社長が死亡します。彼には大昔に絶縁状態になった弟がいましたが、死ぬ直前に謝罪と財産相続を求める手紙を送っていたということで、瀬戸内海の孤島で20年近く一人暮らしをしていた弟がやってきます。

 そして社長の若い妻、その兄、顧問弁護士、副社長を相手に、相続人として厳しい言葉を叩き付けた弟ですが、その日のうちに殺されてしまうとは彼自身も思わなかったことでしょう。彼が殺されていた部屋には一面に蝶の標本が飾られていましたが、なぜか一部が取り出されて天井に張り付けられていました。

アグリアス蝶 

 社長のコレクションは大半アグリアス蝶でした。ミイロタテハという和名がありますが、日本でこの蝶を知る人はほぼコレクターに限られ、もっぱら学名のアグリアスの名で呼ばれているそうです。

モルフォ蝶 

 私も美しい蝶といえば真っ先にモルフォ蝶が思い浮かび、アグリアス蝶というのは知りませんでした。諸フォ蝶は青い金属光沢が美しいですが、世界的にはアグリアス蝶はモルフォ蝶と並んで人気が高いのだそうです。作中登場する博物館学芸員によれば、アグリアス蝶はモルフォ蝶より採取数が少なく、希少価値が高いのだそうです。

 結局のところ蝶が天井に張り付けられていたのは、目くらましが目的でした。犯人には、室内に入った人があっと驚いている間にするべきことがあったということです。結局詰めが甘くて火村英生に見抜かれてしまいますが。

 「妄想日記」。精神科医の娘婿は、交通事故で子供を亡くし、妻が後を追うように自殺してから精神に変調を来し、地下の座敷牢に事実上軟禁されていました。その彼が庭で焼身自殺をしてしまいます。残されたノートには奇怪な文字とも記号ともつかない羅列が。未解読の文字が記されたヴォイニッチ手稿みたいですね。

ヴォイニッチ手稿か 

 その他、座敷牢で見つかった謎の模様、くすねて持ち込んでいた手鏡、財布、米、塩、タマネギ。これらは一体何を意味するのか?死ぬにしてもなぜ焼身自殺なのか?一気に解いてしまう火村の推理が冴えます。

 「彼女か彼か」。美貌の女性にしか見えないニューハーフの男性が殺害されます。彼の父が事故死し、補償金としてまとまった金が入りましたが、すると面倒を見てきたという従姉妹や隠し子だという男性が次々と現れて補償金の分配を要求してきました。そして恋人の男性(!)をめぐって別の女性とも痴話喧嘩状態に。犯人はこの3人の誰かに絞られましたが、2人にはしっかりしたアリバイがありました。では残る一人が犯人?

タイ人ニューハーフ 

 実はこの事件については、供述内容におかしな点があることに私も気づきました。真相ももうちょっと複雑だったのですが、まあ50点くらいにはなったかと。いくら女性そのものに見えても、まだタマタマを取っていないと言う点に注目です。補償金で手術して、身も心も女性になりたかったらしいですが、さぞや無念だったことでしょう。

 「鍵」。社長の別荘で秘書が殺害されます。その日、社長は所用で不在でしたが、若い妻と秘書は隣人の家で開催された誕生パーティーに出席していました。そこでちょっとした事件も発生したのですが、もちろん死ぬの殺すのといったほどの話ではありません。

貞操帯 

 死体の傍で見つかった鍵は一体何の鍵?若い妻はなぜか消えてしまった、がらくたに近いアクセサリーの入った箱の鍵だといいますが…。鍵の正体が判明すると、「ああ、それは言えないよなあ」と誰もが思いますが、とりあえず参考画像を張りますので、お察し下さい。

 「人喰いの滝」。一度飲み込まれると二度と出てこないということから「人喰いの滝」と呼ばれる滝。映画撮影に来た一行のロケ中に、近くに住む老人が死亡します。事故か事件か。実は一年前にも撮影隊一行の女優が川に落ちて死ぬという事件が発生しており、死体すら上がってこない状況でした。

人喰いの滝 

 この二つの事件は事故か殺人か。残された足跡からは事故としか見えませんが…。結構斬新というか大胆なトリックに驚きます。水洗トイレじゃあるまいし、そこまで「人喰いの滝」を信じて大丈夫なんでしょうかとツッコミを入れたくなります。

 「蝶々がはばたく」。これは過去の事件を火村が推理だけて解決するという、いわゆる「安楽椅子探偵」ものです。有栖川有栖が旅の途中で出会った老紳士は、35年前に起きた奇妙な事件を語ります。仲間達と西伊豆を旅した時、カップルが忽然と消えてしまったというのです。

完全失踪マニュアル 

 その二人を今し方見掛け、無事に生きていたことを喜んでいた老人ですが、真相を語る前に列車を降りてしまいます。消化不良の有栖に、火村がこういうことだろうと推理を展開してくれるのですが…。冒頭バタフライ効果の話が出てきて、「今日、北京で蝶がはばたくと、来月にニューヨークで起きる嵐の変化する、とかいう理屈?」と火村が述べていますが、「逆にチリの大地震が日本の蝶をふるわせることもあるんじゃないか」という逆転の発想が素晴らしい。

阪神淡路大震災 

 この作品は阪神淡路大震災の一月後に書かれたもので、書こうか止めようか迷った作品だそうです。発想のきっかけは地震とは無関係だったそうですが。
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