群衆リドル Yの悲劇'93:ラノベにするべきな本格推理

大鳳キター!!

 装甲空母・大鳳さんキタ━━━(゚∀゚).━━━!!!一昨日のことですが、資源に余裕があったので大型艦建造を回したんですよ。正空母、軽空母、あきつ丸、まるゆ以外をほぼ確実に弾くレシピとしてはボーキサイトの消費量が今のところ最低のレシピとされる、“燃料4000・弾薬2000・鋼材5000・ボーキ5200・開発資材20”で。前回これで回したら軽空母瑞穂が来たんです。大鳳狙いだったのでハズレではあったんですが、まだ持ってなかったので結果オーライでしたが、やはり本命中の本命が来ると興奮しますね。

胸が飛行甲板の大鳳さん 龍驤

 来ない人には何年プレイしてても来ないそうなんで、プレイ歴1年未満の新米提督のところに来てくれて光栄の至りです。空母・軽空母は中破で艦載機を発艦させられなくなって海上の置物と化するんですが、装甲空母は中破でも艦載機を飛ばせるんですよね。しかもCVはときめきの能登さんだし。それにしても大鳳、艦娘の姿で胸部が飛行甲板状態なのははぜ。赤城さんとか加賀さんとかは立派なモノをお持ちなのに。軽空母でやはり胸が俎板の龍驤が親近感を持つかも知れないですが、龍驤はかなりコンプレックスを持っている様子なのに対し、大鳳は全然気にしていないようです。

大鳳と龍驤 

 本日は古野まほろの「群衆リドル Yの悲劇'93」を紹介しましょう。古野まほろの著作は初めて読みました。実は覆面作家で本名や性別・年齢・画像などは非公開です。11月25日生まれで東京大学法学部を卒業し、国家公務員Ⅰ種試験に合格して警察庁に入庁。警察大学校主任教授を最後に退官しました。フランスのリヨン第三大学法学部の専攻修士課程を修了しているそうです。フランス留学が警察庁入庁後かどうかは不明ですが、何となく官費で留学したんじゃないかという気が。

群衆リドル 

 なおⅠ種試験というのは1984年度から2011年度まで行われており、現在は総合職試験と名前を変えております。ここから、古野まほろは2007年に作家デビューしているので、1985年~2012年度警察庁入庁者の誰かということになりますし、作家デビューが2007年なのでそれ以前に辞職しているものと思われます。警部が准教授(助教授)、警視が教授になるようなので、主任教授ということはそれより上の警視正クラスでしょうかね。現在はともかく、Ⅰ種で入庁した女性警察官で中途退官した人なんて、調べれば身バレしてしまいそうなので、古野まほろは男性で決まりでしょう。そしておそらく90年代の入庁者なんじゃないかと。こんなところで探偵しなくてもいいのですが、覆面作家なんていうとつい(笑)。

天帝のはしたなき果実 

 2007年1月、「天帝のはしたなき果実」で講談社の第35回メフィスト賞を受賞し小説家デビューしました。本格推理の巨匠である綾辻行人、有栖川有栖の両氏に師事したそうで、デビューからおよそ10年で長編作品を20作品以上、短編集も含めて25作品以上と、非常にハイペースな刊行が続いています。

群衆リドル単行本 

 「群衆リドル Yの悲劇'93」は2010年12月16日に光文社から刊行され、2013年8月に文庫版が光文社文庫から刊行されました。本書のあとがきによれば、デビューは講談社にも関わらず、本書以前に講談社から刊行された9冊は絶版になっていたようです。既に「恩讐の彼方」だそうではっきりした理由は記されていませんが、“弱いものいじめが罷り通る世界から距離を置きたい”“この世でもっとも醜悪なのは、強者が弱者をいたぶることだ”などの表現がなんとはなしの理由示唆になっているような。既に両者の関係は修復されたようですが…

 「群衆リドル Yの悲劇 '93」は、2012年の本格ミステリ・ベスト10で9位に入っています。“イエユカシリーズ”の第一作で、古野まほろの代表作である「天帝シリーズ」と共通の世界観を有しているそうですが、「天帝シリーズ」は未読なのでなんとも言い難いです。それでは例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

覆面作家古野まほろ 

 浪人生の渡辺夕佳の元に届いた、壮麗な西洋館への招待状。恋人で天才ピアニストの、イエ先輩こと八重洲家康と訪れた『夢路邸』には、謎を秘めた招待客が集まっていた。そこに突如現れた能面の鬼女が、彼らの過去の罪を告発し、連続殺人の幕が切って落とされる。孤立した館に渦巻く恐怖と疑心。夕佳とイエ先輩は、『マイ・フェア・レイディ』の殺意に立ちむかうことができるか!?

月光ゲーム 

 副題にある「Yの悲劇」からはエラリー・クイーンの超有名推理小説が連想されるのですが、むしろ正体不明の人物からの罪の告発などの形式はアガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」に近いです。孤立した洋館で繰り広げられる連続殺人事件。しかも様々な形の密室状態で起きるので、犯人もさることながら、それぞれの事件のトリックも気になるところです。

 クイーンの「Yの悲劇」自体より、師と仰ぐ有栖川有栖の「月光ゲーム Yの悲劇'88」の方をオマージュしているようです。舞台も同じ矢吹山で、陸の孤島で次々と起きる連続殺人という展開も同じです。「月光ゲーム Yの悲劇'88」は有栖川有栖のデビュー長編で、「群衆リドル Yの悲劇'93」は講談社と揉めた後の古野まほろの再デビュー長編といった様相を呈しているあたりも類似しているような。

クセがスゴイ!! 

 文庫版の表紙を見ると、ラノベ風のイラストになっていることが判ると思いますが、正直最初からラノベ・ミステリーとして打ち出した方が良かった気がします。なぜかと言うと…千鳥風に言えば「クセがスゴイんじゃ!!」なので。おっさん読者としては、トリックとか犯人がどうとかいう前に、本書の強烈なクセの強さに慣れられるかどうかが問題になります。

 主人公にして語り手は浪人生の渡辺夕佳。妙な招待に乗っていないで勉強しろよと思いますが、恋人で天才ピアニストの八重洲家康と一緒ならという条件で招待に応じます。この八重洲家康が名探偵役になるのですが、とにかくクセがスゴイ。17歳でショパン国際ピアノコンクールに参加し、優勝確実とされながらなぜか直前に出場辞退し、表舞台から姿を消し、現在は東大生(正確には東京帝大生)になっています。夕佳は家康と同じ大学に行きたくて浪人しているという。

クセがすごいその2 

 それだけなら天才っているのねで済むんですが、この家康、ルックスは超二枚目なんだそうですが、とにかく性格が悪い。しかもコミュ障の気があり、なぜかむやみに上から目線でガキの分際で人をアゴで使う気マンマンという。演奏が素晴らしいというのならCD位は買ってもいいですが、個人的お付き合いは御免被りたいタイプです。画家でいえばパブロ・ピカソ的な?

 洋館到着から登場人物全員集合、そして最初で最後の晩餐(全員揃って、という意味で)までの序盤のまあ読みにくいこと。途中で読むのを止めようかと思ったほどですが、まあ「能面の鬼女」出現以降は、気持ちがいいほど連続的に人が殺されていくので一気に読めます。ネタばれは控えますが、「そして誰もいなくなった」や「かまいたちの夜」に見られるトリックは使われていません。

クセがすごいその3
 
 それにしても八重洲家康…。天才ピアニストはいいです。凄まじい絶対音感を持っているというのも結構。東大生になれるくらいだから頭もよろしいのでしょう。でも東大生がすべからく探偵の素質を持っている訳ではないので、彼がここまで鮮やかに謎を解くのには非常な違和感がありまくりなんですよ。せめて生粋のミステリーマニアだとかいった説明があればいいのですが、20歳そこそこのガキで人生の大半をピアノに捧げてきた(そしてその後はそれなりに受験勉強もしたんでしょうよ)人物がそこまでミステリーに造詣が深くなれるものか。ホームズやポアロ、その他の名探偵の指摘なら素直に納得できることでも、家康だと極めて納得いかないんです。これが若さか…

花山薫です 

 しかもポーランドの幻の伝統的殺人舞踏・裏マズルカをマスターしているということで何気に超武闘派なんだそうですが、ちょっと範馬勇次郎と戦ってみてくれんかね。いや、君より年下の範馬刃牙や花山薫あたりで結構。花山薫なんて身体を鍛えたり武術を嗜んだりしていないので相手にちょうどいいんじゃないでしょうかね。

 ま、推理とかより家康の言動の不愉快さが気になるのですが、本書の語り手である夕佳も結構おかしい。変態紳士家康にぞっこんラブという点は蓼食う虫も好き好きなので目をつぶりますが、普通の浪人生の語りとは思えない部分が散見されます。シリーズ一作目ということで語られていない部分も多々あるようなのですが、一筋縄ではいかない人なんじゃなかろうか。浪人生のくせにセーラー服を着ていくあたりも怪しい(笑)。

何だオマエ?… 

 で、集まった他の参加者もまあ俗物というか露悪的というか…殺されてもしょうがないかとつい思ってしまう連中が多いです。ただ、「こんなところにいられるか!」とか「殺人鬼と同じ部屋にいられるか!」といったベタベタな反応をするのが笑えてしまう。自ら死亡フラグ立てるというスタイルは今時ちょっとなあ。

 終盤、連続する密室殺人事件のトリックを鮮やかに解きほぐしていく家康ですが、抜本的に無理がないかというかなり強引なトリックなんですがこれは本格推理的にOKなんですかね?ネタバレになるから詳しく書けないんですが、そこまでやらせるのは無理じゃね?と思ってしまいます。せめてガリレオシリーズみたいに再現実験でもしてくれないと納得できないような。
 
スティーブン・キングの文書読本 

 まあ中盤以降はクセがスゴイ文体にも慣れるので一気に読めますが、多分スティーブン・キングが自身の文書読本(書くことについて)で主張しているところに照らすと、古野まほろの作品は唾棄すべき表現法の好例ということにされてしまうのではないかと。ま、世界的ベストセラー作家といえどもそれに従ういわれはないのですが、私も東野圭吾のような平易な文体の作家の方が好きですね。

泥眼 

 あと殺人の動機が弱い。「能面の鬼女」が糾弾する各人の罪状。それは実は本来の動機を隠すためのフェイクなんですが、罪状自体は虚偽ではないようです。どうやって調べたんでしょう。特に夕佳の“罪状”なんて、ちょっと調べようがないような。最終盤の犯人の告白に出てくる謎のパトロンが教えたのか。だとするとシリーズを通じた家康・夕佳(これでイエユカ)の宿敵となるのかも。

 そして犯人には第三者から見て弱いなあとは思われるけれども一応殺人の動機はある。それはいいのですが、デコイである「能面の鬼女」まで殺しているのはどうなのか。この人物も実は殺害対象の一人であるところ、上手いこと騙して「能面の鬼女」を演じさせた……というなら判らんでもないのですが、最後までそういう記述はありませんでした。目的のためなら手段を選ばないというなら、節子それ復讐と違う、テロや!という気がします。

群衆リドル POP 

 本書の世界は、現実の世界とは違って、日本帝国というパラレルワールドを舞台となっていて、軍が幅を効かせたりしていますが、ほぼ年代とかテクノロジーは現実に準拠していると思われます(そうでなければ90年代とかいう設定に意味がない)。それを踏まえて、そしてやたら家康が自分の頭の良さをひけらかすスタイル(衒学的というのか)なのであえて指摘しますが、登場人物に外務省大臣官房の儀典長という人物が出てきます。

昔の儀典長 

 作品が出版されたのは2010年で、確かにその時点で外務省の儀典長は大臣官房に属する現在のポストとなっています。しかし、1969年から2004年までは、省名を冠さない「儀典長」であり、次官級ポストでした。つまり現在よりも偉かった訳ですね。作中儀典長の人物は自身のポストを審議官級と称していますが、審議官にも次官級の省名審議官(外務省なら外務審議官)と各省庁の大臣(長官)官房に置かれている局長級の審議官、そして各局に置かれる局次長級の審議官がいます。

 1993年時点なら、この人物はただ「儀典長」を名乗るべきで、そのランクは次官級ということになるはずなのですが、大臣官房儀典長とされていて局長級のランクに不当に引き下げられている点が、作者の調査不足だなあと思われる点です。

洋館のイメージ 

 密室殺人やそのトリックなど、見るべき点はあるので(家康病でこっちまでエラそうになってしまいました)、“オレ強えー、オレ最強!!”的存在が罷り通り易いラノベならさらに人気を博するんじゃないかと思います。もちろん作中イラストも豊富にね。実際光文社文庫版は限りなくラノベっぽい装丁だと思いますし。

雪山の密室 
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インド旅行記1 北インド編:女優・中谷美紀のインド紀行

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 久しぶりにリアル明里パパンから明里ちゃん画像が来ました。4歳になってお洒落に目覚めた明里ちゃん。すっかり小さなレディですね。9年後には岩船に行くことになとも知らずに……(行きません)

インド旅行記1 

 本日は中谷美紀の「インド旅行記1 北インド編」を紹介しましょう。著者は女優さんと同姓同名の人ではなく、かの女優その人です。有名人ですが、中谷美紀の本は初めて読んだので一応著者紹介を。

中谷美紀 

 中谷美紀は1976年1月12日生まれで東京都出身。女優デビューは1993年に「ひとつ屋根の下」でですが、それ以前にテレビ朝日系のバラエティ番組「桜っ子クラブ」のアイドルグループ「桜っ子クラブさくら組」の一員として歌手活動をしていました。

桜っ子クラブさくら組時代の中谷美紀 

 余談ですがこの「桜っ子クラブさくら組」、当時は「おニャン子クラブ」のエピゴーネンかよなんてと思っていましたが、よく考えれば「おニャン子クラブ」より全体的なルックスはかなり高かったような気がします。強いて例えるならば「おニャン子クラブ」がAKB48だとすると、「桜っ子クラブさくら組」は「乃木坂46」あたりでしょうか。

桜っ子クラブさくら組 

 なにしろメンバーには井上晴美、加藤紀子、菅野美穂、持田真樹と錚々たる面子が揃ってましたからね。その中の一人が中谷美紀で、東恵子と「KEY WEST CLUB」という内部ユニットを結成していました。というか、当時は彼女が女優としてこれほど名を馳せるとは思っていなかったという。なにしろ目がリハクなもので。

KEY WEST CLUB 

 アイドル活動は黒歴史かも知れませんが、駆け出しの頃は皆いろいろやっているものなので恥じることはないと思います。女優としては数々の受賞歴を誇り、「壬生義士伝」「ゼロの焦点」「利休にたずねよ」で日本アカデミー大賞優秀助演女優賞を、「「自虐の詩」「阪急電車~片道15分の奇跡~」で同優秀主演女優賞を、そして「嫌われ松子の一生」で最優秀主演女優賞を受賞しています。

嫌われ松子の一生 

 で、最も高い評価を受けた「嫌われ松子の一生」を取り終えた直後の2005年8月、精根尽き果てた中谷美紀は、本場でヨガを体験したというただそれだけを望んでインドに向かい、北インドで40日弱を過ごしました。当時29歳。27歳の頃からヨガを始めたのだそうです。

タージ・マハール 

 本書は「嫌われ松子の一生」公開後の2006年8月5日に書き下ろしで幻冬舎文庫から刊行されました。彼女はすっかりインドにはまったらしく、2006年1月までの5か月の間に4回もインドを旅しています。本書はその第一回目にして最長だった旅の日記となっています。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

オールドデリー 

 チューブわさびで体内消毒に励み、持参したウエットティッシュは数知れず。そんな努力の甲斐もむなしく、腹痛に見舞われ、暑いホテルで一人淋しく回復を待つ。町に出れば、パスポートを盗まれ、警察署長に懇願書を書くはめに……。単身インドに乗り込んだ、女優・中谷美紀に襲い掛かる困難の数々。泣いて、笑った38日間の一人旅の記録。第1弾!

河童が覗いたインド 

 椎名誠曰く「インドはああいう国なので、なんとなく行けば誰でもなにがしかのことは書ける。」ということで、インド関係の本は玉石混淆でゴマンとあるようです。中谷美紀もインドに向かう飛行機の中で遠藤周作の「深い河」や妹尾河童の「河童が覗いたインド」を読んだそうです。「深い河」は小説ですが、「河童が覗いたインド」の方は地を這うようにして描かれた旅行記&スケッチで、椎名誠も絶賛していますがインド本ナンバー1の誉れも高い名著です。

インド鉄道紀行 

 私が読んだインド本といえば「河童が覗いたインド」と宮脇俊三の「インド鉄道紀行」でしょうか。どちらも面白いですが、両作品を読んで思うのは、バイタリティーがないとインドは無理だなあということです。疲弊した状態で女一人旅なんて、大丈夫なのかと思ってしまいますが、案外女性の方がバイタリティーがあるのかも。

サリーの女性達 

 滅菌ウエットティッシュや消毒スプレーなどを携え、裸足になった後は足もサンダルも消毒し、食事の後はワサビで体内消毒と、潔癖症かよいかにも女性らしいなと思う行動を取る著者ですが、それでもやってくる腹痛。インドではこれは通過儀礼らしく、妹尾河童も宮脇俊三も旅の途中でやられています。河童は好奇心のままに何でも飲み食いするのでなるべくしてなったとも言えますが、無茶をしない宮脇俊三や潔癖症気味の中谷美紀ですら腹痛は襲うので、インドに行ったら腹痛になると思った方がいいのでしょう。

レイクパレス 

 デリーをはじめ町はやたら汚く、物乞いは殺到し、ガイドは土産物店と結託し、タクシーやオートリキシャは隙あらばボろうとする中、女の細腕一本で泳いでいくのはさぞや大変だろうと思いますが、自己主張の強い韓国人のふりをしたり英語がわからないふりをしたりと、女優らしいテクを発揮しているのが面白いですね。

チャパティとカレー 

 あと食べ物についての記述がかなり詳細で、旨い不味いもしっかり書いています。各種カレーはそこそこおいしいようですが、毎日カレーだとさすがに飽きるらしく、中華料理店があるとすかさず入る中谷美紀ですが、その度にインド人の作る中華はダメだと思い知らされるという。自分でも言っていますが、一回で学習しろよと思います(笑)。

エストニアのタリン 

 かつてエストニアを旅した際、中華料理店があったので入ったら、何とインド人がやっていました。バリバリインド人スタイルだったのですが、エストニア人にはばれないのでしょうか?私がはいったら中国人と間違えたらしく、「やっべッ!本物が来ちゃったよオイ!」という激しい動揺を見せていたのが笑えましたが。私が欧州滞在で学んだのは、「中華料理屋はどんな国にでもあるが、豊かな国ほどおいしい」ということです。

バラナスィ 

 中谷美紀のインド旅行の主目的がヨガなので、ヒマラヤ山麓のリシケシュでヨガ修行に励んだりするのですが、まあ修行といってもそれほど辛いものではなく、エステシャンによるマッサージも楽しんだりしています。ヨガはともかくマッサージは私もやってもらいたいですね。

ダルシムフィギュア 

 私のヨガの印象というと、ストリートファイターⅡのヨガマスター・ダルシムなんですが、両肘や両膝の関節を自由に外して手足を伸ばしたり、空中浮遊したりテレポーテーションしたり火を吹いたりして、流石の私でも節子これヨガとちがうと思ったものでした。相手をヘッドロックしながら殴りつつ「ヨガ!ヨガ!」と叫ぶあたり、インド政府から公式に抗議が来なかったのかと思ってしまいますが。

ヨガフレイム 

 ヨガは日本ではもっぱらハタ・ヨーガ(ヨーガ体操)が主流となっていて、運動とか健康法として捉えられていますが、本来は心身を鍛錬によって制御し、精神を統一して輪廻転生から解脱しようとするもので、多分に宗教的なのです。なので興味がないこちらとしては「アーハーン?」的な読み飛ばしをするしかないのですが、中谷美紀はインドに来てベジタリアンになり、さらには酒まで飲まなくなっていきます。いや、酒は飲みたいけどないから仕方が無いというケースもありますが、ベジタリアンは本格化し、肉が入った料理を受け付けなくなるほどです。

 リシケシュ

 ベジタリアンとか、さらに厳格な(卵や乳製品もダメという)ヴィーガンとか、まあ人の食習慣は人それぞれなので他人に強要しない限りは好きにすればいいのですが、中谷美紀はインド旅行を契機に6年間ベジタリアン生活を実践していたそうです。ただしその間にはめまいや突発性難聴が起こり、精神的にも機嫌が悪かったり人と口を利きたくなかったりしたそうです。結局体力が尽き果ててベジタリアン生活からは足を洗ったそうです。私もまあ2、3日なら精進料理一色でも耐えられるでしょうし、そもそも普段そんなに肉は食べていないのですが、雑食が人間の本性だと思っているのでベジタリアンになろうとは思いませんな。

レー 

 好んでいったインドにも関わらず、結構インド人の押しの強さや理屈っぽさ、何かと言えば金を取ろうとするところに辟易していく中谷美紀。盗難にあってパスポートを無くしたり、被害届を貰いに警察に行っても嫌な目にあったりと同情します。そんな彼女のごく自然な反応を、上から目線だとか批判するレビューもありますが、私は素直な感想を綴っていて好感を持ちました。女優も一般人とあんまり変わらないんだなあと。そして思います、私はインドは止めておこうと。やっぱりヨーロッパが向いているんだ私には(笑)。

風の宮殿 

 食事や衣類には関心が高い反面、寺院とか城とか遺跡関係にはあまり強い関心を示さない中谷美紀。そうはいってもタージ・マハールとか押さえるべきところは押さえていますけどね。ヨガは好きだけど特に宗教的な入れ込みはしていないようで、わりと日本人としては普通の感性ではないかと思われます。インドマニアにはとにかく貧乏旅行を推奨する向きもあるようですが、私もなるべく彼女のように高くても清潔なホテルに泊まりたい派です。それでもお腹を壊すのだからインド恐るべし。実は図書館には「インド旅行記2 南インド編」もあったので、次回借りてきましょう。

日暮らし:「ぼんくら」シリーズ第二弾

暑い五月

 梅雨寒のような天候が続いていたと思ったら…いきなりきました「アツゥイ!」の陽気。暑さに慣れていないからあんまり急には来て欲しくないんですが…とりあえず扇風機は出しました。

日暮らし文庫版 

 本日は宮部みゆきの「日暮らし」を紹介します。いわゆる「ぼんくら」シリーズの第二弾です。第一弾の「ぼんくら」は2016年9月10日の記事で紹介しております(http://nocturnetsukubane.blog.fc2.com/blog-entry-1386.html)。

 主人公は井筒平四郎という南町奉行所の本所深川を担当する「本所見廻」の臨時廻です。「ぼんくら」の直後から話はスタートするのですが、前作に続いてダークヒーローとでもいうべき湊屋総右衛門と彼の周囲の女達の物語が因縁のように展開されるので、「湊屋総右衛門」シリーズと言う方がいいような気もします。まあ総右衛門自身が直接登場することはあまりなく、登場人物からああした、こう言ったと語られることが多いのですが。

日暮らし単行本 

 「日暮らし」は単行本が2004年12月22日に講談社から上下巻で刊行され、文庫版は講談社文庫から2008年11月14日に上中下三分冊で刊行されました。三分冊は不評だったのか、2011年9月15日に新装版が上下巻で刊行されています。例によって文庫版裏表紙の内容紹介ですが、私が読んだのは三分冊版なのでそこからどうぞ。

 (上巻)浅草の似顔絵扇子絵師が殺された。しかも素人とは思えない鮮やかな手口で。「探索事は井筒様のお役目でしょう」―。岡っ引きの政五郞の手下、おでこの悩み、植木職人佐吉夫婦の心、煮売屋のお徳の商売敵。本所深川のぼんくら同心・平四郎と超美形の甥っ子・弓之助が動き出す。著者渾身の時代ミステリー。

植木職人佐吉 

 (中巻)佐吉が人を殺めた疑いを受け、自身番に身柄を囚われた。しかも殺した相手が実の母、あの葵だという。今頃になって、誰が佐吉に、十八年前の事件の真相を教えたりしたのだろう?真実を探し江戸を走り回る平四郎。「叔父上、わたしは、本当のことがわからないままになってしまうのが案じられるのです」。

 (下巻)「ねぇ叔父上、ここはひとつ、白紙に戻してみてはいかがでしょう」。元鉄瓶長屋差配人の久兵衛からもたらされた築地の大店・湊屋が長い間抱えてきた「ある事情」。葵を殺した本当の下手人は誰なのか。過去の嘘や隠し事のめくらましの中で、弓之助の推理が冴える。進化する“宮部ワールド”衝撃の結末へ。

葵さん 

 シリーズものを順番に読むのが不得手(だって図書館になかなかないから…)な私ですが、「ぼんくら」シリーズは第一弾、第二弾と順番通り読むことができました。特に「日暮らし」三分冊を同時に借りられたのは大きかったですね。そして思います。これのシリーズは順番どおり読まないとダメだと。
 
 平四郎、弓之助、岡っ引きの政五郞といった捜査側の面々は実に清く正しく清々しく生きているのですが、とにかく湊屋が抱える闇が深くて大きい。平四郎も作中で言っていますが、もっと早い段階で大なたをふるべきだったのだろうと思います。

美人すぎるお徳 

 三分冊のうち、上巻は短編が四編収録されています。政五郞配下で昔の膨大な捕物噺を記憶している「おでこ」が寝込むほどの苦悩を抱える「おまんま」。湊屋総右衛門の姪の息子で「ぼんくら」では鉄瓶長屋の差配人をやっていた佐吉が本来の植木屋に戻り、お恵と結婚したものの、二人の間に隙間風が吹く「嫌いの虫」。江戸時代にも凄まじいストーカーというかサイコパス野郎がいた!娘二人を持つ未亡人の奉公人・お六のために葵(湊屋総右衛門の姪にして愛人。そして佐吉の母)が打った大芝居を描く「子取り鬼」。鉄瓶長屋から幸兵衛長屋に移っても煮売り屋をやっているお徳。その近所で突如始められた大赤字覚悟の惣菜屋。その意外な意図を描く「なけなし三昧」。

藤屋敷にて 

 そうかそうか、連作短編集なのかと思いきや、中巻下巻が長編「日暮らし」となっており、上記四短編は「日暮らし」のイントロとなっているのです。下巻末尾の「鬼は外、福は内」はエンディングとなっています。中巻の内容紹介のとおり、「日暮らし」では葵が殺され、佐吉に容疑がかかります。内々に済ませようとの湊屋の計らいによって佐吉は解放されますが、それは佐吉が犯人と決めつけてのものでした。佐吉が犯人ではないとして、真実を知るべきだということで平四郎と弓之助が奔走します。その過程で短編の登場人物が登場してくるので、人となりを知っておくために短編がいい仕事をしています。

葵と総右衛門 

 葵は佐吉の実母なので、普通に考えたら佐吉が殺す訳がないのですが、なにしろ湊屋をとりまく闇のせいで、佐吉は葵が大恩ある湊屋に後足で砂を掛けるように愛人と出奔したと教えられており、以後怒りと恨みを抱きながら成長しています。だからこの親子に限っては殺人もありえる、と湊屋総右衛門は思ったようです。実は平四郎も「あり」か「なし」かなら、ありえることだと思っていますが、自分はやっていないという佐吉を信じて動きます。

 怨恨ということなら、葵は佐吉の他にも湊屋総右衛門の正妻おふじからも滅茶苦茶恨まれています。というか18年前に首を絞められて殺されたのですが、おふじは殺したと思っていますが実は葵は後で息を吹き返したのでした。葵が死んでいないことは極秘とされてきましたが、もし何かの拍子におふじが知ったら再び殺意を抱く可能性があります。ですが、おふじ自身も良心の呵責に苛まれていたらしく、心を病んで廃人のようになってしまっていました。惟故に湊屋総右衛門は佐吉の犯行と確信した訳ですが…

平四郎と弓之助 

 本作、実はミステリーとしてはやや弱いです。というのは犯人の見当がついてしまうのと、犯行理由は犯人自身の過去にあるのですが、それは湊屋総右衛門関連とは全く関わりがないことなので、ある意味出会い頭の不幸な事件ということになっているので。だから殺害動機をいくら探っても正しい方向に進むことはできなかったので、ある難事件といえば難事件なんですが、ちょっとフェアじゃない気も。冒頭短編集に犯人の過去の話も載っていればフェアなんですが、それをするといきなり犯人がばれる可能性があるので難しいですね。

 時代小説として読んだ場合は非常に面白いです。「ぼんくら」に登場した人物がたくさんでてきて懐かしいし、食べ物の描写がいいんですよね。飯テロ小説家も知れません。上等な料理よりも、街角で売っているふかしたての饅頭とか焼きたての灼き団子みたいなのがとっても旨そうで、江戸のB級グルメという感じもします。

平四郎、小平次、弓之助 

 少年探偵弓之助の推理が冴えまくるので、もう平四郎の跡継ぎは弓之助しかないような気がしますが、本作でもまだ完全には踏ん切りが付いていません。第三弾「おまえさん」では跡継ぎになっているんでしょうか?図書館にはあるはずなので、近日ぜひ読みたいですね。

 伯父と姪の近親相姦、間男の托卵によるお家簒奪、超ストーカー、男喰いと女喰いなど、エロ小説・エロゲーに登場してもおかしくないシチュエーションがてんこ盛りですが、それでいていやらしくなっていないのが宮部みゆき作品の持つ上品さですね。

ぼんくら2 

 なおNHKの木曜時代劇で、「ぼんくら2」として「日暮らし」のエピソードが2015年10月22日から7話放映されました。葵が「ぼんくら」では佐藤江梨子だったのが、「ぼんくら2」では小西真奈美に変わっていますが、年齢的にも小西真奈美の方が適切な気がします。

ぼんくら2最終話 

同級生:認めたくないものだな、自分自身の“若さ故の過ち”というものを…

5月の雨の土曜日

 本日は一日雨のようです。土曜日の本格的な雨って久々な気がします。土曜日はウォーキングをするので、アツゥイ!のも困りますが雨も嫌なものです。でも自然の摂理の前にはどうしようもないですね。五月の雨だから五月雨と言いたいところですが…陰暦だから実際には梅雨時の長雨が五月雨ですね。

文庫版同級生 

 本日は当ブログではもはやレギュラーの東野圭吾の「同級生」を紹介しましょう。この人がベストセラー作家になったのはよくわかります。読みやすいし面白い。それはミステリーとしてですが、純粋に物語としてもです。むしろ「秘密」まで泣かず飛ばずだったことが奇々怪々。

名探偵の掟 

 「同級生」はやはり人気低迷時代の1993年2月10日に祥伝社から刊行され、絶版になった後に講談社文庫から1996年8月15日に刊行されました。1996年というのは、「名探偵の掟」が「このミステリーがすごい!1997」の3位になるなど、にわかに注目を浴び始めた時期です。その後1998年の「秘密」の大ヒットでブレイクして不動の人気作家となるわけですが、講談社が本作を刊行したのもこの流れを感知してのことではないかと思われます。私が借りた本は2014年8月1日付で第59刷となっており、「重版出来」どころではありません。

新書版同級生 

 実は本作、東野圭吾作品としては地味な部類で、各種ミステリーランキングにも選ばれておらず、Wikipediaに単独記事も立てられていません。舞台となっているのは県立高校で、高校を舞台とした本格推理は1985年刊行のデビュー作「放課後」以来ということになります。珍しく「あとがき」があり、執筆に非常な苦労があったと記されています。あんまり苦労したので異例の「あとがき」を書いたとも。そういえば東野圭吾の「あとがき」というのは初めて見たような。それでは例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

妊娠した女子校生 

 修文館高校3年の宮前由希子が交通事故死した。彼女は同級生・西原荘一の子を身ごもっていた。それを知った荘一は自分が父親だと周囲に告白し、疑問が残る事故の真相を探る。事故当時、現場にいた女教師が浮上するが、彼女は教室で絞殺されてしまう。著者のターニングポイントとなった傑作青春ミステリー。

小学生の妹のイメージ 

 主人公は県立修文館高校野球部主将の西原荘一。彼には先天的な心臓疾患を持つ春美という小学生の妹がおり、この妹を溺愛しています。野球も、春美が観戦を喜ぶからやっているようなものです。3年生になった5月の半ば、野球部のマネージャーである宮前由紀子が交通事故死します。突然のことで部員ともども驚く荘一ですが、さらに驚くべき噂が流れ始めます。由紀子は妊娠しており、産婦人科に向かう途中で事故にあったのだと。

高校野球のイメージ 

 荘一には身に覚えがありました。3月に由紀子と関係を持っていたのです。由紀子が以前から荘一に好意を持っていたことは気づいていましたが、そういう関係になったのはその日が初めてでした。なぜか荘一は当時自暴自棄になっており、つい「据え膳」を喰ってしまったということのようです。両者とも“やればできる子(性的な意味で)”だった訳ですが、処女と童貞だろうと、高3にもなっていたら避妊を心がけるのは当然だと思うのですが…

野球部マネージャーのイメージ 

 由紀子の相手は自分であることを周囲に告げ、由紀子の両親に謝罪に行ったりと潔い態度を取る荘一ですが、そうこうしているうちに、由紀子が死んだのは、生徒指導部の教師に追いかけられたからだということが判明します。その教師は古文担当のハイミス御崎藤江でした。荘一は授業中に同級生の前で御崎を糾弾しますが、御崎は自らの過ちを認めようとしませんでした。

アンサイクロペディアの生徒指導部 

 生徒指導部長は灰藤というベテランの地学担当教師で、生徒指導なんてまっとうな神経を持っていたら進んでやりたいないような役目を積極的に買って出て、執念深く生徒の非行を摘発することで有名な教師でした。御崎は灰藤に傾倒して同じ道を進んできた人で、荘一はこの灰藤に目を付けられることになります。

生徒指導の在り方 

 そして一週間後、なんと御崎が荘一のクラスで死んでいるのが発見されます。動機を持った人物として当然浮上してくる荘一は事情聴取を受けますが、現場にはいくつかの謎が。

天文部の活動 

 続いて起きる天文部部長水村緋絽子の殺人未遂事件。睡眠薬入りのコーヒーで眠らせてストーブ用のガスの元栓を開くというものでしたが、守衛が発見したため大事には至りませんでした。二つの事件は関連があるのか?

左が緋絽子、右が由紀子のイメージ 

 実は荘一、作中でこの水村緋絽子と何度か出会って会話をするのですが、その雰囲気がなんともただならない関係です。敵意とも憎悪とも言い難い、不思議な緊張感が張り詰めるのですが、その理由について読者に対して荘一は終盤まで口を割りません。冒頭、“春美の心臓疾患は単なる偶然ではなかった”とのくだりがあり、水原緋絽子は大企業の重役の娘でいわゆるお嬢様なので、それと何らかのつながりがあるのだろうとは思えましたが。

娘の妊娠に苦悩 

 本作は、一連の事件の犯人捜しの他、読者に荘一と水村緋絽子の関係を推理させる作品となっています。由紀子を孕ませておきながら(まあ彼女の死まで気づかなかった訳ですが)、実は一時の感情の暴走の結果に過ぎなかったという負い目。荘一としては、荘一の愛が本物だったと信じたまま事故死した由紀子に対する償いは、本気の関係だったと皆に告白することと事故の真相を暴くことだけだと確信し、その通りに行動するのですが、そうすればするほど不自然さが目立ち、別の意味で警察からも注目されたりします。

 ○八先生

 正直一連の事件より水村緋絽子との関係の謎の方が目を引いてしまいます。途中で「こうじゃないのか」と思ったことがほぼ的中しましたので、その点は満足なんですが、一連の事件の真相については全く的中しませんでした。その辺りが流石東野圭吾というところなんでしょう。荘一視点なので警察は敵対者とまでは言わないものの、結構印象が良くない感じに描かれていますが、例によって無能ではありません。というかかなり有能です。

 クソ教師

 荘一は野球部の主将で部員からの人望もあるようですが、言動が結構粗野で、大人にタメ口をきいたりするなどあんまりいい印象がありません。可愛い妹がいて、美人マネージャーを孕ませるとかリア充爆発しろといいたくなりますが、本人はさほど自分の境遇をハッピーとは思っていません。その理由は…

クソ教師その2

 本作で注目されるのは教師の描き方。御崎と灰藤の生徒指導部コンビはもとより、担任の石部ほか他の教師も軒並みろくでもない感じで描かれています。唯一荘一が評価しているのは養護教諭くらい。東野圭吾は前述の「あとがき」で“小学生の時から教師が大嫌いだった。なぜ理由もなく、こんなおっさんやおばはんに威張られなきゃならないんだと、いつも不満だった。どう見ても尊敬できる部分など一つもないのに、「先生」などと呼ばされるのも面白くなかった。何より我慢ならなかったのは、連中が自分達のことを、立派な人間だと錯覚していることだった”と記していますが、教師嫌いの東野圭吾の面目躍如な作品とも言えますね。

 体育教師笑

 私個人はそこまで教師は嫌いではありませんでしたが、体育教師はおしなべて嫌いでしたね。正直小学校の頃はそこまで批判的精神がなく、中学校時代は比較的いい先生が多かったこともあり、教師がひどい生き物だと思ったのは高校に入ってからでした。まあ当時は素行が良かった(本当!)こともあり、盗んだバイクで走り出したり、夜の校舎窓ガラス壊して回ったりすることもなかったので(普通はない)、特に衝突とかはなかったですけど。

盗んだバイクで走り出す 

 東野圭吾は教師は嫌いだったようですが、学校そのものや学生生活は嫌いではなかったようです。そうでなければ学園ミステリーを書こうとは思わないでしょうが、私の高校時代は、教師にも学校にも同級生にも何の期待も抱いていなかったので、懐かしいとも振り返りたいとも思いません。いわば「黒歴史」。これが不本意な進学の結果というヤツか。でも一応卒業したので良しとしといて下さい。

夜の校舎窓ガラス壊してまわった 

 タイトルの「同級生」ですが、その理由はラストで明らかになります。色々とすっきりした感じで終わるのですが、ちょっとよく考えてみると、由紀子が死んだ件についてはそんなにすっきりしていいのかという気がします。直接的原因ではないとはいえ、そもそも由紀子は妊娠しなければ事故に遭うこともなかったはずなので、なぜちゃんと避妊しなかったし!と思いますし、大事な娘を亡くしたご両親の悲しみと怒りは消えることはないでしょう。身代わりで名乗り出たという訳でもないし、背負うべき十字架はしっかり背負おうぜ、と思ったりします。

柴門ふみ原作の同級生 

 なお、「同級生」というタイトルで何を連想するかですが、柴門ふみのマンガとか、それを原作としたテレビドラマという答えが多いのでしょうかね。あれは「同・級・生」との表記が正しいようですが。バブル期に放映され、安田成美と緒形直人が主演していました。

エルフの同級生 

 しかーし!個人的には「同級生」といえば連想するのはエルフのギャルゲーに決まっているだろうと断言します。バブルも終わった1992年12月17日にPC用18禁恋愛ADVとして発売されましたが、私がプレイしたのは1995年11月23日発売のPCエンジン版でした。なのでエロい描写はしごくマイルドになってました。本作と1994年5月発売の「ときめきメモリアル」のヒットにより、恋愛ゲーム市場は一気にブレイクしていったのでした。

鈴木美穂 

 「同級生」にはデビューして間もない丹下桜が参加していました。丹下さんが演じた鈴木美穂は18歳のわりに幼くて幼児体形な人でした。他にも國府田マリ子とか井上喜久子、古川登志夫、古谷徹、千葉繁なんかも出演しており、何気に豪華メンバーでしたね。國府田マリ子が演じた桜木舞の赤系のストレートロングな髪や才色兼備ぶりは、「ときめきメモリアル」の藤崎詩織に継承されたとされていますが、メインヒロインなのに人気がぱっとしないのには全米が泣きました。その反省を元に「下級生」の結城瑞穂や「同級生2」の鳴沢唯といった人気のあるメインヒロインが設定されたのではないかと思います。

桜木舞 

 「同級生」というタイトルのわりに、年上お姉さんキャラがやたら多かったのが特徴です。女教師キャラが2人もいる他、人妻までいたりして。ええ、もちろん全員攻略しましたとも。そういえば高校の上級生や下級生は一切出てきませんでしたな。今にして思えばなかり極端なヒロイン設定だったんですね。

真行寺麗子 

 きっこさん演じた芹沢よしこ先生が好きでしね。オンタイムのお堅い雰囲気と、オフタイムの艶めかしさのギャップが素敵でした。生徒思いで、主人公の将来を本気で心配してくれる人だったので、こういう先生に遭遇していれば東野圭吾の教師嫌いも変わっていたかも。いや、現実にはいませんけどね。

芹沢よしこ先生 
髪をおろしたよしこ先生 

 斎藤真子先生は…もはやファンタジーとしか言いようがない。そもそも日本人なんでしょうか(笑)。おっと、ゲームの「同級生」について以前に記事を書いている(http://nocturnetsukubane.blog.fc2.com/blog-entry-65.html)ので今回はこの辺で。

日本人離れした真子先生 

王妃の帰還:女子校という名の箱庭で

5月はヤグルマギク

 長期休暇明けは心身ともに調子が今ひとつ上がりませんね。でも一週間未満、長くても10日未満程度の休暇を“長期”なんて呼んでいいのかどうか。フランスでは休暇は連続5週間まで取得可能となっておりそれをヴァカンスと呼ぶらしいです。これを世界基準と呼んでいいのか判りませんが、某モレシャンさんあたりには鼻で笑われて「ワータシの国では~」とドヤ顔で自慢されそう。

文庫版王妃の帰還 

 本日は柚木麻子の「王妃の帰還」を紹介します。柚木麻子の著作は初めて読みました。柚木麻子は1981年8月2日生まれで東京都出身。立教大学在学中からより脚本家を目指してシナリオセンターに通っていました。卒業後、塾講師や契約社員などの職のかたわらで小説の賞に応募し、2008年に「フォーゲットミー、ノットブルー」で第88回オール讀物新人賞を受賞して作家デビューを飾りました。

 柚木麻子

 同作を含む単行本「終点のあの子」は、「本の雑誌」2010年上半期エンターテインメントランキングで3位となるなど高評価を得ました。

終点のあの子
 
 2013年から15年にかけては3年連続で直木賞候補となっており、新進気鋭の若手小説家です。2013年には「嘆きの美女」、2015年には「ランチのアッコちゃん」がNHKでテレビドラマ化されています。

嘆きの美女
ランチのアッコちゃん 

 「王妃の帰還」は2013年1月26日に実業之日本社から単行本が刊行され、2015年4月15日に文庫版が実業之日本社文庫から刊行されました。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

王妃の帰還POP 

 私立女子校中等部二年生の範子は、地味ながらも気の合う仲間と平和に過ごしていた。ところが、公開裁判の末にクラスのトップから陥落した滝沢さん(=王妃)を迎え入れると、グループの調和は崩壊!範子たちは穏やかな日常を取り戻すために、ある計画を企てるが……。傷つきやすくてわがままで―みんながプリンセスだった時代を鮮烈に描き出すガールズ小説! 

 スクールカーストという表現があります。これはWikipediaによると、“現代の日本の学校空間において生徒の間に自然発生する人気の度合いを表す序列を、カースト制度のような身分制度になぞらえた表現。もともとアメリカで同種の現象が発生しており、それが日本でも確認できるのではないかということからインターネット上で「スクールカースト」という名称が定着した”と説明されています。

アメリカのスクールカースト図 

 日本のスクールカーストは明確に模式図にできていないようですが、アメリカのものは上図のように序列化が明確になっています。物語の舞台となるミッション系お嬢様学校である聖鏡女学園中等部2年B組の28人(少なっ)も、5つの派閥に別れており、序列化がなされています。

 最上位が「姫グループ」の5人。これはアメリカのスクールカーストでいえば「クイーンビー」と「サイドキックス」に該当するでしょう。続いて「ギャルグループ」。これは7人と人数的には最大派閥ですが、「姫グループ」に入ることを夢見ている「姫グループ」の二軍のような存在です。アメリカのスクールカーストでいえばワナビーといったところでしょうか。

マリー・アントワネットその2 

 さらに「チームマリア」の5人。ミッションスクールである聖鏡女学園で聖歌隊やハンドベル部に所属している女の子の集まりで、最も学園らしいお淑やかな優等生で構成されています。これは…アメリカのスクールカーストで例えるのが難しいですが、強いて言えばプレップスといったところでしょうか。

 そして「ゴス軍団」の6人。アメリカのスクールカーストの下位にゴスが存在していますが、ビジュアル系バンドのファンで構成されており、「姫グループ」の野党的存在なので、ゴスよりは階層外の「不良」あたりが適当かも知れません。お嬢様学校なので不良といっても「強いて言えばそれっぽい」という程度ですが。

単行本王妃の帰還 

 最後に主人公前原範子が所属するグループ。これには名称がないので、勝手ながら「地味子グループ」と名付けてあげましょう。たった4人の最小派閥で、放課後に図書館に集まっているので、アメリカのスクールカーストでいえばやはり階層外の「不思議少女」に相当するでしょうが。階層外が5グループ中2グループもあってはカーストが成立しない気がしますが、本作ではアメリカほど序列化されていないのでまあいいでしょう。ただし、範子の認識では頂点は「姫グループ」で底辺は「地味子グループ」です。

 アンシャンレジーム

 派閥で別れているとはいえ、特に対立抗争しているわけでは無く、それなりに平和だったクラスに風雲が巻き起こったのは2学期のこと。「姫グループ」の頂点に君臨していた滝沢さん-範子はその美貌に憧れており、敬意を込めて密かに「王妃」と心の中で呼んでいました-が失脚したのです。

マリー・アントワネット 

 実は範子はフランス革命フリークなので、「王妃」とはマリー・アントワネットに他なりません。「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」の迷言で有名ですが、本義ではケーキではなくブリオッシュのことらしいです。ケーキというよりはパン菓子というニュアンスですね。さらに言えばマリー・アントワネットが言ったという実際の記録はなく、ルイ14世妃マリー・テレーズ説や、ルイ15世の娘であるマダム・ソフィーやマダム・ヴィクトワール説などがあるようです。

アニメ版ベルばらのマリー・アントワネット 

 いずれにせよ…肖像画のマリー・アントワネットよりは、池田理代子の「ベルサイユのばら」で描かれた愛らしいマリー・アントワネットの方が滝沢さんにはふさわしいでしょうね。史実のマリー・アントワネットは「首飾り事件」によってそのイメージを大きく損なった訳ですが、「王妃」の方は「腕時計事件」で失脚することになりました。

首飾り事件の首飾り 

 範子は今回の「王妃」の事件をやたらフランス革命に当てはめるわけですが、その場合いきなり王妃のギロチン処刑から始まることになってしまいます。実際第一章のタイトルは「ギロチン」ですし。これが若さか…。もちろん「王妃」は処刑される訳ではありませんが、それまでのクラスの頂点の座を追われ、仲間外れ、すなわちハブとなってしまいます。のみならず、地味子グループが引き受け先になってしまうという。

ギロチン 

 美貌の「王妃」を迎えられてさぞや光栄…と言いたいところですが、この「王妃」、美貌に比例した性格は持ち合わせておらず、わがままで自己中で高飛車で上から目線と、「王妃」の持つ負のイメージだけを集めて固めたような性格でした。こんなのに飛び込んでこられて地味子グループもぎくしゃくし始め、範子達は「王妃復権」を画策することになります。滝沢さんのイメージアップを図って元の「姫グループ」に復帰させようというのです。

三部会 

 派閥というのは共通の趣味とか嗜好、話題によって構成されたものだったので、それらが全く異なる地味子グループと「王妃」はまさに水と油。最初はまさに「文明の衝突」状態でしたが、やがて徐々に相互理解が深まると、「王妃」も素直になっていきます。そうなってくると範子としてはもっと仲良くなりたいという気持ちが高まってくるのですが、そうなるとこれまで親しかった親友との間に隙間風が吹いたりして。なにしろヱヴァンゲリオンがないただの14歳の少女ですから、みんな未熟だし傷つきやすいし自己中なんです。

ベルサイユ行進 

 そうやって學園生活がいろいろと大変な中、範子は別な問題も抱えます。クラス担任で生徒の人気も高い星崎先生(通称ホッシー)が、なんと範子のママンと交際中という。あ、範子ママンはシングルマザーにしてバリキャリの女性誌編集長なんで不倫とかではないのですが、クラスメイトに知れたらえらいことになりそうです。

バスティーユ監獄襲撃 

 そんなてんやわんやの中、親友の離反やいじめの標的化といった危機を迎える範子ですが、彼女はこれまでの事件の「黒幕」を突き止め、これを一気に失墜させようと「革命」を画策します。さて、その結末は…ぜひ本書を読んでいただきたいと思います。ラストは非常に感動的かつ爽やかなので、これは映像化するべきだと思いますが。出来れば私も見たいのでアニメ化がいいな。

テニスコートの誓い 

 いろいろ揉めに揉める少女達ですが、私のようなおっさんから見ると、女子には女子の世界があるだろうし、その年齢なりに一生懸命やっているので、馬鹿にする気にはなりません。「マリア様がみてる」(こっちは高校生ですが)を見る時と同じような気持ちになりますね。微笑ましくも痛ましいとでもいうか。コップの中の嵐に翻弄される少女達を笑うことは出来ません。そこで経験を積んでおかなければ、やがて迎える外界への船出に耐えられないでしょうから。

早くアメリカに行けよ綾部 

 なお女子生徒の人気を集める星崎先生。文中でピースの綾部祐二に似ているという描写があります。本書が書かれた2013年頃の彼はイケメン芸人として知られ、また熟女好きとして知られていました(だから相当年上の範子のママンと交際するのか)が…今となっては相方の又吉直樹のお荷物というか、さっさとアメリカに行けよというか(行ったんですかね?)、まあイメージが暴落しましたね。そのせいかこの人が登場する旅に綾部の顔が思い浮かんで全然彼には共感できませんでした。

A藤M姫 

 さらに「王妃」こと滝沢さん、最終盤で範子がついに彼女を名前で呼ぶんですが、その名前がある有名人を思い切り連想させるんですよ。それがまた…。いや、本書が刊行された2013年1月当時なら決して悪い印象ではなかったはずなんですが、それ以降はどうかと言えば…まあ人によるんでしょうけど、言動などから“好感度ダダ下がり”なんて言われたりもしています。会ったことはもちろんありませんが、ナルシシストな印象が強くて私も正直好感は持ってませんね。14歳だったら許すんですけど。誰のことかわからないあなた、ぜひ本書を読んで下さい。

民衆を導く自由の女神 

 なお、作者は2年B組の派閥をフランス革命当時の階層になぞらえて、「姫グループ」=王家、「ギャルズ」=貴族、「チームマリア」=聖職者、「ゴス軍団」=商工業者、「地味子グループ」=農民のイメージだそうですが、それだと「姫グループ」「ギャルズ」「チームマリア」対「ゴス軍団」「地味子グループ」という図式になってしまうような。ただし「地味子グループ」=農民はぴったりかも。「七人の侍」でも指摘されていますが、一見弱そうに見えて実は一番したたかだという。

続・森崎書店の日々:記憶に生き続ける愛しき人・愛しき日々

自信満々烈海王

 GW後半なんて声も巷では聞かれますが…私のGWは今日からだッッ!!きっとロンバケ取れた人から見ると「君らがいる場所は、我々はすでに○日前に通過している」とか言われちゃうんでしょうけど。この頃の烈海王は嫌なヤツだったなあ。後にあんなにいい人になるとは。

続・森崎書店の日々 

 本日は八木沢里志の「続・森崎書店の日々」を紹介しましょう。当ブログ本年3月18日付の記事で紹介した「森崎書店の日々」(http://nocturnetsukubane.blog.fc2.com/blog-entry-1470.html)の続編です。

 前作で失恋・退職の大ショックで影道・鳳閣拳を喰らったがごとくのされてしまった貴子は、叔父サトルの経営する森崎書店の二階で過ごすことで甦った訳ですが、それから2年が経過。貴子は28歳で堂々たるアラサーになりましたが、和田さんという恋人もでき、仕事も順調とまずまず順風満帆な日々です。相変わらず休日は森崎書店に入り浸っており、傍目から見ると若い女性がする事に見えないようですが。

古書店街 

 本作は2011年12月1日に小学館文庫に書き下ろして刊行されました。映画化の後ということで、ヒットが予期されたんでしょうね。まずは例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。
 
 本の街・神保町で近代文学を扱う古書店「森崎書店」。叔父のサトルが経営するこの店は二年前失意に沈んでいた貴子の心を癒してくれた場所だ。いまでは一時期出奔していた妻の桃子も店を手伝うようになり、貴子も休みの日のたび顔を見せていた。店で知り合った和田との交際も順調に進んでいたが、ある日、貴子は彼が喫茶店で昔の恋人と会っているのを目撃してしまう。一方、病後の桃子を労う様子のない叔父を目にし、貴子は夫婦での温泉旅行を手配するが、戻って来てから叔父の様子はどこかおかしくて……。書店を舞台に、やさしく温かな日々を綴った希望の物語。

古書店街その2 

 この内容紹介ではちょっと時系列がおかしくて、実際にはサトルと桃子を旅行に行かせる→和田が元カノと逢っているのを目撃するという流れです。それだけではなく、前作で親友となったトモちゃんの心の傷とか、桃子の病といった結構シビアな話が続いています。 

 前半、穏やかでのんびりとした時間が流れ、貴子が旧知の神保町の面々と憎まれ口をたたき合いながらの交流を楽しんでいてほんわかとしていたのですが、後半はかなりキツイ展開となります。そんな中で貴子が失恋の過去から心に壁を作っていること、トモちゃんが過去の事件により恋愛ができない精神状態でいること、などが判明していきます。なんとか乗り越えていく若き女性達ですが、その代わりに暖かく見守っていた桃子が逝ってしまうことに。

神田古本まつり

 サトルの妻だった桃子が出奔し、5年ぶりに帰って来たのが前作でしたが、その時既に癌の手術をしたことが語られていました。あれから2年…怖れていた再発ということになり、しかももはや転移が進んで手遅れという事態。

 貴子の窮地を暖かく包み込んでくれたサトルに訪れる精神的危機。桃子は貴子にサトルのことを託しますが、実はちゃんと自分自身でサトルを立ち直らせる手段を講じていたんですね。最後までスケール的に貴子やサトルが太刀打ちできない人でした。こういう人と一緒に暮らせたら、例えその時間は短くても生涯刻まれる記憶となるでしょうね。

書泉ブックマート閉店 

 ますます神保町の古本屋街に住んで見たくなりますね。かつて鬼の哭く街・A立区に住んでいた私は、中坊の頃に自転車(チャリと呼んでいた)で秋葉原まで遠征したりしていたので、足を伸ばせば神保町だって行けたのですが、当時は古書に興味はなく、神保町をうろつくのは大学生になるまで待たねばなりませんでした。高校生・浪人生までは書泉ブックマートとか書泉グランデの方に行ってました。いや大学生になっても行きましたけど(笑)。書泉ブックマートは“女子向け書店”とやらになった挙げ句に閉店してしまっとか。ああ、時の流れはかくも非情。

昔の秋葉原電気街 

 あの頃の秋葉原は電気の街で、オーディオの時代からビジュアル・パソコンの時代に移りつつありました。まだメイドさんなんか影も形もなかったんですが…まさかこんな街になるとは思いもしませんでしたよ。でも考えてみればオーディオマニアはオタクのプロトタイプだったのかも知れません。

オタクの街秋葉原 

 登場人物を、いいところばかりではないけれど、丁寧に描くことで好感が持てる人物としてしまう八木沢マジック。貴子をひどい振り方をした前作の男・英明だけはフォローのしようもなかったのか外道なままでしたが。今回はやはり貴子に妙な接触をしてきた職場の先輩和田2号(姓が恋人と同じなため)が結構嫌な感じで登場していましたが、特にオチがなく終わっていたのが残念。和田1号と熱々な所でも見せつけて、ガツンと鼻っ柱でもへし折ってやれたら痛快なんですが、そういう作品じゃないということでしょう。

トモちゃん役の田中麗奈 

 個人的に好きなのはトモちゃん。映画では田中麗奈が演じていましたが、清楚な容姿といい本好きなところといい、さらに抱えていた心の傷といい、個人的にストライクですね。高野にはもったいないのでぜひいただいてしまいたいところです。ああ、そんな器量があったなら。

アキバのメイドさん 

白馬山荘殺人事件:東野圭吾版マザーグース・ミステリー

野性の藤

 筑波嶺でも野性の藤が咲き始めました。冬の間は枯れきった蔓のように思ってましたが、ちゃんと春になると芽吹いて花を咲かせるんだから自然というのはすごいものです。それにしても藤の花房を見るといつも「ああもう春も終わりだな~」と思いますね。

白馬山荘殺人事件 

 本日は東野圭吾の「白馬山荘殺人事件」を紹介しましょう。どうでもいい話ですが、白馬八方尾根は全然滑れなかった頃に、悪い仲間に「教えてやるから」と唆されて初めてスキーしに行った所です。行ってみればリフトで高いところまで上がったいいけれで連中は自分の滑りに夢中で、ほとんど転がるように降りた後は迷わずスキー教室に入りましたっけ。あいつらッッ…!!(いや、もう怒ってませんけどね)

白馬山 

 本年作は実は東野圭吾の最初期の作品で、1985年に第31回江戸川乱歩賞を受賞した「放課後」がデビュー作、翌1986年の“加賀恭一郎シリーズ”の一作目となる「卒業―雪月花殺人ゲーム」に続く三作目となります。

白馬山荘殺人事件 新書版 

 1986年に光文社からカッパ・ノベルス版で刊行され、1990年4月20日に光文社文庫版が刊行されました。「放課後」が女子校、「卒業―雪月花殺人ゲーム」が大学を舞台としていたのに対し、本作は初めて学校から離れて山荘に舞台を移しました。東野圭吾は雪山が好きらしくて何作も作品を描いていますが、本作はその先駆けとも行けますね。例によってよって文庫版裏表紙の内容紹介です。

リアル白馬山荘 

 一年前の冬、「マリア様はいつ帰るのか」という言葉を残して自殺した兄・公一。その死に疑問を抱いた女子大生・ナオコは、親友のマコトと、兄が死んだ信州・白馬のペンション『まざあぐうす』を訪ねた。常連の宿泊客たちは、奇しくも一年前と同じ。各室に飾られたマザー・グースの歌に秘められた謎、ペンションに隠された過去とは?暗号と密室のトリックの本格推理傑作。 

旧版白馬山荘殺人事件 

 英国人の別荘だったという過去を持つペンション『まざあぐうす』。現在は髭面のマスターと太っちょシェフがアルバイトを使って経営しています。各部屋にはそれぞれ違ったマザーグースの歌が入った壁掛けが飾られています。

マザーグース 

 菜穂子は一年前にこのペンションで死んで自殺と断定された兄公一の死に納得できず、宝塚の男役のような親友・真琴と共に兄が死んだ部屋に滞在して調査を開始します。どうやら公一はマザーグースの歌に秘められた謎を解こうとしていたようです。そしてさらにその一年前にも転落事故で人が死んでいたという事実が判明

ジャックとジル 

 そして滞在中にも発生する人死に。やってきた警察はこれも事故死と判断しますが、菜穂子と真琴は独自の調査で知り得た事実から、他殺であることを告げます。ということで、殺人事件は一件しか発生しませんが、今回の事件の犯人は誰か、自殺とされた公一も殺人なのか、もしそうであれば今回の事件と関係あるのか、さらに二年前の事故死も何らかの関わりがあるのかと、話はどんどん広がっていきます。

ハンプティ・ダンプティ 

 公一の死が自殺と断定された根拠としては、公一の部屋が完全密室であったことが挙げられています。なので菜穂子と真琴は、密室殺人のトリックも暴かなければなりません。さらには、公一が説こうとしていたマザー・グースの暗号も解読し、その意味も知らねばなりません。

ロンドンブリッジ 

 マザー・グースは、英米を中心に親しまれている英語の伝承童謡の総称で、600から1000以上の種類があるといわれています。庶民から貴族まで階級の隔てなく親しまれており、聖書やシェイクスピアと並んで英米人の教養の基礎となっているとも言われています。日本のオタクにとってもアニメやマンガの名言(迷言)のようなものでしょうか。

僧正殺人事件 

 残酷なものやナンセンスなものが多いマザー・グースはミステリーでも好んで使われています。有名どころとしては「誰が殺したクック・ロビン」をモチーフとした連続殺人事件であるヴァン・ダインの「僧正殺人事件」や、「10人のインディアン」の歌詞通りに殺されてゆくアガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」なんかが知られていますね。どちらも読みましたが、ミステリー史に残る傑作ですね。

そして誰もいなくなった 

 「誰が殺したクック・ロビン」の方は、40年近く連載されている魔夜峰央の「パタリロ!」でも「クックロビン音頭」として登場しています。こっちの方で先に知ったという人も多いかも知れません。

クックロビン音頭 

 日本ではそれほど知られていないマザー・グースを日本で使うというのは色々と無理があるような気がしますが、そこを東野圭吾はなんとか辻褄をつけてやってみせたということで、クワトロ・バジーナ(シャア)なら「これが若さか…」と言うところですな。多分米英人はこんな風にマザー・グースを引用するんでしょう。

これが若さか… 

 警察からは村政警部がやってきます。菜穂子は公一の死を自殺と断定されたことで警察に強い反感を持っていますが、さすがは東野圭吾、探偵小説でおうおうにしてある「有能な探偵の噛ませ犬である無能な警察」にはしていません。菜穂子達とは違うアプローチで犯行に迫ります。

オールドマザーグース 

 で、犯人ですが…実は「こいつだろう」と思った人物は外れてしまいました。が、当たらずとも遠からずでした。テストなら△くらい貰えそう。どういうことだと思った人は読んでみて下さい。

マザーグースの世界 

 実はこの一連の事件の前に、そもそもどうして各部屋にマザー・グースの歌入り壁掛けがあるのかという根本的な謎があり、これが前所有者の趣味でもなんでもなく、実は過去の事件を紐解く鍵となっていたのでした。これは直接犯罪性があると言っていいのかはわかりませんが、一連の事件の発端となったもので、最後の最後に解明されるのでした。恐らく今後ペンション『まざあぐうす』は営業されることはないんでしょうねえ。

白馬八方尾根  

 菜穂子も当初公一の妹であるという正体を隠していましたが、登場人物の中にはその他にも正体を隠した人物が幾人かいて、その理由も解明されるのですが、様々な謎のちりばめ方が豪華そのものですが、それによって焦点がちょっとぶれてしまった感じもします。「これが(当時の東野圭吾の)若さか…」

ぶっ飛ばされるクワトロ 

東京最後の異界 鶯谷:タナトスとエロスの狹間に咲く奈落の花

青に染まる公園

 国営ひたち海浜公園のネモフィラが見頃になっています。約450万本のネモフィラが咲き誇る景色はまさに絶景。春はネモフィラで青く染まり、秋はコキアで赤く染まるというまことに結構なひたち海浜公園。日本で一番魅力のない県とか言ってるヤツは一度見に来いや!(高田延彦風)

東京最後の異界 鶯谷 

 本日は本橋信宏の「東京最後の異界 鶯谷」を紹介します。本橋信宏の著作は初めて読みましたので、まずは作者のプロフィールから。

本橋信宏 

 本橋信宏は1956年4月4日生まれで埼玉県所沢市出身。埼玉県立川越高校では辛坊治郎と同期だったそうです。早稲田大学政治経済学部卒業後、24歳でフリーライターとして文筆活動を始めました。その傍らで「ナイスですね~」で知られるAV監督村西とおると知り合って、AV作品制作に関り、数作品ではAV男優も務めたそうです。

村西とおる 

 1985年の「『全学連』研究─革命闘争史と今後の挑戦」以降、反体制運動評論家として注目を集めることとなり、またその一方でアンダーグラウンド文化に関する評論活動も本格化させていきました。政治思想からサブカルチャーまで、幅広い分野で文筆活動を行っています。

全学連研究 
 
 「東京最後の異界 鶯谷」は2013年12月13日に宝島社から単行本が刊行され、2015年2月19日に宝島SUGOI文庫から文庫版が刊行されました。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

東京最後の異界 鶯谷 帯 

 JR山手線で最も乗降客が少ない駅、鶯谷。広大な寛永寺の墓地と駅を挟んだ反対側は都内有数のラブホテル街で、風俗産業の最先端スポットとなっている。入り組んだ路地には正岡子規の終の棲家や初代林家三平の生家、夏目漱石が通った料理屋が今でも残る。この特異な街はいかにして生まれたのか。その歴史と地理的背景、男女の肉声を採録。生と死が隣り合わせる鴬谷の不思議な魅力を描く。 

鶯谷駅周辺 

 鶯谷駅という駅はあるのですが、鶯谷という地名はないという不思議。駅の西側(上野桜木)は高台になっていて、土手の上に寛永寺の墓地が広がっています。そして駅の東側(根岸)はかつて正岡子規が暮らし、初代林家三平が生まれ育った下町…のはずなんですが、駅から見るとラブホテル街が続いていてある意味壮観。

鶯谷北口

 正直日暮里から上野にダイレクトに行ってくれと思ったりもするわけですが、何かの拍子に降りてみると駅前にはデリヘル嬢とホテルに行く、あるいは吉原に向かう変態紳士達が大勢たむろっているという。

 鶯谷南口

 本書では在りし日の鶯谷とか江戸時代からの歴史とかにも触れていますが、大半は鶯谷周辺で展開される風俗の話となっています。「韓デリ」「人妻の聖地」「吉原」etc…。著者は風俗で稼ぐ人妻にインタビューも行っていますが、韓デリでは著者曰く「行き過ぎた国際親善」を敢行しています。この手の風俗探訪インタビュー作品では、大抵作者はインタビューだけしましたよ、手は出してませんよ的ポーズを取ることが多いのですが、ある意味正直者ですね。

うぐいすだにミュージックホール

 個人的に鶯谷のイメージというと、1975年代にヒットした笑福亭鶴光の「うぐいすだにミュージックホール」。てっき実在するストリップ劇場なのだと思っていましたが、架空の劇場でした。ストリップ劇場の呼び込み兼司会の典型的な台詞や、劇場内における客や踊り子をリアルに描写しています。

 鶴光のサンスペ

 私は鶴光が大好きなんですが、さすがにこの歌を歌っていた頃はまだ鶴光の魅力に目覚めてませんでしたね。ヒットしたのはいいのですが、師匠である笑福亭松鶴から「落語の勉強をせずにストリップの歌を歌っている」と激怒され、3か月の破門を言い渡されたそうです。

ラブホテル街 

 既にこの曲の頃始まっていた「笑福亭鶴光のオールナイトニッポン」(サンスペ)で絶大な人気を博していたので、本業が落語家であることを忘れられていたりして。私の中ではほぼ完全にラジオパーソナリティでした。

信濃路 鶯谷店 

 正直風俗系の話は紹介しにくいのですが、興味を惹かれたのは駅前にあるという24時間営業の居酒屋「信濃路」。NHKの「ドキュメント72hours」でも2014年5月23日に「大都会・真夜中の大衆食堂」と題して取り上げられたそうです。

信濃路メニュー表 

 店内のメニューを見ると庶民派料理が格安で並んでいますね。私は高級フレンチよりもこういった店の方がなじむような気がします。風俗はともかく、この店は一度行ってみたいですね。

これでもかと豆腐料理 

 それから豆腐ならぬ豆富料理の名店「笹乃雪」。複数の愛人と交際する人妻が愛人に連れて行って貰ったという店ですが、なんと創業三百二十年で、古くは赤穂浪士や正岡子規にも供された当時の製法そのままににがりと湧き水のみを使用した豆富が賞味できるそうです。こういう粋な店に連れて行く甲斐性がなければ愛人も持てないということでしょうかね。

高台と低地 

 本書に登場する「韓デリ」で働く韓国人の女の子は、若くて独身で仕送りのために働いていますが、デリヘルとか吉原で働いたり、愛人となっている日本人の人妻達は基本的にお金のため、ということのようです。夫に不満があったり離婚寸前というケースもありますが、家庭はごく円満で夫は好きだけどお金が必要だからというケースもあったり。夫を愛したままでも出来るんですね、こういう仕事。バレたらただでは済まない気がしますが、身バレしないようにわざわざ鶯谷に来るんだとか。

寝取られた清楚妻 

 もっとも、夫が実は寝取られスキーだった場合はむしろ「我々の業界ではご褒美です」ということになるのかも。「一盗二婢三妾四妓五妻」という言葉が昔からありますが、男から見て、一番楽しいのは人妻を盗むこと(寝取り)、二番目に楽しいのは妻の目を盗みながら家の女中や下女を抱くこと(「良いではないか良いではないか」というヤツか)、三番目は妾を囲うこと、四番目は娼婦・娼妓を買うこと、最後の五番目が妻を抱くこと、という意味です。

よいではないかよいではないか 

 ちなみに三番目の妾と四番目の妓は入れ替わり、「一盗二婢三妓四妾五妻」となる場合もあるそうで、このあたりの順位は伯仲しているというか、人によるのかも知れません。「一盗二婢」と「五妻」は鉄板。つまり自分の妻はつまらないけど他人の妻は魅力的というがなんとも闇の深さを感じさせますね。日本男児の業は深いと言わざるを得ませんな。でもなんとなく気持ちはわかる(爆)。征服感とか背徳感がいい味出すんですかね。いや、やったことはないですよ。刃牙の無茶苦茶イメトレ的なアレですよ。「思い込みの力だ!!」

無茶苦茶イメトレ 

黒猫館の殺人:「館」シリーズ第6弾はクイーン風。でも違う作品を思い出してしまいました

ひよっこのキャスト

 NHKの朝ドラの「ひよっこ」、筑波嶺ではありませんが茨城県が舞台となっています。ロケ地は高萩のようですが、イメージ的には袋田の滝がある大子の方という気が。筑波嶺からは東京よりも遠いですが、同じ茨城なのでヒットして欲しいものです。そのうちヒロインは東京に行ってしまうんでしょうけどね。出演者をディスりまくっていたニュース(番組内番組)には笑いました。

新装改訂版黒猫館の殺人 

 本日は綾辻行人の「黒猫館の殺人」を紹介しましょう。先日読んだ「時計館の殺人」の直後の作品であり、時系列的にも1年後の話となっています。

 「黒猫館の殺人」は1992年4月に講談社ノベルスから刊行され、1996年6月に講談社文庫から文庫版が刊行されました。そして2014年1月に講談社文庫から新装改訂版が出版されており、今回読んだのは新装改訂版です。

新書版黒猫館の殺人
 

 前作「時計館の殺人」からおよそ6か月後に刊行されており、30代前半だった作者の若さと体力を感じさせますが、「あとがき」によるとやはりかなりの強行軍だったらしく、終盤はホテルに缶詰になり、完成直後は高熱でダウンしたそうです。学生時代から慢性扁桃炎を患っていたそうで、これを機に扁桃摘出手術を受けることを決意したそうです。

暗黒館の殺人 

 前作にして大作の「時計館の殺人」で第45回日本推理作家協会賞(長編部門)受賞しており、次作にしてやはり大作の「暗黒館の殺人」が「週刊文春ミステリーベスト10」で2004年の3位、「このミステリーがすごい!」で2005年の7位、「本格ミステリ・ベスト10」で2005年の2位に入っているという華々しさに挟まれて、本作は全然そういったエントリーがなくて寂しい限りです。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

 大いなる謎を秘めた館、黒猫館。火災で重傷を負い、記憶を失った老人・鮎田冬馬の奇妙な依頼を受け、推理作家・鹿谷門実と江南孝明は、東京から札幌、そして阿寒へと向かう。深い森の中に建つその館で待ち受ける、“世界”が揺らぐような真実とは!? シリーズ屈指の大仕掛けを、読者(あなた)は見破ることができるか?

旧版黒猫館の殺人 

 例によって推理作家・鹿谷門実(島田潔)と編集者・江南孝明のコンビが、奇怪な建造物をいくつも建造している中村青司の手掛けた作品である黒猫館で起きた殺人事件の謎に挑みます。前回はまさに進行中の殺人事件に遭遇し、江南は自らも窮地に陥りましたが、今回は1年前に起きた事件の謎を解明するというものなので、生命の危険はありません。また、時計館での大量殺人がど派手なだけに、黒猫館の殺人はとてもこじんまりした感を受けるので、そのあたりが“地味”な印象を与えているのかも知れません。

 鮎田老人は、黒猫館の管理人をやっていたらしい…のですが、半年前に東京で発生したホテル火災に巻き込まれて重傷を負い、おまけに記憶まで失ってしまいました。ではなぜ黒猫館の管理人だったことが判明したのかといえば、火災遭遇時に財布や通帳の代わりにしっかりと抱きしめていた「手記」があったからです。

黒猫館 間取り 

 その手記は、10年後の自分に宛てた推理小説のようなものだと前書きされており、1年前、つまり1989年8月に黒猫館で起きた奇怪な事件が克明に綴られていました。「時計館の殺人」が時計館の中と外の出来事を交互に描いていたのに対し、本作は一年前の手記と現在の鹿谷らの行動が交互に描かれています。

 黒猫館はおそらく北大と目される大学の助教授だった天羽辰也が中村青司に依頼して1970年に建築した洋館です。作中の時間的には20年前の話になります。天羽は姪(死んだ妹の娘)と共にここに住んでいたそうですが、零落して破産し、館は人手に渡ってしまい、本人と姪は行方不明になっています。

ルイス・キャロル 

 現在の持ち主の馬鹿息子と、馬鹿息子が所属するロックバンドの一行が解散旅行にやってきたことで、事件の幕が開きます。密室での死亡事件が2件と、謎の地下室の奥にあった白骨死体。人死には3件だけなのですが、死亡事件は殺人なのか?だとしたら犯人は誰か?そして白骨死体は誰のものでなぜ地下に隠されていたのかなど、謎は豊富です。もっといえば黒猫館が阿寒にあることを突き止めるのにも苦労していたりします。

 本作はあんまり突っ込んで紹介するとネタバレになってしまうのですが、「館」シリーズ第一弾である「十角館の殺人」がクリスティの「そして誰もいなくなった」をモチーフにしているのに対し、本作はエラリー・クイーンの「神の灯」をモチーフにしています。

神の灯 

 「神の灯」は1940年発表の「エラリー・クイーンの新冒険」に入っている中編ですが、名作として、そしてあまりにも大仕掛けのトリックが有名なので日本では表題作となって刊行されていたりします。読んだことがある人は、黒猫館到着後の描写と巻頭の黒猫館の見取り図を比較することで、「あ、これは『神の灯』!」とすぐ判ると思います。そう、実はそこは黒猫館ではなかったという。

 では本当の黒猫館はどこにあるか?ですが、そこで綾辻行人はあっと驚く大仕掛けをしています。とんでもないところにあったんですね。そしてそれは、鮎田老人の手記を克明に読めば色々なところにヒントとして登場しているのですが、なかなか気づかないんですよねこれが。

 なお、天羽博士は「自分は鏡の世界の住人」だという趣旨のことを度々述べていたそうで、これも「神の灯」トリックであることのヒントとなっているのですが、実際、内臓の配置が、鏡に映したようにすべて左右反対になる内臓逆位であったそうです。

北斗神拳はきかぬ 

 内臓逆位のキャラというと真っ先に浮かぶのが「北斗の拳」に登場した聖帝サウザー。南斗六聖拳「将星」の男にして、108派ある南斗聖拳でも最強とされる南斗鳳凰拳の継承者です。しかも内臓逆位のため、経絡秘孔の位置も通常と逆であることから、その秘密を見破れない限り、正確な秘孔を突くことができない=北斗神拳が通じないということで、拳王ラオウですら戦闘を回避しており、ケンシロウは初戦で惨敗を喫しました。

サウザーの大名言 

 …まあ医学に精通していたトキがサウザーの秘密を察知したことで再戦では破れてしまうのですが。しかし「北斗の拳 イチゴ味」のせいで今やすっかりギャグキャラになってしまっていますなあ。アニメ化した際には正味たった2分のショートさに全米と共に聖帝十字凌も泣きましたが、銀河万丈のバカ笑いとか怪演ぶりが実に素晴らしかったです。おまけにユリアが皆口裕子ですよ。ショートアニメでもいい、第二期カモン。

イチゴ味のサウザー
 
 いや話が脇にそれてしまいましたが、本作にはクイーンの他に影響を与えている作品があるような気がします。それは80年代に出現した伝説のアダルトアニメ「くりいむレモン」。

くりいむレモン 

 「くりいむレモン」といえば何と言っても亜美ちゃんが有名なんですが、シリーズ11弾に「黒猫館」という作品があるんです。

くりいむレモンの黒猫館 

 1986年1月25日に発売され、太平洋戦争開戦直前という時代の山奥にある「黒猫館」を舞台とした作品で、人気作となり、1993年には「続 黒猫館」が、そして2006年には実写映画化もされています。AV女優が出演していますが、R-15指定の一般作品です。

続黒猫館 

 内容はともかく、黒猫館という名称はこちらが先行しているので、屋敷の名前はここから取ったのかなと思うのですが、どうなんでしょう。黒猫館の主である鮎川家というのも鮎田に近い感じですし。こっちの黒猫館は女性ばかりで実に気色がいいのですが。みんな魅力的ですが、特にメイドのあやさんが好きですな。

メイドのあやさん 

 報酬3000円に惹かれた主人公の大学生・村上ですが、当時の3000円が現在だといくらに相当するかは諸説ありますが、仮に1000倍だとすると300万円で、一冬の報酬としては充分ではないかと。3000万円だと高すぎて希望者殺到になってしまいますが、多数の応募者から選ばれた的な描写は一切なかったので300万円くらいが適当だと思います。まあ3000万円でもいいんですよ。なにしろ女主人の鮎川冴子には本当に支払う気はなかったようなので。でも無料だったとしても私は滞在したいな(笑)。己の心に従うと書いて“忌まわしい”と読むのです……

実写版黒猫館 

洗面器でヤギごはん 世界9万5000㎞自転車ひとり旅Ⅲ:7年半かけて世界一周

アツゥイ!

 まだ4月だというのにアツゥイ!ですね。今日も暑かったけど昨日はもっと暑かった。明日からは平年並みに戻るそうで一安心ですが、早くも今年の夏が思いやられますね。くわばらくわばら。

 本日は石田ゆうすけの「洗面器でヤギごはん 世界9万5000㎞自転車ひとり旅Ⅲ」を紹介しましょう。石田ゆうすけの著作を読んだのは初めてです。

洗面器でヤギごはん 

 石田ゆうすけは和歌山県白浜町出身。生年月日は明示されていないのですが、1996年頃の旅の記事に28歳になったと書かれているので、1968年生まれではないかと。高校時代から自転車旅行を始め、20歳の時に日本一周を達成しました。雪印乳業に入社して、3年3ヶ月勤めて資金を貯めたあと、自転車世界一周旅行を開始し、7年半かけて、9万5000㎞、87か国を走り、2002年末に帰国しました。

 なにしろ7年半の旅ですから、この旅については「行かずに死ねるか! 世界9万5000km自転車ひとり旅」「いちばん危険なトイレといちばんの星空 世界9万5000km自転車ひとり旅Ⅱ」と本作と三冊も書いています。例によって三部作の三冊目である「洗面器でヤギごはん 世界9万5000㎞自転車ひとり旅Ⅲ」を手に取った迂闊さはさすがはリハクの目の持ち主よと自分で自分を褒めたいところですが、図書館にはこれしか見当たらなかった気が。

石田ゆうすけ 

 「世界9万5000キロ自転車ひとり旅」シリーズ3部作は韓国、台湾、中国でも発売され、累計30万部を超えるヒット作になりました。現在は旅関係以外にインタビュー記事やグルメ記事も執筆しており、各誌で取材・執筆のかたわら、「夢」「国際理解」「モチベーション」「食」をテーマに、全国の学校や企業で講演も行っているそうで、講演公演回数は300回を超えており、アメリカや台湾でも講演を行っているようです。

 「行かずに死ねるか!」では、旅の間のノンストップで繰り広げられるハプニングを紹介し、「いちばん危険なトイレといちばんの星空」では、訪れた87カ国で「ここがいちばん!」と感じたの“マイ世界一”の数々を紹介しており、本作では世界中で出会った食べ物と人々の記憶が綴られています。

行かずに死ねるか! 

 2005年元旦から日本農業新聞で「世界食紀行」と題して連載したものをベースにし、単行本は2006年11月に実業之日本社から刊行され、大幅に加筆訂正された文庫版は2012年7月に幻冬舎文庫から刊行されました。私が読んだのは文庫版ですが、2話削って20話復活させたということで、文庫版が決定版といっていいでしょう。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

  世界にはどんな人がいて、どんな食べ物があり、どんなにおいがするのか―。パタゴニアの荒野でご馳走になったランチ、フィヨルドの海で釣ったサバのうしお汁、一見生ゴミなセネガルのぶっかけメシ、思わず落涙したアジアの懐かしい味。自転車旅行だから出会えた“食と人”の思い出。単行本に入りきらなかった20話を大幅加筆した文庫改訂版。

いちばん危険なトイレといちばんの星空 

 旅はアラスカから始まり、南北アメリカを縦断してヨーロッパに飛び、北欧からアフリカ喜望峰まで縦断した後で今度はユーラシア大陸を横断して日本に戻るという果てしなく長い旅です。それにしても7年半はかかりすぎだと思いますが、急ぐ旅ではないので気に入ると一箇所に長く滞在したりと気ままな旅をしているのでそうもなるでしょう。あるいは旅が終わるのを怖れていたり。

 読んで思うのは、世界中どこにでも親切な人はいるんだなあということ。自転車に乗った小汚いヒッピーのような謎のガイジンなんか、私なら絶対家に上げませんけどね。もちろん危ない目にも遭って、ペルーでは強盗に襲われて全財産を失っていますが、それでも旅を止めないのが凄いです。パスポートを再発行してもらい、必需品を購入したり日本から送って貰ったりしてなおも旅は続きます。しかもヒッチハイクではなく自転車だからなあ。

サイクル野郎 

 3年半働いて約500万円貯めたそうですが、よほど遊びとかしないで貯めたんでしょうね。私の場合、入社して3年半ではせいぜい300万程度しか貯金できてなかった気がします。元々サイクル野郎(古い!本人は“チャリダー”と呼称しています)だからあんまり趣味に金がかからなかったのか。でも自転車だって凝ればかなり金がかかりそうな気がします。

 世界は広いので、思わず美味しい物にであうことがあれば、身体が拒否するようなシロモノにも出くわします。基本自転車旅でいつもハングリーなのですが、それでも食べられないというのはよっぽどなんでしょうね。

ギニアのリソース 

 表題の「洗面器でヤギごはん」は、アフリカ・ギニアのある村で遭遇したリソースです。リソースというのはごはんに魚・豆・野菜などがごった煮になった汁をかけるという、要するにぶっかけメシです。店によって様々なバリエーションがありますが、その村で出たのはヤギ肉二、三きれに溶けたタマネギ少々という貧弱貧弱ゥなリソースでしたが、食器が洗面器でかなり不味かったようです。でも本書にはさらにまずそうな料理も出てきますので、やはり“洗面器”にインパクトを感じたのでしょう。

 「サイクル野郎」を読むと、日本一周を目指す人は結構いるみたいですが、さすがに自転車で世界旅行をしようという酔狂な野郎はそうそういないだろうと思ったら、結構旅先で酔狂な日本人に遭遇して一緒に旅をしたりしているんですね。留学を志望する学生が減少しているとか聞きますが、やる人はやるということか。

フィンランドの森 

 世界を旅することは年を取ってもできないことはなさそうですが、自転車となると若い頃じゃないと無理でしょうね。30台も半ばになって日本に戻った作者の胸に去来したのは“青春の終わり”だったでしょうか。それだけ長く“職業=旅人”をやってしまうと、日常に戻って働けるんだろうかなんて野暮な心配をしてしまいますが、作者に限っては何冊も著作を出しており、講演も行っているということで、旅の経験はその後の人生にしっかり生きているようです。

 それにしても87カ国って凄いですね。私は20カ国は突破したけど30カ国には全然届かない程度です。やはりアフリカや南米をこなさないといけんですかね。なお作者はオセアニアには全然足を踏み入れていませんから、オーストラリア人とかニュージーランド人は“世界一周”に異議を唱えるかも知れませんな。私も温存していたら、いつの間にか海外に行くモチベーションがなくなってしまったので、すっかり行き損ねたような気がします。

ラグマン 
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