ゲルマニウムの夜:面白いけど純文学、または純文学だけど面白い

ゲルマニウムの夜
 早くなる日暮れに秋の気配が忍び寄ってきたような気もする今宵、いかがお過ごしでしょうか。関東地方は明日も雨模様とか。

立春を過ぎると一雨ごとに春が近づくといいますが、今日は白露。一雨ごとに秋に近づいてきてもらいたいものです。

 それでは本日の記事です。今日は、先日読んだ花村萬月の「ゲルマニウムの夜」です。

文庫版ゲルマニウムの夜

 この作品、1998年上半期の芥川賞受賞作です。芥川賞といえば純文学の新人に与えられる文学賞。純文学といえば「娯楽性」よりも「芸術性」に重きを置いている小説。かつて横田順彌の小説で「つまらない純文学よりも面白いハチャハチャ小説」というフレーズを見て激しくうなずいて以来、純文学と聞くだけで敬遠してきたのですが、考えてみれば、ジャンルに面白いつまらないがある訳ではなく、ジャンル内に面白いものとつまらないものがあるのですよね。ミステリーでもSFでも純文学でも。

 で、純文学なるものにはどういう作品があるのかと顧みてみると、森鴎外や夏目漱石の一連の小説、島崎藤村の「破戒」、田山花袋の「田舎教師」、谷崎潤一郎の「細雪」、志賀直哉の「暗夜行路」などなど、私も結構読んできていることが判明しました。

 なんだ、純文学なんて意識せずに結構読んでるんじゃん。比較的新しいところでも村上龍の「愛と幻想のファシズム」、宮本輝「螢川」、村上春樹「ノルウェイの森」、小川洋子「博士の愛した数式」とかを、純文学とか意識しないで読んでました。2000年代の純文学はまだあまり読んでない感じですが。

 ということで、純文学だからと構える必要はなく、面白ければ読んだらいいんだということを、ようやくこの年で理解した訳ですが、じゃあ「ゲルマニウムの夜」はどうなんだと問われれば、「面白い純文学」と言わないわけにはいかないでしょう。

 ただし、濡れ場はまあさておき、それ以外にも暴力表現やホモセクシャルな表現、残虐シーンや本当に悪臭が漂ってきそうなシーンに満ちているので、想像力が豊かすぎる人には結構つらい小説家もしれません。赤毛のアンなんかは途中で読めなくなるかも知れませんね。

朧と教子

 内容は、
 
 人を殺し、育った修道院兼救護院に舞い戻った青年・朧(ろう)。修道女を犯し、暴力の衝動に身を任せ、冒涜と倫理のはざまで揺れる日々。目指すは、僕の王国-世紀末の虚無の中、「神の子」は暴走する。第119回芥川賞受賞作。
 
 と紹介されています。作者の花村萬月 は少年時代にキリスト教系養護施設を経験しているので、その経験が修道院兼救護院の描写に反映されているようです。修道士らキリスト教聖職者による子供への虐待(性的なものを含む)については、巻末の小川国夫との対談によると実際に体験したもののようです。

 二人の人間を殺した朧は、外人院長の「性的欲求」を満たすことを条件に修道院に匿われ、そこで神を試すように様々な悪行を重ねるのですが、内容紹介では「修道女を犯し」と言っていますが、実際には誘惑はしていますが和姦なので、そこまで悪い奴には思えません。二人殺したというのも本人が言っているだけなので、本当かどうかは実際のところ不明です。いくら修道院でも治外法権という訳でなし、捜査が進めば警察が捜索に来るはずですが、修道院で起きた事件(人が死にますが事故で処理)の際に刑事が来ているにもかかわらず、朧は逃げも隠れもしていませんし。

教子を演じた早良めぐみ

 暴力で年上の少年を支配し、親の都合で堕胎させられて修道女見習いとして修道院に入れられた教子と夜ごとに交わりながら、かつての恩師である神父に告解して「将来犯す予定の罪」の赦しまで得た上で「赦されたので実行します」と挑発したり(守秘義務があるのでどうにもできない)、外国人シスターを誘惑して堕落させるなど、どれだけやれば「神の怒り」を受けられるのかを試すかのような朧。そんな彼も教護院の生徒だった時代には年長の少年の性奴隷に堕ちかけるなどの暗い過去がありました。

 私もキリスト教を始め宗教にはあまり明るくない、というか宗教儀式に加わったことがほとんどないのですが、そんなに歪んでしまうのなら、そんなに禁欲を強制しないでも、なんて思ってしまいます。まあキリスト教だけではないかも知れませんけど。

映画版チラシ

 ちなみに「ゲルマニウムの夜」同名の映画も作成されており、2005年に公開されています。原作のストーリーをほぼ踏襲しているようですが、原作では外国人聖職者が登場するのに対し、映画ではそれが全て日本人に置き換えられているようです。フランス人修道女シスター・テレジアは広田レオナが演じています。

広田レオナのシスター

 私がリメイクするなら、アスピラント(修道女見習い)の教子役は高田里穂に、シスター・テレジアは壇蜜さんにやってもらいたいですね。高田里穂は多分この役を受けることはないでしょうけど、壇蜜さんの修道女姿は似合うと思うので、個人的にはぜひ演じて貰いたいものです。
高田里穂
堕ちるシスター・ハニー

 なお、「ゲルマニウムの夜」は「王国記①」とのサブタイトルがついています「王国記」シリーズは2010年の「風の條(すじみち)王国記10」が最新刊となっているので、かなり長いもののようですね。今後続編を読む機会があるかどうか。あ、「ゲルマニウムの夜」だけでも完結した作品として鑑賞できますので、その辺はご心配なく。
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