毒笑小説:東野圭吾の「笑い」シリーズ第二弾

春の雨

 雨が降るというので傘を持って通勤したのですが、そのわりに中々降らないので「置き傘にしよう」と思っていたら、夕方になって雨。傘を持ってきた努力は無にしないZEという天気の御厚意なのかも知れませんが、置き傘でも良かったのに。

別にそんなことはなかったぜ20160413

 札幌時代は「もう読書が出来ない身体になってしまったかも」と、悪魔のような間男に堕とされてしまった人妻のような怖れを抱いていた(どんな例えじゃ)気がしていたが、別にそんなことはなかったぜ!

毒笑小説

 ということで今日も「本」。本日は私のご贔屓作家である東野圭吾の「毒笑小説」です。ミステリー作家らしからぬ「笑い」シリーズの第二弾です。このシリーズはこれまでに第一弾の「怪笑小説」と第四弾の「歪笑小説」を読んでいます。あとは「黒笑小説」残すばかりです。例によって文庫版裏表紙の内容紹介から。

笑いシリーズ

 塾にお稽古に家庭教師にと、VIPなみに忙しい孫。何とかゆっくり会えないものかという祖父の訴えを聞いて、麻雀仲間の爺さんたちが“妙案”を思いつく…。前代未聞の誘拐事件を扱った「誘拐天国」をはじめ、毒のある可笑しさに満ちた傑作が1ダース!名作『怪笑小説』に引き続いて、ブラックなお笑いを極めた、会心の短篇集。「笑い」追求の同志、京極夏彦との特別対談つき。

単行本毒笑小説

 東野圭吾の笑いを狙った短編群は大変面白いです。強いて言えば「上品な筒井康隆」というテイストですが、巻末の京極夏彦との特別対談を読んだらやはり筒井康隆の小説をずいぶん読んでいて、数少ない「笑いの教科書」の一つだと言っていました。下ネタもあるのに上品に感じるのは、いわゆる「エロ、グロ、ナンセンス」のエロとグロ成分が少ないからでしょう。グロはともかく、エロ成分はもっとあってもいいと思うのですが。濡れ場も書こうよ東野さん。

旧文庫版毒笑小説

 このシリーズ、「怪笑小説」も「歪笑小説」も、全短編の感想を書いてきているので、仕方が無いから今回もやりましょう。まずは「誘拐天国」:大富豪の祖父さん3人(宝船、銭箱、福富と名前からして金もってそう)が、勉強やお稽古事で忙しい孫と遊びたいが故に仕組んだ誘拐事件。誘拐ごっこなのですが、嫁にばれると後がコワイということで、ちゃんと身代金を要求します。1億円は結構な値段なんですが、「安すぎる」とキレられたりして。しかも幼稚園のクラスメート全員誘拐したりして。どんだけ金をかけてるんだ。そんなこんなで親の言いなりから抜け出したかに見えた子供達ですが、最後に爺さん達がっくりなところもいいですね。

天使さん

 「エンジェル」:深海魚から進化したらしい未知の新生物が発見されますが、それはどうみても「天使」の姿をしていました。その姿や珍しさが大評判を呼びますが、次第に増えて飼育方法も確立してだんだんありふれたものになっていきますが、なんとプラスチックなど石油を原料とする合成樹脂を食べるということが判って重宝されるようになります。が、石油そのものはもっと好きなので今度は人類史上最悪の有害生物とされて駆除対象となっていきます。さらにエンジェルの登場原因が判明すると…というブラックユーモア。食べれば美味しいので食べ始める日本人と、「天使を食べるとは」と激怒する欧米諸国の様子が、なにかを思い出させます。

毒笑小説 ポップ

 「手作りマダム」:手作りが好きなのはいいけど、とにかくどうしようもないものばかり作る重役夫人と、それにイヤイヤ付き合わされる部下夫人達の話。これはあまりに端的ですが、似たような話は聞きますね。海外進出した法人企業の日本人コミュニティとかで普通にありそうです。食べ物はクソまずい、パッチワークは雑巾以下、絵や人形は子供が泣き出すという恐ろしいレベルのマダムの次の興味は…というところで大ドンデン返し。これだけいろんな意味で美的感覚が狂っているマダムの夫は彼女のことをどう思っているのでしょうか。

マニュアル警察の玉置浩二

 「マニュアル警察」:カッとなって妻を殺してしまった夫が自首をしようと警察署に向かったら…というドタバタ劇。警察の対応が完全マニュアル化されていて、そこから外れると怒られまくります。しかも昼休みは受付も休むという、どんだけ昔のお役所仕事だというお話ですが、世間がすっかりマニュアル化している中、遅ればせながら警察も追随したんだそうです。でも「昼休み」はないよなあ。フジテレビの「世にも奇妙な物語」で1999年に放映された「秋の特別編」で玉置浩二主演でドラマ化されています。

ホーム・アローン

 「ホームアローンじいさん」:タイトルから判るとおり「ホーム・アローン」のパロディ。でも主人公の爺さんは孫の持っているAVが見たいがために家に残ったのだったり、老眼で機械音痴でいろんなリモコンをいじって誤作動させたのが結果的に泥棒を悩ませていますが、マコーレー・カルキン(役名じゃないけどこっちのが有名なもんで)が積極的に泥棒を迎撃していたのとは大違いです。ドスケベ爺さん、せめてビデオの操作方法くらいは予習しておこうよと思ってしまいます。ちなみにAV「ナマ注射でどうぞ」の内容がとっても気になるので、東野圭吾の筆力を傾けて描写して欲しかったです(笑)。

花婿人形

 「花婿人形」:旧家の跡取り息子である御茶之小路茂秋は、ママン要子の徹底した「しつけ」により、とてつもないマザコンになってしまいました。ようやく見つけたお嫁さん(ママンのお眼鏡にかなうくらいだから、通常の男が鼻もひっかけないタイプ)と華燭の典とあいなりましたが、茂秋にはどうしてもママンに聞いておかなければならないことが…。旧家といっても某藩の家老の家柄らしいので、それほど大したことはないような気もしますが…本人達にとってはかなり自慢なんでしょうね。私もかつて、上司に某藩家老の家柄で、幕末好きなら名前ぐらいは知っているという人物の子孫がいたことがありましたが、そりゃあエラそうな感じでしたね。元NHKアナウンサーの松平某も殿様の家系の傍流だそうですが、そりゃあエラそうな雰囲気ありましたね。

松平某

 「女流作家」:妊娠したからといって連載を休業する人気女流作家。出産後ほどなくして復帰しますが、なぜか編集者達と一切会わなくなります。原稿は締め切り前に届くし、人気は落ちないしで結構なことなんですが、釈然としない編集者が秘密に迫ります。結局真相らしきものに辿り着きましたが、お互いのためにならないということで闇に葬られた秘密。Win-Win関係って大事ですね。

殺意取扱説明書

 「殺意取扱説明書」:神田の古本屋でフラフラと買ってしまった妙な本。それはなんと本当に「殺意」の取扱説明書でした。買った女性は殺意を向ける相手がありました。大学時代の友人に彼を奪われていたのです(NTRだNTR)。そこでマニュアルに基づき友人の殺害を試みますが…という話。主人公はマニュアルが大嫌いで、せっかく買ったノートパソコンも押し入れでほこりを被っているそうですが(仕事は大丈夫なんでしょうか?)、そのマニュアル嫌いがここでも出てしまいます。まあ本当に人を殺すよりは良かったんだと思います。フジテレビの「世にも奇妙な物語」で2010年に放映された「20周年スペシャル・秋 〜人気作家競演編〜」において、玉木宏主演でドラマ化されています。

テレサ・テンのつぐない

 「つぐない」:ピアノ教師の実穂は、50歳のおっさんサラリーマンを受け持つことになります。一度もピアノを弾いたことがないというそのおっさんは、異様な熱意をもって練習に取り組みます。その理由は…という話で、これは笑いではなく切ないお話です。巻末対談でも作者は、笑いにしようとしたのになぜかこうなったと言っています。笑いのスイッチを連打していると、関係ないスイッチがオンになってしまうのだとか。同じ事を長編でやらかしたのが件の傑作「秘密」なんだそうです。なんてこったい!「秘密」は短編「さよなら『お父さん』」の長編化であることが知られていますが、プロトタイプは「つぐない」だったんですね。おっさんは悲しい存在ということなんでしょうか。

東野圭吾の秘密

 「栄光の証言」:お世辞のひとつも言えない陰気な男だと周囲から疎んじられてきた、何の面白みもない独身のおっさんが偶然殺人現場を目撃してしまいます。そこから一役ヒーローになったと自分では思うのですが、実は彼の証言は直前に見た別の男の印象なのでした。そもそも事件が起きた路地は暗くてよく見えません。そこで明るい蛍光灯に変えようとしますが…。警察も馬鹿ではないので別のルートの捜査で真犯人を発見していますが、思いっきり冤罪を作っておいて、しかも真実が判ったのにあえてごまかそうと足掻くおっさんが愚かしくも悲しいです。最後に死なさないのもまた哀愁。

なんでも鑑定団

 「本格推理関連グッズ鑑定ショー」:誰がどう見ても「開運!なんでも鑑定団」のパロディである「本格推理関連グッズ鑑定ショー」。これは過去に起きた事件にまつわるグッズの真贋や評価額を算定してくれる番組です。ここに名探偵・天下一大五郎が出生する契機となった「壁神家殺人事件」のトリックに使われた心張り棒が持ち込まれます。鑑定士であり事件の関係者である壁神辰哉の評価額は0円。ですが持ち込んだ男には真の狙いがありました。「ポワロもの」は偽者がほとんどとかいうくだりに笑いました。「鑑定団」で言えば中国で手に入れたお宝とかそんな感じですよね。笑いを狙った短編でありながら、この作品だけは推理テイストが入っています。

誘拐電話網

 「誘拐電話網」:カワシマの元に、誘拐犯と名乗る男から身代金を要求する電話が入りますが、誘拐したという子供とは何の関係もありません。親に身代金を払わせるのは気が引けるから、金を支払わせる相手を無作為で選んだと言う犯人。でも後味が悪いだろうと囁くねちっこい犯人に辟易したカワシマは、責任転嫁のためにあっと驚く行動に。犯人が捕まったはずなのにかかってくる電話。3千万から次第にダンピングして、しまいには300万円にまで下がっていく身代金。3万円くらいになったら支払ってみてもいいんじゃないでしょうか。2012年に配信された「ドラマJOKER 東野圭吾ドラマシリーズ“笑”」で三上博史主演でドラマ化されています。
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