劇場版 蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ- DC/Cadenza:劇場版を一気見しました

吉田沙保里敗れる
 
 リオデジャネイロ・オリンピックの女子レスリング勢、予想以上の好成績ですが、まさか吉田沙保里が敗れるとは。ALSOKを退社して、目からビームが出せなくなったのが敗因か。これまで勝利を恣にし、「絶対王者」なんて言われていましたが、絶対なんてこの世にはないんだなって改めて思いました。諸行無常…

タカマツペア 

 一方、バドミントン女子ダブルスの「タカマツ」ペアはバドミントンで日本に初の金メダルをもたらしてくれました。かつて「オグシオ」とかの人気コンビもありましたが、実力がイマイチ伴っていませんでした。「タカマツ」が日本では史上最強でしょう。「タカ」こと右側の高橋礼華さん、昔の早見沙織にちょっと似ている気がするんですが、そう思うのは私だけ?

蒼き鋼のアルペジオ ヒロイン集合 

 本日はテレビアニメを見てはまった「蒼き鋼のアルペジオ」の2つの劇場版「DC」と「Cadenza」を紹介します。両作品は2015年に少年画報社創立70周年記念作品として製作され、2本でひとつのTVシリーズの続編という位置づけとなっています。原作は連載中ですが、アニメ版はこれで一応の決着が付いています。

アルペジオDC 

 2015年1月31日に公開された「DC」は要するにディレクターズ・カット版で、テレビシリーズの再構成総集編に、新規映像として「霧の生徒会」こと大戦艦ヒエイとミョウコウ型重巡四姉妹との戦いが追加されています。キャッチコピーは「出航せよ。この閉塞した世界に風穴を開けるために」。

蒔絵とハルナ 

 テレビシリーズの12話分を濃縮し上に新規映像を加えてたったの105分のため、総集編部分はかなりはしょっています。テレビ版を見た人ならいいのですが、初めて見る人には理解が追いつかないかも知れません。特にデザインチャイルドの刑部蒔絵とハルナ、キリシマの絡みについてはナレーションでぶっとばしまくって説明しているので、なぜ大戦艦二隻(特にハルナ)が蒔絵を守ろうとするのかという理由が映像を見る限りでは脆弱に感じてしまいます。

霧の生徒会 

 完全新作である「霧の生徒会」との絡みは、本編ラストの振動魚雷を米国側に引き渡してからのエピソードに登場します。振動魚雷は米国で量産され、その威力はたった一発で霧の駆逐艦を撃沈してしまうほどのもので、一気に反攻だと米国海軍を狂喜させますが、霧の艦隊との対話を望む千早群像の計略により、残りの振動魚雷にはロックがかかってしまいます。群像としては、人類側が対抗手段を手に持ったことを霧の艦隊に知らしめればよく、戦闘ではなく対話により事態を変えようというハラです。

総旗艦直衛艦隊 

 そんな「蒼き鋼」(といっても艦はイオナのイ401のみですが)に迫る「霧の生徒会」。生徒会長の大戦艦ヒエイは「“霧”は本来、美しいユニオンを誇る存在である」と考えてり、「秩序の再構成」を図る自身の組織を「生徒会」になぞらえています。“霧”があまりにも人類の文化を曲解しすぎていて「蒼き鋼」のクルーをずっこけさせていましたが、そもそも秩序云々ということならば生徒会より風紀委員の方が適切なんじゃ…

超戦艦ムサシ 

 ヒエイに対して超重力砲をぶっ放すイオナですが、直撃すれば大戦艦といえど撃沈必至なのですが、ヒエイは超戦艦しか持たないはずのミラーリングシステムを使って無効化します。これは別名次元空間曲率変位システムと呼ばれ、超重力砲を別次元に相転移させ無効化するというトンデモ兵装ですが、使用後の反動が大きく周囲の海域の重力バランスを崩壊させてしまうとか。本来は超戦艦級にしか装備できませんが、ヒエイは随伴の軽巡2隻を補助動力源とした上で使用しました。

ムサシのメンタルモデル 

 そして超戦艦ムサシが登場。ムサシのメンタルモデルの傍らには、人類を裏切って霧の艦隊に参加したとされる群像のパパン、千早翔像が!

アルペジオcadenza 

 続いて「Cadenza」。2015年10月3日公開の完全新作で、キャッチコピーは「霧の風紀は 地球の風紀。」「これは、人類への降伏勧告である。」。ちなみに「Cadenza(カデンツァ)」とは、独奏楽器や独唱者がオーケストラの伴奏を伴わずに自由に即興的な演奏・歌唱をする部分のことを指します。これは原作と離れた展開になることから付けたのでしょうか。

千早翔像 

 人類の裏切り者・千早翔像は全世界に対する電波ジャックを行い、全人類への降伏勧告を告げます。人類は霧の艦隊が統治するべきだと。ムサシとその直衛艦隊が北極海にいることが判明したことで、「蒼き鋼」はムサシと翔像に会うために北極海に向かうことになります。

イオナとムサシ 

 途中立ち寄ったウラジオストックでは、ムサシのメンタルモデルがいきなりイオナの前に姿を現し、霧の艦隊総旗艦である超戦艦ヤマトとヤマトとイオナとの関係を語り、イオナの機関エンジン以外のすべての“霧”に由来する機能を停止させてしまいます。そして明らかになる“霧の過去。

 ヤマトのメンタルモデル

 千早翔像は霧の艦隊との決戦に際し、潜水艦の艦長として戦術を生かし霧の駆逐艦2隻を同士討ちさせ撃沈するという戦果を出しました。攻撃力・防御力共に人類艦隊を圧倒していたはずの霧の艦隊ですが、この未知だった「戦術」に興味を覚えたヤマトとムサシは人類とのインターフェースとしてメンタルモデルを作り、翔像と接触することになります。

霧の風紀は地球の風紀 

 翔像はヤマト、ムサシと語り合い「家族」という観念を教え、メンタルモデル誕生のきっかけとなった彼は2人からは「お父様」と慕われていましたが、“霧”との和解を快く思わない部下に殺されてしまいます。そしてその後ムサシのそばに立つ翔像は、ムサシによって作られたダミーだったのでした。

ムサシのメンタルモデル 

 霧の艦隊への指令系統の最上位に位置する「アドミラリティ・コード」は、ヤマトとムサシの超戦艦2隻だけが直接受け取ることができ、2隻が命令を協議・解釈・判断した後、他の霧の艦隊に命令を下すという指揮系統となっていました。変化を好むヤマトとは対照的にムサシは変化に否定的というスタンスの違いがありましたが、慕っていた翔像が殺害されたことでムサシは激昂し感情を制御できないまま人間を憎悪することになります。そして人間を好んでいたヤマトを沈め、霧の艦隊を1隻で掌握していたのでした。

機能を封じられたイオナ 

 そして、イオナは、優しすぎるヤマトがムサシに反撃することなく沈んだ際、側を通りがかったムサシ直属のイ401に己のコアを譲り渡し、翔像の息子である群像に会うようにという命令を出したのでした。イオナが覚えている命令は、ヤマトが直々に出した遺言のようなものだったのですね。

ミョウコウ型四姉妹 

 パパンが人類を裏切った訳ではなく、“霧”との対話という自分と同じ事を指向していたことに感動する群像ですが、ほとんど全ての機能を封印されたイオナに「霧の生徒会」艦隊が迫ってきます。圧倒的不利な状況の中、絶体絶命の「蒼き鋼」はどうなるのか?

ヒエイ生徒会長 

 というところで、蒼き鋼の艦隊が救援にやってきます。まずはヒュウガの支援で硫黄島のナノマテリアルで船体を回復した重巡タカオ(ヒュウガのメンタルモデル付き)。そして霧の軽巡艦隊からナノマテリアルを強奪して(そんなこと出来るんだ!?)、船体を復活させたハルナとキリシマの合体戦艦ハルナキリシマ。イオナとの戦いでも合体していましたが、よくよく合体が好きな二人です。

セクシータカオさん 

 そしてミョウコウ型4隻と戦うタカオとハルナキリシマに対し、ヒエイに向かうのはテレビ版のラスボスだったコンゴウ。「艦これ」だと比叡は金剛お姉様ラブなんですが、こちらでも“霧”のあるべき手本としてコンゴウを慕っていたようです。しかし、コンゴウがイオナとの戦い→和解の後、“霧”を出奔してからは、慕情が憎しみに変わったようで「不良」呼ばわりしていました。

眼鏡のタカオ 

 一番の見所というか笑い処はタカオ対アシガラ。重巡同士の好勝負…といいたいところなんですが、アシガラはやたらテンションの高いお馬鹿娘で、超重力砲を装備していない代わりに重力子の銛を二本持っていて、ビームサーベル風の格闘武器としても使いこなします。一方タカオはもっとおしとやか…と思いきや、艦体を回復した際にヒュウガが勝手に組み込んだボーリング・システム(要するにドリル)2本で立ち向かうという。タカオはカッコ悪い、軍艦らしくないと大騒ぎでしたが、なんだかんだと格闘戦をチャンチャンバラバラとやっていました。終いにはそれぞれ艦を降りてメンタルモデル同士でキャットファイトを展開したりして。

アシガラビームサーベル タカオのドリル
タカオ対アシガラのキャットファイト 

 昔やった「鋼鉄の咆哮2 ウォーシップ・ガンナー」にもドリルとかノコギリを積んだ戦艦が出てきましたが、流石に腕のように振り回すところまではいかなかった。そのうちイオナとタカオ、ヒュウガ、キリシマ、ハルナの5隻が合体して大型人型ロボットになったりして。

鋼鉄の咆哮2 ウォーシップ・ガンナー 
ドリル戦艦アラハバキ

 アシガラはハイテンションで非常に面白いキャラですが、私のお気に入りはナチ。おしとやかで冷静で、なんといってもCVが佐藤聡美なもので。

ハイテンションアシガラ ノリノリのアシガラ

 そしてムサシと対峙するイオナ。北極海はムサシがヤマトを沈めた場所で、ムサシによればイオナはヤマトの操り人形に過ぎず、イオナを介して復活してくるであろうヤマトを再び沈めるのだと言います。ヤマトが復活した際には、当然イオナの人格は消滅するとムサシは考えていましたが、終盤にイオナがヤマトの力を発現させた際には、両者の記憶が混ざり合った状態でありながら、主人格はイオナのままでした。神様とピッコロが合体してもほぼピッコロだったかのような。

I401.jpg 
i-401(combined Yamato) 

 イオナが委譲されたヤマトのコアの能力を発揮したことで、北極海に沈んでいたヤマトの残骸を再構成した上でイ401と合体した形態は「I-401(Combined;YAMATO)」と呼ばれます。外見上は401がヤマトの船体を纏ったような姿で、超戦艦の能力を得た事で401を遥かに越える出力を獲得し、多数の浮き砲台や超重力砲とミラーリングシステムを同時に使用可能など、従来を遥かに越える戦闘力を発揮可能となります。

イオナとの別れ 
アルティメットイオナ 
消えるイオナ 

 そしてヤマトはイオナと意識を共有した状態で覚醒し、ムサシを打ち破り、全ての“霧”の艦艇に対し、今後は各々の思うとおりにしろという最後の命令を発し、消滅していきました。ただ、イオナについては、エンドロール後のパートで、両親の墓参りに来た群像がイオナのブローチを発見し、画面には映らない何者かに向かって「おかえり」と声をかけているので、実は健在であるという解釈も可能なラストになっていました。タカオがいるからいいじゃないという話もありますが、やはりイオナあっての蒼き鋼ですから。

ヤマト、ムサシ、生徒会

 結局最後まで“霧”の艦隊は誰が作ったのかという根本的な謎は未解明でした。これは「寄生獣」のパラサイトみたいなもの、つまり地球そのものを滅ぼしかねない人類に対し、天敵を生み出して制御しようという何らかの(例えば地球の)意思の反映なんでしょうか。しかし、パラサイトならまだ理解できるのですが、オーバーテクノロジーの塊である“霧”の艦隊は自然発生的には生まれるはずもないような。原作ではいずれちゃんと説明してくれるのでしょうか。

重巡ナチ 

 この後はそれぞれの随意にしろということで解散した“霧”の艦隊ですが、それでも人類は滅ぼすんじゃーとか考える艦艇もいるかも知れませんが、もう描かれないと思いますが、「蒼き鋼」は残敵掃討戦みたいなものも請け負うのでしょうか。また、世界新秩序の形成過程でどのような働きをする(させられる)のかとか、想像はいろいろできますね。狡兎死して走狗烹らる、なんてことにならなきゃいいですが。 

ナイスカップリング? 
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パプリカ:終わりなき悪夢世界を描く筒井ワールドの映像化

富田勲

 冨田勲が去る日に亡くなりました。84歳ということで大往生といっていいかも知れません。日本のシンセサイザー奏者といえば、一に富田勲、二に喜多郎、三四がなくて五にYMOという感じでした。これは偉大さとか売れ行きの順とかではなく、私が認識した順番です。三四がないのは文枝になっちゃったから…なーんちゃって。それは三枝だろうと突っ込んで下さい。

富田勲の展覧会の絵 

 1975年度日本レコード大賞で企画賞を受賞した「展覧会の絵」とか、 1977年2月19日付けのビルボード(クラシック)で1位にランキングされた「惑星」とかは名盤でしたね。音楽賞は多数受賞していますが、今まで叙勲されていなかったとは驚きです。文化勲章ものだと思うのに。ご冥福を心からお祈りいたします。

富田勲の惑星 

 本日は私がゴールデンウィークに見たアニメ映画「パプリカ」を紹介したいと思います。2006年11月公開というほぼ10年前の作品ですが、今さら見て今さら感想を書くのが安定の筑波嶺クオリティー。

パプリカ 

 原作は筒井康隆の同名SF小説です。1991年から93年にかけて「マリ・クレール」誌に連載され、1993年に刊行されました。 

中公文庫版パプリカ 

 アニメ映画版の監督は今敏。1997年の「PERFECT BLUE」や2002年の「千年女優」などで知られます。監督として実績も経験も積んで脂も乗ってきてさあこれからという2010年に46歳のさで逝去してしまいました。

今敏 

 「自分のエンジンはアルコールとカフェインとニコチンで動いている」とで公言するほど不摂生な生活を送っていたそうです。死者を批判したくはないですが、ナンシー関といい、不摂生な生活は自慢出来ることではありません(別に自慢してなかったかもしれませんが)。養生してもっと長く生きて、我々を楽しませて
欲しかったというのは当方のエゴでしょうか。

今敏と筒井康隆 

 原作者の筒井自身が監督の今敏との対談で映画化をして欲しいと語ったものが実現したもので、二人とも映画に特別出演しています。

パプリカチラシ 

 精神医療研究所の天才科学者時田浩作が開発したDCミニ。それは他人の夢に侵入できる最新のサイコセラピー機器です。時田の幼馴染みにしてサイコセラピストの千葉敦子は、DCミニを用いてクライアントの治療を行う極秘のセラピーを行うことがあり、そんな時は小悪魔風の少女の姿をしたペルソナ“パプリカ”となって他人の夢に入り込み、心の秘密を探り出していくのでした。

DCミニを持つ時田 

 ある日、DCミニが盗まれる事件が発生します。DCミニは悪用すれば他人の人格を破壊する危険があるので、その行方と犯人を捜そうとする敦子達。しかし、既に精神医療研究所内では次々と犠牲者が出始めてしまいます。他人の夢に強制介入し、悪夢を見せ精神を崩壊させていく犯人。敦子達は犯人の正体・目的、そして終わり無き悪夢から抜け出す方法を探りますが…

ガンギマリな所長 

 犯人は時田の助手だった氷室だと判明するのですが、精神医療研究所所長の島が真っ先に精神崩壊を起こしてしまいます。悪夢のパレードで王様のように振る舞う島所長。その姿が怖くてキモイので、その後正常に戻ってからもいつヤバいことになるのかとヒヤヒヤしました。目が怖いんですよねこの人。

パプリカの百鬼夜行 
パプリカの百鬼夜行その2 

 醒めない悪夢らしく、このパレードは本編で何度も登場しますが、さしずめ現代の百鬼夜行のようです。

百鬼夜行図 

 百鬼夜行は、日本の説話などに登場する、深夜に徘徊をする鬼や妖怪の群れ、或いは長い年月を経た道具などが変じた付喪神の行進です。今昔物語や宇治拾遺物語に登場するほか、大鏡には右大臣藤原師輔が藤原氏に恨みを持って死んでいった蘇我入鹿、蘇我馬子、蘇我倉山田石川麻呂、山背大兄王、大津皇子、山辺皇女などの亡霊の行列に遭遇し、仏頂尊勝陀羅尼を読んで難を逃れたという話があります。

仏頂尊勝陀羅尼 

 仏頂尊勝陀羅尼は、唱える事によって滅罪、生善、息災延命などの利益が得られるとして日本でも古くから知られ、特に百鬼夜行に巻き込まれた場合は特効薬のような効能があります。そんなに有り難いものなら覚えておきたいところですが、長すぎて私は一瞬で諦めました。根性のある方はどうぞ。

アムロ声の天才デブ 

 時田は天才ですが、精神的には子供のままで、しかも超肥満体。CVは古谷徹ですが、声のイメージに悩んでいた際、スタッフに「アムロのままでいいですか?」と尋ねたところ、快く了承されたそうです。なのでアムロ声です。時田も「親父にもぶたれたことないのに」タイプなんだと思います。ガンダムに乗らなかった10年後のアムロ?

ひっつめ髪の敦子さん 

 相棒を務める千葉敦子は時田に「あっちゃん」と呼ばれていますが、その度に怒っているツンタイプです。引っ詰め髪で白衣でと、いかにも知的で冷たい印象ですが、彼女はなかなかに美人で魅力的ですよ。

実は美人なあっちゃん 

 敦子のペルソナであるパプリカは小悪魔チックで、冷静かつ禁欲的な敦子とは対照的に自由奔放な雰囲気です。二人は似ても似つかないように見えますが、パプリカのセラピーを受けた刑事の粉川は敦子を見てすぐにパプリカだと気付いた模様。

敦子とパプリカ 

 やはり元は同一人物だから?パプリカに言わせれば「敦子があたしの分身だって発想はないわけ?」だそうです。「我は汝、汝は我」だとまさしくゲームの「ペルソナシリーズ」です。

敦子とパプリカその2 

 DCミニは他人の夢を見ることができ、記録できるだけでなく、その夢の中に入り込んで介入することが可能という画期的な装置です。似たような装置は1983年のSF映画「ブレインストーム」にも登場していました

ブレインストーム 

 こちらに登場する「ブレインストーム」という装置は、人間の記憶・知覚を他人に伝達する装置でした。研究中に心臓発作に襲われた女性研究者はブレインストームを起動し、死の瞬間を記録しつつ亡くなります。そうして記録された臨死体験の世界を見ると…という話でした。こちらはDCミニと違って介入することは出来ませんが、人間の脳から直接命令を行うことができるということに軍部が注目して、軍事転用しようとするというくだりがありましたっけ。

色っぽいあっちゃん パプリカの中からあっこちゃん

 生粋のサイコセラピストのパプリカをもってしても、あまりに深い悪夢の世界は手に余り、犯人の手中に堕ちたりパプリカから敦子を抜き出されたりしますが、仲間の支援を得てなんとか戦いを継続していきます。

フェアリーパプリカ ローゼンパプリカ

 最後は敦子とパプリカが同時に併存し、犯人を追い詰めようとするパプリカと、時田を救おうとする敦子が別行動を取ったりします。時田にツンツンだと思った敦子、実はツンデレであることが発覚。こんないい女は時田にはモッタイナイ……時田、もげろ!結婚後は当然敦子の尻に敷かれるんでしょうが、「我々の業界ではご褒美です」ってやつでしょうな。チッ!!

林原めぐみ20160510 

 千葉敦子とパプリカは林原めぐみが演じています。この人についてはもう流石としかいいようがないのですが、敦子役なんで田中敦子にやらせてみるというのも面白かったんじゃないかと。草薙素子のイメージが強く、クールビューティー専門のようにも見られがちですが、パプリカみたいな役をどう演じるのか興味があります。

ピノキオパプリカ 

 夢を題材にしているだけに、いかにもドリーミングな映像が続きますが、悪夢にやられた人の戯言がいかにも筒井康隆作品らしくていいですね。例えば…

パプリカ百鬼夜行その3  

 「蛙たちの笛や太鼓にあわせて、回収中の不燃ごみが後から後から吹き出してくるさまは圧巻で、まるでコンピュータグラフィックスなんだそれが!総天然色の青春グラフィティーの一億総プチブルを私が許さないことぐらい、オセアニアじゃ常識なんだよ!さぁ!今こそ青空に向かって凱旋だ!絢爛たる紙ふぶきは鳥
居をくぐり、周波数を同じくするポストと冷蔵庫は先鋒を司れ!」

パプリカ百鬼夜行その4 

 「賞味期限を気にする無頼の輩は花電車の進み道にさながら死人となって憚る事はない」 

イッチャッてる感じの所長 

 「魂の肥満はダイエット知らず、進め!超人!何処までも!有史以来の待ち人、その笛の音はニューロンの癒し、香しき脂肪分は至上のランチ、スパイシーに不足、欠如はパプリカ!円満成就に足りない一振りのスパイス」 

日本でいうパプリカ 

 パプリカって、日本ではピーマンに似た形の肉厚で辛みが無く甘い品種の野菜のことを言いますが、ヨーロッパなどでは滅茶苦茶辛いトウガラシやそれから作られる辛い香辛料をパプリカと呼びます。青唐辛子のピクルス…滅茶苦茶辛かったっけ。

青唐辛子 

 赤い唐辛子だと見た目にヤバイのがわかるんですが、青唐辛子はシシトウみたいで一見辛そうに見えないので騙されてしまいます。本作のヒロイン・パプリカは髪や服の色、そして言動からして当然香辛料のパプリカですね。

ぴりっと辛いパプリカ 

劇場版 クラッシャージョウ:今さらですが見ました33年前の名作アニメ映画

残雪の豊平川

 最後の豊平川ウォーキングをやってきました。去年は今頃河川敷を歩けたのですが、今年はまだちょっと早い感じです。雪が少ない少ないと言われていましたが、3月になってちょいちょい降ったせいかもしれません。それにしても“最後”っていうのはいつもちょっと淋しいものですね。

劇場版クラッシャージョウ

 通常はレトロゲーム紹介の日曜日なんですが、今回は今日唐突に見てしまった「劇場版 クラッシャージョウ」の話をしたいと思います。

劇場版クラッシャージョウDVD

 「劇場版 クラッシャージョウ」は1983年3月12日に松竹系で上映されました。ほぼ同時期に「幻魔大戦」や「宇宙戦艦ヤマト 完結編」が公開され、「1983年春のアニメ映画興行戦争」と呼ばれました。なので存在自体は当時から知っていましたが、当時平井和正にかぶれていた私は当然のように「幻魔大戦」を見に行ったのでした。

クラッシャージョウサントラ

 そのせいかどうか、3作の中で興行成績トップは「幻魔大戦」、次いで「宇宙戦艦ヤマト 完結編」でした。「劇場版 クラッシャージョウ」は最下位に沈んだ訳ですね。

高千穂遙

 原作は高千穂遙。「スタジオぬえ」の主要メンバーであり、日本初の本格的なスペースオペラ作品(「クラッシャージョウ」)や本格的ヒロイック・ファンタジー(「美獣」)を書きき、日本SF作家クラブの会長も務める(2007~2009年)という、日本SF界の重鎮というべき存在なんです。なんですが、どうも私、この人が昔から苦手で。

ダーティーペアの大冒険

 読んだことがあるのは「ダーティーペアの大冒険」のみ。星雲賞受賞作でもあり、これは面白かったです。でも続編は読まず、「クラッシャージョウ」シリーズは全く読むことがありませんでした。これは、作品がどうとかいう問題ではなく、当時やたらにSFについて過激かつ強気な批評を行っており、「○○はSFではない」という断定的かつ攻撃的な主張を繰り返していたのです。○○の中にはヤマトやガンダムなどが入ると思って下さい。その主張が、どうも私には受け入れられなかったんですね。ま、この話題はあんまり深く掘り下げるのもアレなんで、このへんで。

重巡コルドバ

 高千穂遙は、SF小説におけるヴィジュアル面の重要性を活動初期から強く認識していた作家で、「クラッシャージョウ」シリーズや「ダーティペア」シリーズの表紙には、当時アニメーターだった安彦良和を起用しています。そして「劇場版 クラッシャージョウ」は安彦良和の初監督作品なのです。当時のアニメ雑誌はこぞって本作を称賛してたのを覚えています。キャッチコピーは「宇宙が熱い」。

超豪華スペシャルデザイン

 興行的にはライバル作品に遅れを取りましたが、アニメファンには支持され、「アニメージュ」が主催する第6回アニメグランプリで大賞を獲得しています。スタッフが係わったアニメのパロディーや関係者をモデルにしたモブキャラなど、「業界ネタのお遊び」がちりばめられているのが特徴で、衣装・生き物など有名漫画家達が提供したスペシャルデザインも話題作りに一役買いました。参加したのは吾妻ひでお、いがらしゆみこ、いしいひさいち、大友克洋、高野文子、高橋留美子、竹宮惠子、とり・みき、鳥山明、細野不二彦、御厨さと美、和田慎二と錚々たるメンバーです。

カーシアターで上映されていたダーティーペア

 また劇中でジョウらがダーティペアの映画を観賞するシーンがあります。原作者が一緒だから出来たこの豪華な組み合わせ。なおどちらも同じ世界観で、22世紀の話という設定ですが、ダーティーペアの方が20年位前の話のようです。ということは、クラッシャージョウの時代には「ラブリーエンゼル」の二人はもはやBBA…

ケイとユリのアッカンベー

 「クラッシャージョウ」は、ワープを可能にし、人類が銀河に乗り出して植民を行っている世界が舞台になっています。クラッシャーとは、惑星改造を始め「宇宙の何でも屋」として活躍する職業集団で、犯罪以外なら報酬次第でどんな事でも引き受けているため、軍からは“荒事さえやるならず者”と見られ、海賊と同一視する向きもあるほどです。

ジョウのチーム

 主人公ジョウは、クラッシャーの創始者であるダン(現:クラッシャー評議会議長)の息子で、生え抜きのクラッシャーとして若干19歳ながらチームリーダーを務めています。そしてダンの片腕だったタロス、孤児だったリッキー、元王女アルフィンとチームを組み、様々な事件に挑んでいます。

ジョウ達のプロフィール

 大仕事を終えたジョウたちは、休暇中に飛び込みで依頼された仕事を“クラッシャー評議会”を通さずに引き受けてしまいます。難病のためコールドスリープ状態の大企業の令嬢・エレナを、手術のできる医師がいる星へと送り届けて欲しいというもので、お家騒動の渦中にあるので極秘裏に行う必要があり、クラッシャーを頼ったという話です。しかし、ジョウ達の母船ミネルバはワープ中に原因不明の事故に遭遇し、全員が気絶している間に、エレナや依頼人達が消えてしまいます。

ミネルバとコルドバ

 その後連合宇宙軍重巡洋艦コルドバの艦長コワルスキー大佐に海賊と疑われて捕まったり、釈放されたらクラッシャー評議会から6か月の活動停止を命じられたり散々でしたが、実はこれら一連の事件はすべて仕組まれたもので、依頼人は実は宇宙海賊一味で、エレナも彼らが誘拐していたものでした。しかも、彼女はエレナという女性ですらなく…。果たしてジョウ達は汚名を返上し、事件の真相に迫れるのか?

主要登場人物のサイズ比較

 まあ流石にスペオペらしく、前編活劇の嵐で息をつくヒマもありません。良く生きているなと思うほどの猛攻撃に曝されるクラッシャーチームですが、宇宙海賊マーフィー一味の規模が大きすぎです。惑星ラゴール星にアジトと呼ぶにはあまりにも大規模な基地を構え、衛星軌道上には宇宙要塞まで持っていて、艦隊まで保有しているという。一体何で儲けているのか謎です。

スリーピングビューティー

 海賊から“スリーピング・ビューティー”と呼ばれていたエレナの正体はドクター・マチュアで、大学の重力物理学研究所でパパンであるドクター・バルボスの助手をつとめていましたが、バルボス博士が開発した新型ワープ装置を狙って、マーフィー一味が開発チームを皆殺しにしてしまいました。しかし装置は未完成だったため、唯一の生存者であるマチュアを誘拐して完成させようとしていたいのでした。マチュアを官憲に発見されずに運ぶためにジョウ達は利用され、事故も新型ワープ装置によるものでした。

海賊マーティー一味

 実はこの新型ワープ装置、他の宇宙船のワープ機関までコントロール出来るという代物で、武器としても転用可能なものでしたが、使い方を間違えると宇宙が裂けてしまうという危険を孕んでいました。そんなことは全く知らないマーフィー一味は、この装置で宇宙の支配者になろうとしていました。

若造ジョウ

 ジョウは19歳らしく血気にはやる性格で、正直人ごとながら大丈夫かよ?と言いたくなるほど無茶を島倉千代子で、パパンのダンに強い反発心を抱いています。クラッシャーとしての腕前はともかく、人間的にはまだまだ未熟ですね。

ドライブ中のジョウとアルフィン

 その未熟さ故に海賊に利用されてしまいましたが、最後の最後は色んな勢力にいいように利用されていたことが判ります。ラゴールの大統領や連合宇宙軍、さらにジョウ自身は気づいていないようですが、パパンにまで利用されていたという、まさに釈迦の掌の上の孫悟空状態です。

劇場版クラッシャージョウパンフ裏表紙

 クラッシャーは荒事上等なので、かなり荒っぽい事もするのはまあ黙認されているのでしょうが、本作では海賊とは言え人殺し過ぎです。ある程度は正当防衛が認められるのでしょうが、それだけでは済まない大量虐殺が発生してしまっています。相手が悪人ならいいのでしょうか?神林長平の「敵は海賊」シリーズの対海賊課ならその権限が与えられているのでいいのですが、クラッシャーは一応民間なのに。

コワルスキー大佐

 頑固で融通の利かない軍人の典型であるコルドバ艦長コワルスキー大佐のCVは納谷悟朗で、この人は艦長だけど沖田艦長というよりは銭形警部的な性格です。この人も踊らされている人ですが、最後にはジョウに協力してくれたりしているので、憎みきれない役どころではあります。宇宙海賊の戦闘艦をばったばったと沈めるコルドバはさすが軍艦だなと思わせる強さです。 

ビビるアルフィン

 ヒロインはチームの紅一点であるアルフィンなんでしょうが…明らかにジョウに気があるのに、お約束でジョウが全く気づいていないという朴念仁ぶりを見せています。ファンには悪いのですが、少なくとも劇場版のアルフィンは元王女のわりにあまり品がなく、酒癖が無茶悪く、軍人じゃないからしょうがないのかも仕方ないかもですが、任務中の言葉使いもあまり感心しません。

裸白衣のマチュア

 代わりに目を惹くのがドクター・マチュア。ラストで非業の死を遂げてしまう悲劇性もありますが、ジョウにとっては「憧れの年上の女性」的雰囲気を目一杯出しています。CVは武藤礼子で実に素敵なお姉さん感を出しています。何より真っ裸だったり裸に白衣だったりとやたら露出が高いこともポイント高いです。終盤は海賊支給の服を着ていますが、海賊なんだからもっとエロい格好させろよとか思ったり(笑)。この人については「好きなアニメキャラ」で別途語りたいと思います。

虹色の地獄

 高千穂遙自身が本作をノベライズした「虹色の地獄」の表紙にも裸エプロンならぬ裸白衣のマチュアが登場しています。当然安彦良和の絵です。胸元は押さえていますが足下がお留守ですよ。

ベーシックマスターレベル3

 この時代というのはそろそろCGが使われ出した頃で、本作でも部分的にCGが導入されているそうですが、どこといってよく分かりませんでした。なお使用されたコンピュータは日立のベーシックマスターレベル3だそうです。な、懐かしい…すごく欲しかった頃がありましたよ(高すぎてとても無理でしたが)。

ミネルバ

 最後にジョウ達の母船・ミネルバについて。スペースシャトルに似たデザインで民間船のはずですが、かなりの強武装である他、戦闘機2機に装甲車まで搭載していて、流石にクラッシャーを単なる民間団体呼ばわりするのは無理があるのかと思われます。というか西部開拓時代のアメリカみたいにみんな武装しているんですかね。

ファイター1のプラモパケ
横に複座の戦闘機ファイター1

 搭載戦闘機のファイター1は河森正治デザインだけあってバルキリーを彷彿とさせるカッコイイ機体ですが、なんと座席は、タンデムではなくサイドバイサイドとなっています。Su-34か。色違いのファイター2もあるのですが、2機出撃すると、4人出払ってしまうことになります。

ドンゴの後ろ姿

 無人になったミネルバは、第5のメンバーであるロボットのドンゴが留守番を務めます。留守番中にエロ本を読むなど、いろんな意味で高性能のようですが、ミネルバ自体のコンピューターはどうなんでしょうか?

万能装甲車ガレオン

 終盤登場する万能装甲車ガレオンは事実上戦車ですね。ガルパンに登場したら無双ができそうです。発進口はファイターと同じミネルバ後部ですが、攻撃による損害で格納中のファイター2が破壊されるシーンがありますが、ガレオンは無被害だったんですね。装甲のせい?

劇場版クラッシャージョウパンフ表紙

やさぐれ刑事:原田芳雄のツンデレっぷりが凄まじい、NTR好きは一見の価値ありのアクション映画

以前のバックネット裏

 春のセンバツが開催されている今日この頃ですが、画面を見て「あれ?」と思ったのは、いつもバックネット裏にいるラガーシャツのおっさん(通称「ラガーさん」)の姿がないことです。20年以上前から「8号門クラブ」という、バックネット裏前方の座席を確保するために野宿を辞さない人達が存在していたそうですが、割り込むとか他の人を排除するなどの問題行動が指摘され、昨年にはネットに抗議ページが作られたり、高野連や夏の大会主催の朝日新聞、センバツ主催の毎日新聞、そして文科省までへも批判やクレームが殺到する事態となりっていたそうです。

センバツのバックネット裏

 そのため、今回からテレビ中継時に映るバックネット前方に小中学生を無料招待するドリームシートが設けられることになり、ラガーさん「等8号門クラブ」は、これまでの席に座ることができなくなったそうです。向かって右側(三塁側)に十数列ずれて、相変わらず最前列に居るという話もありますが、テレビには滅多に映らなくなりました。高野連は「野球人気を復活させるため、小中学生の夢を育むため」と発表しており、「8号門クラブ」対策とはおくびにも出していませんが、“あ…(察し)“というところでしょうね。

ずらされたラガーさん

 ドリームシートは夏の大会でも継続される見通しということですが、 不断の努力の結果として席を確保していたとしていも、徒党を組んで他者を排除していたということなら、やはり糾弾されてしかるべきだったのでしょう。ドリームシートに異議はないですが、それ以前に指定席化すればよかったんじゃないかという気もしますが。

甲子園の8号門

 ここのところ冒頭で妙に時事ネタを扱っていますが、日記的意味に過ぎず、硬派路線とかにシフトする気はありませんので。ということで本日は、唐突になんと40年前の邦画、「やさぐれ刑事(デカ)」を紹介したいと思います。

やさぐれ刑事

 「やさぐれ刑事」は1976(昭和51)年4月3日公開されたアクション映画で、藤本義一の同名小説が原作です。主演は原田芳雄。この年に西村寿行原作・高倉健主演の「君よ憤怒の川を渉れ」に出演し、罠に陥って犯罪者とされた杜丘検事役の高倉健を執拗に追跡する矢村警部を演じていました。終盤は協力しているので悪役ではありませんが。

藤本義一の原作「やさぐれ刑事」

 なんで「君よ憤怒の川を渉れ」を持ち出したかと言えば、文化大革命後に初めて公開された外国映画であり、大変な人気を呼び、中国での観客動員数は8億人に達したとされるからです。もしや世界で一番視聴された邦画だったりして。

君よ憤怒の川を渉れ

 しかも原田芳雄、なんと鬼の哭く街・A立区出身なんですね。2011年に71歳で惜しくも亡くなりましたが、紫綬褒章はじめ、俳優として各種表彰を受賞している名俳優です。デビュー当時は純朴な青年風キャラクターでしたが、その後浅黒いワイルドなアウトロー風キャラへとイメージチェンジを図り、圧倒的な存在感と的確な演技力を武器に、100本を超える映画に出演しました。「やさぐれ刑事」主演当時、原田芳雄は35、6歳ということで、油が乗りまくっている感がします。

原田芳雄
高橋悦史

 あらすじは…全国制覇をたくらむ関西十文字組の策謀に呼応して、各地で一斉に暴力団が動き始め、対する警察の動きも活発になってきました。北海道においては、暴力団取締りの中心にいた大西警部が殺されるという事件が発生します。犯人は十文字組の幹部・杉谷(高橋悦史)で、かつて大西警部の部下である西野警部補(原田芳雄)に逮捕される遺恨を持っていました。

清水省吾
大谷直子

 さらに杉野は西野警部補の妻・真穂(大谷直子)に車のセールスマンを装って接近し、あっさり寝取った上に一緒に札幌から姿を消してしまいます。妻を寝取られた男が刑事を捨て、北海道から、東北、東京、神戸、九州へと日本を縦断して二人を追い詰めていきます。予告編がYouTubeにありました。

www.youtube.com/watch?v=b16k7Vd4KP4

 西野の部下の松井刑事は清水章吾が演じています。ほら、以前某サラ金会社のCMでチワワを見つめていたあの人ですよ。この頃は実に若いですね。

チワワおじさん

 やさぐれて、狂犬となった西野は、拳銃を持ったまま杉谷と真穂を追跡します。そして杉谷が厄介になる各地の暴力団を攻撃しまくり、大被害を与えるというテロ活動を実施。「杉谷を匿うとエラい目に遭う」という定評を作り出して追い詰めていきます。

上司暗殺
妻強奪

 真穂とは比較的早くに再会しますが、おそらく仕事一筋で家庭を顧みないどころか、最近では夫婦生活すらあったからどうか怪しい西野なので同情の余地はあるんですが、刑事の妻なのにあっさり浮気しすぎです。いや、刑事の妻が他の人妻より貞淑という根拠はないんですがね。ただ画面上は「もう関係持ってますよ」的ニュアンスしか描かれないので、欲を言えば真穂が寝取られる仮定を詳しく描いて欲しかったですね。さらには仇敵の嫁を寝取って勝ち誇る杉谷の表情とか。

やさぐれ刑事チラシ
やさぐれ刑事タイトル

 ちなみに杉谷役の高橋悦史と原田芳雄を比較すると、どうみても高橋悦史の方がインテリ風で、とても暴力団には見えません。インテリヤクザというやつなんでしょうか。これがセールスマンと偽れば騙されますな、これは。

暗黒街縦断3000㎞
鉛のタマをブチ込んでやる
 
 しかし駆け落ちの相手はなんとバリバリのヤクザだったということで、真穂の運命は大きく暗転していきます。夫と再会しても犯された上に情報屋にされてしまったり。原作では途中でそれが発覚して殺されることになるのですが、映画では最後まで生きながらえているのでそこはましでしょうかね。なお原作では死亡時妊娠していたのですが、誰の子かは不明。西野の子だったということだとさらにアイロニーが効くのですが、明らかにはなっていません。

青森の売春婦

 なお西野さんのあっちの方のテクですが、青森の売春婦に酷評されているので、自分勝手で下手くそだったんでしょうね。メシまず嫁は旦那が逃げ出しますが、あっちがまずい夫からは嫁が逃げ出すのか。

相馬の姐さん絵沢萠子

 さらに福島県相馬では十文字組系に押されて落ち目の暴力団の姐さん・三千子(絵沢萠子)と親しくなって、十文字組系の経営するパチンコ屋に住み込みのアルバイトとして入り込みます。そこでチンピラ達が大喜びで見ていたのは、なんと真穂主演のブルーフィルム(今でいうAV)。強烈にNTR感を味わった西野は怒りにまかせて事務所ごと爆破という暴挙に出ます。

ブルーフィルム上映会
真穂のブルーフィルム

 真穂さん、杉谷の情婦だけやっている訳にはいかなかったようで、杉谷の金づると化してAVに主演したり政界の黒幕(大滝秀治)にあてがわれる高級コールガールをやったりと大忙しです。骨までしゃぶられるという奴でしょうかね。罪の報いといえばそうなんでが、酷いなあ。

ハジキをよこせ
地獄の旅路

 その後大阪・神戸では西野は真穂からの情報をもとに、十文字組の幹部を射殺したり、三億円にのぼる麻薬を押収したりして打撃を与えていきます。そして折にふれなぜか西野に接触する松井刑事。道警の人なのに各地に出没し、犯罪者となった西野を逮捕するそぶりも見せずに情報だけ提供したりして、事実上支援活動を行っています。

監督渡邊祐介

 個人の立場でそこまで出来ないと思うので、道警上層部(あるいは警察庁上層部)の意でも受けたんでしょうかね。十文字組にありとあらゆる非合法な打撃を与え、しかも全責任を退職刑事におっかぶせる作戦だったりして。西野もやたら拳銃ぶっ放していますが、なぜか銃弾が尽きないのはこっそり松井が補充してたんだったりして。ハジキをよこせと襲われたときは拒絶してましたが。

駆け落ち二人組

 さらに南に逃げる杉谷を追って鹿児島に来た西野は、十文字組の麻薬ルートの連絡中継点である杉谷の愛人らしい三味線の師匠・浅見俊江(赤座美代子)の家に押し入りますが、杉谷は沖縄に麻薬の取り引きに出て留守でした。真穂を寝取られた恨みからか、「杉谷が抱いた女は、すべて犯す」と、西野は俊江を犯します。青森では「下手くそ」と酷評を受けていた西野ですが、その後真穂や相馬の姐さんらを相手に経験値を上げたようで、なかなかの健闘を見せています(笑)。

三千子を抱く西野

 遂に西野は杉谷と坊ノ津港の突堤で対峠します。西野のリボルバーが火を吹き、杉谷の眉間をぶち抜いたその頃、枕崎のとあるバーで、真穂は酔っ払って、涙で頬を濡らしながら客を引いていました。それを知ってか知らずか、松井に逮捕されて護送される車中、西野は「あいつも可哀想な奴だった」と咳くのでした。

涙の真穂
飲んだくれ真穂

 貞淑そうな若妻だった真穂の果てしない堕ちっぷりが萌えますね。当時26歳でよくやったと思いますが、濡れ場に物怖じしない人で、後には「受胎告知」という妊婦ヌード写真集を発表(1981年)したりしているので、肝っ玉姐さんなんでしょう。

大谷直子の受胎告知

 NTRを契機に狂っていく刑事と堕ちていく妻の物語を通じて日本を縦断していくという異色作ですが、NTR好きには西野の気持ちにシンクロしてなかなかに良い作品だと思います。真穂のブルーフィルムに見入るチンピラ達がまたやたらゲスくて最高です。できればブルーフィルムをもっと見せて欲しかった(笑)。

堕ちた真穂さん

 以下、余談ですが「やさぐれ刑事」のナゾです。

真穂を犯す西野

ナゾ①:青森の十文字組系組織に拳銃の密売を持ちかけた西野。取引に寄越されたのが何と真穂で思わぬ再会を果たすのですが、なにゆえに青森のヤクザはド素人の真穂を寄越したのか?普通はマユツバものの取引話だと思ったにしても、チンピラの若い衆くらい寄越すんじゃないの?そもそもこの頃の真穂は大幹部である杉谷の情婦的ポジションなので、粗略には扱えないと思うのですが。杉谷が「お前ヒマそうだから行ってこい」とか言ったのでしょうか。

運命の二人

ナゾ②:凶悪テロ犯すぐる西野。各地でヤクザを射殺しているのは、まあよしとして(おいおい)。相馬での爆破事件だけはいただけません。真穂のブルーフィルムを見てNTR感沸騰で発狂状態というのは判りますが、あのヤクザ事務所、一階はパチンコ屋で当時は営業中なんですよね。建物全てを爆破した状況なので、二階のヤクザ達はもとより、一階で遊んでいた素人さんも多数死傷したんじゃなかろうか。

悪そうな西野

ナゾ③:西野最後のセリフ「何にも終わっちゃいねぇ…まだ野村が残ってるんだよなあ…」。今回の西野の復讐行は、真穂を寝取った杉谷に対するものかと思ったのですが、大滝秀治演じる政界の大物・野村がいつの間にターゲットになったんかい。あ、高級コールガールに堕ちた真穂が野村に抱かれたから? 自分以外に真穂を抱いた男は皆殺し、ブルーフィルムを楽しんだ男も皆殺しということなんでしょうか。実は愛妻家だった西野(笑)。ツンデレ?

政界の大物大滝秀治

ナゾ④:西野の裁判の行方。杉谷殺しはもう免れないところではありますが、行く先々で殺しをやってるんですよね。レイプもあるし。悪人ばかり殺しているといっても極刑は免れないか。なによりも、相馬の爆破テロが西野の仕業だと判ったら絶対死刑でしょう。でもうすうす事情を知っている気配の三千子は言わないだろうし、松井も黙ってそうなので、立件されるかどうか。

真穂さんアップ

ちょっとかわいいアイアンメイデン:名門女子校の「拷問部」の壮絶な活動とは

札幌の聖夜
 
 ♪雪は夜更け過ぎも雪のまま降るだろう silentnight holynight♪札幌ではどうやらホワイトクリスマスがデフォルトのようです。

イブの雪景色

 そんなことよりですね、聖夜だというのに今季二度目の転倒をしてしまいましたよ。前回は冬用の靴じゃなかったという言い訳(?)ができましたが、今回は冬用の靴だったのでなんともみっともないことで。先日のツルツル路面地獄はくぐり抜けたというのに何たる失態。一体この冬何度転ぶのか、自信がなくなってきました。せめて一桁台で、怪我しないようにしたいと思います。今回は前回と逆に左から転んだのですが、大方尻餅になったのでダメージは軽い模様です。

新宿の雪

 年末の雪といえば何と言っても秒速5センチメートルですよね。第一話の雪は3月の名残雪でしたが、第三話の雪は明里と両親の会話から正月前であることが伺えます。クリスマスなのかなあ。クリスマスに理紗の電話に出ないなんて哀しいなあ。でも明里ママンが「お正月までいればいいのに」と言っているので28日~30日あたりじゃないかと推測してみたり。何にせよ、非リア充の私には、聖夜に転んで無様に道路に這いつくばる惨めな姿がお似合いってことですね。……ふんぐるい むぐるうなふ くとぅぐあ ふぉまるはうと んがあ・ぐあ なふるたぐん いあ! くとぅぐあ!

ちょっとかわいいアイアンメイデンちらし

 さて話はがらりと変わって本日の本題。今日はR15+(15歳未満の入場・鑑賞禁止)指定映画「ちょっとかわいいアイアンメイデン」を紹介しましょう。昨日紹介した吉住はるなさんが準主役として出演しています。

原作1巻

  「ちょっとかわいいアイアンメイデン」は、深見真原作、α・アルフライラ作画の同名の四コマ漫画が原作です。角川書店の月刊雑誌「4コマnanoエース」で2011年4月号(創刊号)から連載され、同誌が2013年10月号で休刊となってからは「ヤングエース」で連載されています。

活動内容(笑)

 あらすじは…

アイアンメイデンちらし裏

 名門女子校に公認で存在する秘密の部活「拷問部」。そこはスパイ養成を目的として、拷問を日々の鍛錬として行う中で、肉体と精神力を鍛えるというハードな部活です。主人公の武藤結月は、憧れの高校に入学できた喜びもつかのま、拉致監禁状態で「拷問部」に入部させられてしまいます。実は入試は思わしくなく、豪学は望外の喜びだったのですが、問題には「拷問部」の適性を調べる内容が含まれていたということで、「拷問部」入部が条件の合格だったらしいです。

原作の一部その1
原作の一部その2

 実は入試の日、結月は舟木碧生(あおい)と遭遇しており、彼女に一目惚れして思わず下着を盗んでいたのですが、その碧生が「拷問部」の先輩であることを知った結月は、一流の拷問人となるべく厳しい修練に耐えていくのでした。責め専門と自称する碧生ですが、実は初遭遇の日に結月は自らをスパンキングしている碧生の姿を目撃しており、本当はマゾであるという自身の性癖を隠していることを知っています。

責めるんだ

 部活は恋愛厳禁なのですが、実は相思相愛の二人はやがてその掟を破る日が訪れてしまいます。しかしそれは部長の知るところとなり、二人には過酷な罰が待ち受けているのでした……。

記者会見で緊縛

 原作では中学校でしたが映画は高校になっています。また設定やキャラクターを活かしながらも、映画では結月と碧生の濃厚な物語を新たに書き下ろしており、全く新しいストーリーとなっています。

二人の共同作業

 映画は2014年7月19日公開。撮影は前年の秋だったはずなので、1年近くも寝かせましたね。女優でAVにも出演したことがある葉山レイコやマンガ家の内田春菊も出演しています。原作には拷問部の他に対立する洗脳部とか生徒会とかも登場しますが、映画には登場しません。

訳もわからず拷問部に
入部します!

 清楚で可憐な少女が拷問の世界に目覚め、しかも受けから責めに変貌していくという、武藤結月を演じるのは、ロリータ系グラビアアイドルの木嶋のりこです。この人ちょっと渡辺麻友に似ています。

原作の舟木碧生
碧生パイセン

 そして舟木碧生役が吉住はるなさん。映画初出演にして限界ぎりぎりの露出で、責めを装いながら後輩の結月に自らの本当の性癖を暴かれていく様子を、時にクールに、時に熱情的に演じています。先輩役に徹する時は宝塚の男役のような口調になっていますね。声も低いし。でもはるなさんの真骨頂は、可憐あ喘ぎ声にあると思うので、責められるようになってからが実にいいですね。

メインキャストカルテット

 なお「拷問部」の部長役(上画像の一番左)は、「甘い鞭」で壇蜜さんが演じた女医にしてSMクラブのM嬢の奈緒子の高校生時代を演じて注目を浴びた間宮夕貴です。実は「私の奴隷になりなさい」も「甘い鞭」も原作は読んだのですが映画は見ていないのです。心を強く持って見なければいけないのでしょうか、碧生パイセン。

碧生に責められる結月
碧生を責める結月

 設定とかは荒唐無稽なんですが、なにしろみんな真面目に演じているので見入ってしまいますね。ちょうど「アストロ球団」を読んでいる時のような感じです。そして魔球や超打法の代わりに様々な拷問シーンが次々と登場してきます。

アイアンメイデン

 もちろんタイトルにもなったアイアンメイデンも登場。拷問の名家である舟木家に鎮座していて、結月が入れられます。節子これ拷問具と違う、処刑具や!と言いたくなりますが、碧生によれば見せて恐怖におののかせることが拷問であり、中の針はゴムになっていました。

百合シーン

 劇中、結月と碧生が結ばれる結構濃厚な百合シーンがあるのですが、これが実に美しくていいです。

恐怖の虫責め

 ちなみに主演の木嶋のりこによれば、数々登場する拷問の中で二度とやりたくないのは「虫責め」と「水責め」だそうです。「虫責め」は巨大なミールワームを頭からかけられるもので、そりゃあ嫌でしょう。木嶋のりこは本気で号泣したそうです。良かったねはるなさん、碧生は受けなくて済んで。台詞としては子供の頃受けて一時発狂したとか言ってたけど。

うわぁ…

 ほらこれ。これは男だって嫌ですよ。しかし身体に蜂蜜塗られていたけど、この手の虫は基本蜂蜜好きではないような。もっとヤバいスズメバチとかが来ちゃうぞ。

このシーンを連想しました。

 「Fate/Zero」のこのシーンを思い出してしまいました。桜……(涙)。

水責め

 水責めは本編ではちょっとしか出てきませんでしたが、緊縛されて逆さにされた状態で口の中に水を流し込まれるというもので、歴史的にも実際行われてきたもののようですね。木嶋のりこは命がけでやったのにちょっとしか使われなくて残念だと言っています。

攻守逆転

 ちなみに吉住はるなさん演じる碧生は結月からロウソク責めをされますが、はるなさんによればプレイ用の低温ロウソクではなく、ホンモノのロウソクで涙が出るほど熱いのを乳首に垂らされたのだとか。撮影現場では泣き叫んだそうです。いくら「拷問部」の映画だからといって本当にキャストを拷問してどないすんねん!とツッコむところですな。

DVD発売イベント

 本当に身体を張って文字通り体当たりの演技をしていた吉住はるなさん、映画初出演なのに準主役という大役を見事に演じきっています。本当に頑張ったね。話には聞いていたけど、実際見るまでここまでとは思いませんでした。えらい!

パイセンの赤Vを盗んでしまった結月

 なお、結月が盗む碧生パイセンの下着ですが、これです。我々は知っている!この水着を!そう、昨日の記事に登場した黒のV型水着の色違いですね。赤だから通常の3倍(何が)でしょう。

赤いV

 吉住はるなさん、DVD撮影の時に同型の水着が出てきたときは「あ、これは!」と思ったんじゃないでしょうか。まあきっと監督はわかっててやってるんでしょうけどね。

立派な拷問士となった結月

「言の葉の庭」考察(その4):雪野百香里とは何者だったのか(妄想考察)

ブリティッシュ作戦
 
 こんばんは。今日夕方にスーパーで買ってきた鶏卵を床に落っことしてしまいました。日本の優れた卵パックといえどジオンのコロニー落としには耐えられず、4個中3個がお釈迦になってしまいました。ユースフは、自らの行為に恐怖した。

コロニー落とし

 仕方なくシーチキンを加えてスクランブルエッグ的な卵焼きにして食べましたが、これが我ながら結構おいしかったのでした(笑)。4個パックだったのが不幸中の幸いで、10個パックだったらと思うと……あんまり一気に卵を食べるのは身体によくないらしいですからね(そういう問題か)。しかし卵だけだと3個くらいでも大した量じゃないですね。やはり野菜と一緒にしないと。

百香里その1

 さて、“さよならは言ったはずだ 別れたはずさ”の「言の葉の庭」考察シリーズですが、satoruさんからいただいたコメントの“観終わっての感想、 と言うより、第一印象は (雪野さんは、『女貴樹』だなあ・・・) この1点でした。”に触発されて、雪野百香里とは何者であるのかについての私見をつらつら綴りたいと思います。やはり亀仙人の「もうちっとだけ」はヤバイようです。

百香里その2

  妄想編とも言える「言の葉の庭」考察(その2)(http://nocturnetsukubane.blog.fc2.com/blog-entry-763.html)で、私は百香里は依存体質なのではないかと描きました。12才も年の離れた、そして直接受け持っている訳ではないとはいえ、自分の務める高校の生徒である孝雄に対し、「察してちゃん」「構ってちゃん」的態度をとり続けたところからの分析です。

相沢祥子と愉快な仲間達

 この依存体質は、相沢祥子と愉快な仲間達による執拗かつ悪質な嫌がらせにより精神的に深く傷ついたことによる一時的なものだと捉えるのが一般的な見方なのかも知れません。百香里が孝雄に足を触らせながら「私ね……上手く歩けなくなっちゃったの……いつの間にか」と言っていることから、自身でもそう思っている様子が窺われます。

百香里その3

 しかし、あくまで妄想の「伊藤宗一郎黒幕説」の延長上で考えると、百香里はそもそも「上手く歩ける人」ではなかったのではないかと思われます。これまでは伊藤先生という人に支えられてきたので気付かなかっただけで、最初から一人で上手く歩くことはできなかったのではないかと。

百香里その4

 ここで思い出されるのは、「秒速5センチメートル」第一話「桜花抄」です。我ら「秒速病」の永遠のヒロインである明里は、小学生時代は内気で引っ込み思案な少女でしたが、貴樹と知り合って親しくなったことで明るくなっていきました。この辺り、貴樹が一方的に明里を支えていた訳ではなく、共依存的関係にあったと考えられます。

小学生の頃の明里

 映像版では明里が転校した後、中学校で貴樹はちゃんと一人でやって行けているように見受けられましたが、新海誠による小説版「秒速5センチメートル」によれば、実際にはずっと辛さに耐えていたこと、明里からの手紙を貰って彼女も同様の境遇であることを知り、手紙をやりとりすることで理解者がいることを改めて知り、生きることが楽になったことなどが綴られています。

明里その1

 しかしやはりどちらが辛かったかと言えば明里の方だったことでしょう。明里から貴樹に先に手紙を送っていることからもそれは窺われます。あの手紙は明里のSOSだと解釈していいでしょう。やや意地悪な見方をすれば、こういう手紙を送れば貴樹が自分を放っておくはずがないと確信しての行動だとも受け取れます。

明里その2

 ですが、二人の交流再開もそう長くは続きませんでした。今度は貴樹が種子島という遙か彼方に引っ越すことが決まってしまいます。東京と栃木なら頑張れば会うことも可能ですが、鹿児島のしかも島部となるとさすがに中学生の手には余ります。さあこれまで精神的に依存してきた貴樹とは本当に会えなくなってしまうことになりました。この時明里はどう思ったのか?

お別れ明里

 それを知る手がかりは明里の「渡せなかった手紙」にあります。この手紙の全文については、2012年6月14日の「秒速5センチメートル」考察(その4)(http://nocturnetsukubane.blog.fc2.com/blog-entry-35.html)で既に掲載していますので、ここでは注目部分のみ引用します。

渡せなかった手紙

私が小学四年生で東京に転校していったときに、
貴樹くんがいてくれて本当に良かったと思っています。友達になれて嬉しかったです。
貴樹くんがいなければ、私にとって学校はもっとずっとつらい場所になっていたいと思います。


渡せなかった明里の手紙の文面

だから私は、貴樹くんと離れて転校なんて、
本当にぜんぜんしたくなかったのです。
貴樹くんと同じ中学校に行って、一緒に大人になりたかったのです。
それは私がずっと願っていたことでした。
今はここの中学にもなんとか慣れましたが、(だからあまり心配しないでください)
それでも「貴樹くんがいてくれたらどんなに良かっただろう」と思うことが、
一日に何度もあるんです。


明里その2・5

そしてもうすぐ、
貴樹くんはもっとずっと遠くに引っ越してしまうことも、私はとても悲しいです。
今までは東京と栃木に離れてはいても、
「でも私にはいざとなれば貴樹くんがいるんだから」ってずっと思っていました。
電車に乗っていけばすぐに会えるんだから、と。
でも今度の九州のむこうだなんて、ちょっと遠すぎます。


明里その3

私はこれからは、一人でもちゃんとやっていけるようにしなくてはいけません。
そんなことが本当に出来るのか、私にはちょっと自信がないんですけど。
でも、そうしなければならないんです。
私も貴樹くんも。そうですよね?


 そして私は、同記事の中で「貴樹君はまさしく明里さんにとっての救世主でした。しかし、あまりにも救われすぎたとも言えます。二人はまるで一心同体のようです。前に二人の趣味嗜好は一致していたと書きましたが、案外明里さんが貴樹君の趣味に合わせていったという側面もあるのではないかと思います。明里さんは完全に貴樹君に依存していました。彼女にとって、貴樹君との関係が全てであった時期があるといえます。」と書きました。この意見は今でも変わっていません。

本を読む明里

 そんな明里に貴樹の引っ越しは大きな打撃でしたが、それは結果的に明里の自立と成長を促すものとなったのです。「マクロス」の歌詞を借りるならば

マクロス

マクロの空を つらぬいて
地球をうった いかずちは
我ら幼い 人類に
目覚めてくれと 放たれた


地球に落下するマクロス

 こういうものであったことでしょう。特に

明里その4

私はこれからは、一人でもちゃんとやっていけるようにしなくてはいけません。
そんなことが本当に出来るのか、私にはちょっと自信がないんですけど。
でも、そうしなければならないんです。


明里その5

 この部分を読むにつけ、もう明里を抱きしめてやりたい衝動に駆られます。もちろんエッチな意味合いは全くないですよ。この少女の健気さ、凜々しさがおじさんにはたまらないのです。

明里その6

 そして私は同記事で「そうです、彼女は『懐かしくも楽しかった貴樹君との関係』がもはや二度とは戻らないということをこの時はっきりと自覚し、今後はそれに頼ることなく生きていくということを宣言しているのです。」と書きました。つまり彼女は依存体質から脱却しなければならないことを自覚し、努力していくことにしたのです。この手紙を貴樹に渡していればまた貴樹も違う人生になっていた可能性があるのですが、それをしなかったのは「雪の一夜」が二人にあまりにも大きなインパクトを与えたからだと思うのですが、この先は完全に「秒速」世界になってしまうので、興味のある方はそちらの考察をご覧下さい。

明里その7

 長々と「秒速」を語ってしまいましたが、要するに私は、百香里は貴樹からの自立を果たせず、依存体質のまま成人してしまった明里なのではないかと思うのです。平行世界的な考え方をすれば、「貴樹と離れることはなかったが、貴樹とは結ばれなかった世界」の明里のなれの果て、それが百香里なのではないかと。

な、なんだってー!!

 離ればなれにならなければ、貴樹と明里は結ばれていた…これは大いに可能性のある解釈だと思います。私もそうあって欲しいです。しかし、幼い初恋が必ず実るものとは限らないのも事実。二人が高校生、大学生と成長していく中で、心が離れていく可能性だってあるでしょう。或いは別の異性に心惹かれるとか。

百香里その5

 小学生時代の二人は一心同体的に趣味嗜好が一致していましたが、そういう状態はそんなに長くは続かなかったことでしょう。相違点が次第にはっきりしていく中、それを魅力と感じるてより惹かれていくか、異質と感じるて疎遠になっていくか…それは二人の関係性次第としか言いようがありません。

百香里その6
 
 そして百香里は、貴樹とは別れたものの、依存体質は克服できないままに、その時々の交際する男に精神的に依存していく性向を持ち続けた明里そのものなのではないでしょうか。

百香里その7

 そう考えると、別れた後も伊藤先生を頼りにしたり、ガキの孝雄との不思議な関係をずるずる続けたりした百香里の心情というものが容易に理解できるような気がします。昨日モームを紹介した関係から言うと、「超時空要塞マクロス」と「超時空世紀オーガス」の関係は、「マクロスが降ってこなかった世界の延長上にオーガスの世界がある」ということらしいですが、まさに「秒速5センチメートル」と「言の葉の庭」の関係は、「貴樹から自立できなかった明里の世界の延長上」にいるのが百香里なのだと私は言いたいです。

百香里その8

 ということでsatoruさん、百香里は“依存体質の抜けなかった明里のなれの果て”というのが私の解釈です。ああ、「秒速」世界の明里が自立を果たして「祐一さん」と結ばれて本当に良かった。

百香里その9

 たとえ貴樹と結ばれずとも、伊藤宗一郎に弄ばれたり、相沢祥子一味にいじめ抜かれたり、朝からビール飲んだりする、そんな明里が「秒速」世界に現出しなかったことを幸運に思います。明里にはずっと穏やかな幸せの中で微笑んでいて欲しい。

穏やかな幸せの中で

 最後に、百香里は四国での再スタートにおいて依存体質から脱却できていればいいですね。その時、孝雄は「秒速」世界における明里にとっての貴樹の役割を果たしたと言って良いことになるでしょう。ただしその場合、自立した百香里にとってもはや孝雄は(色々甘酸っぱい想い出は伴うものの)「元生徒」でしかなく、頼るべき存在ではなくなっていることになりますが。

百香里その10

「言の葉の庭」考察(その3):現代にアナログ派は無理がある?

夏本番へ

 フライデーナイトにこんばんは。出張に行くと一週間が早く終わるような気がします。そういうことなら毎週出張に行きたいものですが、世の中そううまくはいかないのでした。どうやら台風は札幌に影響を与えないようで一安心ですが、大雨に見舞われた地域の皆様にはお見舞い申し上げます。代わりに来週は札幌もいよいよ最高気温30度らしいです。夏本番ということですね。

言の葉の庭考察その3
 
 さてそれでは公約(?)どおり「言の葉の庭」、最後の妄想です。

晴れの日の二人

4.新海誠はアナログ派?

百香里の手紙

 梅雨の時期の話という印象の強い本作ですが、実際には9月(百香里退職、孝雄フルボッコ、そして一番幸せな時間→罵倒と抱擁)から冬を経て、翌年2月に孝雄は百香里から手紙を貰っています。

ラストシーン

 この日付が2014年2月3日であることから、今年の節分の日であることがわかります。つまり「言の葉の庭」の物語は映画が公開された2013年がメインなわけですね。また節分に書いた手紙ということで、孝雄に届いたのはどんなに早くても4日以降、つまり立春以降になります。梅雨に始まった物語は、夏秋冬を経て早春に終わったことになります。

サンドイッチを食べる二人

 ところで我々とほぼ同じ時間に生きている孝雄と百香里ですが、なぜに今時連絡手段が手紙なんでしょうか。

 仮説1:二人ともデジタル機器に弱い

言ノ葉

 これは仮説を立てておいてなんですがいきなり破綻しています。百香里も孝雄も携帯を持っており、電話としてはもとより、アラームを鳴らして目覚まし時計代わりにもしています。これで電話もメールもできないということはありえないでしょう。

 仮説2:古文教師だから

リアル百香里

 それは理由にならないと思われるかも知れませんが、百香里はさすがに字が綺麗です。万葉集で謎かけするような人なので、平安時代のように手紙でのやりとりを好んだのかもしれません。短歌が書いてあったら返歌をしたためねば。貰う手紙は嬉しいけど、書く手紙は大変ですよね。百香里に手紙を好む理由があるとしても、孝雄のほうがどうでしょうか。案外メールで返事してたりして。

ほしのこえ

 この、瞬時に連絡が取れるメールとか電話といった手段をなぜか新海誠は廃していますね。「ほしのこえ」こそ美加子と昇はメールでやりとりをしていますが、光速の壁に隔てられて到着するのが数ヶ月~8.7年後という長さです。つまりメールが本来のメールとしての機能を果たさず、遙か彼方からの手紙のような存在になっています。むしろシリウス星系からメールしてちゃんと地球に届いていることの方が驚くべきことのような。

雲のむこう、約束の場所

 「雲のむこう、約束の場所」はヒロインの佐由理が原因不明の睡眠障害を発症して入院してしまって姿を消したので、メールも手紙も届けようがありません。

岩船の別れ

 そしておなじみ「秒速5センチメートル」でも、貴樹は携帯を持っているものの、メールは打っては消去するだけで、明里に送ることはありませんでした。電話番号も知っていたはず(岩船で別れ際に「手紙書くよ!電話も!」と言っていますから)ですが、二人のやりとりは手紙だけで、お互い相手の知らない時間を生きていく間にその間隔も間遠になっていき…(ぶわっ)。貴樹はなぜ電話をしなかったのか。おそらく明里の家の電話なのでかけるのに躊躇した可能性はありますね(ママンが出たりパパンが出たりする可能性があるので)。

メールを打つ貴樹

 ではメールアドレスは…ということなのですが、中学生時代には二人とも携帯は持っていませんでした(持っていたら「雪の一夜」は起こりえません)。高校生になって貴樹は携帯を持っていますが、明里は持っていたのでしょうか?「コスモナウト」でしっかり携帯が描写されている貴樹に対し、高校生時代がごく断片的にしか描かれていない明里が携帯を持っていたかどうかは不明です。

突っ伏す明里

 この突っ伏す明里の机には携帯はありませんが、そんなこと言えば貴樹だって机に携帯はありませんしね。明里が携帯を持っていなかった、あるいは少なくとも手紙が途絶えるまで持っていなかったとしたら、そもそも貴樹は明里にメールを送りようがなかったことになります。貴樹が送らずに消去していたメールは、送らないのではなく、遅れなかったのか?

突っ伏す貴樹

 もしお互いに携帯を持っていたとしたら、メールはもとより、誰はばかることなく電話もできます。電話でお互いの肉声を聞くと言うことは、会うほどではないにせよ、手紙よりは遥かに情報量が多い気がするのですが…長距離で電話料金がえらいことになるのでしょうか。

カラフルな二人

 おっとここは「秒速」考察の場ではありませんでした。いけませんねえ、「秒速病」患者は。要するに、新海誠作品では即座に相手に文章を送れるメールはほとんど活用されていないのですが、本作でも同様なようです。メールを使わないからこそ生まれる情緒というものがある、と言われれば確かにそうかも知れませんが、例えば90年代前半頃とか昭和時代とかなら説得力充分なのですが、現代を描いてそれは却って不自然な気がするのです。

ある意味絶頂シーン

 お互いすでに中高年とかならいざ知らず、10代と20代でメールを使わないとは。今ならLINEでやりとりしてたっておかしくありません。百百合のLINEのアカウントが乗っ取られて、詐欺メッセージにひっかかった孝雄がなけなしのアルバイト料をはたいてweb moneyの30000点のプリペイドカードを2枚買ってしまったりして。

詐欺撃退
詐欺撃退その2
詐欺撃退その3

 最近は皆さん撃退がお上手なようですね。こんなのに引っかかってはいけませんよ。

砕けたファンデーション

 それはさておき、新海誠はメールが絡んだ話を上手くつくることができなのかな…という感じがします。それならそれで、いっそ時代を昔に設定したらいいのにと思うのは私だけでしょうか。

百香里の生足

5.二人の将来は…

依存体質の百香里

 しっかりと抱き合った二人ですが、おそらくそのまま孝雄初体験…というような流れではなく、滂沱の涙が収まった後はお互い我に返って照れ照れでもじもじしていたんじゃないかと思われます。でもきっと連絡手段くらいは交換したんでしょうね。最低住所、普通なら電話番号とメアドも。

構ってちゃん百香里

 で、翌年2月の段階で百香里が再び教壇に復帰したことを知った孝雄、ラストで「いつかもっと、もっと遠くまで歩けるようになったら…会いに行こう」と言っています。それっていつ?

先生復帰の百香里

 仮説1:高校を卒業したら

孝雄有頂天

 タイミングとしては適当かなと思います。高校を卒業しないといつまでも生徒と教師の関係から脱却できそうにないし。しかし、高校卒業したって夢は叶っていません。「もっと遠くまで歩けるようになった」と言って良いかやや疑問ですね。

 仮説2:靴職人になったら

雨と百香里

 これは完全に「遠くまで歩けるようになった」と言って良いでしょう。しかし一体何年後なんでしょうか?新米靴職人ではなく、いっぱしになってからなんて考えたとしたら…。四国に向かった孝雄が見たものは、四人乗り(一人前籠、一人荷台、そしてもう一人はおぶって)で逞しく自転車を漕いでいる生活臭に満ち満ちた四十路の百香里だったりして。

笑顔の百香里

 そもそもこのお話、二人が結ばれるという物語なのでしょうか。再会はいいです。しかしそれは恋愛を伴うものなのか。二人が互いを必要としたのは、孝雄が言っているように「歩く練習が必要な二人」だったからこそであり、二人とも自立して歩けるようになったらもうお互いの存在は必要不可欠ではないでしょう。

足のサイズを測る

 年上の美女に憧れる孝雄は、まあ男なら一度は通過する道だとも思えますが、一回り年下の少年に救いを求める百香里はばりばりの依存体質のように見えます。私は百香里は本質的に依存体質の人だと思っていますが、心の傷が癒えたのなら、さすがにこんなに年下に依存することはないのではないかと思います。教師が生徒に依存してはモラルにも反するでしょうし。女性に頼られるのを好む男もたくさんいますから、年齢の近いそういう男性とお付き合いするのがいいでしょう。

足フェチには堪らない?

 ということで、二人はやっぱり結ばれることはないのではないかと思います。孝雄にとって百香里は甘酸っぱい青春の一ページでいいでしょう。下手すると百香里は依存体質よりもっとヤバイヤンデレ体質かもしれませんし。

ヤンデレの女の子に死ぬほど愛されて眠れない…

 ヤンデレの女教師に死ぬほど愛されて眠れない…なんてことになったら…

先生シリーズ

 ほら、ちゃんとありますよ。女教師シリーズも(笑)。

6.残された(どうでもいい)謎

① 孝雄のパパンはどうなった?

御苑の向こうにビル群

 孝雄の回想で、パパン、兄貴、孝雄が誕生日プレゼントに紫のパンプスを送っているシーンがあります。それなりに仲の良い家族のようでしたが、今兄貴は彼女とラブラブ(まあこれはいい)、そしてママンは恋人の元に奔っている……。あれ?パパンは?

 仮説1:死別した

二人の談笑

 不慮の事故ないし病気でパパンは返らぬ人に。一人残されたママンは恋愛体質で、パパンとの想い出だけに生きることはできず、男を求めて…

 仮説2:離婚した

梅雨の百香里

 パパンの浮気、ママンの浮気、ドメスティックバイオレンス、借金、ギャンブル、アル中…まあいろいろ原因はあるでしょうが、一番ありふれているっちゃありふれていますね。

 仮説3:失踪した

モルダーあなた疲れてるのよ

 某半島の工作員に拉致されたとか、宇宙人のアブダクションに遭遇したとか(モルダー、あなた疲れてるのよ)様々な理由からパパンが失踪し、その行方は皆目見当がつかないとか。この場合、失踪宣告→認定されないとママンは離婚・再婚できませんが、恋人と同棲する程度は問題ないでしょう。

百香里のための靴

 孝雄がパパンについて一切言及しないのでパパンの消息は不明ですが、公式HPによると離婚しているのが正解のようです。なにがあったんでしょうかね。いずれにせよ、パパンの不在が孝雄の靴職人になりたいという夢を困難なものにしている可能性があると思います。養育費ちゃんと払ってないなパパン?ママンの所得は十分なのかな?

② 松本と佐藤さんのなれそめは?

佐藤さん、松本、孝雄

 9月に入って久しぶりに友人に会った孝雄ですが、佐藤さんが声をかけ、二人を見た孝雄は「お前達焼けたな」とあきれたように言うわけです。三人が一年生ならどってことない光景なんですが…

松本

 実は佐藤さん、松本の彼女なのはいいとして、二年生なのだそうです。孝雄と松本は一年生。つまり松本は高校入学して半年も経たずに彼女を作ったのか?

佐藤さん

 それも可能性がないわけじゃありませんが、ここで注目されるのは、孝雄に声を掛けたのが佐藤さんであるということ。そして二人を見た孝雄が「お前達焼けたな」と言っていることです。

百香里の部屋に日が射して

 孝雄と松本は中学が同じだとかで旧知の間柄だったとして、友人が高校に入ってから付き合い始めた上級生の女の子を捕まえて「お前達」と言うでしょうか。孝雄はこの年代の少年にしてはわりと年長者に対する口の利き方を知っているようなので、友人の彼女であるとはいえ、さほど親しくない上級生にタメ口をきいたりしないのではないかと思われます。

百香里の部屋にて

 つまり佐藤さんも孝雄にとっては旧知の存在であったほうが自然です。例えば佐藤さんと孝雄はそもそも幼なじみで、友人の松本と付き合い出したとか。しかしそれにしては佐藤さんは「秋月君」と呼びかけています。幼なじみだったら「孝雄」とか「孝雄くん」とか言いそうなものです。ということは、三人とも同じ中学で、松本と佐藤さんは中学時代から交際しており、孝雄ともかなり親しくなっていたというあたりが適当なような気がします。

相沢祥子

 いずれにせよ孝雄と百香里の一回り差に較べれば一つ年上位全然問題じゃありませんぜ。この二人は結ばれても良いなと思います。ようし孝雄、お前は相沢祥子をゲットだぜ!

③ 兄貴は孝雄を見捨てたのか?

リーマン翔太

 ママンが家出をしたというのに孝雄が独りぼっちになるのもおかまいなしに家を出て彼女と同棲する兄貴の翔太。何となく職業は寿司職人のような気がしていたが、そういうことはなかったぜ!(きっと)

翔太の寿司

 ママンは大学職員だそうですが、家ではともかく、孝雄に生活費は送っているんだろうな?もしそういうこともしない毒親だとしたら、高校生の孝雄を置き去りに彼女と同棲する翔太も結構な鬼畜兄貴です。

疲れたモルダー

 孝雄は引っ越しの手伝いをしたり、特に翔太を恨んでいる様子もありませんから、多分問題ないんでしょうけど…。ちなみに翔太は孝雄の11才年上で26才。同棲する彼女の寺本梨花は24才だそうです。翔太を百香里とくっつけて、孝雄は兄の彼女の梨花にちょっかいを…。いかん、ちょっと18禁妄想をしすぎだ。うん、僕疲れているのかも知れないよ、スカリー。

翔太と彼女

 ちなみに寺本梨花のCV寺崎裕香は「秒速5センチメートル」「星を追う子ども」にも出演しているそうで、新海作品の常連ですが、「秒速」での役は「女生徒」というだけ。誰やねん!?

貴樹と先輩

 あれかな?貴樹に話しかける先輩の女生徒。親しげに話しかけていて何気に良い感じでしたが。

百香里の足元

 孝雄が百香里に惹かれたのが、あの年代特有の年上の女性への憧れではなく、単に年上好きという性癖ゆえだったとしたら、翔太は気をつけなければなりません。知らない間に弟に彼女がNTRですよ。12才差もものともしない孝雄なので、9才差は危険極まりありません。

桂言葉

 というところで「言の葉の庭」考察シリーズはおしまいです。半分妄想になってしまいましたがなにとぞご勘弁を。比較的明るい終わり方なので、「秒速病」はあっても「言の葉病」はないことでしょう。同じ「ことのは」でも「言葉病」ならあるでしょうけどね。

夢に出てきそうな言葉様

 そう…桂言葉……いい娘なんだけど……好きになった相手が悪すぎた……。

「言の葉の庭」考察(その2):百香里を追い込んだ真犯人は?(考察と言うより妄想です)

今日の地震

 こんばんは。北海道に来て初めて「緊急地震速報」を聞きました。驚きましたが、幸い札幌は大きな揺れはありませんでした。沖縄を襲う台風に較べたらなまらなんくるないさー。

英語版言の葉の庭

 それでは昨日の続きで「言の葉の庭」の考察を続けましょう。考察というより今日は妄想編です。

バイト中の孝雄

3.百香里の退職は仕組まれた「罠」?

息をするのも辛かった頃

 ちょっと謀略論のようですが、百香里への嫌がらせ→退職は何者かによって仕組まれた謀略ではないかというのが私の妄想です。もちろん「何者か」もその理由も併せて説明しましょう。

 まずは本編から判明する本編開始からラスト前の時点(6月~9月)での情報を整理しておきましょう。

嫌がらせを受けていた頃の百香里

① 古文教師の雪野百香里と体育教師の伊藤先生(名前は宗一郎)は以前交際していたが今では別れている。

② 百香里は生徒(現三年生)から執拗な嫌がらせを受けた。その規模はクラス全体から親まで巻き込んだものであった。

一瞬明るく

③ 百香里は②の精神的ストレスにより学校に通勤できなくなった。通勤しようとはしていたが、怖くてできず、新宿御苑で酒(ビール類)に逃げていた。 

④ 百香里は味覚障害も起こしており、アルコール類やチョコレートの味しかわからなくなっていた。これは朝からビールを飲んでいた理由の一つでもある模様。

コミック版言の葉の庭

⑤ 百香里は自身の身の振り方について“元カレ”の伊藤先生に相談しており、結果的に退職することになった。退職を決意した時点で味覚障害は解消しつつあった模様。

 まず②の生徒からの嫌がらせですが、これを主導していたのが相沢祥子一派であることは間違いありません。その名を聞き出した孝雄が祥子をひっぱたいてボコられていましたね。で、その理由は、孝雄の友人・松本やその彼女である佐藤さん(なんと孝雄や松本の先輩で二年生だそうです。松本はどういう経緯で佐藤さんと交際することになったのが非常に興味がありますが、それについてはここでは触れません)によれば、

雨の駅

a. 百香里は三年の女子達とずっともめていた(松本)

b. 百香里は悪くなく、“誰か”の彼氏”が百香里に惚れちゃったとかで、逆恨みしてクラス全員でさんざん嫌がらせをして、親にまででたらめな噂をばらまいた(佐藤さん)

駅で俯く百香里

というものであったそうです。“誰か”が相沢祥子であることはほぼ間違いないでしょう。また彼女は不良グループの中心人物で、その影響力の強さで彼女のクラスでもボス的存在だったようです。クラス全員が彼女の主張を信じたとは思えませんが、相沢一派には逆らえなかったのでしょう。

 さらに佐藤さんは

結構汚部屋?

c. 伊藤先生とかに警察に届け出るべきと何度も言ったが、学校側は大事にしたくなかった(ので動かなかった)

と言っています。これを裏付けるように、百香里のモノローグでも“息をするのも辛かったあの頃、あなたは周りの声ばかりを聞いていて、私を信じてはくれなかった”と言っていますので、学校側は百香里のために積極的に動かなかったことは間違いないでしょう。

佐藤さん

 この際、モノローグの背景に雪景色や冬服の百香里が描かれているので、おそらく嫌がらせは1~3月頃、つまり相沢祥子らが2年生の時点で始まったのだと推測されます。そして松本のセリフによれば孝雄とクラスの違う松本は百香里の授業を受けたことがあるらしい(そうでなければ「雪野ちゃん、優しすぎるんだ」といった発言はできないでしょう)ので、百香里が学校に通勤できなくなったのは、孝雄らが入学してからだということになります。年度をまたいでまで嫌がらせとはどれだけしつこいんだ相沢祥子。

 ここで①に戻りますが、百香里と伊藤先生が別れたのはいつの時点なのでしょうか。シンプルに考えると、相沢一派の百香里への嫌がらせについて、伊藤先生らが真摯に対応してくれなかったことへの不信とか不満が契機にったのではないかと思われますが、私はそれ以前に二人の関係は切れていたのではないかと思われます。

タバコをふかしながら

 というか、百香里としては嫌がらせ事件を契機に伊藤先生と別れたつもりだと思われますが、伊藤先生からするとそれ以前から百香里との関係を清算したかったのではないかと。百香里と電話する伊藤先生は、狭いベランダでタバコを吹かしながら話しています。これが誠実ではない証し…といってしまえば喫煙者から誤解だと言われるかも知れません。

ベランダで話す伊藤先生

 決定的なのはこれです。おわかりいただけるだろうか…

おわかりいただけるだろうか…

 レースのカーテン越しに、食器を置いているかのような動きをする影は明らかに女性です。これは一体誰なのでしょうか?そりゃあ伊藤先生の「母」「姉」「妹」などとする説なども可能ですが、一番可能性が高いのは「妻」ではないでしょうか。

 百香里と別れてから交際を始めた「今カノ」の可能性もありますが、別れて数ヶ月で新しい彼女を見つけて同棲状態にまで持ち込んでいるというのは考えにくいような気がします。

おっさんぽい伊藤先生

 そしてこの伊藤先生、こうして百香里との対比で見るとわかりやすいのですが、かなりおっさん風です。体育教師なので体型は崩れてませんが、ヒゲがおっさんの雰囲気を寄り強調しているような。

 さて、それでは妄想タイムですよ。皆さん付いて来れますかな?

孝雄

① 伊藤先生は妻帯者だったが、新卒で入ってきた百香里に惚れて口説いた。右も左もわからない新人教師だった百香里からすると頼りがいのある先輩教師に映ったし、伊藤先生からするとその初々しさがまた…げへへへへ。

② 伊藤先生が妻帯者であることは流石に百香里も知るところとなったでしょう。しかし伊藤先生は「妻との関係は崩壊している」「近い将来別れるつもりだ」とかなんとか言いくるめて百香里をモノにしてしまいます。あるいは妻と離婚して百香里と再婚という気持ちは本当にあったかも知れません。

百香里

③ しかし交際してしばらくすると、百香里の「依存体質」が重くなってきます。百香里は年上・年下を問わず男に依存するタイプなのではないかと思われます。「察してちゃん」であることは、事実上初対面の孝雄に万葉集の短歌を謎かけのように放ってみせたりしているところに顕れています。「構ってちゃん」であることは、自分の学校の生徒であることがわかっていながら何度も同じ場所に足を運んでいることから明らかではないかと。

昔の想い出

④ こうしていつ奥さんと別れるのか、いつになったら自分(百香里)と結婚してくれるのかと執拗に迫ってくる百香里は伊藤先生にとって悩みの種となっていきます。なまじ遊び慣れていない真面目な若い子を相手にしたのがいけませんでした。下手をすると伊藤先生は初体験の相手かも知れません。処女を貰ったこと自体は嬉しかったかも知れませんが、その代償は…

古文の授業中

⑤ 当然二人の関係は内密のものでした。おそらく佐藤さん他生徒達は気付いていなかったでしょう。しかしこんな状況が続けば周囲に発覚するのは時間の問題です。百香里も伊藤先生が本当は奥さんと離婚するつもりはないことに薄々気がつき始めているかも知れません。例え同じ学校の教師同士の恋愛でも、きちんと結婚という形でゴールインできれれば問題はないでしょう。しかし破局はよろしくありませんし、ましてや不倫となると、伊藤先生もただでは済みません。不倫の責任は二人にあるとはいえ、若い子を誘惑した以上伊藤先生の罪の方が重いと誰もが考えるでしょう。

藤棚の二人

⑥ といって今さら伊藤先生の方から百香里に「別れてくれ」とは言い難いです。散々弄んでおいて今さらって話ですよ。どんな修羅場が巻き起こるか。プライベートの場でならまだしも、学校で揉めたら極めて危険です。

⑦ つまり「円満」に別れようとするならば、百香里の方から別れを切り出す形にしなければならない。そうすれば「済まない、僕が妻と別れられなかったばかりに君に辛い思いをさせた…」的なクサいセリフで幕を引けます。

相沢一派

⑧ 伊藤先生は、佐藤さんの発言からして、生活指導とか風紀担当だったのではないかと思われます。少なくとも学校内において相当発言力が強く、影響力がある教師だと思われていたはずです。そしてその影響力は生徒にも及んでいたのです。

⑨ 伊藤先生は相沢一派とも繋がりがありました。校則違反や警察沙汰を目こぼししてやったかして懐柔していたのでしょう。あるいは相沢祥子と肉体関係があった可能性もあるのでは。祥子は明らかにビッチなのでそれくらい男性遍歴という勲章の一つくらいにしか思わなかったのでは。直接祥子と繋がりがなくても、当時祥子の彼氏だった男子生徒と繋がりがあれば、「オレ、雪野ちゃん好きだなあ」と言わせて祥子をキレさせることは可能だったでしょう。

おこ6段変形

⑩ 男の一人や二人、男出入りの激しそうな祥子にとっては本来大した問題ではないのではないかと思いますが、自分が振ったり奪ったりするのは当然でも、振られたり奪われたりは我慢できない女王様体質が祥子にはあるのではないかと思われます。身体はビッチでもプライドは女王の祥子、おのれあのBBA(百香里)許せんと勝手に激おこぷんぷん丸ないしげきオコスティックファイナリアリティぷんぷんドリームとなって百香里攻撃を開始します。祥子が本気で百香里を嫌っていたことは、百香里が退職することになったと言う孝雄に対し「関係ないんだけど!あんな淫乱BBA!!」と吐き捨てるように言っていることからはっきりしています。また少なくとも相沢一派も祥子の主張を支持していた模様です。つまり祥子と愉快な仲間達は踊ったのではなく、踊らされたのです。

百香里が孝雄に贈った本

⑪ 当然伊藤先生は百香里から相談を受けたことでしょうが、そこは生徒の人権とか学校の体面とか言いながらのらりくらりと躱しまくります。またその一方で学校側にも同様の主張を強く行って積極的に百香里を救うようなことをさせない段取りをしていたことでしょう。そう、“あなたは周りの声ばかりを聞いていて、私を信じてはくれなかった”という百香里のモノローグは、彼女が全然気付いていないことを示しています。伊藤先生は信じてくれなかったのではなく、わざと信じないふりをしていたのです。

百香里の手紙

⑫ 百香里は精神的に追い詰められ、また全く頼りにならない伊藤先生にも愛想を尽かして別れを切り出します。残念そうに、しかしあっさりとそれを了承する伊藤先生。「我々教師は生徒のことを第一に考えて行動しなければならないんだ。そのことをわかって欲しい。だが百香里、別れたとしても今後の君の身の振りについてはとても心配している。可能な限り力になるので相談して欲しい」位のことは言ったでしょう。

⑬ そして依存体質であるが故についつい伊藤先生に相談してしまう百香里。もちろん伊藤先生は、「退職して故郷(四国)に帰った方がいい」と誘導。その辺りは本編中の「思い切って仕事を辞めることにして良かったじゃないか」といった発言からも伺えます。

四国で教壇に立つ百香里

⑭ 9月に退職した百香里は、翌年の春(新年度)を待たずにもう四国で教壇に立っています。臨時職員とか非常勤講師とかの可能性もありますが、こんなに早く教壇に復帰できたのは、彼女に救いの手をさしのべなかった学校側(=伊藤先生)のせめてもの手向けだったのかも知れません。全く未知の場所で教師を続けている分にはなんの影響もない訳ですし、追い詰めすぎることは却って危険です。自殺でもされようものなら、事件が明るみになってしまいかねません。

真犯人・伊藤宗一郎

結論:そういうわけで、百香里の退職に至る悪質な嫌がらせ事件の黒幕である真犯人は、伊藤先生、いや伊藤宗一郎、お前だ!!……一番の味方が実は真の敵って、ダン・ブラウンの小説みたいですね。

百香里のための靴

 この妄想を聞いたら孝雄はきっと伊藤宗一郎に殴りかかるでしょうね。その時にはあっさり孝雄を叩き伏せておいて、倒れた孝雄の耳元で、「くっくっく…お前も味わってみろよ、百香里をよぉ。いい味だぜぇ~全部オレが調教してやったからな!」とか、思いっきりゲスいセリフを吐いて欲しいです。ゲスいのは私か(笑)

藤棚の下の百香里

 なお、或いはちょっとギャクぽい推測ですが、伊藤先生が百香里を選ばなかった理由は、百香里が「メシマズ嫁」の資質充分だったからかも知れません。味覚障害は差し引いてもかなり下手そうでしたし。それに引き替え伊藤先生の妻はルックスはさておき料理上手だったのかも知れません。

もうちっとだけ続くんじゃ

 いや、ホントあとちょっとだけですから。

「言の葉の庭」考察(その1):「秒速5センチメートル」との違い

七夕
 
 こんばんは。本日は七夕ですね。札幌では雨こそ降っていませんが、薄雲がかかって星は見えにくいです。月が朧月になっていました。この程度なら逢瀬には問題ないのでしょうかね?

ビバホーム豊平店

 昨日トイレの電球が切れたのでホームセンターに行って買ってきたのですが、あそこは実に危険な場所ですね。目的のものが見つかった後もついつい色んな棚を見てしまい、また色々と欲しくなってしまうという。電球だけなら400円もしなかったのに、何だかんだと5000円近く使ってしまいましたよ。それにしてもホームセンターはおっさんが買い物していても様になるので気楽でいいですね。

言の葉の庭

 本日は「言の葉の庭」の考察(?)を綴りたいと思います。5月26日に初見の感想を書いています(http://nocturnetsukubane.blog.fc2.com/blog-entry-721.html)が、昨日再見しましたので。なおネタバレを含みますのでまだ未見の方は「言の葉の庭」を視聴してから読まれることを強く推奨します。できれば「秒速5センチメートル」他の新海誠作品も見ていただきたいです。なお、「秒速」に較べれば相当短いです。

言の葉の庭は新宿御苑

1.はじめに

雨上がりの東京

 「星を追う子ども」はなお未見なのです、「ほしのこえ」「雲のむこう、約束の場所」そして「秒速5センチメートル」との比較をしてみたいと思います。「星を追う子ども」はジュブナイルということもあり、他の作品とはかなり毛色が違うとのことですが、キャッチコピーが「少年は憧れ、少女は旅立つ」、「それは、“さよなら”を言うための旅。」とのことなので、他作品と共通項がないわけではないと思われますので、いずれ機会を捉えて見たいと思っています。

お茶も飲んでる百香里さん

 「言の葉の庭」は公開3日間で興収3000万円というヒットし、「秒速5センチメートル」の観客動員数を10日間で突破し、「星を追う子ども」の動員数も14日間で更新するという、新海作品最大のヒットを記録しています。トータル12万人以上を動員し、最終興収は推定1億5000万円だそうです。

雪野ちゃん

 カナダ・モントリオールで開催されたファンタジア映画祭で、アニメーション作品における業績に対して贈られる今敏賞を受賞(「ベルセルク 黄金時代篇III 降臨」と共に)、劇場アニメーション部門の観客賞も受賞したほか、第18回アニメーション神戸賞で作品賞・劇場部門受賞、iTunes Storeが「iTunes Best of 2013“今年のベストアニメーション”」に選出、さらに本年4月にはドイツ・シュトゥットガルト国際アニメーション映画祭「ITFS」長編映画部門で最優秀賞を受賞するなど、新海作品としては興業的にも作品評価的にも最も栄光に満ち満ちた作品といえましょう。

美しい雨の描写

 ただし個人的には「秒速病」に罹ることになった「秒速5センチメートル」ほどのインパクトは受けませんでした。「秒速病」はあっても「言の葉病」はないのではないかと思います。 

主演二人

2.「秒速5センチメートル」との違い

二人の出会い

① ヒロインとの年の差

最初の距離

 新海作品としては初の「年上の女」雪野百香里(ゆかり)がヒロインとして登場します。しかも年の差なんと12才。「ほしのこえ」「雲のむこう、約束の場所」「秒速5センチメートル」のヒロインが同級生であったことと較べて大きな違いです。光速度でも超えられない圧倒的な距離(「ほしのこえ」)、謎の奇病による断絶(「雲のむこう、約束の場所」)、「距離と時間がゆっくりと、しかし不可逆的に変質させていく“二人の想い”(「秒速5センチメートル」)に対して、「言の葉の庭」では年齢差こそが巨大な壁として二人の前にそそり立っているといえましょう。加えて言えば二人の立場(教師と生徒)もかなり厚い壁となるでしょうね。

近づく距離

 ところで、「ほしのこえ」の美加子はさておき、「雲のむこう、約束の場所」の佐由理、「秒速5センチメートル」の明里、そして本作の百香里と、名前に共通点がありますね。ひらがなにして三文字であることと、「り」で終わるところです。「百香里」で「ゆかり」ってちょっと凝ってますけど。この三人、「さゆり、あかり、ゆかり」ですから三姉妹とか三つ子とかでもおかしくないネーミングだと思います。新海誠は「~り」で終わる名前がお好みなのでしょうか。お隣同士の幼なじみなのに一緒に帰ってくれない「しおり」なんかもいかがでしょうか。

傘を差す百香里

② 主人公の特異な志向

孝雄が魅せられた靴

 「言の葉の庭」の主人公秋月孝雄は15才の高校一年生にして靴職人になるという確固たる意思を持っています。そのために専門学校への進学を目指しており、アルバイトにいそしんでいます。またすでに靴の自作も行っています。他作品の主人公は本来特に自分の将来に強い志望がなかったものが、ヒロインとの関わりによって変化していくという図式ですが、「言の葉の庭では」ヒロインに出会う前に将来の夢が存在しています。

帰ってきたママン

 ただ…なぜ孝雄がそんなに強く将来の夢を持っているのか謎に感じるところがあります。一応母の誕生日に父や兄と一緒にプレゼントしたパンプスの美しさに魅せられたという描写はあるのですが、それで15才にして他に道はないように思えるほどに?と思ってしまうのです。もしや孝雄はマザコンなのか。それにしては母の家出にさほどのショックは受けていないような気もしますが……。あれですか、年上の百香里に「母の面影」を見ているというやつですか。

孝雄の兄と恋人

 余談ですが兄の恋人さん、なんとなく明里に雰囲気似ているような気が。この兄さんなら明里を預けてもいいかな?…かな?

孝雄のスケッチ

 従来の、ヒロインとの関わりのなかで変わっていく主人公というものを踏襲するのであれば、靴職人になりたいという願望はありながらも、自分自身「夢物語」と思っていたところに「うまく歩くことができなくなった」百香里が現れ、彼女の苦しみを知る中で「彼女が歩けるような靴を作りたい」という確固たる意思が生まれるという形のほうが良かったような気がします。

ラストシーンの激情

 また、ラスト前に孝雄は激情のままに百香里を罵るのですが、その中で「あんたが教師だと知っていたら、俺は靴のことなんかしゃべらなかった。どうせできっこない、叶いっこないって思われるから!」と言っています。この発言は正直「?」でした。だって孝雄は冒頭から一貫して靴職人になることを目指しているという描写が続いており、またそのことは孝雄の兄も知っているのですが、それを笑ったりしている様子はないのですから。もう靴職人になることは孝雄本人の中ではルートとして確定しているのかと思っていましたよ。

止まらない涙

 確かに他人に靴職人になるのが夢だと話したのは百香里が初めてだというモノローグはありましたが、靴職人になるという夢が家族以外には知られたくない秘密であり、孝雄自身も実現することは困難だと考えているのだとしたら、ラストに至る前にもう少しそういう描写が必要だったのではないでしょうか。そもそも靴職人になることって、そんなに非現実的な夢なんでしょうかね。

孝雄の友人の彼女

 むしろそこまで将来の夢が決まっているのなら、やる気もない高校なんかやめてバイトと靴作りに専念したっていいのではないでしょうか。今時高卒くらいは…とは私も思いますが、高校に来て「こんなことしている場合じゃない」と感じているくらいなら、世間体とか親の希望とかそういうしがらみはばっさりぶった切って、自分の道を進めばいいじゃなかとも思います。ただ、ちょっと調べただけですが、靴職人の専門学校は年齢制限はないものの高卒が必要条件となっているようなの
で、孝雄も仕方なく高校に通っているのかもしれません。

緑の風景

③ ヒロインの異色性

百香里の足元

 出会ってすぐに大人の女性として孝雄を魅了する雪野百香里。あの頃の男子は年上の女性に弱いですからね。百香里の儚げな雰囲気とか、ガキの分際でも守って上げたいなんて思ってしまうことでしょう。そんな百香里のCVは大人気声優花澤香菜で、彼女として珍しく年上の役を演じている訳ですが、その声も孝雄を惹きつける要素となっている気がします。

百香里の着信履歴

 それにしても百香里は従来の新海作品のヒロインとは一線を画した異色のヒロインです。その異色性を列挙すると、

百香里の部屋の空き缶

 a.朝からビール飲んでる。酒飲むヒロインは初めてだ…ってまあこれは未成年ばかりでしたからね。厳密には「金麦はビールじゃない」とも言えますが、彼女の部屋には他にもモルツやプレミアムモルツらしい缶が見られます。

伊藤先生と百香里

 b.元カレがいて、しかも同僚教師だった。元カレである伊藤先生は体育教師かな。美人だし27才なんだから元カレの一人や二人いたって驚きませんが、相手が同僚教師でしかも破局というのはちょっといただけませんね。私、実は伊藤先生についてはちょっとした妄想を抱いているのですが…それについては後日詳しく。

別れを惜しむ女生徒達

 c.生徒から壮絶ないじめに遭って登校できなくなった。教師に「いじめ」はおかしいですかね。でも事実上生徒の登校拒否と同様の症状になっています。その影響で味覚障害も併発したらしく、ビールとチョコレートの味しかわからなくなったとか言っています。明里も小学生時代はちょっとしたいじめに遭っていたし、岩船に転校してから電車通学している理由はいじめのせいではないかという仮説も立てたりしています(中学校なんだから普通徒歩や自転車で通えるくらいの距離にあるだろうということで)が、直接描いている訳ではありませんが、こんな壮絶ないじめないし嫌がらせを受けるなんて可哀想としか言いようがありません。これについてもワタクシ、ちょっとした妄想を抱いているのすが、やはり後日後日。

チョコいっぱい

 教師というのも大変ストレスフルな職業のようで、精神を病む教師も毎年多数発生しているようです。教師によって精神を病む生徒も結構いるでしょうけどね。学校を去る際の描写を見ると結構生徒に人気があった様子です。孝雄の友人によれば百香里は「優しすぎる」のだそうですけど、なぜか彼女を慕ってくるのが大半女生徒であるというのはどういうことなのでしょうか。

ノースリーブの百香里

 27才といえば(特に孝雄から見れば)大人の女性。そこに花澤香菜の美しく澄んだ儚げな声を当てている点で、孝雄視点でのミステリアスな謎の美女という側面だけでなく、視聴者からするとは大人になりきれていない女性、あるいはある種の甘さが残る女性であるという味方ができるような気がします。本人も自覚しているようですが…

百香里とすれ違う孝雄

 そういえば「秒速5センチメートル」の踏切のシーンを彷彿とさせるシーンがありました。学校の職員室前の廊下ですれ違ってお互いに気付く孝雄と百香里。「秒速」なら小田急線が疾走して姿を隠してしまうのですが、さすがに学校では。だいたい孝雄はともかく、百香里は孝雄が自分が勤務する学校の生徒だと知っていたのだからそんなに驚くところかと言いたいですね。

孝雄に気付いた百香里

 では次回、私の妄想について語りましょう。

 

言の葉の庭:"愛"よりも昔、"孤悲(こい)"のものがたり

きたえーる
 
 はいこんばんは。今日の札幌はとても寒くてびっくりです。コートを引っ張り出した人もいたりして。私は夏物のスーツのままで

きかぬのだ

 と、ラオウ兄さんのごとく涙を流しながら通勤しましたとさ。はっきり言って北海道の人の方が薄ら寒さに弱いと思います。そんなことでは道産子は北関東の冬を越せんぜよ。窓は二重じゃないし、どこからともなく隙間風が入ってくるんですよ。

スズメバチ襲来

 しかし私のオフィスは南向きなので日が射すと結構暑いです。窓を開ければいいのですが、実は先週二回もスズメバチが入ってきてパニックになったのでもう開けられません。ミツバチ程度ならいいけどスズメバチはいかんですよ。ハチアブマグナムジェットでも装備しようかと本気で思いましたが、あれは屋外で使用するものらしいので、オフィスでの使用はいかがなものか。

ハチアブマグナムジェット

 本日「言の葉の庭」を見ました。詳しい感想はまた後日述べる(複数回見たいので)として、今回は初見の印象などをひとくさり。

言の葉の庭

 「言の葉の庭」は2013年公開の新海誠6作目のアニメ映画です。4作目の「秒速5センチメートル」が2007年作品なので6年後の作品ということになり、間に「星を追う子ども」(2011年)がありますが、これはジュブナイル作品なので、「秒速」の正統後継者は「言の葉の庭」ということになるのではないかと。

孝雄

 主演は入野自由と花澤香菜。バリバリの人気声優で固めてきました。「秒速」は俳優とかマイナーな女優(失礼)を起用していましたが、「星を追う子ども」以降は声優起用路線のようです。個人的には結構なことだと思います。

入野自由

 入野自由は「星を追う子ども」に出演しているほか、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の宿海仁太(じんたん)とか、最近では「神々の悪戯」のアポロンを演じています。純粋な少年や高校生役を演じることが多いということで、「言の葉の庭」でも15歳の高校生一年生・秋月孝雄を演じています。

花澤香菜

 花澤香菜はヒロインの雪野百香里(ゆかり)。昼間から金麦を飲んでいる檀れいもどきの27歳独身の謎の女性です。花澤香菜は変幻自在に声を変えて実に色々な役をゲットしていますが、実年齢より上のキャラを演じるのは珍しいような気がします。「超絶癒しボイス」とも言われるはなざーさんですが、キャラによってとても好きな声とそうでもない声を出す場合があるのですが、雪野百香里は言い声の方のはなざーさんなので一安心。当初25歳以上という条件でキャスティングを行ったそうですが、当時23歳の花澤香菜が演じることになりました。

金麦飲んでる雪野

 高一にしてなぜか靴職人になるという確固たる夢を持つ孝雄は、雨の日は一限をサボって新宿御苑らしい庭園で靴のデザインを考えていますが、ある日昼間からビール(金麦なので正確には発泡酒ですが)を飲んでいる雪野と出会います。どこかで出会った気がして問いかける孝雄ですが、雪野は否定します。これは嘘だったことが後に判明しますが、完璧うろ覚えな孝雄もいけない。

やはり新宿御苑

 一回り年齢の違う雪野はミステリアスな大人の女性として孝雄の目に映ります。しかも謎の和歌を残して去って行くし。この時の歌が万葉集の柿本人麻呂の「雷神(なるかみ)の 少し響(とよ)みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ」(雷が鳴って 雲が広がり 雨が降ってくれたなら、帰ろうとしているあなたをきっと引き止められるのに)です。

緑の中の語らい

 靴のことばかり考えていてろくに勉強していない孝雄にはこの時は意味がさっぱりわかりませんでした。

うーん…汚部屋?

 梅雨入りした東京を舞台に全編ほぼ雨ばかりという情景の中で二人の交流が続いていきます。緑滴るような風景の中の雨が実に美しいです。エメラルドで出来た眼鏡をかけて眺めたらこういう風に見えるのかな、なんて。実際には梅雨時の東京なんて湿気で蒸し暑くてたまらんですけどね。見てるだけなら何とも美しい。

言の葉の庭その2
 
 その後孝雄は雪野の歌の意味を知り、その返歌「「雷神(なるかみ)の 少し響(とよ)みて 降らずとも 我は留らむ 妹し留めば」 (雷が鳴らなくても 雨が降らなくても あなたが引き止めてくれたなら 私はここにいるよ)を口にします。

雪野さん

 二つの和歌はどうみても相聞歌なのですが、作者はどちらも柿本人麻呂らしい。人麻呂さん一人で何やってんすか。それとも前の歌はガールフレンドから貰ったのかな。

足のサイズを測る

 孝雄が雪野の靴を作りたいと寸法を測るシーン、なんとなくコケティッシュでした。新海作品としては異例なような。まあごくほのかになんですけどね。

孝雄の母

 それにしても孝雄が靴職人に早くなりたくて、バイト三昧というのもなんだかなあ。15歳にして就職後の貴樹みたいになっている理由はなんなんでしょう。家庭環境のせいか?ちょっとしか出てこないけど、孝雄の母は「花咲くいろは」の皐月に似ているような気がしますな。ただし緒花と違っていい兄貴がいるので救われていると思うのですが。兄貴の彼女をNTRだ孝雄!(節子それ新海アニメと違う!)

孝雄の兄と彼女さん

 孝雄の雪野の正体を知るくだりは、ちょっとあざとい気がします。なんでもかんでも「秒速」と比較してはいかんのでしょうが、孝雄が「考えなしに行動する熱血高校生でーす。これが若さだ!」と観客に目一杯自己主張しているような。

小松未可子

 ちなみに悪役のビッチはかの美人声優小松未可子だ。「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」の戸塚彩加ですよ。

戸塚彩加

 どうみても♀なのに実は♂というあの。まあ孝雄が夜神月みたいに周到に謀略をめぐらすようなヤツでは感情移入できなくなるでしょうが。

小松未可子が演じるビッチ

 ちなみにこのビッチ(相沢某女)、確かに憎らしいヤツなんですが、頬をひっぱたいたくらいでどうなるものでもないでしょう。孝雄が気は済んだのかもしれないけど、それだけ。

孝雄が作った雪野の靴
雪野号泣

 このラストは…どんなんでしょうかね。秒速と違って二人が結ばれる未来に含みを持たせているような気がしますが、どうなんだろう?雪野がずっと27歳ならいいんですけどね。孝雄が27歳になったら雪野は39歳ですよ。

雪野が読んでいた本

 国語の教師だから当然かも知れないけど、雪野も本を読んでいます。夏目漱石の「行人」ですね。新海誠は読書好きな女性が好きなのでしょうか。

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